中曽根康弘の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 林議員にお答えをいたします。
 その前に、今回のロンドン・サミット出席に際しまして、国民の皆様方からは多大の御支援をいただき、また野党の党首の皆様方からはいろいろ御見識あるお考えを拝聴させていただきまして、厚くお礼申し上げる次第でございます。一生懸命やったつもりでございますが、必ずしも御期待に沿い得なかったことを遺憾に存じます。
 以下、林議員の御質問に対しまして御答弁申し上げます。
 まず、民主主義の諸価値に関する宣言の経過並びに意義を述べよということでございます。
 この宣言ができまする理由は、恐らく、今回のサミットが十回目のサミットに当たりまして一つの節目である、自由世界の先進工業国が集まっておるという面から、自由と民主主義の価値を強調し、またこれをあくまで擁護していこうという決意を表明するという意味があったのではないかと思います。また、そのように思います。また、伝えるところによれば、サミットは六月七日から行われましたが、その前の日はDデー、ノルマンジー上陸作戦の記念の式がございまして、そういう意味において、ドイツやイタリーや日本の立場というものも考えた節があります。そういう面から、今我々がこれを享受し擁護している共通の課題である自由と民主主義の諸価値というものを相分かち合って、さらにたくましく推進していこうという決意の表明という意味もあったと思っております。
 この案文ができますに際しましては、民主主義諸価値という面がかなり強く出ておりましたけれども、我々は、民主主義諸価値と同時に平和が大事である、同じくらいに重要な価値を持っておる、そういう意味におきまして平和の問題を強く主張いたしまして、この声明の中に入れてもらった次第でございます。特に我々といたしましては、東西間の交渉、これは米ソの対話の促進のみならず、あるいはイラン・イラク戦争があり、あるいはカンボジア問題があり、至るところに紛争がくすぶっております。そういう意味において、全世界的規模において武力を行使せず話し合いによってこれを解決する、そういう面を強くこの中に取り入れていただいたのでございます。
 なおそのほか、発展途上国に対する配慮あるいは非同盟中立の国々に対する配慮等も十分行うべきであるという主張もいたしまして、それらの点も入れていただいたというところでございます。
 私は、この機会に、自由と民主主義の価値を改めて我々が確認し、これを全世界に向かって擁護する決意を新しく行ったことは甚だ意義がある、このように考えておる次第でございます。(拍手)
 次に、平和と核軍縮を求める国際世論を一層喚起すべきではないかという御質問でございますが、我が国は憲法に基づき、平和国家としての建前からも、世界に向かって軍縮及び対話による紛争の解決を一貫して主張してきているところであり、今回のロンドン・サミットにおきましても、東西関係と軍備管理に関する宣言におきまして同様の精神を重ねて強調してきたところでございます。
 特に、世界の平和、それは核軍縮を中心に今集中されている観がございます。そのためにも米ソが速やかに対話を回復して、INFあるいはSTARTの交渉を行って、全世界的な緊張を緩和して全世界の国民に安心を与えるような措置を講ずることが望ましいのであります。そういう意味から、我々はアメリカに対してもソ連に対しても同じように前提なしに速やかに交渉のテーブルに着くように強く要請し、また今後も努力してまいるつもりであります。(拍手)
 次に、経済宣言の意義及び成果に関する御質問でございますが、昨年のサミットに比べてことしのサミットは希望のある明るいサミットにぜひしたいという念願で出席をいたしました。世界経済は、昨年から比べますとかなり景気もアメリカを中心に回復しております。このような景気回復に弾みをつけて、その恩恵を発展途上国や債務累積国にまでできるだけ早く及ぼすということは我々の大きな責任でございます。
 そういう意味におきまして、諸般の問題について論議もいたしました。先ほど申し上げましたように発展途上国に対する配慮等も行いましたが、大事な点は債務累積国に対する我々の配慮でございます。これも宣言に盛られたところでございますが、債務累積国の自助的努力を前提としつつも、各国が国別にあるいは国際機関を通じまして、債務累積国の政治的、経済的立場を十分配慮しつつ、あとう限りの支援を行い、立ち直りを期する、そういう協調的態度を我々は決定した次第でございます。
 なおそのほか、いわゆるニューラウンドにつきましても強く主張いたしました。ややもすれば、世界経済は保護主義の誘惑に駆られます。そこで、保護主義に対する闘いというものは、ちょうど坂道を車を押して上っているようなものであって、ちょっとでも手を緩めれば、保護主義の方へ車は後戻りしてしまいます。そういう意味において、みんなで世界じゅうでこの自由経済、その車を押し上げる努力を常にしているということが必要なのでありまして、東京ラウンドももうあと二、三年で終わりに近づきます。そういう意味において、新しいラウンドの準備をできるだけ早くして、車を押し上げる努力を全世界的に行う必要を感じたわけであります。特に日本は自由貿易、自由経済を主張する国であるからであります。
 私は、昨年十一月、アメリカ大統領あるいはドイツのコール首相、カナダのトルドー首相が日本においでになりましたときに、このニューラウンドの必要性を強調いたしまして賛成を得たのであります。その後、発展途上国に対しましても、外交機関を通じまして我々の真意を理解していただくように全力を尽くしまして、インド、パキスタンに行ったときにも、それを強調してまいったのでございます。その上でサミットへ出席いたしまして、この新しいラウンドを早く確認して推進すべく努力をいたしました。アメリカ、カナダ等は日本と一緒になって非常に努力をしてくれたところです。でき得べくんば来年から準備を行い、再来年から正式の交渉に入る、そういう日限を入れたかったのでございます。しかし、ヨーロッパの側におきましてはかなり強い抵抗がありました。というのは、日本、アメリカの経済が非常にたくましく成長しているので、それに押しまくられてはかなわないという気分もあったのであります。特に日本の経済的実力については警戒心もあったようであります。
 そこで、余り力押しをやり過ぎるとかえって国際的孤立を招くという感もありまして、そういう意味でこのニューラウンドの必要性の確認、それからそれに取り組むための方法、それから目的、それからタイミングについて可及的速やかに決定を行うというところで妥協した次第でございます。今後も、この線に沿って我々は全力を注いでまいるつもりでございます。
 次に、高金利の問題について御質問がございました。
 高金利の問題につきましては、やはり議論が集中いたしました。我々も、貿易バランスの是正あるいは債務国に対する債務の増幅、こういう面からも高金利は望ましくない、できるだけ世界的に高金利を回避すべく努力すべきであるということも主張し、そのために大事なことは財政の赤字を縮減することである、そういう点において各国の意見は一致いたしまして、この高金利の是正等財政赤字の縮減に関する部分が声明に盛られることになったのでございます。
 その次に、経済政策の問題につきまして内需を中心にした経済政策を行うべきであるという御質問でございます。
 これは全く同感でございます。現在の財政の状況からしますると、財政が出動して景気を大いに振るい起こすという余地はございません。したがいまして内需中心のこの振興は、民間の力を中心に、ひとつ金融政策やそのほかの機動的運営により、物価の安定を基調にしつつ我々は振興してまいりたいと考えておる次第でございます。
 次に、技術開発及び産業構造調整の問題について御質問をいただきました。
 この点も、今回の経済問題につきまして非常に重要な点であったのであります。ヨーロッパの国々におきましては、まだ必要が非常に多い状況にございます。それで、過去十年間を見ますと、新規要員の就職というものはほとんど数量的に伸びておりません。ところが、アメリカは過去十年間に約千八百万、日本は三百八十万人の雇用がふえておるのであります。仕事がふえておるのであります。
 これはやはり産業調整がうまくいっておる、言いかえれば、新しい技術革新、新しい仕事をどんどん興しておる、あるいはエレクトロニクスであるとか、あるいはハイテクであるとか、あるいは流通産業であるとか、そういう面で雇用を非常に吸収してきておる、あるいは労使関係も非常にうまく協調が行われ、ロボットの導入等も行われ、それが新しい仕事をまた興しておる、そういう点を我々は大いに強調いたしまして、ヨーロッパの皆様方もアメリカや我々の話を聞きたがったのでございます。我々は、このような面におきましてはかの国からはやや進んでいると思いますが、さらに馬力を入れてこの構造調整に取り組んでいかなければならぬと思います。市場メカニズムを活用していくということ、経済的フロンティアを拡大していくということ、そして技術開発、それから民間活力の増大、そして国際社会との交流の増進、これらの面におきまして我々は構造調整を進めてまいりたいと思っております。
 次に、債務累積問題について御質問をいただきました。
 これらの債務累積国につきましては、政治的、経済的困難に配慮をしながら、債務国自身が所要の経済及び財政金融政策の変更を行うことを支援し、その状況に応じてケース・バイ・ケースに対処していく、こういう基本原則を決めた次第でございます。
 この具体策といたしましては、民間債務の多年度にわたる繰り延べを奨励する、今までは一年一年の繰り延べでございましたが、これを二年とか三年とかそういう多年度にわたる繰り延べを奨励する、IMFや世銀の役割を強化する、このことを検討する、あるいは直接投資を推進する、あるいは発展途上国に対して市場の一層の開放を先進国が行う、これらの点を具体的に決めた次第でございます。
 次に、ニューラウンドについて御質問をいただきましたが、これはただいま申し上げたとおりでございまして、我々といたしましては、できるだけ速かやにニューラウンドを進めるように、この一年間、来年に向かって全力を尽くして速かやに準備を開始し、交渉に入る努力を続けてまいりたいと思っております。
 次に、石油問題について御質問をいただきました。
 ロンドンの今回の会議におきましては、大体世界の先進国の石油保有量は相当量あってだぶついておる、したがって、いろいろな事態が起きても心配はないという点において認識は一致しております。我が国におきましても、石油の備蓄量は百二十三日を超えておりまして、戦後最大の備蓄量を持っておる状態でございます。しかし、それで安心してはいけない、この点は日本が特に強調いたしまして、引き続いていかなる事態にも応じ得るように各国が協調しつつ努力を進めていくという線を声明文の中に入れた次第でございます。今後、IEAあるいはそのほかの機関等も通じまして、協調行動をとるように努力してまいりたいと思っております。
 石油の安定供給につきましては、今後我々といたしましては、備蓄をさらにふやすということ、自主開発の推進あるいは供給源の多角化、あるいはIEAを通ずる国際協力の促進、あるいは石油産業の構造改善、これらにつきまして今後とも努力してまいりたいと思います。
 最後に、国際国家日本の使命について御質問がございました。
 私は、日本の使命といたしまして、平和の国、世界の平和を確保するために、我々は異常の努力を行うこと、さらにまた、経済先進国として発展途上国や貧困なる国々に対する十分なる配慮を行うということ、主としてこの二つの問題を中心にして、日本の世界的役割を自覚しつつ世界国家として前進してまいり、ひいては日本文化というものに対して世界の目を開いていただいて、そうして東西文化を融合し創造するという日本に前進していきたい、このように考えておる次第でございます。
 以上で答弁を終わりにいたします。(拍手)
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発言情報

speech_id: 110105254X03019840619_004

発言者: 中曽根康弘

speaker_id: 15356

日付: 1984-06-19

院: 衆議院

会議名: 本会議