佐藤三吾の発言 (本会議)
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○佐藤三吾君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案等いわゆる行革関連法案を中心に、田中有罪判決、レーガン来日など内外の諸問題について、総理並びに関係大臣に質問いたしたいと思います。
先月十二日以来、一カ月以上にわたり国会が空転を続けたわけでありますが、ようやく開かれたこの国会で、肝心な田中辞任勧告決議案は先送りのまま解散、年内総選挙によって国民に信が問われようとしています。
〔議長退席、副議長着席〕
懲役四年、実刑有罪の犯罪人が国権の最高機関である立法府に居座り、三審制の結審までは無罪とうそぶく。公務員の最高の地位を占め、広範かつ強力な権限を持ち、最高の公正さと倫理、道義が求められる内閣総理大臣の犯罪であるだけに、犯罪人の即時議員辞任と政治倫理の確立を求める圧倒的な国民の要求となったのは当然であります。
しかるに総理、国民の圧倒的な要求に挑戦し、居直り、犯罪人を擁護し、守り、野党こぞっての要求である田中辞任勧告決議、政治倫理確立の決議さえ審議を引き延ばし、国会を空転させてきたのがほかならぬ政府自民党であり、その総裁である中曽根総理あなたであることは周知の事実であります。いかがでありますか。私は、国会議員の一人として身のふるえる怒りを覚えるのであります。同時に、野党の非力とはいえ、国会自体がけじめをつけ得ないまま今日に至ったことも国民の皆さんに申しわけない、そういう気持ちでいっぱいであります。
総理、あなたは今国会の所信表明で、「議会制民主主義の発展には政治倫理の確立は必須」と強調し、「政治倫理は、一面、政治家がいかに高い道徳性を発揮するか、他面、政党がいかにして国民の納得のいく清潔澄明な活動と機能を確保するかにある」、こう表明したのです。その言やよし。だが、あなたは国会論戦が始まると、政治倫理の中核とも言うべき田中問題に対し三権分立論で逃げ、事件の結果は最高裁で確定すると、あたかも一審判決を否定するかのごとき言辞を弄し、有罪判決後は長考一番沈黙する。田中辞任説得に政治生命をかけるとふれ込んだホテルでの密室会議は、犯罪人に対し「側隠の情を禁じ得ない」とは何たることですか。茶番劇もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。先ほど、石にかじりついてもと強調しておりました。ならば、この田中辞任問題になぜ職を賭して石にかじりついても辞任に追い込まないのですか。
先日来、ドイツのコール首相、レーガン米大統領の来日する中で、総理は世界の政治家あるいはリーダーと、こう自認しておりますが、ニクソン米大統領をみずからの良心に基づいて罷免した米連邦議会の高い倫理観や、秘書のスパイ事件でみずから連邦首相を辞任したブラント西独社民党党首の政治責任のとり方を見るときに、あなたとは全くまさに月とスッポン、ためにする論理を振り回し、田中辞任勧告決議案を葬り去らんとしている総理の態度に私は寒々としたものを感ずるのであります。総理の所見を伺いたいと存じます。
さらに、秦野法務大臣がみずから法の番人を放棄し、犯罪人擁護の放言を行っていることは断じて許すわけにはまいりません。総理の見解をお聞きしたいのであります。
次に、レーガン米大統領の来日にかかわって最も基本的な問題について質問いたします。
それは、グレナダに対するアメリカ軍の侵略問題であります。ソ連軍のアフガニスタン侵攻に対し、政府はこれを批判し厳しい対ソ経済制裁をいまも続けております。これに対し、グレナダにおける米人救出、カリブ海六カ国の要請などを口実に、独立国家に米軍が侵略したことについては「理解できる」として国連総会の決議に棄権をする、一体どのような論理ですか。西側の一員であるフランス、西ドイツ、英国においても強い批判が米国に加えられているときに、何ら合法性を持ち得ない米軍侵攻は明らかに侵略であります。これを「理解できる」などということは、日米安保条約を結ぶわが国に対し、逆の足かせを国民に一層課するものであります。総理並びに外務大臣の答弁をいただきたいと存じます。
次に、行政改革に関する幾つかの基本問題について質問いたします。
まず第一に、去る八月、政府が明らかにした「一九八〇年代経済社会の展望と指針」について質問いたします。
これまでの経済計画と大きく異なり、今回の「展望と指針」は、実質経済成長率年平均四%程度、名目成長率六から七%程度、消費者物価年平均上昇率三%程度、卸売物価一%程度という数値しか示しておりません。国民所得、公共投資額、社会保障移転費、租税負担など、国民にとってきわめて関心のある数値は一切捨象されています。ネオキャピタリストを自認する総理にとって、計画なる言葉は社会主義を想起させ、数値の提示は市場経済への介入、民間活力の阻害だと言いたいのでありましょうが、古典的夜警国家ならいざ知らず、現代資本主義国家において、国民にとってきわめて関心のある数値を捨象したということは計画的政策運営の放棄にも等しいものと考えますが、総理並びに経済企画庁長官の所見を伺いたいと存じます。
第二は、行政改革と「展望と指針」との関係についてであります。
総理はみずからを行革内閣と称していることから、一連の臨調答申の実行は総理の政治生命の根幹をなしていると同時に、政治的には「展望と指針」及び臨調答申は一体をなしておると考えます。それならば、臨調答申の前提をなしている租税及び社会保障にかかわる国民負担率も、当然のことながら「展望と指針」に組み込まれていると考えるのがあたりまえでありますが、総理並びに経済企画庁長官、いかがでありましょう。
すなわち、現行三五%の国民負担率を四〇%から四五%に引き上げることが臨調答申の前提とされています。現時点でこれを計算すれば、一〇%引き上げることによる国民負担額はおおよそ二十七兆円となり、これを「展望と指針」に沿って八年間で段階的に達成しますと、毎年三兆四千億もの巨額の負担を国民に課していくことになるではありませんか。論理的にはこのような新たな負担を国民に課していかざるを得ないにもかかわらず、「展望と指針」において全くこれをネグレクトしていることは、国民を愚弄するものだと言わざるを得ません。
そればかりか、こうした数値が明らかになるからこそ、政府は従来の経済計画とは大きく趣を変え、抽象的な「展望と指針」に変形させ、国民から政策的なフリーハンドを得ようとしたのではありませんか。総理並びに経企庁長官の答弁をいただきたいと存じます。
さて、五十九年度予算編成にかかわるマイナスシーリングによっても、なおかつ財政中期試算に基づく要調整額四兆一千六百億円の削減効果は一兆四千億にとどまり、巨額な財源不足は避けられないこととなっております。この不足額は、先ほど私が指摘した国民負担の引き上げ額に近い数字であることはあえて言うまでもありません。市場面から見た公債増発の制約なども勘案すれば、政府がどのようにごまかそうとも、早晩、臨調答申の言うように、そしてまた十一月十六日に発表されました税調答申に沿って四五%から四〇%の国民負担ラインに向けて走ることは明らかであります。
増税なき財政再建を口にし、臨調答申の言う国民負担率増を政府はとらないと強弁するならば、来年度予算編成においては一切の増税及び社会保障負担の引き上げは行わないことを言明すべきだと考えますが、総理並びに大蔵大臣の確たる答弁をいただきたいと存じます。
第三に、「展望と指針」において地域経済振興が強調されておりましたが、これと地方財政との関連においてお尋ねします。
地域経済振興がわが国経済の改革と発展の大きなかぎであることは、かねがねわが党が主張してきたところであります。しかし、地域経済と地方財政が表裏一体の関係にあることを考えれば、約六十兆円もの借金を抱える地方財政の健全化がまず必須条件であるにもかかわらず、「展望と指針」ではその具体的な方策を何ら示しておりません。今後地方財政は公共投資全体の中でどのような負担と役割りを占めるのか、また健全化はどのように推進するのか、自治大臣並びに経企庁長官からお示しいただきたいと存じます。
第四に、許認可事務の整理合理化についてお尋ねします。
臨調答申は、「制度の濫設防止及び規制の廃止又は緩和」、「事務の民間団体への委譲」、「制度の仕組みの簡素化」、「運営の合理化」の四つの整理合理化の基準を定めて、具体的事項を列記いたしております。ところが、提案された行政事務の簡素合理化及び整理に関する法律案においては、先ほども答弁があったように、答申どおり簡素合理化した省庁は皆無であります。それどころか、運輸、労働、農林水産省においては最も答申をネグレクトしていると言っても過言ではありません。この際、総理は次期国会において改正案を提出することを確約すべきだと考えますが、決意のほどを伺いたいと存じます。
最後に、行政監査に関連しつつ、総務庁設置法案の問題について質問いたします。
現代国家が行政国家への傾斜を深めつつあるとき、行政監査機能を行政府から独立した国民的監査機関にゆだねることは国際的な潮流であります。現行の行政管理庁が国民的行政監査と何ら制度的接点を持ち得ないばかりか、他方では行政権の肥大化が著しく高進している今日、わが国の行政管理を国民的行政監査に移行させることは緊急な課題であります。
ところが、今回の総務庁設置法案においては、こうした国際的傾向はもとより、国民的願望は物のみごとに裏切られているのであります。人事管理という行政監査を一元化し内閣の内ふところに再編するなどということは暴挙と言わざるを得ません。権力主義的発想に立つ中曽根内閣の本質がまさにここに露呈されており、これによって国民は、行政に対する民主的なチェックの権利をいままで以上に奪われることとなるのであります。総理の答弁をいただきたいと思います。
以上、私は幾つかの質問を申し上げました。今国会を通じ国民の政治不信と政治に対する絶望感は限界に達しておると感じます。総理はこのことを正しく受けとめ、言行一致、国政に対処されんことを切望して終わりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕