西村章三の発言 (本会議)
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○西村章三君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和五十八年度政府予算三案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。(拍手)
昨今のわが国経済は、第二次石油ショックの後遺症が尾を引き、不況感が一掃されないままに、実質経済成長率は年々低下の一途をたどっております。
この原因は、世界的な不況の影響による側面もさることながら、それと同時に、政府ができもしない五十九年度赤字国債脱却の方針に固執し過ぎて、財政の持つ景気調整機能を全く無視した経済運営をとり続けたことによるのであります。(拍手)
すなわち、所得税減税や公共投資の拡大など、積極的な景気対策を講じなかったのみならず、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことに大きく起因をするものでありまして、まさに政府の対応の拙劣さが招いた政策不況の結果だと言わなければなりません。(拍手)
同時に、今日の景気の低迷は、経済企画庁自身が認めるように、政府が今後の経済運営や財政再建の方策について何らの方向性をも示さず、国民や企業が抱く将来に対する不安感や不透明感をいささかでも取り除こうとする努力を怠ったがために、民間の経済活動が必要以上に萎縮し、ますます深刻さの度合いを深めているのであります。
わが党は、昨年来、このような見地から、政府に対し、わが国の経済や財政に関する中期的な展望を早急に国民の前に提示することを求め、また来年度予算を減税の実施と行財政改革の断行による内需拡大型予算と位置づけて編成するように強く要求をいたしてまいりました。
しかるに、政府が出してまいりました本予算案は、われわれが要求をした所得税減税の実施や公共事業の拡充などの景気対策をないがしろにしたばかりか、行財政改革にも十分手をつけないままに、年金や恩給の物価スライドの見送りなど、福祉の後退を図る低成長国民生活圧迫型予算と断ぜざるを得ない内容であったのであります。
特に、政府が本予算案において所得減税の実施を見送ったことは、所得課税の実質増税が著しく進んでいる現実や、給与所得者に重い負担を強いている現行税制の不公正な実態を全く無視したものであります。
また、この見送りは、結果的に、最近の個人消費を中心とする内需の不振をさらに長引かせ、政府が達成可能と公言をしてはばからない三・四%の実質経済成長の実現すら困難なものに追い込み、ひいては、それに伴う税収の減少が財政の再建をさらにおくらせるという悪循環をもたらすことが必至でありまして、われわれは、日本経済全体の立場からも断じてこの見送りを容認することができなかったのであります。
この点が、われわれが本予算案に反対する第一の理由であります。
また、財政が景気調整機能を果たす上で大きな役割りを担う公共事業費については、当初予算では五年連続の横ばいとなっておりますが、来年度は、五十七年度補正によって先取りされた分が含まれていることや、物価上昇分などを考慮すると、実質では大幅なマイナスとなっております。この状況を反映して、政府の経済見通しでも、政府支出全体では実質の〇・七%のマイナスとなっており、政府部門が完全に景気の足を引っ張る形となっております。
このことは、景気回復に対して、政府が来年度もきわめて消極的でやる気がないことを政府みずからが認めているものだと言わざるを得ない証左でありまして、これがわれわれの予算に反対をする第二の理由であります。
不況のときに、財源がないからといって増税を行い、公共投資を抑制し続けていては、不況は一層激しさを増し、結果的には税収が減って、かえって財政赤字は拡大をするのであります。
政府は、来年度においては、少なくとも政府支出を名目経済成長率と同じ程度に伸ばすような財政運営を講ずることこそが、わが国経済の安定的発展のためにも、また国際経済摩擦の緩和のためにも必要不可欠であることを深く認識され、即刻積極的な経済運営への転換を図るよう強く提言をするものであります。
次に、第三の反対の理由について申し述べます。
わが国の財政は、すでに百十兆円に及ぶ大量の国債残高を抱え、まことに憂慮すべき状況に立ち至っております。しかし、こうした状況にもかかわらず、政府は、本予算案においても、臨調第二部会報告の指摘のごとく、徹底的な歳出構造の見直しに手をつけず、国債費の定率繰り入れ等の停止や自賠責特別会計からの一般会計への繰り入れ、さらには住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べなどの財政技術的操作による表面的な歳出の抑制に終始をしてしまっております。
このような一時的な、いわば緊急避難的な措置は、財政の体質改善には何ら役立たず、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味で、きわめて今後に問題を残したのであります。
制度の根本的な改革につながらない実質的な赤字国債の発行は今後一切行わず、すでにとった措置は早い時期に解消するように努めるべきでありますし、同時に、政府は、いまだ明らかにしておらない赤字国債解消の目標年度の設定や、財政再建計画、中長期にわたる経済計画を早急に提示することによって、企業の経営や家計の先行き不安を払拭し、わが国経済の発展と国民生活の安定を図るよう政府に強く求めるものであります。
次に、反対する第四の理由は、政府が国家公務員の給与に関する人事院勧告制度を無視し、五十七年度勧告の実施を見送り、これを前提として五十八年度予算案を編成していることであります。
いま政府がまずやらなければならないことは、法律行為や法律に基づく制度を無視することではなく、まだまだメスの入れ足りないむだの多い行政事務や複雑な行政機構を思い切って整理をし、公務員定数を可能な限り削減し、それによって総人件費を極力抑制すべきことであります。
また、あわせて私は、中小企業の投資促進税制が余りにも小規模であることを指摘しなければなりません。景気浮揚のためにも、中小企業の設備投資の促進が急務でありますが、政府の示された案では、過去の投資実績が乏しい企業や、百四十万円以下の投資しかしていない企業、とりわけ小規模な中小零細の企業の新規投資については、ほとんどその促進効果がないと言わざるを得ないのであります。
さらに、中小企業の承継対策についても、政府案では株式評価の見直しや小規模土地の評価についての減額を行うとされておりますが、かねてよりわが党が主張いたしております生前贈与制及び贈与税、相続税の納税猶予制度を柱とする抜本的な承継税制の確立とはおよそほど遠い内容でありまして、相続税制の部分的手直しにすぎず、これまた中小企業にとっては恩恵の少ない、全く不十分なものだと指摘せざるを得ないのであります。
第五の反対の理由は、財源確保のために自賠責特会の運用益を一般会計に繰り入れることといたしていることであります。
御承知のとおり、自賠責保険の収支は昭和五十三年度から単年度で赤字を計上してきており、その額は年々拡大する傾向にあります。したがって、こうした状況のもとでは、運用益の二分の一に当たる二千五百六十億円を取り崩し、しかも十年間にわたって無利子で貸し付ける余裕など、全くあり得ないのであります。しかも、大蔵省は、赤字の増大を抑えるために、この秋にも現行保険料を三〇%前後も引き上げる方針であると伝えられております。これら一連の措置は、自賠責保険の目的からいっても、四千万人を超える自動車のユーザーにとってはとうてい納得のできないものでありまして、ここにその撤回を強く要求するものであります。(拍手)
さらに、わが党が予算案に反対をする最大の理由は、行政改革がきわめて不徹底であるという点であります。
中曽根内閣は、行政改革を内政の最優先課題にすると一応口先では言っておりますが、しかし、予算案の中身たるや、臨調答申のつまみ食い、財政の帳じり合わせに終始をしており、本来の行政改革である行政機構の簡素化や定員の見直しによる人減らし、公社や特殊法人の改革など、重要課題がほとんど放置をされているのがその実態であります。
総理の行革三昧が、官僚の抵抗や反発、政官癒着の利権構造の前にもろくも崩れ去り、同時に、国民の切望する「増税なき財政再建」と民間の活力を取り戻す道が閉ざされることを、われわれ民社党は最も深く憂慮するものであります。(拍手)
民間企業が、長引く不況の中で破産、倒産が続出をし、首切りや賃金の切り下げ、配転や出向など、労使がともに血のにじむような合理化や減量経営、経費の節減に努めているとき、親方日の丸の上にあぐらをかいた安易な役人の姿勢や官業の非能率、不要な行政機構を温存したままのこの予算案に対しては、国民の理解と協力を求めることはとうてい不可能だと断言をしてはばからないのであります。(拍手)私は、ここに政府に猛省を促し、行革の断行を強く求めるものであります。
最後に、私は、減税問題に関する与野党の合意について、政府にぜひ要望しておきたいことがあります。
勤労者の税負担の増大、不公平税制の是正などの観点から、所得税の大幅減税は長年の懸案事項でありましたが、今回ようやく減税を実施するとの与野党代表者会議の合意を見たことは、大きな前進であり、その申し合わせ事項についても、高く評価するにやぶさかではございません。しかし、国民はまだ、この合意に対する政府の誠意に対して、全幅の信頼を置いておるわけではございません。昨年の二の舞になるのではないかという大きな疑念が残っております。
万が一、昨年のように、この減税が実現されないということになれば、政府のみならず、議会制民主主義も政党政治そのものも、国民全体の不信と反発を買うことは明らかであり、ゆえに、絶対にこのことは避けなければなりません。
政府は、国民の減税に対する強い期待を裏切ることなく、与野党合意の線に沿い、景気浮揚に役立つ相当規模の減税、すなわち、一兆円以上の規模の所得税減税を一刻も早く実施すべきであります。そのための税法改正案を今会期中にも提案されることを重ねて強く要望いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)