中曽根康弘の発言 (本会議)
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○国務大臣(中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えを申し上げます。
まず、政治倫理及び秦野発言の問題でございます。
ともかく、国会が三十日余にわたりまして空転いたしましたことは、まことに国民の皆様方に申しわけなく、遺憾に存ずる次第でございます。しかし、この原因にはやはり与野党間における考えの相違というものがございまして、それが埋められなかったということはまことに残念な次第なのでございます。
田中議員の進退に関する問題でございましたけれども、いわゆる田中辞職勧告決議案というものは、前からしばしばここで申し上げておりますように、憲法あるいは国会法によりまして国会議員の身分は非常に保障されておるわけでございます。除名するにしても、あるいは資格争訟によって国会から外へ放逐するにいたしましても、三分の二の多数を要する。一回除名して外へほうり出しても、選挙民が当選させてきたらこれを拒むことができないとまた書いてあります。
これらはいずれも、国権の最高機関であるこの国会を構成する機能の中で、少数者の保護あるいは言論の自由の確保のためにそのような配慮がされておるとわれわれは考えるのであります。したがいまして、事実上政治的に二分の一の多数で国会議員をそのように辞職させるという効果を及ぼすようなことがあれば、憲法や国会法の保障が空文に帰するおそれがあります。
かつて、日本の国会は、軍部華やかなりしころ、粛軍演説をやりました齋藤隆夫先輩をほとんど大多数で除名したのであります。そのときには、国民もあるいは新聞も恐らく一致して、そのときの熱情に駆られてやったと思うのでありますが、後で考えれば重大なる間違いを時の国会は犯しておったのであります。したがって、われわれは、長期的に国会の尊厳性や国会の保障している重要なポイントについては譲るべからざるものが政治家としてなければならぬと、そのように考えておるわけなのでございます。
仮に、多数党がその自分たちの考えによって、二分の一で同じような決議案をどんどん出して、少数党の党のリーダーその他を同じような目に遭わせたら、国会はめちゃめちゃになってしまいます。そういう面からも、われわれは自粛自戒して、少数者保護、言論の自由の確保という議会政治の真骨頂を守らなければならぬと、そのようにわれわれは考えてやった次第なのでございます。
議員の進退は、前から申し上げますように、終局的には選挙民の意思あるいは本人の意思でしかるべきでありまして、第三者が憲法や国会法にそぐわない方法によって強制すべきことはなじまないと私は考えてきておる次第でございます。しかし、政治家としてあるいは政党として、政治倫理の問題は重大な問題でございます。個人の進退は個人が行うべき問題でございますけれども、政治倫理全体はやはり政党や政治家が真剣に取り組まなければならぬ問題なのであります。
そこで、先般来われわれは、先ほど申し上げました考えを私は党の幹部にもお示しし、また昨日来、新自由クラブとの間でこれに関する話し合いが成立いたしまして、政治倫理協議会の創設、それから懲罰事案に対する国会法の改正、大臣等の資産公開の義務づけ、政党法の制定検討、議員定数不均衡是正問題に対する措置、情報公開制度等の創設協議、この数点にわたりまして新自由クラブと意見の一致を見まして、そしてこれを国の、われわれの指針として実行していく、一つ一つ実現していくという約束をしたのでございまして、私はこれが政治倫理の一番大事な点になるのではないか、そのように考えておるところでございます。
次に、グレナダの問題でございますけれども、この事件が起こりましたときに、私は、このような武力行使を行ったことは遺憾である。しかし、いろいろ調べてみると、あのカリビアン機構の諸国の要請、あるいは住民の保護、こういう点を見ると、ソ連がアフガニスタンに侵入したのとは状態がまるっきり違う。アフガニスタン侵入の場合にはちゃんと政府があったわけでございますけれども、グレナダの場合にはほとんど無政府状態になって、住民の生命、財産が脅かされておった、そういうような情勢等も踏まえまして、理解はできる、しかし遺憾である、速やかにこれが常態に復することを期待すると、そのように私申しました。
アメリカはその後努力いたしまして、撤兵を次々に行い、また新しい内閣も形成されるという状態になってきたわけでございます。そういう状態を見まして、今度出ました決議案の内容を見ますと、それらの情勢が必ずしも忠実に反映されていない部分がございました。したがいまして、われわれはこれに対しては態度を留保した態度、それをとったというところなのでございます。
次に、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の問題について御質問をいただきました。
現在の経済社会全般を見ますと、きわめて流動性がございますし、また新しい技術革新等の展望もございまして、どういうものが出てくるかなかなか予断できないような情勢でもございます。そういう点からいたしまして、定量的な性格のものをつくるということはまだまだ不安定要因が多過ぎる、したがいまして定性的判断のものにしたい、そういう考えに基づきましていまのような「展望と指針」にした次第なのでございます。
そして、国民負担の問題につきましては、来年度予算編成等々におきましても、われわれは増税なき財政再建という原則を守ってまいるつもりでございまして、原則として国民負担はこの度合いは変えない、こういう考えでまいります。これが臨調答申の指示している点でもございます。この国民負担の割合というものは変えない、その原則を貫いてまいりたいと思っております。
さらに、許認可整理の問題でございますが、この許認可事務につきましては、国民負担軽減等から見ましても思い切ってやらなければならぬところでございます。
臨調は、全許認可等について審議しました結果、当面改革を要するものとして第五次答申において二百二十二の事項を指摘してまいりました。今回の法律改正は、その事項の中で法律改正を要する七十二事項についてその半分を整理しよう、そういう考えで御提案を申し上げている次第でございます。なお、さらにわれわれは、新行革大綱に基づきましてこれらの整理を次々に進めてまいる考えでおります。
次に、行政監査のための今度の機構改革の点でございます。今回の総務庁設置法は行政監査の目的から逆行するのではないかというところでございます。
人事管理あるいは機構、定員管理等に関する総合調整機能、それから行政監察機能という面で総合的な統括を行う。行政管理庁も総務庁も総理府の外局でありまして、行政管理庁という名前、総務庁という名前を持ってきたわけでございまして、この総合総括という機能においては私は適当であると考えております。
最後に、秦野発言の問題がございました。
私は、秦野法務大臣を呼びまして注意をしたところでございます。あの内容を読んでみますと、なかなかいいことを言っている面もございます。しかし、やはり大臣としては懇切を欠き、説明不十分の点もあったと思います。懇切を欠き説明不十分であった。いま八百屋と魚屋の話が出ましたが、ああいう部分もそうだと私は思っています。そういう点は以後注意するようにと、しかし秦野法務大臣は非常に正直者で、私は相当な情熱家で正義漢で、そして特に法務大臣として人権擁護に非常な心を砕いている善人であると思っております。したがいまして、注意をいたしましたのでそれでたくさんである。以後注意するようにということで、本人もそのようにいたしますということでございますから、御了承願いたいと思う次第であります。(拍手)
〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕