小野功の発言 (社会労働委員会)
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○小野参考人 東京商工会議所の小野でございます。
この法律案につきまして私の意見の結論を最初に申し上げますと、私はこの法案に賛成でございまして、その速やかな成立を希望するものでございます。以下、賛成の理由を申し述べます。
第一は、法律と実態との間の著しい乖離は解消されなければならないと考えるからであります。この法律案の対象となっております事業は、実態としては既に広く存在し、社会的にも今や定着しております。しかも今日までこれらの事業が存在することによって生じてきた弊害というものはほとんどなかったのではないかと私は思うわけでございまして、むしろ雇用機会の拡大を初め社会、経済の各面で少なからぬ貢献をしていると思われますにもかかわらず、法律的にはその存在が極めてあいまいでありまして、極論すれば、実態はあるのに法的には存在しないという甚だ異常な事態となっておるのであります。したがいまして、今後これらの事業の健全な発展を促し、かつまたこれらの事業に既に従事しておられる非常に多くの労働者の保護と福祉を図るためにも、実態に即した法的整備が急務であるのではないかと考える次第でございます。
賛成理由の第二は、いわゆる労働者派遣事業が労働力の需要と供給の二つの面からそれぞれのニーズにこたえて発生し、かつ増加してきているのだという点でございます。すなわち、労働力需要サイドから見ますと、御高承のように産業構造の変化やサービス経済化の進展などによりまして企業の営業形態というものが大変多様化してきておりまして、これに伴いまた雇用形態も多様化せざるを得なくなってきておりますが、その中には、我が国の伝統的な雇用慣行とされてまいりましたいわゆる終身継続雇用、あるいはこれと裏腹の関係にございます集団一律管理といったものになじまないような業務がふえてまいっております。
例えば、企業がその情報処理システムを大きく変更しようというような必要が生じてきた場合などは、自社内の情報処理技術者のほかに一時的に大量の技術者を必要とするケースもございますし、ビルの管理や警備といった業務にいたしましても、その仕事の性格上一般の従業員が就業していない時間、例えば従業員が帰ってしまった夜間とか、そういう方々が出勤していない休日というものが主たる就業時間になるような場合も決して少なくございません。しかも、警備にいたしましてもあるいはビルメンテナンスにいたしましても、近年は各種の先端技術を使い、とりわけ情報処理機器を活用しながら作業するというケースが非常にふえてまいりまして、当然このためには高度な専門技術、専門知識を持った方たちの協力が必要になってきておるわけです。
もしもこうしたすべての事業を企業がいわゆる自己完結主義的に一貫して行おうということになりますと、その人事管理は極めて複雑化せざるを得ませんし、かつまた経営コストを著しく上昇させることにもなることは明らかであります。
さらにまた、御高承のように今日女子の職場進出が大変目覚ましく、既に全勤労者の三分の一を超えるところまで伸びてまいりましたが、これらの女子の勤労者のうちの六割を超える部分が既婚者でございます。ということは、必然的にこういう女子の従業員を雇用している企業にとりましては出産に伴う産前産後の休暇といったものは避けられないわけでございますし、また最近は、一部の企業で普及を見せつつある育児休業制度というものもございますが、こうした休業中の方にかわるいわば代替要員というものはぜひとも必要になってくるわけでございます。
こうした面からも、即戦力になり得るようないわゆるテンポラリーワーカーと申しましょうか、こういう方々、特に経理部門あるいはOA機器の操作といった面での熟練した臨時あるいは短期の雇用ということが強く求められておるわけでございます。
以上は需要サイドからの要因でございますが、他方供給サイドと申しましょうか、いわば労働者の側にも、近年はいわゆる専門職志向というものが大変強まってきておりまして、この方々にとりましては、常に専門的な技術を生かし、かつまた専門技術を絶えず磨き続ける、そういうことのできるような就労形態を望む傾向が徐々に強まってまいっておるわけでございます。
また、さきに述べましたように、既婚の女子労働者が非常に増加しておりますが、この方々は例えば家庭と仕事、仕事と育児あるいは自分の余暇時間といったようなものの両立を図っていくために自分の希望する日時等に合わせて働きたいという強い願望がございまして、特に過去にそれぞれ仕事をお持ちになっていらっしゃる方々、しかもそこで専門的な知識、技術を身につけられた方々にとりましては、これを生かせる場としていわゆる人材派遣会社といったものへの登録が極めて急速に普及しているようでございます。この点については後ほど宮川参考人などからもお話があろうかと思います。
さらにまたつけ加えるならば、御高承のように我が国は急速に高齢化社会に入りつつありまして、働く意思と能力を持っておる高齢者の方々に適職を与えるということが国家的な急務であろうと私は思うわけでございますが、派遣事業の中には、例えば決算期だけ働く退職経理マンとか新入社員教育だけを引き受ける企業の元教育担当者といった方々が既に派遣労働者として働いているケースもあるわけでございます。今後これがきちんとルール化されるならば、こういう高齢者の方々にとっても働く機会が大変ふえるであろうと私は思うわけでございます。
以上申しましたように、需要供給の両面からの必要にこたえて広がりを見せている労働者派遣事業というのは、こうした意味ではまさに新しい労働力の需給システムの一つではないかと私は考える次第でございます。
本法律案の成立、施行によって、これまで申し上げましたように新たな雇用機会の創出と企業経営の合理化といういわば一石二鳥の効果を期待いたしますがゆえに、私は本法律案に賛成する次第でございます。
なお、これに関連いたしまして、私は次の二点についての希望を申し上げたいと思います。
一つは、この法律案が成立いたしますと、その適用分野とか各種の規制措置の細部について中央職業安定審議会等において審議決定されることになると思います。その際、いわゆる悪貨が良貨を駆逐するということのないような一定のルールを設けることは当然必要だと思いますし、現に法案でも、特に派遣元に対しては各種の規制を講じることがうたわれております。そのことは当然必要だと思いますが、しかしながら、行き過ぎた規制によって民間の創意工夫や企業努力を圧殺してしまうことにならないよう十分な配慮をお願いしたいと思うわけでございます。
希望の第二は、現在労働大臣の許可による民営職業紹介事業がございますが、これらの職種の中には実質的には派遣事業に近いものもあるように私は思われます。この際、民間職業紹介事業につきましても労働者派遣事業との関連で十分な見直しをお願いしたいと思いますとともに、民営職業紹介事業にかかわる各種規制につきましても緩和を図られるように要望いたしたいと思う次第でございます。
甚だ簡単でございますが、以上で私の陳述を終えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)