上田稔の発言 (環境特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(上田稔君) このたび環境庁長官を仰せつかりました上田稔でございます。
 委員長を初め委員各位の御指導、御鞭撻のほどよろしくお願いを申し上げます。
 所信表明をさせていただきます。
 第百一回国会における参議院環境特別委員会の御審議に先立ち、環境政策に関する私の所信を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 我が国における環境保全への本格的な取り組みは、著しい公害と自然破壊とを防止するという緊急の対策を求める国民的要請のもとに始められました。
 以来、環境政策は着実な成果を上げてきましたが、環境問題の態様には幾つかの新しい局面も出てまいりました。
 環境汚染は、生産活動に起因するもののほか、消費、廃棄の過程にも広がり、また、大気、水、土壌あるいは生態系などを一体としてとらえる必要のある問題も生ずるなど、総合的な視点からの取り組みが求められるに至っております。
 また、この間、環境保全の考え方は拡充されてまいりました。
 環境は、人間にとって必要な資源を提供するなど活動の基盤であるとともに、その過程で生ずる汚濁物を浄化し、また生活に安らぎや潤いをもたらすなど、さまざまな恵みを与えてくれます。環境は、いわば生態系の微妙なバランスの上に成り立つ有限な資産であります。このバランスを保持しつつ、賢明、適切に利用し、その恵みを享受していくことは、私たちのみならず子孫にとって、物心両面にわたる安定した生活を確保するために必要不可欠であるという共通の認識が高まりつつあります。
 さらに、二十一世紀までを見通しますと、次のような視点が重要になります。
 経済成長率は低下しているとはいえ、現在の国民総生産の水準は、公害が大きな社会問題となった昭和四十年代半ばの二倍近くになり、さらに二十一世紀初頭には現在の二倍を超えると予測されております。今後、社会経済活動の量的拡大とともに、新技術の開発、化学物質の利用の増大等の質的変化も生じ、また、都市化が進行し、余暇の増大、人口の高齢化など社会の成熟化が進むと見込まれます。
 したがって、国土利用、交通体系、産業構造、エネルギー、廃棄物などを環境面から横断的にとらえ、環境への負荷に予見的に対応するとともに、自然との触れ合いの増進、安らぎや潤いのある快適な環境づくりに積極的に取り組むことが必要となります。
 また、今や環境問題は、一国の問題にとどまらず、地球的な規模の広がりを持つに至っております。他国の資源や環境に大きく依存している我が国にとって、地球環境の保全は、二十一世紀に向けての我が国の長期的な環境政策のあり方を考える上にも欠くことはできません。
 以上のような現状と展望に立って、私は、今後の環境政策の基本理念として環境保全型社会の形成を掲げております。
 すなわち、生産や消費など人間活動が環境にできるだけ負荷を与えないような仕組みをつくるとともに、環境保全への配慮が隅々まで行き渡った社会の形成を目指すことにより、環境がもたらすさまざまな恵みを長期にわたって享受できる条件を整備することが必要であると考えております。
 私としては、こうした基本的考え方に立ち、二十一世紀に向けて環境の保全と創造のための新たな指針となるべき環境保全長期構想の策定を推進するとともに、次のような事項に重点を置いて環境政策の積極的な展開を図る所存であります。
 第一に、環境影響評価法の制定等による環境汚染の未然防止の徹底であります。
 このことは、環境行政の根幹であり、環境影響評価法の早期制定は、現下の環境行政の最重要課題であります。このため、同法案を各方面の御理解を得つつ今国会に再提出し、早期に成立させていただけるよう全力を尽くす所存であります。
 また、生産活動や消費生活の過程で使用され、廃棄される各種の有害化学物質については、地下水汚染の問題を初めとして環境汚染のおそれが指摘されていることにかんがみ、国民生活の安心と安全の一層の確保のため、これによる汚染を未然に防止していくよう万全を期す所存であります。
 第二に、快適な環境づくりと地域の振興開発に際しての健全な環境利用の推進であります。
 安らぎや潤いのある快適な環境の実現を求める国民の要請にこたえ、また環境と調和した形で地域の振興開発が図られる必要があることにかんがみ、新たに五十九年度におきましては、快適環境整備事業及び環境利用ガイド事業を積極的に推進することとしております。
 第三に、自然環境の保全と緑化の推進であります。
 「緑の国勢調査」として第三回自然環境保全基礎調査を実施する等生態系に根差した体系的な自然環境の保全に努めるとともに、自然公園等の施設整備、「自然観察の森」の整備等を進め、自然との触れ合いの増進を図ります。
 また、緑化推進運動の一環として、「小鳥がさえずる森」づくりを進めるとともに、絶滅のおそれのある鳥獣の保護の強化等鳥獣保護対策の充実を図ります。
 第四に、健康と良好な生活環境の確保であります。
 水質保全の分野におきましては、特に湖沼の問題につきまして、湖沼水質保全特別措置法案を今国会へ再提出することとしておりますが、これと並行して、富栄養化防止対策として湖沼の窒素及び燐に係る排水基準の設定を急ぐなど、総合的な対策を講ずることとしております。
 また、大気保全の分野におきましては、各地で深刻な問題になっている交通公害につきまして、昨年の中央公害対策審議会答申を踏まえ、関係行政機関との連携のもとに総合的な交通公害対策を着実かつ計画的に推進してまいります。
 このほか、生活雑排水対策、瀬戸内海等における水質総量規制、窒素酸化物対策を初め各種の公害対策を総合的に推進します。
 第五に、公害健康被害者の救済対策であります。
 公害健康被害者の迅速かつ公正な保護に万全を期することは、環境行政の重要な責務であります。このため、公害健康被害補償制度の適正かつ円滑な実施を進めるとともに、水俣病認定業務の促進を図ってまいります。
 なお、公害健康被害補償法の第一種地域の指定及び解除の要件の明確化等今後のあり方に関しましては、我が国の大気汚染の態様の変化を踏まえ、昨年十一月中央公害対策審議会に対し諮問を行ったところであり、現在同審議会において審議が進められているところであります。
 第六に、地球的規模の環境保全であります。
 国連環境計画等国際機関を通じた国際協力を推進するほか、さきの国連総会で我が国の提唱により設置が決定されました国連環境特別委員会における長期的な環境戦略の策定に積極的に協力することとしております。
 以上、私の所信の一端を申し述べました。
 私は、環境保全の現況と展望を踏まえまして、環境庁に課せられた使命を果たすべく全力を尽くす決意であります。本委員会及び委員各位におかれましては、環境政策の一層の進展のため今後とも御支援、御協力を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 110114009X00219840323_003

発言者: 上田稔

speaker_id: 20988

日付: 1984-03-23

院: 参議院

会議名: 環境特別委員会