中村茂の発言 (本会議)
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○中村茂君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、飛鳥田委員長に続き、中曽根総理の施政方針を初め政府演説に対し、質問をいたします。(拍手)
中曽根総理は、思いやりと責任を基調として「わかりやすい政治」を目指すと言っておりますけれども、総理の施政方針の演説は、私の聞く限りでは、美辞麗句を並べますけれども、何も実のないヤマブキの花のようなものであるというのが私の実感であります。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
いま国民が政府に求めているのは、平和のための反核・軍縮の推進であり、金権腐敗の一掃であり、景気の回復であります。この三つの緊急課題を総理が国民にわかりやすく、積極的に進めることではないかと思うのであります。(拍手)しかし、総理の就任以来の発言とその行動はことごとく国民の期待を裏切るものになっているということを指摘せざるを得ないのであります。
世界は、軍縮を求める人々の声で満ちあふれております。米ソを中心とした核軍拡競争は、限定核戦争の可能性を現実的なものにしてきております。限りない軍拡は、国家財政を硬直化させ、世界の経済危機をもたらしてきております。その不安と怒りが、世界の軍縮を求める共通の声となっているのであります。(拍手)
私は、総理の訪韓、訪米外交を見て、軍縮なき軍拡外交と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
訪韓外交は、まさに秘密外交でありました。韓国の報道機関は一斉に韓米日三角安保と報道し、四十億ドルの経済援助は安保協力と伝えています。ところが、会談の内容はわが国には一切報道されておりません。総理は、伝えられておりますように、本当に韓国の防衛努力を高く評価されたのでしょうか。
全斗煥政権は、二十名を超える在日韓国人を政治犯として弾圧しております。間もなく三回目の死刑判決が言い渡されようとしている大阪の孫裕炯さんは、日本の主権を侵害したと言われておりますKCIAの変身であるKNSPによって、日本国内において証拠固めがいま行われております。総理は、人権問題について、全斗煥に対し、毅然たる態度を示したのでしょうか。
総理の訪韓は、朝鮮半島に新たな緊張をもたらそうとしております。軍拡をあおるものにほかなりません。もし総理がそれを否定するなら、あなたは朝鮮民主主義人民共和国とどんな関係改善を具体的にお持ちでしょうか。また、わが党は非核武装地帯の設置を呼びかけておりますが、それにかわる対策をお持ちでしょうか。
さらに、この春予定されている米韓合同演習に自衛隊制服組の派遣は行うべきではないと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
私のところに一通の手紙が来ております。その内容の一部を御紹介いたします。「代表質問に立たれると聞いて、一筆啓上いたします。中村さんにはまことに失礼ですが、私は自民党の支持者ですけれども、中曽根総理にお伝えください。総理として、外国に行って間違うような英語を使わないで、堂々と日本語を使ってください。自分が発言したことは隠し立てをしたり、取り消しをしたりしないで、発言に責任を持ってください。あなたは日本の国を代表する総理ですから、日本の恥をさらすようなことにならないようにしてください。私は戦争は反対です。日本の憲法を忘れないでください。」以上のように、支持政党を超えて、国民は総理の訪米外交についていら立ちと不安を持ったということではないでしょうか。(拍手)
アメリカにおける総理の発言は、国民の多くが唖然としております。軍事同盟発言、運命共同体、不沈空母発言など、いままで日本が取り続けてきました平和外交の原則を突き崩そうとしていると指摘せざるを得ないのであります。
一九七八年の園田外務大臣及び一九八二年の鈴木総理大臣の第一回、第二回国連軍縮総会においての演説は、平和憲法を全世界に誇り、武器輸出三原則、非核三原則を誇らかに宣言しております。総理は、平和憲法を忘れ、世界に対する約束を破り、国民の信頼を裏切ったものであると言わざるを得ないのであります。(拍手)
私は、昨年の臨時国会における総理の発言である第一に自主防衛、第二に安保、第三に国際環境づくりという防衛問題に対する考え方に大きな危惧を感じておりました。総理は、海峡を封鎖し、またバックファイアの侵入を阻止するとしています。そのため「防衛計画の大綱」の次のシナリオづくりを考えていると発言しておりますが、これは軍事大国の道を目指すものであると言わざるを得ません。海峡封鎖はもともとアメリカの要求であり、そのため、昨年ハワイで開かれた日米安保事務レベル会議では、GNP一考以内の枠はもとより、五六中業におげる十六兆四千億円の二倍から三倍の防衛費を必要とする軍事力強化をアメリカから要求されたと言われております。これが次のシナリオではないでしょうか。総理の全方位外交を軽視し、隣国であるソ連を敵視し、軍拡を進める姿勢は、平和を目指すことではなく、戦争を目指す道に通ずるものであると思うのであります。(拍手)
総理は施政方針演説の中で、アメリカへの武器技術供与に関し、「武器輸出三原則等によらないこととすることを決定」したとする反面、後段では、「政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。」と述べています。都合の悪いことは例外とするという論法でいけば、国会決議は形骸化され、国民の意思を無視されることになります。対米武器技術供与の閣議決定の撤回を強く要求するものであります。(拍手)
昨日、田中角榮被告に対し、検察が、民主政治の根幹を揺り動かしたものであるとして、懲役五年、追徴金五億円の論告求刑が行われました。政治家の収賄事件としては史上最高の求刑をしたこの意味こそ、きわめて重大であります。
田中角榮被告は、元総理大臣として、憲政に汚点を残しました。きょうもこの本会議に田中角榮議員は出席しておりません。議員の果たすべき役割りの第一は、まず本会議に対する出席から出発しなければならないと思うわけであります。(拍手、発言する者あり)ここで、残念でありますが、ここに見えておりませんけれども、田中角榮被告の残されている道は、みずから議員を辞職することではないかと思うのであります。
また、国民は中曽根総理の動向に注目しております。総理は、田中被告を友人と呼びました。しかし、いまあなたは総理大臣です。日本の民主政治を守り、政治倫理を確立するためにも、田中議員辞職勧告決議案を国会で採択するよう、自民党の総裁としても決断すべきであります。
同時に、あなたは、佐藤孝行被告、加藤六月国土庁長官、二階堂進自民党幹事長についても、国民の要求に沿った厳正な処置をとるべきものであります。政治倫理は政治家一人一人の問題だと逃げることなく、総理の明快なる御所見をお伺いいたします。(拍手)
総理は、閣僚人事に当たり、警察官僚や灰色高官を起用したのはロッキードシフトではないかという批判に対し、仕事本位の人事であると強弁してまいりました。
ところが、秦野章法務大臣は、事もあろうに、昨日の田中角榮被告に対する論告求刑の行われたこの日に、法務大臣として講演を行って、指揮権発動はやろうと思えばやれる、野党やマスコミはばか騒ぎをしてい過ぎるなど、不見識な発言をしています。(発言する者あり)秦野章議員は、いまは法務大臣であります。それが検察を批判したり、ロッキード裁判について中傷するような態度は、法務大臣として全く不適格のそしりは免れません。(拍手)これは、総理の政治姿勢の根幹に触れる問題であります。明確なる御所見をお伺いいたします。
総理は、政治家の汚職再発防止について、どのような対策をお持ちでしょうか。いま、企業と政治、政治と官界、官界と企業という一連の癒着構造が、汚職金権の温床となっています。政治家が利権と結びついたとき、汚職が生まれます、政治、政策がゆがめられます。総理大臣の犯罪も金脈も利権から出発していることを、私どもは見抜かなければなりません。
わが党は、企業の政治献金の禁止、倫理委員会の設置、政治家の資産公開法、汚職防止法及び議院証言法の改正など、具体的に提案をしております。政治家の政治姿勢を正し、政治倫理を確立するため、わが党の案を受け入れる考えがあるかどうか、総理の見解をお聞きいたします。
また、政治に対し中立であるべき官僚が、現職のうちから特定政党の予定候補者として事前運動を行い、所属官庁が選挙担当者まで配してこれをバックアップし、関連企業に票集めと金集めを任せるなど、行政腐敗ははびこっているのであります。官僚の天下り押しつけなどに際して割愛文書をとる破廉恥な官庁もあれば、部落問題について差別発言を行う高級官僚もおります。政府の長として、とうした官僚の腐敗をどのように考えているのか、見解をお聞きいたします。(拍手)
私は次に、経済、財政政策について質問いたします。
政府は五十八年度予算案において、前年度当初より三兆円多い十三兆三千四百五十億円もの巨額の国債発行を予定し、政府の財政再建が破綻したことをみずから明らかにしております。加えて、今後の財政再建の方向が明らかにされていないことが最大の原因となって、わが国経済の混乱と不況を滞留させているのであります。
国民は、大蔵省によって持ち出されようとしている大衆大型増税に大きな不安を持っております。中小企業は利益減と将来の不安から投資を控えております。さらに、百兆円を超える国債発行残高が長期金利の高金利化を引き起こし、不況を長引かせております。したがって、政府は早急に財政再建計画を国民の前に明らかにすべきであります。
財政再建のためには、わが党が主張しております大企業向け補助金を思い切って削減すること、薬漬け医療などにおいては経費のむだの節減を図り、租税特別措置法の改廃や富裕税の新設などの不公平税制の是正により税収を確保することが必要と考えます。政府の見解を求めるものであります。
政府は、来年度経済見通しにおいて、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図ることとしており、実質GNP三・四%成長を見込んでおります。これを実現するには個人消費の拡大がかなめとなっております。そのためには勤労国民の所得の伸びを今年度より〇・四%高い五・二%と見込んでおりますが、これは今年の労働者の賃金を七%以上引き上げなければ達成できない数値であります。ところが実際には、政府は今年度の人事院勧告を実施せず、来年度の年金の物価スライドを行わず、財界と呼応して勤労国民の所得の引き上げを抑制する姿勢を明らかにしてきております。このような賃金抑制策は、政府経済見通しの実現をみずから阻むものであります。政府は、七%賃金引き上げの妥当性を認めるとともに、賃金抑制策の不当性を認め、人事院勧告の凍結、年金据え置きをやめ、さらに、衆議院議長見解でも示された五年間据え置かれている所得税の一兆円減税及び住民税減税を実施すべきであると考えますが、総理の見解を求めるものであります。
不況対策についてお尋ねいたします。
いま、不況対策として新構造不況法ともいうべきものが用意されていると聞いております。確かに、構造的な不況に苦しむ基礎素材産業は、その産業のみならず、地域経済や雇用問題に与える影響も大きくなってきております。政府としても、税制、財政、金融上の措置を講じ、また、原材料、エネルギー対策に手を打つなど温かい支援を行うべきであります。
しかし、昨年十二月に出された産業構造審議会の答申は、合併や生産販売の共同化といった実質的な競争制限を行うきわめて産業統制色の強いものであります。このような産業再編成が進めば製品の値上げや関連中小企業の倒産が増加し、下請企業の切り捨てや労働者の解雇など、弱者にしわ寄せされるおそれが十分あります。
政府の構造不況業種に対する救済は、本来、側面的な支援にとどめ、独占禁止法の厳格なる運用で効率的な産業調整を行うべきものであります。また、地域産業を振興させるという観点からも特定不況地域の認定の権限は大幅に地方自治体に移譲すべきであると考えますが、政府の御所見を伺うものであります。(拍手)
次に、地方財政について質問します。
昭和五十年度以来毎年度多額の財源不足を生じている地方財政は、構造的な危機に陥っております。政府は、地方交付税法の規定を無視し、多額の借金政策を八年間にわたって地方財政に押しつけてまいりました。そればかりではありません。政府は、五十八年度において新たに交付税特別会計借入金の利子についてその二分の一、三千四百四十六億円を地方負担といたしました。
そこでお伺いいたします。
この措置は一体どのような理由によるのでしょうか。
地方財政の財源不足対策に当たる交付税特別会計の借入金償還については、国は元金の二分の一を負担することが法定化され、利子は全額負担となっていることが大蔵省、自治省両省によって、また国会においても確認されているところであります。大蔵省はこの確認を踏みにじったものであります。これは明らかに行政の不遡及の原則に反するものであります。
同時に、私は、国の地方財政対策がますます不透明となり、その積算や算定が国民の理解しがたいものになっていることを強く指摘し、政府の猛省を促すものであります。(拍手)
私は、複雑化し、小手先でごまかされてきた地方財政対策をやめるとともに、税源の再配分こそが地方財政対策の基本であり、税源再配分計画の確立を図るべきであると考えますが、政府の明確なる御答弁をいただきます。(拍手)
次に、総理は、行政管理庁長官当時、「行政改革は、まず政治家、官僚が痛みを受け、それから国民にお願いするのが筋」と言われておりました。しかし、政治家、官僚がどのような痛みを受けるのでしょうか。また、大企業がどんな痛みを受けるのでしょうか。
先般報告された臨調の部会報告を例にとってみますと、国鉄の民営分割によって生活の足を奪われ、高負担を強いられるのは国民であります。
郵政事業の見直しは、国民へのサービスの低下、金融資本の利潤拡大と労働者への労働強化をもたらすものであります。
住宅・都市整備公団はきわめてずさんな経営をしてまいりました。いま、そのツケは公団住宅の家賃値上げという形で入居者に転嫁されようとしております。
犠牲の転嫁は農民にも及んできております。五十五年四月の国会におけるいわゆる食糧自給力強化に関する決議も全然守られておりません。貿易摩擦も農家の犠牲で処理されようとしてきております。行革を推進するなら、国民だれもが望み、国民生活を豊かにする行革を進めるべきであります。
たとえば、公共事業費の多くを食っている住宅難、ローン地獄の元凶となっている土地対策になぜ手をつけないのでしょうか。いま地価は鎮静化されつつあります。いま土地神話を打ち破ることは、国民経済に大きなプラス要因を与えるものとなるでしょう。土地増価税の導入、保有税の強化による土地の放出、そして、その土地債券の発行による取得を通じて公共用地を拡大し、公共住宅を初めとする生活施設空間への利用を図るべきであります。
また、公共事業において、談合入札もその解消を図るべきであります。事業量の拡大と税金の節約になります。一昨年からの談合入札の追及により、建設省は及び腰ながら指名業者数の拡大、入札経過の公表に踏み切りました。制限つき一般競争入札の導入など根本的な改革は、土建業者が委員となっている中央建設業審議会に諮問し、建設省はその責任を回避しました。建設省を除く他の省庁、特殊法人は、中建審の答申を待つとして、一年間何らの改善も行っていません。
このようなさまざまの問題は、いま申し上げましたように、国鉄、郵政、住宅・都市整備公団など、国民への犠牲を強要するのでなく、土地対策や談合など大企業の不当な利益を温存する行革ではなしに、国民のための行革を進めるべきであると思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)
総理は、「たくましい文化と福祉の国」づくりを政治目標として掲げております。その柱に国を置いております。あなたの改憲志向を見ても、その発想には国家主義的な色彩を色濃く感じます。いま国民が孤立感、不安感を持っているのは、限りない核戦争への危機、福祉の切り捨てや経済の破綻に対してであります。総理の目指す国家への帰属心の向上は、国民の平和に対する不安を高めるものであります。総理の「たくましい文化」とは、レーガンの中身のない西部劇調の「強いアメリカ」と同様、空虚な国家主義であると思わざるを得ません。
あなたは、障害者、母子家庭、寝たきり老人などに対しては、できるだけ温かい配慮を払うと言われております。それは全斗煥やレーガンへの思いやりや、刑事被告人に対する思いやりではなく、年金の引き上げや減税など、国民に顔を向けた政治を行うべきであります。(拍手)総理は、予算案で防衛費を突出させ、福祉、文教、農業対策費を切り捨てたことはきわめて明らかであります。あなたの言う社会的弱者に対する思いやりなど、どこを見ても発見することは困難であります。(拍手)
最後に、総理は、アメリカで国会解散に言及されましたが、国会は何のためにあるのでしょうか。議論をし、世論を吸い上げ、国民の合意に基づいた政治を行うためにあるのではないでしょうか。
予算案に対する国民の批判が大きければ修正するのは当然であります。法案に問題があり、誤りがあれば修正、廃案もあり得るのであります。あなたの発言は、国権の最高機関である国会を無視し、民主主義を否定するものであります。そのねらいは、野党の国会追及を封じ込め、田中角榮議員の政界追放を求める国民の声を圧殺しようとするものであります。一国の総理たる者は、国会解散などに軽々しく言及すべきではありません。私は、総理の身勝手な恫喝的政治姿努に対し、猛省を促すものであります。(拍手)
以上の私の質問に対し、中曽根内閣総理大臣は二枚舌などのすりかえ答弁ではなしに、誠実な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕