木宮和彦の発言 (文教委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○木宮参考人 私は、静岡の学校法人の理事長をやっておる者でございます。私の学校は、大学、短大、高校三つ、中学校二つ、小学校一つ、幼稚園二つ、計十校を私が経営し、責任を持ってやっておる者でございます。
今回、育英会の法律改正につきまして意見を述べろということで、特に私が考えていることを自由に述べて構わないというお話でございましたのでまかり出たようなわけでございますが、いろいろと子細には言えませんけれども、私は今回の法律改正には賛成をいたします。ただ、私の現場からあるいは現地からの声というものは国会にも反映されないだろうし、まだこれからの運営にむしろ法律改正以上に大事なことだろうと思いますので、私はその辺の実態を申し上げまして参考に資していただければ大変ありがたいと思います。
ただいまもお話がありましたが、教育につきましてはいろいろな観点でとらえることができると思いますけれども、教育をだれが受け、だれがする、まただれのためにするかという問題は非常に難しい問題だと思います。
昔はただ本人のため、言ってみれば出世のために教育を受けるのだ、素朴な意見でございますが受益者は本人であるというふうに位置づけられていたと思います。しかし、近年は必ずしもそうではなくて、総資本、社会すなわち国家が受益者であるという観念が非常に浸透してきたと思います。そのために私立学校への経常費の補助あるいはこの育英会の拡充ということが行われたのではないかと思います。私もその両方が今日の教育の受益者だと思います。国家も受益者であるし、また本人も受益者であると思います。そういう意味では、それを受けるために必要な経費は、本人が半分、国家あるいは自治体が半分受け持つのは当然だと思います。ただ、本人が持てといっても必ずしも全員が持てるわけではございませんので、やはり育英会というものがこれにかわるべく大いにバックアップしていく大切な役目を果たしていく、それがこの日本育英会の使命ではないかと私は思います。今回そういう意味で、特別と一般をやめて貸付金を有利子あるいは無利子というふうな二つの方向に行くということは、機会均等あるいは大勢の人がこの日本育英会の恩典を受けられるという意味で大変結構なことだ、私はそう思います。
まず、一つ実例だけを申し上げますが、ただ育英会にも、大学生の場合と高校生の場合は受け方が大分違います。高校生の場合ですと、育英会の支部から学校にわざわざキャンペーンに来てくださって、そして受け持ちの先生が、おい、だれか、おまえのところで日本育英会を受けてくれないかというようにして、むしろ掘り起こすのに大変苦労するような実態がございます。これはなぜか。これにはやはりいわゆる無利子で受けるということに対する親の抵抗、子供はいいと言うのですが、そのぐらいのものは親が見てやるから心配するなというような観念が親に非常に強いので、言ってみれば、お金を借りて学校へやるということは罪悪あるいは暗いイメージがあるというのが高校以下の場合の実態でございます。それにはどうしたら明るくなるかということをやはり我々は考えるべきだと思います。それから大学の場合には、これは公私立ございまして、国立の場合と私立の場合では大分事情が違うと私は思います。国立の場合には私立と違いまして、既に授業料でかなり恩典を受けているはずでございます。これは学生の方から言わせますと、授業料がうんと安いということは言ってみれば国家の負担が多いということでございますから、本人の負担が少ないということでございます。そういう意味で、私立学校にもっともっと優遇措置があってしかるべきだというふうに私は考えております。
今回、何といいますか、無利子を一本化しようということでございます。これはあくまで私の希望でございますが、奨学生というものにつきましては二本立てでお願いするのが私は一番いいと思います。一つは、やはり給費生的にもう無料でもやる。特にその子供に名誉的に、これから世の中のためにリーダーシップをとれる人、あるいは金銭的に非常に苦しい方にはやはりそれだけの待遇をしてやるべき中核を育てるのが、私は教育の場においても大事なことだと思います。それからそれ以外の場合には、貸与生の中には一種、二種があって結構でございますし、また有利子がたくさんあることについては、私は何も抵抗を感じておりません。むしろもっと自由に、いつでも、どこでも、だれでも、この日本育英会の貸与生になれる。言ってみれば所得制限なし、だれでも借りられるというふうにしていただきますと、大変明るくなると私は思うのです。
しかし、資金には限界がございますので、その辺の問題はともかくといたしまして、ただしかし、この際、育英会の方でも債券を発行して資金の調達をされるように今回の法改正でなっておりますが、私は大賛成でございまして、もっと積極的に民間資金の導入をやって、そしてまた返還につきましては、その事務を民間に委託するなりして、やはりもっと機能的に運営していただきたいと思います。そういうことが大事だと思います。それによって国家は税金を利子補給するということで、あまねく大勢の学生が育英資金を借りられるようになると私は思います。
それからもう一つ、現場として考えられますことは、私立学校の場合には一時金というものが入学当初にかなりの金額になりますので、この入学金その他の一時金がなくて大学入学を断念するというケースがなきにしもあらず、むしろ多いと思います。むしろ月々の費用はそれなりに自分で稼いで、アルバイトをやって稼いで何とかなるけれども、一時金の多額の金がどうにもならぬという現実がございますので、特に医科系の場合にはそうだと思いますので、できましたらこういうものを一時金的に育英資金が代替して、就職後それを長い間かかって返済するというような方策もぜひ考えていただきたい、かように思います。
いずれにいたしましても、現在の日本育英会の役割というものは非常に大きいと私は思います。ただ、先ほど来申し上げましたように、せっかく借りたくてもなかなか借りられないという実情がございます。
二、三例を申し上げますと、大学生の場合でございますが、母親が再婚いたしまして、そして養子縁組みをした。ところが、男の子でございますが、その再婚したおやじから金をもらうのを潔しとせず、青年にはそういう心情というものがございまして、再婚した親からもらうのはおれは嫌だと言い張って、絶対にもらわない。それじゃ学校の方で育英資金をもらうようにお願いしようということで実際に申し込んだところが、やはり養子縁組みをしておりますし、またその新しいお父さんの所得が非常に多いということで、所得制限にひっかかってもらえない。やむなくとうとう本人は退学していったという勇ましい青年もおります。これなんかも所得制限がなければ、あるいは自分が借りて、そして学校に立派に行く。親がかりといいますか、かえってそういうことを嫌う、自尊心が高い、大変優秀な青年でございましたが、私としてはこれは非常に残念に思いますが、制度上これはやむを得ないことでございまして、そういうことを何とかしていただければ大変ありがたいのじゃないかと思います。
それから高校生の場合ですと、急に倒産しておやじがいなくなってしまう。その場合、成績が中よりも悪い、しかし人間が非常にまじめである。ところが、親がいなかったりあるいは成績が悪かったりするために、せっかく高等学校三年生まで行っておりながら日本育英資金が必ずしも受けられない。成績がもう少しよければ該当するのですが、それがだめだという場合もあります。成績も大事でございますけれども、しかし私は、そういう意味で所得制限をなくして、たとえわずかな利子を取られてもそういう子供が日本育英会の一つの傘の中に入ってくるように応用していただくということが大事だろうと思います。 それからもう一つの例は、私立の高等学校に来る者は必ずしも優秀な子供ばかりではございません。ところが、高校一年に入って、そして中学の成績でもって申請いたしますので、中以下になっている場合があります。しかし、その高等学校では中よりちょっと上だと思って提出したところが、それはだめである。しかも、私立学校で高い月謝を払わなければならないのにそれが受けられないというような事態もございますので、私は、そういう意味でぜひひとつ日本育英資金も大胆に民間の資金を活用し、そして今後大いに膨らましていただきたい。むしろ今回の法改正は遅きに失したというような気がいたします。そういう意味で、現場なり社会なりのニーズに対応できるような運営ができる、そういう法律にぜひしていただきたい。それには今回の法改正がその第一歩だと私は思います。
これからの日本の教育というものは非常に大事でございまして、私が言うこともございませんが、アメリカにおきましても日本の教育というものは大変注目され、この間レーガンにも教育振興の委員会から、危機に立つ国家アメリカの教育改革の緊急課題があるということを答申しているように聞いております。日本がこれからますます健全な教育ができるためには、日本育英会が今よりももっともっと発展し、そして国立の学生さんも私立の学生さんも、あまねくすべての学生に明るく利用していただくことができる、そういうふうにぜひひとつお願いしたいというふうに考えております。
以上でございます。