小野明の発言 (本会議)

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○小野明君 私は、日本社会党を代表し、中曽根総理大臣の施政方針に対し、若干の質問を行うものであります。
 質問に先立ちまして、昨日起こりました長野県の悲惨なバス事故により亡くなられました二十五名の皆様の御冥福と、御遺族に対しまして心からの弔意を表したいと思うのであります。
 同時に、政府は、この事故原因の徹底的究明、さらに再発防止策な早急に本国会に報告されることを要求いたすものであります。
 さて、総理、あなたが政権の座につかれて二年二カ月に相なります。この間、あなたは、日本列島不沈空母論や三海峡封鎖発言などに見られるタカ派的姿勢を露骨に示し、それが批判を浴びるや、軌道修正したかのポーズを示して、今度は平和と軍縮を強調しました。強気で臨んだ総選挙に敗れると、新自由クラブと連立をして低姿勢の国会運営に変身しようとしました。また、自民党総裁選びの最終局面で激しい中曽根批判に見舞われると、浅学非才、不徳のいたすところと、謙虚宰相へとイメージチェンジを図ろうといたしております。このような変わり身の早さに対し、多くの国民は、あなたが進めてきた内政、外交に対し、一体総理の本音はどこにあるのかと疑いつつあります。
 先般の日米首脳会談におけるアメリカのスターウオーズ計画に賛意を表したことにも見られますように、依然として総理の政治姿勢は、戦後政治の総決算、すなわち、戦後の憲法体制をなし崩しに転換をし、改憲、軍事大国への道を目指しているのではないかと強い危惧の念を抱きつつあります。あなたの政治姿勢について明確な御見解を伺いたいのであります。
 総理、あなたは行管庁長官時代に第二臨調を設置し、総理に就任してから臨時教育審議会を設置しました。あなたは、これらの機関に対し、国会の代行機関として、政策転換の理念的役割を果たさせておりますが、このような政治手法は議会制民主主義に反し、国会を形骸化するものと言わざるを得ません。他方、あなたは、私的に平和問題研究会や文化と教育に関する懇談会などを設置し、行革、経済、外交、防衛、教育、文化といった我が国の基本政策について新しい枠組みづくりを進めてまいりました。総理は、幅広く各界の意見を聞くためと主張されておりますが、特定の数人の学者や経済人、文化人を繰り返し登用し、結果的に総理の思惑どおりの方向に政策を誘導する役割を担わせてきたのではありませんか。
 現に、平和問題研究会では、防衛予算のGNP一%枠について、これが国民にわかりやすい歯どめとして機能してきたとの意見があったにもかかわらず、少数意見は一切添付されず、それどころか、総理みずからが素案に朱を入れたとか、さらには側近から主要メンバーに対し、一%枠は撤廃し新しい歯どめは定性的なものにする方向でとの根回しがあったとさえ言われているのであります。やらないのは天気予報ぐらいのものと言われるほど、我が国の最重要政策について、審議会を設置し、総理の意図する結論を導き出し、それによって国民的合意という幻想を映し出そうとしているのではありませんか。
 戦後政治の総決算を、中曽根政治はその政治的手法として、審議会や私的諮問機関への諮問、答申を通じて政策展開の地ならしを進めることは、議会制民主主義を空洞化させる以外の何物でもないと言わざるを得ません。総理の御見解を承りたいのであります。
 政治倫理の問題は、大衆の目から見て、正邪曲直の価値判断で、誤りない政治が行われていると信頼されるか否かに尽きると私は思うのであります。しかるに、ロッキード事件以来の我が国政治は、党外の政治家が保守党政治を牛耳り、キングメーカーとして君臨し、数こそ力の論理で物事をねじ曲げる、これが排除されない限り政治倫理の確立はないと確信をいたします。しかるに、この勢力に乗って政権の座にいるあなたに、田中氏の影響力排除の総裁声明の実行ができますか。その設置が煮詰まってきた政治倫理審査会が、田中問題にふたをするためのものであってはならないと思います。この問題を審査の俎上にのせる約束ができますか、御答弁を願いたいところであります。
 次に、外交問題について伺います。
 最近、米ソ首脳の間で軍縮交渉の再開が合意され、東西間に対話の機運が高まってまいりました。核戦争三分前と言われる危機的現状の中で、被爆国である我が国国民はもとより、全世界の平和を願う人々が歓迎をいたしております。これは平和を希求する広範な国際世論がもたらした結果であると言わなければなりません。しかるに総理は、今回の日米会談で、口では平和と軍縮と言いながら、その実、レーガン大統領の力の政策を全面的に支持したことは矛盾のきわみであります。その端的な事実はSDI、いわゆるスターウオーズ計画の研究に理解を示したことであります。否、総理は、支持するというのが本音ではないでしょうか。
 SDI計画は、核軍拡を宇宙にまで拡大する危険きわまりないものであり、宇宙における軍備競争防止のための国連決議に違反することはだれの目にも明らかであります。研究が単なる研究にとどまらず、やがて実戦配備につながることは子供でもわかる軍拡の論理ではありませんか。にもかかわらず、防衛的なものであり、核廃絶のためであるというレーガン大統領の詭弁をうのみにしたことの責任は極めて重大であります。なぜ総理は宇宙の平和利用という我が国の基本方針に立って大統領を説得しなかったのでありましょうか。そのようなイニシアをとることこそ、非核、平和国家日本の総理大臣に課せられた使命ではありませんか。総理の御見解を伺います。
 一方、我が国においても、カールビンソンの横須賀寄港、トマホーク搭載艦の入港、日米共同計画の策定等によって非核三原則や専守防衛の枠組みが次々に破られているのであります。これらは平和憲法と国是を踏みにじり、西側の一員と称してレーガン戦略に加担しようとする中曽根外交の本質を示すものであり、断じて容認できるものではありません。直ちに憲法と国是を守る政策に立ち返るべきであります。あわせて御見解を伺いたいのであります。
 昨年来アメリカは環太平洋協力の構想を打ち出しておりますが、その背景には、この地域が対ソ戦略上重要な地域となったという軍事情勢に対する認識があることは否定できません。また、この地域をアメリカ経済の有望なマーケットにしようとする経済進出の意図も明らかであります。したがって、我が国がこの構想に同調することに対し、環太平洋諸国から、日米による太平洋支配に通ずるのではないか、環太平洋の平和と繁栄に逆行するのではないかとの強い疑念が出されております。我が国にとって真に必要な環太平洋協力とは、米ソの核戦略の対決の場となっているこの地域に非核地帯を設置するため、関係国とともに協力することではないでしょうか。その点、先般の大洋州訪問における総理の姿勢はまことに積極性を欠くものと言わざるを得ません。総りの御見解を伺います。
 さて、ソ連との外交を積極的に打開することは我が国外交の重要課題の一つであります。要は、アメリカの対ソ姿勢をうかがいながら行うのではなく、日ソ関係の進展が米ソ関係の改善をリードするくらいの意気込みで取り組むことであります。総理の決意のほどをお聞かせ願います。
 朝鮮半島では、とりわけ朝鮮民主主義人民共和国の柔軟な姿勢によって南北対話促進の機運が芽生えたにもかかわらず、米韓軍事演習の強行によってこの機運が損なわれようとしているのは甚だ遺憾であります。政府は、こうした南北対話を積極的に推進するとともに、朝鮮民主主義人民共和国に対する従来のような消極的態度を改め、貿易事務所の相互開設、常駐記者の交換等を手始めに具体的な関係改善措置をとるべきであります。総理の御見解を伺います。
 他方、韓国では、二月の総選挙に向け野党勢力が民主化を要求する中で、金泳三氏が自宅軟禁されるなど憂うべき状況にあります。また、近々帰国する金大中氏への韓国政府の対応が注目されますが、金大中氏事件が我が国に対する明らかな主権侵害であったにもかかわらず、あいまいな政治決着をつけた経緯にかんがみ、政府はせめて金大中氏の帰国後の自由を韓国政府に要求すべきではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
 言うまでもなく、経済協力は我が国平和外交の大きな柱でありますが、今回の日米会談で米国は、我が国の政府開発援助が世界の平和と安定にとって重要な地域に行われていると、その戦略援助的側面を高く評価し、さらに今後は日米両国が協調して援助を進める方向で合意したのであります。これは我が国の援助を米国の世界戦略に完全に組み込もうとするものであり、我々はこのような援助を認めることはできません。我が国は、あくまで人道的観点に立ち、アフリカ諸国の飢餓、開発途上国における農村と都市の二重の貧困などを打開するためにいわば平和的経済協力を進めるべきであります。総理の御所見をお聞かせ願います。
 次に、防衛問題についてお伺いします。
 総理は、就任以来、レーガン政権の対ソ戦略と呼応して、力の均衡による抑止を打ち出し、防衛力増強の姿勢を一貫してとってまいりました。この結果、防衛費は財政再建下にもかかわらず聖域扱いされ、来年度予算においても訪米の手土産として六・九%と突出をさせたのであります。たび重なる軍事偏重予算との指摘に対し、総理は、必要最小限の防衛費、国際情勢の変化、これを理由にその姿勢を改めようとしないのであります。昭和初期の我が国が、現在と同様に国際情勢の変化と必要最小限を理由に急速な軍拡を行ったことを想起するとき、いつか来た道を歩もうとしていることに強い危惧の念を抱かざるを得ないのであります。総理は、ことしを平和と軍縮の年にしたいと語りましたが、防衛費の突出と軍縮とはどこでどう結びつくのか、全く理解に苦しむところであります。これでは、幾ら軍縮を叫んでも、我が国国民はもとより、国際的にも信用されるはずはないではありませんか。
 また、防衛費は二兆三千億円余の後年度負担を抱えており、予算の三四%に当たる一兆一千億円が既存のツケの支払いに充てられることになっており、財政の硬直化をもたらしているではありませんか。総理が真に平和と軍縮を言われるなら、この悪循環を断ち切り、防衛費を削減し、世界の平和と安定、国民の福祉の向上に役立つ経費に充てるべきであると考えますが、いかがですか。
 そして、防衛費に政府みずからが歯どめをかけたGNP一%枠については昨日衆議院で御答弁がありましたが、人事院勧告はもちろん完全実施すべきものであります。そこで、装備費を削ってでも一%枠は守るべきだと思いますが、総理の明確な御答弁をいただきたいのであります。
 さらに、防衛計画の大綱見直しの問題についてであります。もともとこの大綱は、量的歯どめというよりも科学技術の進歩、周辺軍事情勢への対応といった兵器の質的向上をてこに最新兵器を追い求めるものであります。このような軍拡に拍車をかける大綱見直しは即時中止すべきであります。総理の御見解を伺います。
 次に、経済、財政問題について伺います。
 戦後最大の不況と言われた第二次石油危機の後遺症からようやく脱却し、昨年は景気が回復から拡大へと歩み始めた年でありました。しかし、その回復と拡大の中身は、政府の描いた最終消費と国内投資を中心とした成長にはほど遠く、専らアメリカの景気拡大に支えられた輸出依存型の成長そのものでありました。そのため、輸出比率の高い大企業はその収益は極めて良好である一方、輸出力の弱い中小企業は回復から拡大への波に乗り切れず、昨年の倒産件数は史上最高を記録したのであります。また、低い賃上げによる所得の伸び悩みはそのまま消費の長期停滞を招来し、内需拡大の足を引っ張っているのであります。総理は、こうした内外需の不均衡と国内経済のゆがみをどう認識され、どのような是正対策をとられてきたか。あわせて、六十年度の経済運営を内需型に転換すると言われますが、そのために本年度と違ったどんな政策を準備されたのか、伺いたいのであります。
 次に外需、とりわけ対米輸出依存度の高い我が国経済は、来年度も四百億ドルを上回る莫大な貿易黒字を計上しようとしております。逆にアメリカ経済は景気拡大とドル高によって巨額の貿易赤字に陥っており、両国の間に再び大きな通商摩擦の危険が広がっております。こうした両国間の状況を前に、さきの総理とレーガン大統領との会談では、懸案の通商問題を早期解決することで意見が一致したと報じられております。しかし、会談の内容を検討するとき、意見一致の宣伝とは逆に、我が国にとって解決策を見出しにくい難題を背負わされたものと言わざるを得ません。すなわち、これまで我が国がとってきた懸案を一括処理する総合対策方式では、もはやアメリカはもとより諸外国を納得させることはできず、今後は通信、衛星、ハイテク、自動車といった個別問題ごとに市場開放策を検討せざるを得なくなりているのではありませんか。にもかかわらず総理は、なぜ貿易不均衡の元凶であるアメリカの高金利政策や軍事優先の財政政策を改めるよう我が国の率直な意見を表明しなかったのか、理解に苦しむ点であります。
 さらに総理は、会談後の記者会見で、三月をめどに市場開放策の成案を得たいとも述べておられます。総理、これまで果たそうとして果たし得なかった市場開放策が、三月までという短期間でまとめ上げる自信がおありですか。これには与党首脳も難色を示しておられるようでありますが、個別案件の具体策決定が暗礁に乗り上げたとき、これを乗り切る覚悟がおありになるのかどうか、あわせて御答弁をいただきます。
 財政問題については、五十年代の我が国の財政運営は、その前半において増税による再建をもくろんで失敗し、後半は増税なしの歳出削減による再建を目指しました。しかし、税収の大幅な見込み違いからこれまた失敗に終わり、財政再建は空念仏に終わりました。中曽根内閣の歳出削減の手法は、財界主導の第二臨調を背景にした極めて削りやすいところから削るという弱者しわ寄せの削減方式であったと言わざるを得ません。政府の言う「削減に聖域なし」の言葉とは裏腹に、防衛予算は異常突出で優遇し、福祉、文教関係は制度をねじ曲げてまでも大幅削減を追っているではありませんか。総理、これでも削減に聖域を設けなかったと言い得るのでありましょうか。一体総理の言われる聖域とは何でしょうか、御説明をいただきたい点であります。
 政府は、さきの「展望と指針」において六十五年度赤字国債脱却をうたいましたが、既に五十九、六十両年度においては計画以下の赤字国債減額しかできておりません。そのため今後は毎年度赤字国債一兆一千四百六十億円の減額と数兆円の要調整額の削減をしていかなければなりません。六十年度は、国債費定率繰り入れの三年連続停止を初め、地方への負担転嫁、支出の後送り等の帳じり合わせで辛うじて収支を合わせたものの、もはやこの種の手品は通用するはずもなく、一般歳出の削減が一段と厳しくなることは火を見るより明らかであります。加えて、これまで歳出削減に大きく貢献したマイナスシーリング方式も三年目を迎えて、政府・与党内部から、もはや限界に来たとの主張が頻繁にされているではありませんか。今後一段と難しくなっていく歳出削減、四方八方から聞こえてくる削減反対の声の中で、総理はそれでも増税なしの財政再建と六十五年度赤字国債脱却を貫く決意があるのかどうか、また、その場合の具体的な再建手法をあわせてお答えいただきたいのであります。
 問題は、こうした歳出削減の限界の声とともに、政府・与党、あの財界までが最近増税を容認する発言を行っている点であります。トーゴーサンの不公平税制、金持ちと大企業優遇の不公平税制の是正をなおざりにしてきた政府は、こうした声をいいことに、大型増税導入の環境づくりを進めようとしているのではありませんか。総理、これではもはや政府は増税なしの財政再建を放棄したと国民の目には映ります。昨日、総理は衆議院で、一般消費税は導入しないと答弁されました。これは、大平内閣当時、国会で一般消費税創設禁止の決議がある以上当然であります。この答弁は、現在まで各国で実施されてきた五つのタイプの大型間接税は導入しないという趣旨であるかどうか、明確にしていただきたいのであります。
 次に、教育問題について伺います。
 受験地獄、非行、暴力、偏差値教育に見られる現在の教育荒廃の克服は国民共通の願いであります。しかし、今行われている総理主導の教育改革、すなわち臨教審の審議には深く危惧の念を感じます。例えば、「教育の自由化」が主張されていますが、これは学校設立の自由化と称し、塾まで学校に認定せよというものでありまして、教育現場に自主性を与える真の教育の自由とはおよそ似て非なるものであり、教育に企業の論理を持ち込み、国や自治体が責任を持つ公教育の解体につながるものであります。
 私は、臨教審に対し疑念を持っております。もともと政権党の領袖が直属の機関によっての教育改革は、教育の中立、不偏不党の原則になじまないと確信するからであります。実際に委員や専門委員の顔ぶれは教育の専門家をほとんど欠き、中曽根ブレーンの登用など、総理好みの人選となっているではありませんか。これをどう説明されますか。
 また、教育は「国家百年の大計」と言われるように、教育政策の立案は断じて拙速であってはなりません。しかるに臨教審は、我が国教育が直面している諸問題について十分な基礎的、実証的な調査研究と基本的な検討を行うことなく答申づくりを進めようとしております。これでは国民合意の改革ではなく、総理の手による間接的な教育引き回しではありませんか。今、国民が強く望んでいることは、国民合意の制度改革であり、四十人学級の早期実現、過大規模校の解消、私学助成の充実等、行き届いた教育の実現であります。ところが、文教関係予算はわずかに〇・二%の増、しかもこれには人件費等の当然増が含まれており、実質はマイナス予算であります。ここに総理の言う教育改革の実態があります。総理は、金のかからないスケールの大きい改革を目指す、すなわち教育基本法改正の地ならしをねらっておられるのではないでしょうか。御所見を承ります。
 次に、高齢化社会への対応についてお尋ねいたします。
 今日の我が国は、世界に例を見ないスピードで高齢化社会を迎えており、これに対処する諸施策は緊急を要し、政府の責任は重大であります。今、緊急になさねばならないことは、老後を安心して過ごせる仕事と暮らしの場の保障であります。中曽根内閣は、老人のための社会施設を、「施設中心から地域中心へ」の宣伝文句で、家庭扶養と自助努力を強調し、他方で政府のやるべき施設の充実や介護者確保等、諸般の施策を手抜きしてはおりませんか。
 また、老後の所得保障としての年金について、食べられる年金はどこへやら、制度改革に名をかりて、雇用予測など成長要因を入れずに、支給額の切り下げと支給年齢の引き上げという改悪をねらっているではありませんか。我が党はかねてより、夫婦で十万円の基本年金など暮らせる年金制度への抜本改正と、その財源確保のため福祉税の創設を提示しております。総理は、国民生活の動向等を考慮に入れた年金保障と将来の水準引き上げにどのような構想をお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、国鉄問題について伺います。
 現在、国鉄は二十二兆円にも及ぶ長期債務を抱え、まさに破産の状態にあります。ところが、この危機の原因について、政府も自民党も、国鉄内部のみにあるかのごとき態度をとっていることは承知できません。赤字承知で、しかも巨額な建設資金は借金というやり方で新線建設を行ったり、景気浮揚策に国鉄を従属させ、設備投資を借金で行わせたツケが長期債務の半分以上を占めることは何を意味しますか。国民と関係労働者に大きな犠牲を強要しながら、今度こそはこれで再建すると国鉄関連法案を強行成立させてきた責任はだれが負うべきですか。こうした場当たり的な政治そのものが、国鉄経営をますます深刻にした事実を率直に認めるべきだと思います。
 そして今度は、経営再建と称して、国民の財産である国鉄を解体に導く分割民営を強行しようとすることは、真の国鉄再建につながらないと信じます。私は、ここで改めて政府が国鉄をこのような事態にまで追い込んだ責任を厳しく問うと同時に、総合交通政策を樹立、その中で公共交通として国鉄を存置すべきであると思いますが、総理の御所見を伺います。
 次に、女子差別撤廃について伺います。
 国連婦人の十年も最後の年となりました。婦人差別撤廃条約も既に六十二カ国が批准、大きな効力を発揮しております。総理も七月の世界会議までには批准すると公約されておりますが、そのためには国内において条約の理念が生かされ、その要請を満たす諸施策が実施されなければなりません。また、継続審議となっている男女雇用機会均等法は、大方の期待を裏切り、先進国の法律としてはまことに貧弱な内容と言わざるを得ません。平等実現のために制定される法律がかえって格差を拡大し、女性の労働権を奪うおそれさえあるものとなっていることは甚だ遺憾であります。政府は、参議院審議の段階において、女性の労働権を基本的人権として、保障、雇用のすべての分野における差別の禁止、救済の措置を明記した実効あるものとすべきであります。総理の御見解を承ります。
 さらに、基本的人権にかかわるいま一つの問題として部落差別問題があります。
 本年は同対審答申が出されて二十年に相なります。同和事業は一定の前進を示しておりますが、今なお教育や労働の面で深刻な事態があり、また差別事件が激発している現状にかんがみ、差別の実態を総合的に把握し、部落差別の根本的解決に向けた方向を明らかにする必要があります。総理の御決意のほどを承りたいのであります。
 最後に、中曽根内閣は発足後三年目を迎えております。しかし、党内基盤の脆弱さから、総理の専権事項である解散問題についてさえ、与党の首脳が、年内解散はないと繰り返し、増税のチャンスとまで発言をしておりまして、党高政低、あすなき中曽根政権とさえ言われております。政党政治である以上、与党が内閣に強い影響を持つのは当然ですが、党と内閣は相互に独立し、政府のチェックは議会を中心に進めるのが議会制民主主義の根本原理ではないでしょうか。
 私は、今尾崎行雄先生の「憲政の危機」の一文を想起するのであります。先生は、「議会は言論を闘わし、事実と道理の有無、正邪曲直の区別を明らかにし、もって国家民衆の福利を図るためにある。しかして、いかに多数でも、邪を転じて正となし、曲を変じて直となすことは許されず、議会政治の根本はこの一事にある」「しかるに、表決において多数さえ得ればそれで満足する向きがあるが、これでは議事堂にあらず表決堂に陥る」と、議会政治の真髄を説いておられます。
 総理、我が国政治の現状は、まさに尾崎先生が指摘されたとおりではないでしょうか。道理と正邪曲直が素直に国民に理解される政治、少数意見が尊重される議会制民主主義の政治の確立を強く総理に要求して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110215254X00519850129_005

発言者: 小野明

speaker_id: 28797

日付: 1985-01-29

院: 参議院

会議名: 本会議