安倍晋太郎の発言 (外務委員会)

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○安倍国務大臣  私は、今般国会のお許しを得て、六月六日から十三日まで英国、スペイン、ジュネーブを訪問いたしました。私は、その間、英国においては七日から九日までロンドンで開催された第十回主要国首脳会議に出席し、その後、スペインを公式訪問し、さらに、スイス・ジュネーブで開催された軍縮会議等に出席した後、十四日に帰国いたしました。ここにその概要を御報告申し上げます。
 まず、サミットにつき御報告申し上げます。
 今次サミットは、回復基調にある先進国経済を背景に開かれ、全体としては特に大きな争点もなく、明るいサミットであったと言うことができます。しかし他方においては、自由貿易体制の維持強化、累積債務問題、構造調整問題等現在の世界が直面している種々の重要な経済問題を検討するとともに、国際政治の面においても湾岸情勢、東西関係等の諸問題につき、真剣に討議いたしました。その結果は、四つの宣言及び一つの議長声明として発表されましたが、これらには我が国の考えが十分反映されているものと考えております。
 経済問題につきましては、我が国としては先進国経済におけるインフレなき景気回復を持続していくとともにその恩恵を開発途上国にも均てんさせることでサミット参加国間で合意に至ることを基本的な目標としつつ、また、貿易・開発途上国との関係及び構造調整問題に重点を置きつつ積極的に討議に参加いたしました。その結果、今後の政策の基本的方向につき意見の一致を見るに至り、世界経済の将来に一層明るい展望を開くという大きな成果を上げることができたと確信しております。具体的な諸点はロンドン経済宣言に盛られておりますが、我が国から見たその主なる内容は次のとおりであります。
 まず、新ラウンドの重要性及び必要性を再確認するとともに、速やかにその目的、取り組み方及び開始時期につき決定を行うべくガット加盟国と協議を行うとの方針が打ち出されました。我が国は八五年準備、八六年交渉開始を主張したわけでありますが、一部諸国の同意を得るに至りませんでした。我が国としては、時期の明示を行い得なかったことは残念でありますが、最高首脳レベルにおける今回の合意は、ガット作業計画を促進するための刺激剤となるとともに、新ラウンドの今後の取り進め方につき一歩前進したことを意味するものと考えております。
 第二に、開発途上国との関係を善意と協力の精神で促進していくとの政治的意思を再確認するとともに、累積債務問題に積極的に取り組むとの共通の姿勢を表明いたしました。特に、効果的な自助努力を行っている債務国の場合には、民間債務の多年度繰り延べを奨励するなど若干の具体的措置につき合意に至った点が重要であります。また、国際的高金利の是正が開発途上国経済の健全化に必要であるとの認識で一致しました。
 第三に、中長期の観点から構造調整の問題に積極的に取り組むことで合意を見ました。すなわち、労働市場の硬直性、構造的な財政赤字を是正すべきこと、経済の変化に対応した産業とサービスの発展を図るべきことなどが合意されましたが、これは、今後の世界経済にとって画期的な出来事であると考えます。
 我が国は、他の諸国、特に欧州に比較して経済構造が弾力的であるとしばしば指摘されているところでありますが、サミットの場においても、他の諸国よりこの点につき多々言及されたことは私としても印象深いところであります。
 次に、政治問題につき御報告いたします。
 サミットは本来、経済問題についての意見交換の場であります。しかしながら、従来より、主要先進国の首脳が一堂に会するこの機会をとらえ、そのときどきの重要な政治問題が討議されてまいりました。
 今次サミットにおいては、政治問題の重要性が一段と高まった感があります。その討議の具体的な成果が、三つの宣言及び一つの議長声明として発表されました。
 すなわち、第一に、サミット参加国が共有する民主主義的価値を再確認し、また平和と対話の必要性を訴えた民主主義の諸価値に関する宣言、第二に、ソ連を机めその同盟諸国との対話拡大への決意とともに、現在中断している核軍備管理交渉の再開への希望を表明した東西関係と軍備管理に関する宣言、第三に、テロリズム防止のための一層緊密な国際協力をうたった国際テロリズムに関する宣言、さらに、イラン及びイラク両国に対して平和的解決を呼びかけたイラン・イラク紛争に関する議長声明であります。
 これら諸問題の討議に当たり、我が国としては、経済的繁栄の基礎として、平和が重要であること、なかんずく、理性に基づく対話と交渉による国際紛争解決の重要性を強調するとともに、冷却化した東西関係を改善するとの見地から、ソ連に対し、中断されている軍備管理交渉へ復帰するよう呼びかけるべき旨主張いたしました。さらに私としては、特にイラン・イラク紛争については、両国と友好関係にある我が国の立場にもかんがみ、これまでの我が国の外交努力を踏まえて積極的に発言いたしました。各国の出席者は、これに熱心に耳を傾けていましたが、平和のための環境づくりに貢献するとの我が国の意図を理解してくれたものと私は確信しております。また国際テロリズムについては、アジアにおいてもラングーン事件といった出来事があったことをも念頭に置きつつ、積極的に対応いたしました。
 次に、スペイン公式訪問につき御報告いたします。
 スペインにおいては、私はゴンザレス首相及びモラン外相と率直かつ有意義な会談を行いました。これら一連のスペイン政府首脳との会談において、ともに民主主義に立脚する両国の関係を一層緊密化させていくべきことで完全な意見の一致を見るとともに、現下の国際情勢につき意見交換を行いました。我が国外務大臣のスペイン訪問は十八年ぶりのものであり、両国関係にとって極めて有意義であるとともに、我が国の外交の幅を一層広げる上で重要な一歩となったものと確信いたします。
 第三に、ジュネーブ訪問につき御報告いたします。
 ジュネーブにおいては、軍縮会議の夏会期初日の冒頭、私が我が国外務大臣として初めて演説を行いました。唯一の多数国間軍縮交渉機関として活動してきている軍縮会議への私の出席は、我が国の軍縮に対する積極的姿勢をあらわすものとして、意義が深かったものであると考えております。私は、この演説の中で、世界の平和と繁栄をいかにして子孫に伝えていくかということが、現下の最も重大な課題であり、このためには何といっても米ソ両大国が率先して努力する責任があることを指摘するとともに、今こそ軍縮会議が具体的に行動すべきであると強く訴えました。特に、具体的分野としてソ連に対するINF、START交渉への復帰の呼びかけ、核実験禁止問題等に触れたことは御承知のとおりであります。
 また、ジュネーブではダンケル・ガット事務局長ほかガット関係者と意見交換を行いました。
 この会談で私より、サミットにおける貿易問題に関する議論に言及しつつ、我が国としては新ラウンドの準備促進を提唱していること及び当面現行のガット作業計画推進について時宜を得た決定を行い、情勢を前進させることが不可欠であること等を説明いたしました。今回の意見交換は、ガット主要関係者にとってロンドン・サミットに出席した閣僚との最初の出会いであり、新ラウンドへ向けてのコンセンサスづくりの先鞭をつけたものとして高く評価されるとともに、自由貿易体制の維持強化への我が国の熱意に対するガット関係者の理解を深めることができました。
 また、私は、ジュネーブで開催中の国連開発計画の会合に出席し、開発途上国問題への我が国の姿勢、国連開発計画諸基金への我が国の本年度の拠出誓約、人口問題の取り組み等につき演説いたしました。
 最後に、ジュネーブよりの帰途、私はモスクワに立ち寄り、カピッツァ外務次官と会談いたしました。この会談では、私よりサミットの模様を伝えるとともに、日ソ関係の対話の必要性を強調し、今後とも対話の輪をさらに広げたいと述べ、これに対し、カピッツァ次官も国連協議、中東協議、さらに国連総会の際における外相会談等に言及しつつ、今後とも日ソ両国間の接触を続けていきたい旨の希望を表明しました。また、ニューヨークにおける外相会談については、グロムイコ大臣よりの喜んでお会いしたい旨の言葉が伝達をされました。
 以上をもって私の御報告を終わりますが、今次歴訪を通じ、私としては我が国に対する関係諸国及び国際機関の期待の大きさと我が国の責任の重さを痛感するとともに、これらの期待にこたえるべく一層努力するとの決意を新たにした次第であります。

発言情報

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発言者: 安倍晋太郎

speaker_id: 29148

日付: 1984-06-20

院: 衆議院

会議名: 外務委員会