大原亨の発言 (社会労働委員会)
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○大原(亨)委員 いま白川委員から非常に興味のある質問がありました。この議論をいたしますと、いままで二十年間も議論したことをもう一回やることになりますし、この問題をやりますと時間がかかりますが、簡潔に触れておきます。
いま戦時国際法の話が出ましたが、私も本当の専門家ではないのですが、戦時国際法は勝者だけに適用するのではないのであります。負けた人の立場も考えて国際法はあるわけであります。それが戦時国際法であります。
たとえばソビエトが北方領土を占拠いたしまして、これは表面に出ておりませんが、ヤルタ協定、大国の太平洋戦争後の領土分割の話し合いが背景にあることは御承知のとおりですが、日本は歴史的に国際法上それを承認していない、こういうことが平和条約締結の条件としておるわけですから、これは国際法の言うなれば人道に基づく摂理、道理を決めたもの、合意したものでありますから、全部の国民や全部の国に適用される、こういうふうに考えるのが当然であります。
そこで、私は大臣にお聞きしたいのですが、いままで国家補償の精神という中で議論いたしました中で、私が関係したものだけ一つ申し上げてみますと、外務省の条約局おりませんが、昭和三十四年に藤山さんが外務大臣でありましたときに、こういう質疑応答をいたしました。私どもの主張は、いま森井さんも話をいたしましたが、つまり毒ガスとか生物化学兵器などというのは、国際法上ハーグの陸戦法規その他実定法で禁止をしておるわけであります。私は藤山さんに質問をいたしまして、原爆の熱線や爆風や放射能の傷害は、毒ガスや化学兵器以上に非人道的な兵器であると思うがどうか。そのとおりであります。であるならば、いま白川委員の話がありましたように、実定法で国際法上原爆を禁止していないからといっても、それ以上の非人道的な兵器を使ってもよろしいということにはならない。というのは、ヘーグの陸戦法規や一般国際法規で、害敵手段について無制限の許容をするものではない、こういうルールがあるわけでありまして、特に非戦闘員を無差別・大量に殺すということは、国際法が兵器を特定していなくても原則的、一般的に禁止しておるのですから、これは国際法に違反するのではないか。こういう主張に対しましては、藤山外務大臣は、条約局長も答弁いたしましたが、御指摘のように実定法ではないが国際法の精神に違反する、こういうことは言ったわけであります。これはその後の質疑応答の中でずっと出てくるわけであります。基本懇の答申の中の広い意味の国家補償の精神によってなすべきであるという議論も、その議論を踏まえておるわけであります。それが一つあるわけであります。
それからもう一つは、命令服従の関係にあるかないかということ、つまり特別権力関係なんですが、それが言うなれば国家補償の問題の背景にあるわけですが、これも議論はいたしません。いたしませんけれども、昭和二十年の終戦段階におきまして、最終的には六月の当院におきまして、臨時帝国議会を開きまして国民義勇兵役法をつくりまして、これについては論争をして法制局との間においてかみ合ってはおりませんけれども、その法律は、男は六十五歳以下、女性は四十五歳以下ですが、十四歳以上の日本国民は全部戦闘に参加する、個別的、包括的に参加する。これは、個別の命令がなくても、愛国婦人会とか町内会とか職場の警防団とか、そういうものに対しまして包括的にやりましたならば、名簿を出させておいて、敵前上陸があったり落下傘降下がありましたら、全部戦闘に参加するというのを臨時帝国議会で決定いたしておるわけです。その問題をめぐりまして、それに至るまでのずっとの経過の中で、現行援護法の問題等について、準軍属その他の解釈についてあったわけであります。しかし、そういう終戦のときの状況からいいましても、一人一人には戦争に参加しない理由はないわけですから、そういう命令服従関係にあった中で、原爆という非人道的な兵器によって大量の被害を受けたのであるから、特別権力関係の議論からいっても、これは国家補償の問題として当然国は責任がないということは言えないという議論をいたしたわけです。歴代の厚生大臣も、その趣旨は理解できます、こういう答弁であります。
それで、これは新しい国際法の分野の問題とかあるいは戦争中の権力関係について掘り下げる議論、戦後の国家補償の法律、恩給法、軍人恩給法というのは自衛隊をつくるための準備行動であったわけですから、戦闘に参加いたしました当時の国民に線引きをしたわけです。戦闘員と非戦闘員と分けたのです。これは大体政策的な意図から生まれたものでありまして、そういう中におきまして戦争があったということであります。これは八月の原爆投下であります。
それから、白川君の話の中で私も共鳴する点もあり、森井代議士も共鳴をされたわけでありますが、日本の平和憲法というのが太平洋戦争、侵略戦争に対する反省と、原爆といういまだかつてない非人道的な大量殺戮兵器の被害を受けたという体験の上に立ってできたということは当然のことであって、これは否定なさらぬと思うわけであります。平和憲法、戦争放棄の憲法はそこから生まれておるわけであります。ですから、アメリカへ行ってはタカ派になった中曽根総理大臣も、東南アジアへ行きますとハトになりまして、日本には平和憲法があります、専守防衛でございまして、この方までは出てきません、決して軍事大国にはなりません。あの人は風見鶏と言いますから、こう言ってあちらこちらへ行って調子を合わせてきたということであります。しかし、言うことはいいことである。平和憲法ということについては、そういう反省の上に立って、教科書問題一つとってもそうですが、それができておるわけです。その一つが原爆の体験であります。
非人道的ないまだかってないそういうふうな戦争、あるいは人類の終末を告げるようなそういう兵器の被害ということがもとになって、平和憲法九条ができておるわけであります。ですから、いままでの議論で、一々やると時間がかかるから申し上げるのですが、指摘しました点について、厚生大臣は厚生大臣として、国務大臣としていかなる所見を有するか、お聞かせをいただきたい。