藤原哲太郎の発言 (本会議)
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○藤原哲太郎君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております昭和六十一年度予算三案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。
現在、我が国経済は、三つの課題を抱えておるのであります。対外経済摩擦の解消、急速な円高による景気減速への対応、「増税なき財政再建」の達成の三つであります。近年の我が国の大幅な貿易黒字を背景とした対外経済摩擦の激化は、諸外国における保護主義の台頭となり、我が国の国際的孤立を導きかねないほど危機的な様相を呈しておるのであります。また、最近の急激な円高は、輸出関連を中心とする我が国産業に多大な影響をもたらし、景気を急速に悪化せしめておるのであります。さらに、このところの景気減速に伴い、税収の伸び悩みは「増税なき財政再建」の見通しにも、これまた今まで以上に暗い影を落としているのであります。このように、我が国経済の三つの課題は、いずれをとっても重要であり、かつ解決困難な深刻な問題であります。この三つの課題は、相互に密接に関連し合っているため、政策運営のいかんによっては、一つの政策目標の改善が他の政策目標の改善に支障を来すおそれがあるのであります。
私は、この三つの課題のすべてを解決するためには、内容の乏しい民間活力のみに依存した従来の経済運営を転換をしなければなりません。すなわち、我が民社党が主張しております、政府によりますこれまでのいわゆる縮小均衡型経済運営を改めて、速やかに拡大均衡型経済へと転換をせしめ、積極財政政策を推進することが必要であります。その政策転換によってこそ、急激な円高のもとにあっても景気が減速することなく、内需主導型の適正成長が実現し、輸入増と輸出減を通じて対外経済摩擦の解消が図られるとともに、大幅な税の自然増収の確保による「増税なき財政再建」の早期達成に明るい展望が開かれてくるのであります。
さて、我が党が本予算案に対し反対の第一の理由は、政府が本予算案において、大幅な所得減税、投資減税の見送り、赤字法人を含む法人課税の強化、一般会計公共事業費の抑制など、縮小均衡型経済運営をなおも踏襲していることは、我が党の到底容認できるところではありません。
反対する第二の理由は、国民の税に対する不公平感の解消と負担軽減並びに個人消費の拡大を図るために、早急に実施が求められていた所得減税の当初予算段階における実施を見送り、国民の期待を完全に裏切っていることであります。
現行の所得課税は、物価上昇に見合った減税が十分行われておらず、また、制度面、執行面において、給与所得者に対し相対的に過重な負担を強いておるという不公平な実態にあり、その速やかな解消が急務であるわけでございます。また、対外的な面からも国内的な面から見ましても緊急の課題となっております内需拡大のためには、何よりも内需の過半を占める個人消費を旺盛にすることが不可欠であり、大幅な所得減税の実施が急務であります。しかるに、政府が行財政改革の断行や不公平税制の是正を不十分にとどめたままに、財政難を理由として実施しなかったことは、到底容認できないのであります。今後とも我が党は、あくまでも六十一年度において、二分二乗方式の導入、課税最低限の引き上げ、税率構造の見直しによる二兆円以上の所得減税が実施されるよう、全力を傾注してまいる決意であることを強く申し上げておきたいと思います。(拍手)
反対の第三の理由は、政府・自民党が、来年度予算を起点として、税制全般にわたる抜本的見直しの名のもとに、大型間接税の導入などの大増税の準備を着々と進めていることであります。
これまで中曽根内閣は、臨調答申の求めた「増税なき財政再建」を最大の公約とし、「増税なき財政再建」は現内閣の生命線と公言されていたのであります。しかるに政府が、大型間接税の導入や貯蓄課税の強化などの増税について、これらは政府税調の検討課題であり、実施するか否かは答申を得た後の政策選択によるものとの見解を示し、なし崩し的に増税路線を突っ走ろうとしていることは容認できません。そればかりか、中曽根総理が、税制答申のうち、減税を春に、ということでございますが、春とは参議院選挙の前のことでございましょう。増税案を秋に回すというようなことによって増税色を薄め、国民の目を欺くようなやり方で国民に増税を強要しようとしていることは、言語道断であり、国民の名において許すことができないのであります。このような姿勢は、中曽根総理が就任以来掲げてまいられました、わかりやすい政治、国民に話しかける政治という国民への公約からいたしますると、まさに納得のできない事柄であるわけであります。
私は、国民に増税を求める以前に、なすべき課題が残されていると思うのであります。すなわち、行財政改革による歳出削減、経済政策の転換による税の自然増収の確保、現行税制の不公正是正等、政府の政策努力が極めて不十分である現状のもとで、制度自体にも大きな問題のある大型間接税の導入などの増税を強行することには、強く反対するものであります。
反対する第四の理由は、負担転嫁によらない補助金の統廃合、公務員定数削減による総人件費の抑制、地方出先機関の整理、不公正税制の是正などの行財政改革はいずれも不十分であります。
政府は、補助金について政策判断に基づく整理合理化を回避し、地方へのツケ回しによって一方的な削減を行っているのでありまして、このことは地方団体に対する負担転嫁であり、このような手法は、国、地方を通ずる財政秩序を乱し、国と地方との信頼関係を失うものとして極めて遺憾であります。また、政府が、来年度税制改正においても、所得捕捉の徹底のための抜本的な対策を講ぜず、キャピタルゲイン課税の適正化や貸倒引当金の見直しなどの不公正税制の是正に着手しないことは、国民の期待に反するものであります。また一方では、たばこ消費税の増税を十分な審議を経ないままに強行したことは極めて問題であり、取りやすいところから取るという一般的国民感情が残っておるわけであります。かつて行革の断行は現内閣の生命線とまで言われた中曽根総理が、今後この言に十分値する本格的な行財政改革に速やかに着手されるよう、強く要請いたします。
反対の第五の理由は、臨調答申の指摘に反して政府が、これからの財政再建をいかに進めていくかということについて、具体的な計画と対処方針を全く明らかにいたしておらない点であります。
大蔵省はさきに「財政の中期展望」を提出しましたが、これをもとに政府は今後、三兆円を上回るところの歳入不足が不可避であることを声高に叫ぶばかりで、その解消のための政府としての政策選択には全く言及していないのであります。このような政府の無責任な姿勢は、国民に将来に対する不安感、不透明感を与え、経済活動に対する意欲を喪失し、我が国経済の発展にも悪影響を及ぼすおそれがあるのであります。我が党は、財政再建や適正成長などの実現を図るため、今後のあるべき経済財政指標の目標値や、政府の政策選択を具体的に盛り込んだ中期経済財政計画を早急に策定するとともに、少なくとも当面「財政の中期展望」の主要別内訳などの基礎的資料を明らかにするよう、政府に対し強く求めるものであります。
反対する第六の理由は、社会保障の理念や展望を明らかにしないままに、老人保健法の改悪、一連の公共料金の引き上げなど、福祉、国民生活の後退を図るとともに、我が党の要求してまいりました大幅な住宅、教育、パートなどの政策減税を見送るなど、国民生活の安定、向上に反するものであります。
今や国民のニーズは、所得、医療、住宅などの基礎的なものにとどまらず、生きがい、ゆとりなど真の豊かさを求め、生活の質的向上を求めているのであります。このような現状を十分認識され、今後政府が、経済社会情勢の変化に十分対応した政策体系を確立し、活力ある高度福祉社会の建設に向けて確固たる哲学に立脚した福祉政策を推進し、もって国民生活の計画的向上を図るよう、強く求めるものであります。
反対する第七の理由は、臨調答申の指摘に反し、厚生年金等の国庫負担の一部繰り延べ、住宅・都市整備公団補給金の計上見送りなど、財政負担の先送りによる見せかけの歳出抑制を行っていることであります。
このような一時的な、いわば緊急避難的な措置は、財政体質改善の立場からも財政健全化の立場からも極めて問題があり、容認できないところであります。制度の根本的改革につながらず、実質的には赤字国債の発行に等しいこのようなごまかしは今後行わず、既往の措置は早急に解消すべきであります。
以上が反対の主な理由であります。
私は、最後に、与野党間で協議され、合意をされました所得税減税、政策減税の六十一年の実施、内需拡大のための適切な経済運営の推進、福祉、環境対策の充実については、誠意を持って忠実にその約束を履行するよう、政府・自民党に強く求め、私の民社党・国民連合を代表しての反対討論を終わります。(拍手)