金子みつの発言 (社会労働委員会)
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○金子(み)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、母子保健法、健康保険法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
母性を心身ともに健全な状態に保つことは、人類の永遠の存続と発展を保障する上で、国の最も基本的な事業と言わなければなりません。この観点からわが国の関連制度を見直してみますと、諸外国ではすでに解決済みになっている基本的事項の立ちおくれが、少なくとも二つあります。
その第一は、妊娠及び出産に関しては、疾病にかかわる事例を除いては、保険給付の対象にならず、原側として自己負担だということであります。女性は、出産によって、児童の出生とその育成という重要な社会的役割りを担うことになるわけでありますから、出産は、単なる個人の責任ではなく、母と子の二つの生命にかかわる厳粛な社会的機能と言うべきであります。したがって、妊娠及び出産に関しては、公的責務を果たすことは当然の理であると考えます。現に社会保障の最低基準を定めたILO百二号条約においては、出産医療としてこれを保障し、本人に経済的負担を課さないことを規定しています。
わが国においては、出産は、公費の保障がないばかりでなく、健康保険の医療給付としても扱わず、出産費として現金給付を行っていますが、加入している保険の種類によって十五万円ないし十万円とその金額の格差があるのが現状であります。したがって、このような出産に関する給付の不公正、不合理は、自由料金と相まって大きな自己負担として問題になっています。都会では、すでに三十万円を超える出産費用が常態なのであります。そこで本案においては、健康保険法、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法を改正し、被保険者の出産に関しては、現物給付を行うものとしたわけであります。
第二の問題点は、母性保護の見地に立つ健康管理の体制が、ゼロに等しいことであります。新生児から老人に至るまで、法律で保障された健康診査がないのは、就業していない婦人だけという現状はすでに周知の通りであります。
わが国の妊産婦死亡率は主要国中常にトップクラスの高率を示しておりますし、また周産期死亡率、特に妊娠後期死産率は実に世界第一位を示しております。これらは、わが国における妊産婦保健管理の徹底が、緊急の課題となっていることをよくあらわしていると言わねばなりません。
母性の健康は、健康な児童を生み育てる社会的役割りの上からも放置できない重大問題であり、一家の主婦の健康は、その家庭の安らぎの基礎でもあることを考えるとき、まず、欠如している健康診査の制度を緊急に確立する必要があります。このため、本案においては、母子保健法を改正し、満十五歳を超える婦人で、他の法令すなわち学校保健法及び労働安全衛生法並に老人福祉法等による健康診断又は四十歳以上を対象とする成人病健康診査を受けない者に対し、都道府県知事は、毎年健康診査を行わなければならないものとするとともに、妊産婦に対しても、少なくとも妊娠中は毎月、出産後は一回の健康診査を行わなければならないことといたしました。
第三の問題点は、家族に病気や障害のある者を抱えていると、職場と家庭を両立しにくいということです。よく女の老後は三回来ると言われます。老親の世話、夫の老後そして自分の番となります。これでは、婦人の労働参加や社会進出のいとまがないはかりでなく、母性の健康が損なわれることにもなりましょう。
この問題を解決するには、一方で介護者派遣制度や訪問看護制度の確立を目指すとともに、他方で看護休業及び家族看護手当金の制度化が必要なのであります。本案は、これらのうち家族看護手当金の支給をまず法定しようとするものであります。ただし、男女共同社会の立場から、その支給は男女の別なく被保険者を対象としております。
次に、本案の概要を御紹介いたします。
まず、母子保健法については、主として次の諸点を改正することにいたしました。
① 都道府県知事は満十五歳を超える女子で他の法令による健康診断又は健康診査を受けないものに対し、毎年健康診査を行わなければならないものとすること。
② 都道府県知事は、妊産婦に対し、少なくとも、妊娠中十回、出産後一回の健康診査を行わなければならないものとすること。
③ 都道府県知事は、妊娠もしくは出産またはこれらに起因する疾病につき医療保険を受けた者に対し、その自己負担分(初診、入院時一部負担金を含む。)に相当する額を出産医療費として支給するものとすること。
④ ①及び②の健康診査に要する費用は、国が三分の一、都道府県又は市が三分の二をそれぞれ負担すること。
⑤ ③の出産医療費に要する費用は、国が十分の八、都道府県又は市が十分の二をそれぞれ負担すること。
⑥ 健康保険法については、主として次の諸点を改正すること。
(ア)被保険者の妊娠及び出産に関し、療養の給付(現物給付)を行うものとすること。
(イ)療養の給付の範囲に、助産を加えること。
(ウ)妊娠及び出産に関する療養の給付を担当する保険医療機関に、都道府県知事が指定した助産所を加えること。
(エ)保険医療機関において健康保険の助産に従事する助産婦は、都道府県知事の登録を受けた助産婦(保険助産婦)でなければならないものとすること。
(オ)保険医療機関たる助産所又は保険助産婦に対する厚生大臣又は都道府県知事の監督は、現行の保険医療機関または保険医に対する監督と同様のものとすること。
(カ)被保険者の資格を喪失した際妊娠または出産に関し療養の給付を受けている者は、継続して同一保険者から当該療養の給付を受けることができるものとすること。
(キ)被扶養者が妊娠及び出産に関し、療養を受けたときは、その費用の百分の八十に相当する額を支給するものとすること。
(ク)出産費及び配偶者出産費の支給制度は廃止するものとすること。
なお、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法についても、健康保険法と同様の改正を行うこととしております。
(ケ)被扶養者の疾病又は負傷の看護のため、被保険者が休業する場合は、家族看護手当金として、標準報酬日額の六割を十四日を限度として支給するものとすること。
以上が、本案を提案する理由および本案の主な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますよう心からお願い申し上げる次第であります。(拍手)