小野明の発言 (本会議)

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○小野明君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案、趣旨説明が行われました臨時教育審議会設置法案並びに対案として提案されました国民教育審議会設置法案に対し、中曽根総理並びに森文部大臣、また久保亘議員に質問を行います。
 中曽根総理肝いりの総理直属の臨教審構想が発表されて以来、多くの国民がその成り行きを不安と危惧の念を持って見守っておるのであります。さきに行財政改革に名をかりまして、国民生活に直接かかわります福祉、医療、文教予算に大なたを振るう一方で、防衛予算の大幅増額を行い、今度はいよいよ教育に手をつけることによりまして、総理が望む日本列島不沈空母化、すなわち軍事大国実現へと精神的総動員をかけるのではないかと危惧をいたしているわけであります。
 総理、あなたから言われるまでもなく、私たちも今日の我が国の教育の荒廃を心から憂慮いたしております。中学から、否、幼稚園や小学校段階で始まる有名校への受験勉強の過熱化、能力主義、学歴主義による選別と、画一化した教育の犠牲となっている多くの子供たち、そしてうっせきした子供たちが走る非行、暴力等々、まことに深刻な事態に立ち至っておるのであります。かような今日のゆゆしき教育の事態を一刻も早く打開し、子供たち一人一人がそれぞれの能力、適性を最大限に開花させ、人間性豊かな社会人に育っていくことは、親、教師、子供たち、すべての国民の強い願望と相なっております。
 したがって、このような国民の強い願望を現実化する教育改革は、まず親、教師、子供たちを主体といたします全国民的合意に基づき、慎重でかつ民主的な手続を経てその方針が形成され、実施へ移されることが絶対に必要であると思います。教育はいわゆる国家百年の大計であります。もしこの手続を誤った場合、到底国民のコンセンサスを得ることはできず、もしそのような改革を強行するならば、後世にその禍根を残すことにもなりかねません。まず、この教育改革の基本的認識について総理の御所見を伺います。
 本来、政策の転換は国会がすべきはずのものでありますが、今回、総理が提案されました総理直属の臨教審なるものは、これを忌避して議会を迂回する手法をとるものであり、重要な施策はすべて審議会が決め、そこで無理やりに自分の意思を通していこうとするものと言わなければなりません。このことは既に第二臨調で証明済みではないでしょうか。いやしくも国権の最高機関である国会を空洞化し、枢密院的ないま一つの国会をつくり、そこで決めた方針を金科玉条にして国会に押しつけようとするものでありまして、教育臨調を突破口に、かつて総理が言われたごとく、今後安保臨調などが次々に設置されるのではないかと危惧するものであります。このような国民の懸念に対し、総理はどのように説明なさるのでありましょうか、明確な御答弁をお聞かせいただきたいと存じます。
 今回、総理が提案されました臨時教育審議会なるものは、その設置目的、組織、役割等において、親、教師、子供たちが心から願っている教育改革、すなわち子供たちの本当の幸せな未来を願って構想されたものとは到底言い得ず、まことに思いつき的なものがあることを指摘したいと思います。さらに何よりも、今日の教育危機をもたらした原因の究明、特にこれまでの政府・自民党の教育政策に対する反省が全く欠如いたしておることであります。そこで総理は、今回の総理直属の臨教審設置法案を撤回し、教育改革についてはどのような組織で検討することが必要か、望ましいか、衆知を集めて検討し、出直すべきではありませんか。
 次に、なぜ私が本案に反対するのか、その主たる理由を申し述べ、総理の御所見を承りたいのであります。
 まず、今日まで国会審議における総理の臨教審に関する御発言は実に不明確であり、あいまいであり、一体何のためにかような審議会を新たに設けようとするのか、本審議会を設ける総理の真意は一体那辺にあるのか、疑わざるを得ないのであります。
 総理、巷間伝え聞くところによりますと、この秋に行われる自民党総裁選で再選されたいための実績づくりであるとか、また、これがあなたの本音であるかもしれませんが、あなたが青年政治家のころから叫び続けております憲法と教育基本法改正への布石だとも言われております。もし、あなたがそのような政治的思惑から、提言すれば不純な動機から今回の臨教審設置法案を提案し、今述べたようなあなたの本音を隠さんがため明確な答弁を避けているとすれば、これほど教育を冒涜し、国民を愚弄するものはなく、絶対に許されないことだと思うわけであります。総理、臨教審を設置する真意は何でありましょうか、しかと承りたいものであります。
 次に、臨教審法案の第一条に「教育基本法の精神にのっとり」、この文言を法案提出の間際に挿入されました。本当のところ、与党自民党の改憲強行論者たちと同じく、挿入したくなかったのではないでしょうか。この文言を入れた真の意図は何でありましょうか。また、あなたの考える「教育基本法の精神にのっとり」とは具体的にどういうことを意味するのか、率直に伺いたいと存じます。
 昭和三十年、「うれうべき教科書問題」による教科書批判にあなたは力を発揮されて以来、改憲論者として一貫して教育の保守反動化を強力に推進されたのであります。ここに至って突如変心した、いや変心せざるを得なかった理由は一体何でありましょうか。このような文言を入れることによって国民の目をくらまそうとする戦略なのではありませんか。明確に御答弁をいただきたい点であります。
 明らかでない点はまだまだあります。
 総理、あなたと森文部大臣との間で、この臨教審で何を審議してもらうか、そのことについて意見の相違があるように私には思えますが、いかが
でありましょうか。
 総理はこれまで、知、徳、体の順序を入れかえ徳、体、知と、徳を重視する教育の必要性や愛国心の育成を目指す運命共同社会論を、さらには昭和五十八年十二月には、今総理からお話がございました教育改革七つの構想でさまざまなことを発言をされておられます。そして臨教審構想が出された当初は総理の私的諮問機関、文化と教育に関する懇談会の報告と、これまでの中教審答申を土台にして臨教審に審議を願うと述べておられました。一方、森文部大臣は、何を審議してもらうかは臨教審委員の自由にお任せすると繰り返されております。そのうち総理のトーンも落ちてまいりまして、最近では、二十一世紀を担うにふさわしい青少年の教育、まことに空々漠々としたテーマを繰り返されるだけであります。
 しかし、少なくとも政府としては、この審議会に対し、何を、どのような方法、手続で審議することを期待しているかを国民の前に明らかにする責務があると存じます。この点について、総理、文部大臣の偽らざる所信を伺いたいと存じます。
 さらに、新しい審議会委員の人選について不審な点があります。
 総理、あなたは去る二月六日施政方針演説の中で、「この教育改革は、全国民の皆様の御支援のもとに、長期的かつ国民的すそ野をもって進められるべきものであります。」と、この審議会がいかにも民主的なものであるかの印象を国民に植えつけようとされました。しかし、本法案を見る限り、そのような幅広い国民的合意を取りつける手だては何一つ用意されておりません。委員も会長もすべて総理の任命であります。なぜこういう見え透いた詭弁を弄されるのでありましょうか。これでは国民的合意を取りつけるどころか、総理好みの経済人、官僚出身者、右翼的文化人から成る、まことに政治的中立から縁遠い極めて危険な審議会になることは明白であります。
 さらに、本法案の参議院審議はこの本会議から始まったのであります。法案通過も見えないうちに、早くも総理周辺や文部省を中心に委員の人選が潜行していると新聞に報道されております。社会党もなめられたものだと私は思いますが、事は社会党だけの問題ではない、参議院全体の問題であると私は考えます。参議院軽視も甚だしいものと言わなければなりません。総理並びに文部大臣、この事実を国民の前に明らかにしていただきたいところであります。
 また、衆議院において自民、公明、民社三党によって、委員の任命は国会同意事項とする修正が行われました。この修正について一応の評価はいたします。しかし、父母、教師を初めとする国民各界各層の代表を具体的にどのように選ぶのか、また、国会において各会派の意見をどのように反映させるのか、具体的内容が全く明らかではありません。これでは総理の恣意的人選を十分にチェックする保証はなく、この修正で到底安心するわけにはまいりません。
 さらに、この三党修正にはいま一つ、審議会の答申や意見を国会に報告するということがございます。この修正も一歩前進と評価はいたします。しかしながら、この修正でどのような効果が期待できるのか、果たして国民の意見を審議会に反映することになるのか、理解できないところであります。
 特に守秘義務が新たに挿入されたのは、久保議員も指摘しておりますように、審議会の密室性を高める点で問題があるように思われます。一体、教育に秘密があっていいものでありましょうか。重要なことは、従来までの密室審議方式を改め、思い切って公開制にすることではないかと思いますが、いかがでありましょうか。総理は、審議を公開とし国民の傍聴を許すと各委員の自由な発言ができなくなると反対のようでありますが、私は、公開にした方が、かえって委員は責任ある、多くの人に聞かれて恥ずかしくない意見を出すようになり、審議を実のあるものとすることができると考えます。さらに言えば、国民の前に公表されたら自分の意見が言えない、そのような人に国の教育改革を論ずる資格はないと言わなければなりません。総理、文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
 次に、いま一つ大変重要なことがあるのに明確になっていない点があります。それは、田沢議員の御指摘のように、教育改革を進めるのに必要な経費をどう確保するかという問題です。
 昭和四十六年の中教審答申を完全に実施するためには、当時で六十九兆円もの経費が必要になると試算されております。総理、あなたは昭和五十六年七月二十七日国策研究会で、文部省の中教審程度のスケールの小さい技術論による教育改革ではなく、教育体系の基本的あり方まで掘り下げるような教育大改革があってしかるべきだと思うと言われております。あなたの言われるようなスケールの大きい改革案を期待されている今回の臨教審ならば、この中教審の試算額ぐらいのものではないでしょう。お考えがあればお聞かせをいただきたいものです。
 このような教育改革を叫ぶ総理、あなたが、行政改革に防衛以外には聖域なしをスローガンに、現実には文教予算の削減をいたしております。このように教育条件をないがしろにし、管理的、画一的な教育行政を推進する政府・自民党の政策が、今日の教育の荒廃をもたらしている大きな原因の一つであることは否定できません。そのことを反省せずに、さらに行革審は九項目にわたる教育予算の削減を検討中とのことであります。
 総理、あなたは現実に必要な文教関係予算は削減しながら、一方ではスケールの大きい教育改革の必要性を訴えておるのです。あなたは御自分のなさっていること、言っておられることが矛盾だらけだとお考えになりませんか。これでは金のかからない教育改革をせよとおっしゃっておるのと違いがありません。金がかからないでスケールの大きい教育改革、すなわち教育基本法の改正、ひいては憲法改正の地ならしを臨教審にやらせようとお考えになっておられるのではないでしょうか。総理の明確な答弁を期待します。
 以上、述べてまいりましたが、今回提案されました臨教審設置法案には多くの問題点があり、賛成するわけにはまいりません。国家機構の再編強化を目的とする行政改革に次いで、国民意思の国家的統合を目指す教育改革を意図していることが明らかに見え見えてあります。我々は、戦前において内閣直属の教育関係の諸審議会が、我が国を軍国主義、全体主義へ駆り立てる上で先導的役割を果たした歴史の教訓をここで想起せざるを得ません。二度とこのような轍を踏むことがあってはなりません。
 最後に、ただいま臨教審法案の対案として、久保議員から国民教育審議会設置法案が提案、趣旨説明がございました。久保議員にお尋ねいたしますが、これの政府案との基本的な相違点、また修正点に対する御見解等をお聞かせいただきたいと存じます。
 以上で私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110115254X02219840713_012

発言者: 小野明

speaker_id: 28797

日付: 1984-07-13

院: 参議院

会議名: 本会議