岡田利春の発言 (本会議)
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○岡田利春君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、日本社会党・護憲共同提出の昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算を撤回のうえ編成替えを求める動議に賛成し、政府提出の予算三案に反対する討論を行うものであります。(拍手)
予算は時の政府の顔であり、その政府の性格を語るものと言われています。昨年末、中曽根内閣は、かつての内閣に見られないような異例な速さで予算案を編成されました。しかし、その内容は、国民の要望と国際的に課せられている諸課題にこたえるどころか、逆に問題の解決を困難にするものと言わざるを得ません。
今日、大多数の国民の求めているものは、戦後最長の不況局面に陥っているわが国経済の立て直しを図って、国民生活と雇用の安定を確保することにあるのであります。
また同時に、福祉、年金、医療、教育などの後退や切り捨てを行うのではなくして、時代に適応性を失った特権を廃絶し、行財政を改革し、巨額の国債にあえぐ赤字財政からいかに脱却するか、その道筋を国民の前に示すことであります。
中曽根内閣は発足以来、独善的に戦後保守政治の基調の転換に踏み出し、政治にタブーはないとして、憲法、防衛問題をめぐる一連の意識的発言は、日米首脳会談を通じて、日米運命共同体、日本列島不沈空母化、三海峡封鎖発言と発展し、レーガン米大統領の世界戦略に積極的に加担する姿勢を示すとともに、武器輸出禁止三原則の国会決議をもじゅうりんし、その態度は国民の強い反発を招いており、中曽根内閣に対する不信の声はいまや大きな高まりを見せているのであります。(拍手)
わが国は平和国家として、軍拡ではなくして、世界の軍縮にこそ貢献すべきであります。世界の緊張緩和を促進するとともに、世界不況の克服に積極的な役割りを果たすことが、国民の真の負託にこたえる唯一の道なのであります。
しかし、中曽根内閣が初めて編成した予算案は、総理のタカ派ぶりをそのまま投影し、軍事費突出、軍事大国化への加速的助走となり、その一方で、国民生活を抑圧し、財政再建への道をみずから好んで険しいものとしていると言わざるを得ないのであります。
前通常国会において、天の声とも言われた、国民注視の所得税の減税問題について、最終的に衆議院議長裁定という事態を招いたのにかかわらず、その経過を一顧だにもせず、六年間連続で所得減税を見送ったことは、いまや全国民怨嗟の的となっておるのであります。(拍手)
また、憲法違反の疑いのある、公務員労働者に対する人事院勧告の見送りを強行し、これを引き金に年金の引き上げを抑え込み、今春闘の賃金の引き上げを不当にも低く抑えるてこの役割りを果たす結果となりつつあるのであります。
長期不況のもとで、地域、産業、企業間の格差は一層拡大の傾向をたどって、失業者を増大させているのにかかわらず、その対応にはきわめて消極的で、個人消費の喚起に対する何らの有効な施策を講じ得ない無為無策に終始いたしておるのであります。(拍手)
政府が、予算審議を通じて本音とたてまえの使い分けによる答弁を繰り返し、いかにその場をつくろうとも、国民の目は、「増税なき財政再建」を理念とする衣の下に、直間比率是正の名分に彩られた大型間接税導入というよろいを決して見逃していないことを政府は銘記しなければなりません。(拍手)
私は、以下、政府提出の予算案に対する具体的な反対の理由と、わが党提出の組み替え動議賛成の理由について申し述べたいと存じます。
その第一に、防衛関係費が三年連続で特別扱いされ、その聖域化が一段と進んだ突出予算になっていることを指摘しなければなりません。
一般歳出予算の実質マイナスという厳しい中で、防衛関係費の前年度当初予算対比六・五%の伸びは特別扱いそのものであって、すべての歳出に聖域を設けることなく切り込むとした予算編成の方針をみずから踏みにじる行為と断ぜざるを得ません。(拍手)
防衛関係費の伸び率六・五%、増加額一千六百八十一億円は、社会保障関係費の伸び率〇・六%、増加額五百四十九億円を大きく上回り、従来の社会保障重視型から防衛費優先型へと予算の重点が移行したものと言わざるを得ないのであります。
また、防衛関係費の歯どめとしてのGNP一%の枠も、この予算では対GNP比が〇・九七八%まで高まり、その上に防衛関係費の特質でもある後年度負担額もさらに増加し、防衛関係費本体の七二%に上る一兆九千七百五十億円の巨額に達しています。これは、将来にわたって防衛関係費の膨張を助長し、また、財政の硬直化を深める原因となっておるのであります。
世界の軍事費総額がすでに六千億ドルを超え、先進諸国家は、世界不況の中で三千万人を優に超える失業者を抱え、一方、発展途上国の対外累積債務残高は六千五百億ドルに上り、国際的信用不安を引き起こしている現状を直視するとき、この制約を解き放ち、世界経済の活性化と発展途上国の国民生活の向上に資するため、平和国家わが日本が率先して軍事費の抑制及び削減を図ることこそが、崇高な国際的任務であると言わなければなりません。(拍手)
政府は、逆風への悪乗りをやめ、防衛費の増加の歯どめをまず遵守し、軍拡から軍縮への第一歩を踏み出す予算として位置づけをし直すべきであると思います。
その第二は、行財政改革路線に立った歳出削減が福祉、教育費の圧縮に集中され、国民生活を圧迫する予算となっていることについてであります。
臨調行革路線による民生関係費削減が、社会保障関係費の伸び率〇・六%、文教及び科学振興費の前年度比四百五十一億円の減額に端的にあらわれています。年金、恩給の据え置きは、年金水準の実質的な切り下げとなり、弱い者いじめの予算と言わざるを得ません。政府は、弱い者ほど少しの痛みでも強くこたえることを片時も忘れてはならないのであります。
教育費では、私学助成費すなわち経常費助成削減について特に私立高等学校等に厳しく、私学に通わせる父母負担を高めることは必至であります。教育分野における受益者負担の強化という考え方は、格差と不公平を一層拡大するものであることを反省しなければならないのであります。
また、住宅対策費においても、公的賃貸住宅政策費が削減されるなど民生関係費の集中的圧縮が行われ、その上にたばこの値上げ、消費者麦価の値上げが加わり、大衆負担が強化されるのにもかかわらず、一方では、原子力発電関係に象徴されるような大企業に対する補助金、補給金、出資金等については、受益負担の枠外という大企業擁護の姿勢では、歳出削減について国民の合意を形成することはとうてい不可能なことであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
第三の問題は、国民の税負担の不公平が一層拡大している予算となっていることについてであります。
所得税減税が六年も見送られ、課税最低限は七年間同一水準に据え置かれていることによって、給与所得者税負担は、収入の増加四〇%に対し二〇〇%もふえるという重税状況に置かれておるのであります。
税負担の不公平は一向に是正されず、サラリーマンの税負担に対する不信は、いまや政治不信となって爆発寸前にあると言っても過言ではないのであります。そして、その一方では、グリーンカード制度の適用延長によって、利子配当所得の総合課税の見送りなど、不公正税制の是正が大きく後退し、退職給与引当金の引き下げは行わないなど、資産所得者と大企業に対する増税なしの対応は、とうてい国民の納得できるところではないのであります。
まして、直間比率の是正という羊頭を掲げて、大型間接税の導入という狗肉を売るというのであれば、税負担の公平と税に対する信頼性の回復などは、百年河清を待つの愚考に等しいものと言わざるを得ないのであります。
第四の問題としては、厳しい歳出削減と不公正な税負担を拡大しても、なおかつ、財政再建の展望を何らも示していない予算となっているということについてであります。
中曽根内閣は、予算編成に当たって、財政再建の目標も財政改革の内容も明らかにできないまま、国債発行額十三兆三千四百五十億円、国債依存率二六・五%の大幅な赤字予算を組み上げたのであります。
政府の特例公債削減計画も、新年度で六兆九千八百億円の巨額となり、もはや、短期間にこれをゼロに抑えることは不可能な状態に立ち至っているのであります。巨額な国債発行の結果、来年度末の国債発行残高は百十兆円にも及ぶと見込まれるに至っているのであります。国債残高の累積は国債費の増加をもたらし、いまや社会保障費に次ぐ八兆一千九百二十五億円と増加し、一般会計の一六・三%を占めることとなっているのであります。
しかも、国債整理基金特別会計への繰り入れ停止など、国債管理政策についても実質的な変更を行わざるを得ない事態を、いま、迎えておるのであります。
このように、財政再建の目標も財政改革の内容も示し得ない状況では、財政危機打開はますます困難となるばかりであります。財政の運営が政治的要素を多分に含むものであることからして、かかる対応ぶりでは、無責任のそしりを免れることはできないことを政府は肝に銘じておくべきであります。(拍手)
最後に、わが国が現在直面している内需型経済への転換と財政改革への展望を欠いた予算であることを指摘せざるを得ないのであります。
政府予算案のように、所得税減税を見送り、人事院勧告の凍結による賃金の抑制、年金、恩給の物価スライド見送りでは、現在の不況を打開することはできず、公共事業費も実質減では、内需依存の経済成長はきわめて困難であります。
また、財政立て直しの観点から、その主要な柱となる地方財政の状況は、日増しに悪化させられておるのであります。地方債の消化資金としての政府資金の比率は低下し、その上、交付税特別会計の利子の二分の一を地方に負担させるなど、国の負担の地方への転嫁が行われており、このままでは、内需型経済を支えるべき地域経済の発展にとって大きなマイナスとなることは明らかであります。政府の財政改革の問題意識には、地方分権の発想がきわめて希薄と言わざるを得ません。(拍手)いま求められているのは、大衆減税を実施する一方で利子配当所得の総合課税の強化、富裕税、土地増価税の導入など、税の所得と富の再配分機能を活用して、内需型成長のための税財政改革を図ることでなければならないのであります。(拍手)
以上、昭和五十八年度予算案に対し、わが党提出の組み替え動議に賛成し、政府提出三案に反対する理由を述べましたが、政府予算案は、一言で言えば軍備拡大、生活圧迫、経済財政悪化の最悪の予算と言わざるを得ないのであります。(拍手)国民に苦しみを与え、わが国の将来を限りなく不安と危険にさらす予算案では断じて認めることができないことを強く主張して、私の討論を終わります。(拍手)