小野明の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○小野明君 私は、日本社会党を代表し、中曽根総理並びに関係大臣に対し質問を行うものであります。
 我が国が無謀な侵略戦争に破れ、平和で民主的な社会の建設に廃墟の中から立ち上がってから四十年が経過いたしました。明治維新から言えば三つ目の四十年の節目であります。こうした歴史的転換点に立って今求められていることは、「戦後政治の総決算」と称して戦後改革の成果を否定し、経済大国から軍事大国への道を歩むのではなく、二十一世紀を前にして、進んで「宇宙船地球号」の平和と繁栄に寄与し、内には労働時間の短縮、社会資本の充実、安心して送れる老後など、生活の質を変える新たな福祉社会や文化の創造であり、あらゆる分野に国民一人一人が参加していく民主主義の発展であります。
 ところが、総理、あなたが事あるごとにうたいとげた「戦後政治の総決算」とは一体何であったでしょうか。政権を担当されて三年と二カ月、総理の言う「戦後政治の総決算」とは、司法のオーバーラン発言に見られる憲法体制のなし崩し、靖国神社の公式参拝、総理主導の教育臨調、そして防衛予算一%枠見直し、危険な軍拡であり、いわゆる新国家主義の路線ではありませんか。国民の一見高い支持率は、あなたのタカ派的地金をオブラートで包んだマイルド中曽根の演出的技巧と、遠くから見ればよく見える、中曽根厚化粧に起因するものであって、国民の多くは危険な戦後政治の総決算に共鳴したものではないと思います。
 総理、あなたは、この総決算路線を進めるために各種諮問機関の巧妙な多用を行ってまいりました。私は昨年、通常国会の冒頭において、諮問機関の多用やあるいはそれによって国会や政党の機能を代替させることは議会制民主主義を空洞化させるものだと厳しく指摘をいたしました。総理は、国民の意見を反映させるためなどの詭弁を弄されましたが、靖国懇に象徴されるように、国会バイパスというあなたの戦術は、靖国公式参拝では中国を初めとする諸国から強い批判の声が上がり、国際的にも深刻な影響を与えているではありませんか。あなたはこのことに対しどうお考えなのかお尋ねをいたします。同時に、これら近隣諸国の声に対しどう感じておられるか伺います。
 こうしたあなたの政治手法は、総理の指導力を最大限に発揮するトップダウン方式であります。総理の考えに沿って、危機管理に名をかり、内閣の調整機能の強化が図られようとしております。あなたのブレーンの一人は、「ねらいは単なる行革ではなくて国家改造だ」と述べておられますが、このことは、現在の政治形態を変え、憲法をなし崩しに変えるものと言わなければなりません。さらに、内閣の機能強化に関連して、国防と緊急事態への危機管理を構想しております。しかし、この二つの事柄は明確に分離さるべきであります。国家公安委員長、官房長官を加えることにより、危機管理の名において警察権力の強化をもくろみ、同時に、スパイ防止法の制定、有事法制の確定、民間防衛体制の整備等を着々と実施しようとするものではありませんか。このような危険な構想は放棄すべきであると考えますが、御見解をいただきたいのであります。
 次に、外交、防衛問題について伺います。
 昨年秋、全世界注視の中で開かれた米ソ首脳会談は、東西間の対話の復活と新たなデタントへの道を開くものであり、さらに、このたびゴルバチョフ書記長が今世紀中の核廃絶に向けて具体的な時間表を提示したことは画期的であります。このゴルバチョフ提案に対する総理の御所見を伺いたいのであります。
 また、シェワルナゼ外相は、極東における核兵器の相互削減と廃絶を提唱いたしました。今や核兵器の廃絶は究極の目標から現実の日程となりつつあることを認識し、核抑止力に依存する政策から脱却を図るべきであります。このことを単に米ソ両国に任せるのではなく、我が国が積極的、主体的に努力すべきであります。また、現在、米ソ軍縮交渉の進展を阻害している最大の要因はSDIをめぐる問題であります。政府はSDIへの研究参加についてこれを拒否すべきであると思いますが、あわせて総理の御所見を伺います。
 今般、シェワルナゼ外相が来日し、八年ぶりに日ソ外相定期協議が再開され、対話の継続が合意されたことはまことに有意義であります。政府は今回の共同声明によって領土問題は一歩前進したと評価しておりますが、領土問題は解決済みであるとのソ連の態度が不変であったことも事実であります。領土問題の真の解決は両国間の友好信頼関係を確立していく中で図られるものだと存じます。この見地から長期経済協力協定なども真剣に検討すべきであります。日ソ関係を包括的にとらえるという総理及び外務大臣は、今後、対ソ外交をどのように進められようとしておるのか、その積極的な対応策はいかがなものでしょうか。
 朝鮮半島における南北対話がチームスピリット86の強行によって中断に至ったことはまことに遺憾であります。政府は、対話促進のための環境づくりに努力するというのなら、チームスピリットの中止を米韓両国に求めるとともに、朝鮮民主主義人民共和国との間で定期航空路の開設、同国との友好樹立に関する具体的措置を講じ、関係改善を図るべきであります。総理並びに外務大臣の御見解をいただきたいのであります。
 この五月、東京サミットが開かれますが、総理は、これまでのサミットでINFの欧州配備の断行を強硬に主張するなど、アメリカの対ソ戦略推進の旗振りをしてきたのは紛れもない事実であります。東西間の対話の継続と軍縮交渉の行方を世界が注視している現在、東京サミットに期待されるのは、西側陣営の結束を図って対ソ戦略を練ることではないと存じます。サミットに臨む総理の姿勢を伺います。
 日ソのみならず、アジアの緊張緩和につながる日ソ外相会議が行われていたさなか、それに逆行するかのように日米安保ハワイ協議が開かれました。アメリカ側は、大綱の枠内での我が国の防衛努力を評価しながらも、米戦略の補完機能を一層強化するよう希望したと伝えられております。また、この二月早々、レーガン大統領が昨年夏の上下両院決議に基づいて日本の防衛努力について議会に報告するとのことですが、貿易摩擦との関連もこれあり、議会の反応が懸念されます。こうした動きは、アメリカが総理の不沈空母、三海峡封鎖発言などを一種の公約と受け取っているためと判断されます。私は総理の責任を厳しく追及するものであります。総理は、くだんの不沈空母発言からもうかがえるように、海空重視の新中期防衛力整備計画を決定しましたが、ここで改めて海空重視論の真意を伺いたいのであります。
 新計画がP3C百機、護衛艦六十二隻体制という世界有数の海軍力を持ち、また、F15戦闘機、新高性能対地攻撃機、空中給油機等の整備を目指して日米共同作戦計画を進展させようとしていることは、政府みずから専守防衛の理念すら否定するものであって、断じて容認できないところであります。新中期防衛計画第一年度の昭和六十一年度防衛予算の対GNP比は、六十年度のそれより一見低くなっておりますが、実質は給与改定費一%分を除いたまやかしのものであり、対前年比は六十年度を上回る突出ぶりで、一%とのすき間も約九十億円のみとなっております。総理は六十一年度決算ベースにおいても一%枠を堅持すべきでありますが、総理の御決意を伺いたいのであります。
 次に、経済、財政問題について伺います。
 六十一年度の我が国経済を取り巻く環境はまことに厳しいものがあります。国内的には、昨年夏ごろからの景気の変調に伴う経済活動の鈍化に加え、九月末のG5決定を受けて、この協調介入による円高不況の追い打ち、そして国際的には貿易黒字の縮小を図る等、課題は山積しております。昭和六十一年度の中曽根内閣の経済、財政運営はこの要請にこたえているでしょうか。答えは否であります。内外の期待に反する政策がとられようとしている一番の原因は、総理の経済、財政に対する認識が間違っているからではありませんか。
 昭和五十八年春から六十年夏ごろまでは、景気が回復、上昇、拡大期を走ってまいりました。そのとき、財政が緊縮型に運営されることは一つの方法であったかもしれません。しかし、さま変わりの経済が予想される来年度も節約一本やりしか考えないのでは、経済は生き物であることすら忘れられていると言わなければなりません。来年度もこの方法を踏襲することは、総理の主張する財政再建期間中の経済成長も財政再建も不可能ではありませんか。総理及び大蔵大臣の御見解を求めます。
 六十一年度の内外の経済の要請にこたえるには、何と申しましても内需の拡大であります。一つには、国際水準から見て問題にならない低水準に置かれてきた生活基盤重視の社会資本整備に国が重点的に金を使うことであります。二つには、GNPの六〇%を占める個人消費支出の拡大が絶対に必要であります。昨年十二月の国民生活白書及び消費実態調査は、個人消費支出の伸び率鈍化を指摘し、その原因が税金と社会保険料等の負担強化及び住宅ローン負担にあることを指摘しております。この点で内需振興に大幅減税が必須の条件であることは、だれよりも政府が承知しているはずであります。六十一年度に所得税を中心とした減税をなぜ実施しないのでしょうか。さらに総理は、昨年この席で大幅減税を公約されたことをよもやお忘れではないと思います。我が党は、六十一年度に総額二兆三千億円の減税を行うべきだという主張を明らかにしておりますが、責任ある答弁を求めるものであります。
 この二つの政策を欠いて民活の笛を吹いても、決して効果は上がりません。また、六十一年度政府経済見通しで実質四%の成長を見込んでおりますが、以上の措置を行わずに本当に四%達成の自信がおありになりますか。可能だと胸を張られるなら、その根拠を明らかにしていただきたいのであります。
 続いて、財政問題ですが、総理就任以来、あなたが最大の政治課題と主張してきた昭和六十五年度赤字国債脱却は不可能になったのではありませんか。六十一年度には一兆一千五百億円の減額が必要なのにわずか四千八百四十億円にとどまり、六十年は当初予算の削減額七千二百五十億円が補正で三千二百億円しかできなくなりました。六十二年度以降、毎年度一兆三千五百億円の赤字国債減額が可能ですか。もし不可能としたならば、この責任はだれがおとりになるのでしょうか。
 また、総理は、「増税なき財政再建」を公約されましたが、六十一年度は減税四百二十億円に対し、増税三千四百十億円と相なっております。さらに総理は、五十九年度一千五百七十億円、六十年度三千百六十億円と連続増税を繰り返しております。これを選択的増税などとごまかしてはなりません。公約をほごにした責任を明確にするよう強く求めるものであります。
 次に、国鉄の問題について伺います。
 国鉄再建のための重要課題は、一つには雇用の確保、そして財政の措置、さらに住民の足をいかに安全便利に拡充していくかということであります。しかるに、再建監理委員会は、一部の人々が秘密裏に審議を進め、独断的な分割・民営化の答申を行い、重要課題について必要かつ十分な指標さえ明らかにせず、国会の審議を待たずに国の方針が決まったかのような独断専行の振る舞いをいたしております。こうした議会無視の行為はまことに遺憾であり、許すべからざることであります。一歩誤ると国鉄解体となり、利権争奪の場にもなりかねないと考える国民は多数おられると思います。この数十日の間に、国鉄の分割・民営化に反対するという三千数百万名にも及ぶ署名が寄せられ、今後ますます増加していく情勢にあります。これをどうごらんになりますか。膨大な赤字の財政処理についても、また国民の足をいかに確保していくかということについても、国民全体の心からの納得と理解が必要なのであります。
 また、重要課題である雇用の確保については、働く人たちの十分な納得と積極的な協力とが必須条件であり、その多数を組織している中心組合を排除してなし得るものではありません。さきの日本航空の大事に対して政府が過剰介入したことは問題でありますが、その日航の副会長になられた伊藤さんが、旧来の組合分割の方針を誤りとして、すべての働く人たちの一体化を図っている点を見習うべきであります。
 総理並びに運輸大臣、ここであのむちゃくちゃな分割・民営の答申を離れて、国鉄の再建をどうするのか、国民の前に真摯に語っていただきたいのであります。まず前提として、雇用の確保をどうするのか、政府責任とも言うべき財政の処理をどうするか、そうして国民の足である公共交通たる国鉄の便益をどう拡充していくのか、責任ある答弁を求めるものであります。
 総理、先日もいじめを苦にして高校生が自殺をいたしました。いじめられたくらいでどうして死ぬのか、大人社会では理解に苦しむと言うことは簡単であります。しかし、それくらいに、青少年を取り巻く状況は、一人一人の人格と個性を大切にし、尊重し合うこととは正反対のものであると存じます。
 総理は、「戦後政治の総決算」の一環として、戦後教育の見直し、教育改革を主張しておられます。しかし、国民が総理に求めたものの一つは、教育の荒廃をなくしてほしいということであります。なぜ教育の荒廃、とりわけいじめのような陰湿な問題が社会問題になっているのでしょうか。それは決して学校だけの責任ではないと存じます。教育基本法を無視し、経済成長と企業の発展、金万能主義を横行させ、これに役立つ人づくりを自民党政治は教育や社会に求めたからではないでしょうか。自分だけがよければよいという社会風潮の中で、子供だけが伸び伸びと個性豊かにはぐくまれることはあり得ません。
 総理、あなたは、我々の強い危惧を押し切って直属の臨時教育審議会を発足させました。しかし、総理府の調査によっても、臨教審の教育改革に寄せる期待は大幅にダウンしております。それは今日の教育荒廃の真の原因を示せない点にあると思うのであります。今日、臨教審はまるで海図なき航海を続ける船の姿になっているではありませんか。
 昨年六月の第一次答申は、目玉として中高一貫の六年制中等学校を別につくることを答申しています。しかし、これで教育の荒廃は救えますか。むしろ受験競争が低年齢化することは必至であります。今月二十二日に明らかにされました臨教審の審議経過の概要は、依然として父母、国民の切実な要求と疑問にこたえておりません。それどころか、教育が悪いのは教師にのみ責任があるかのような議論を展開していることは極めて遺憾であります。しかし私は、教師に全然責任がないと言っておるのではありません。対症療法ではなく、偏差値教育、点数序列主義の教育と、子供の自主性を押し殺す管理主義の教育の是正こそが今最も求められていると考えますが、総理及び文部大臣の御見解を求めます。
 次に、地方自治についてお尋ねいたします。
 現在、地方自治は二つの重大な危機に直面しております。
 第一は、国庫負担金削減問題です。政府は六十年度予算で当該年度限りの暫定措置として地方転嫁を提案しました。ところが、六十一年度予算案は、六十年度に倍する一兆一千七百億円を地方財政に転嫁し、しかもそれを今後三年間継続しようとしております。さらに、交付税や義務教育費国庫負担金の切り下げを恫喝の手段とし、高率補助金だけでなく、二分の一負担であった恩給費、共済追加費用負担金まで三分の一に削減しているではありませんか。総理は一年限りの暫定措置という参議院の決議に違反する責任をどうお感じになりますか。また、一兆円を超える地方への負担転嫁を三年間行うということについて、地方財政への影響とその穴埋めをどうするのか、明確な答弁を要求いたします。
 第二は、行政面で、地方行革大綱の押しつけによって、国と地方の信頼関係を大きく揺るがしていることであります。政府は、わずかな機関委任事務の整理と引きかえに、地方自治を根幹から否定しようとしていることは断じて許せません。それは職務執行命令訴訟制度の見直しによる国の代執行権の強化であります。自治体首長の罷免権をちらつかせて国の都合のよいように訴訟制度の骨抜きを図るこの地方自治法の改悪は、自治体の総反撃を受けているではありませんか。一体なぜこのような改悪を行わなければならないのか。一部には政府部内の縄張りと保身のためという声も聞かれますが、本末転倒も甚だしいと言わなければなりません。総理の御所見を承ります。
 総理は、口を開けば、食糧自給は重要な課題と言われますが、六十一年度予算を見る限りでは、突出する防衛費を下回る戦後最低の農林予算ではありませんか。貿易摩擦が激化し、農産物の輸入圧力が強まる中で、我が国農業を守り、国民の食糧を安定確保するためにいかなる見解をお持ちであるか、伺いたいのであります。
 次に、定数是正について伺います。
 議会は民意の鏡であります。しかし、この鏡がでこぼこになっていることは最高裁の判決を待つまでもないではありませんか。ところが総理は、定数是正について与党への指導力を発揮できず、その結果、解散権を縛られている腹いせに司法に対していわれなき中傷をするに至っては、言語道断、語るに落ちたと言わなければなりません。小選挙区制に通ずる二人区にこだわらず、我が党を初めとする野党共同の正論に耳を傾け、自民党を指導され、早急に定数是正を図るべきだと考えますが、総理・総裁としての御決意を伺いたいのであります。
 最後に、総理、今あなたは総裁三選への展望も見えない政局にいら立ちを覚え、天上天下唯我独尊、大義名分なき解散、同時選挙を考えておられるのではありませんか。あなたは戦後政治の総決算路線の仕上げを強調されていますが、むしろ決算すべきは中曽根政治ではありませんか。あなたは多くの戦友を戦争で失った四十年前に思いをはせ、平和で豊かな日本、そして世界の二十一世紀への明るい展望を切り開くため、残された任期を謙虚に果たされんことを期待して、私の質問を終わります。(拍手)
     —————・—————

発言情報

speech_id: 110415254X00319860130_002

発言者: 小野明

speaker_id: 28797

日付: 1986-01-30

院: 参議院

会議名: 本会議