上田稔の発言 (本会議)

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○上田稔君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、当面の内外の重要課題につきまして、総理ほか関係閣僚に対し若干の質問を行うものであります。
 本日は、浩宮徳仁親王殿下の本会議御傍聴をいただきまして、心より御歓迎申し上げます。私にとりまして、この上もない光栄に存じます。
 本年は天皇陛下御在位六十年の記念すべき年であり、天皇陛下の御長寿を心からお祝い申し上げるとともに、皇室の弥栄を祈念いたします。
 質問に先立ち、まず国内では、去る二十六日、新潟県能生町において発生した雪崩により、不幸にしてとうとい人命を失われました御遺族の方々及び被災者の皆様方に対し衷心より御冥福を祈り、お見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心からお祈りいたします。
 一方、アメリカでは、去る二十八日、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発により犠牲になられました乗組員並びにアメリカ国民に対し心から哀悼の意を表するとともに、これにくじけず、全人類のために勇気を持って一層宇宙開発の推進を図られたいと存じます。
 さて、中曽根総理、これまで三年有余に及ぶ総理の政治は、世界の日本として我が国を大きく飛躍せしめたのであり、また、行財政改革などを着実に進展させ、数々の実績を上げられましたことは、さすがに仕事師内閣として国民から高い支持を受けて、歓迎、評価されておられるのであり、まことに喜ばしき次第でございます。しかしながら、今日、我が国は、世界外交、安全保障、貿易摩擦、行財政改革、教育改革、高齢化対策など、内外ともに厳しい課題を抱えておりますが、今期国会は、これらに対処するとともに、議会制民主政治の根幹である衆議院議員の定数是正について合意を得、早急に法改正を行うべきことが要請されております。まず、これらの課題に取り組む決意をお伺い申し上げます。
 次に、外交問題について伺います。
 まず、米ソ関係であります。
 昨年十一月の米ソ首脳会談に引き続き、本年はゴルバチョフ書記長の訪米による第二回首脳会談が予定されておりますが、我が国としても、同会談が平和と軍縮実現の契機となるように側面的に米ソ両国に働きかけが必要と考えますが、いかがでございましょうか。
 御案内のように、昨年の米ソ首脳会談では、軍備管理、軍縮問題に関しては具体的な合意を得るに至らなかったものの、若干の考え方の一致が見られ、今後の米ソ両国の交渉に弾みを与えることが期待されました。その後、特に昨年十一月のアメリカの核兵器大幅削減案に対するソ連の対応が注目されておりましたが、去る十五日、ゴルバチョフ書記長は、二十一世紀に向けての核兵器全廃プログラム等を含む広範囲にわたる軍縮新提案を発表いたしております。
 なるほどこの提案は、核兵器の全廃という思い切った目標を掲げてはいるものの、多くの点でこれまでのソ連の立場と変わっておらないようでありまして、依然として種々の問題点を含んでおるのであります。特に、中距離核戦力の分野で欧州にのみ重点が置かれておりまして、アジアは二の次にされておりますことは我が国として容認しがたいところであります。このゴルバチョフ新軍縮提案を政府はどのように受けとめておられるのか、総理の見解をお伺いいたします。
 こうしたソ連の新提案はありましても、現実にソ連は空前の軍備増強を極東、北方領土を中心に行っております。さきにハワイにおける日米安全保障事務レベル協議においては、極東の軍事情勢についてソ連の脅威を認識したとのことでありますが、説明を承りたいと存じます。
 私は、最近における軍備管理、軍縮に関する東西の対話を歓迎し、進展を期待いたしておりますが、先行きは甘くないと思います。なぜなら、ソ連は七〇年代のデタント期に大幅に戦略核兵器を増強し、世界的に優位に立った経緯があるがゆえに、そのソ連の意図する世界戦略が忘れられないからであります。我が国の安全保障は、国際軍事情勢を的確に踏まえ、西側の一員として、国力、国情に応じ適切な規模の自衛力を整備し、質の高い防衛体制を目指すべきであります。これがあって初めて日米安保体制の効果的な運用が図れるものと信ずるのでありますが、総理の所見を承りたいと存じます。
 さて、外交問題の最大の課題であります北方領土返還を含む日ソ関係が、ソ連のシェワルナゼ外相の来日によって八年ぶりに日ソ外相間定期協議が再開し、共同コミュニケが発表され、ここに両国関係は新しい段階に入りました。ここに至るまでの総理、外務大臣を中心とした関係各位のこれまでの御尽力に深く敬意を表するものであります。
 領土問題については、一九五六年の日ソ国交正常化以来、我が国は四島一括返還であるのに対し、ソ連の主張は、当初の二島返還主張から解決済みへ、さらには七三年の未解決の諸問題に領土問題も含まれていると言い、最近は、領土問題は存在しないと、このようにかたくなな態度に終始していたのでありますが、今回ソ連が日ソ両国の改善へ向けて十三年ぶりに再出発に応じたのは、一体背景に何があるのでしょうか。ソ連の変化は何を意味するのでしょうか。政府はこれをどう受けとめ、今回の交渉結果をどう評価しておられるのですか、まず承っておきたいと存じます。
 そこで、今回の共同声明では、一九七三年の田中・ブレジネフ日ソ共同声明の原点に立ち返り、平和条約交渉を再開、継続し、その交渉の中で領土問題を話し合っていくことで日ソ間の合意を見たとの日本側解釈であります。しかし、これに対しては、シェワルナゼ外相は日本記者クラブで、領土問題についてのソ連の法的、歴史的根拠は一切変わっていないと発言し、ソ連国営テレビも領土問題を再協議する根拠はないと報じておりますが、領土問題について外務大臣の見解を明確に示していただきたいと存じます。
 また、今回、シベリア開発を含む両国間の経済問題に関し、いかなる話し合いが行われたのか、お伺いいたします。
 とにかく、今後、日ソ両国は今回の外相会議を契機として実質的進展が図られるものと思われます。しかしながら、領土問題は国家にとって基本的問題であり、我が民族の悲願でありますので、何とぞ毅然たる態度で、長期的視野と知恵と粘りで交渉を継続していただきたいと存じます。以上について総理及び外務大臣の所見を求めます。
 次に、サミットについてでありますが、この五月にはいよいよ東京で主要国首脳会議が開催をされます。今日、世界経済の相互依存関係が高まっている中で、主要国が一堂に会して世界経済の抱える諸問題について一致した協調行動をとることになれば、世界経済の活性化にとって大いに役立つものと存じます。我が国はあくまでもアジア・太平洋の一員であること、また、我が国の存立そのものが自由貿易体制の中にのみあることを十分に踏まえていただいて、今日の貿易不均衡問題是正のための対策や累積債務問題などに率先して協力する必要があろうかと存じます。議長国としてこのサミットに臨む決意を総理にお伺いをいたします。
 関連して、この際、サミット開催地について伺います。私は、常に東京で開催するのではなくて、将来は、日本の歴史、文化豊かなる地、または頭脳、技術の集積地等も当然その候補地として選定すべきものと考えますが、いかがでありましょうか、お伺いをいたします。
 次に、経済問題について伺います。
 まず、景気の見通しでありますが、輸出と設備投資を中心に拡大を続けてきた我が国経済は、昨年の夏を境に鈍化の兆しを見せ始めておるのであります。なかんずく、九月の急激な円高移行により、一段と先行きの不透明感を強めております。今まで景気を牽引してきた輸出は伸び悩み、民間設備投資は低下しておりますほか、家計の消費と住宅投資が思ったほど盛り上がりを見せておりません。景気は次第に下降線をたどっていると思われますが、景気の先行きに不安はないのか、政府の見解を伺います。
 次いで、昭和六十一年度政府経済見通しが実質成長率四%を見込んでいることに対し、民間の予測機関との比較や現状の景気動向から、目標達成に極めて厳しい批判がなされております。四%成長達成のため、政府がどのような政策を準備し、今後打ち出していくかが問題であります。そこで、今年度と比較し、総事業量を五%ふやした公共投資を経済に最も有効に働かせるために、思い切って来年度上期にその八割程度を集中発注し、当面危惧されている経済のデフレ現象を一掃すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 また、東京湾横断道路や明石海峡大橋の巨大プロジェクトは約十年以上の長期計画で想定されておりますが、工期の短縮を図ることを念頭に初年度の事業促進を図るべきだと思いますが、総理及び大蔵大臣より明確な答弁をお願いいたします。
 次に、財政問題であります。
 極めて厳しい状況にある我が国財政の対応力を回復するために、ここ数年、社会保障を中心に制度改革が実行され、高齢化社会に対応した適正な給付と負担の措置が講ぜられてまいりました。また、高度成長時代の水膨れした歳出も徹底して見直され、削減されました。財政改革は着実にその歩みを進めてきております。六十一年度では、昨年以来懸案であった補助金について、事務事業の見直しを行いながら補助率の総合的見直し等を行い、歳出の節減合理化に努めております。その結果、一般歳出は前年度比十二億円減少し、四年連続の減額となり、公債依存度は二〇・二%と、財政再建開始以来、最低の水準に改善されております。大蔵大臣の御苦労に対し、敬意を表するものであります。
 しかし、赤字公債の減額は前年度比四千八百四十億円の減額にとどまっております。六十五年度赤字公債脱却の目標達成には今後毎年一兆三千億円以上の削減をしなくてはなりませんが、政府は今後とも財政再建の目標を堅持されるかどうか。もし堅持されるとするなら、どのような手段で目標を実現されるのか、お伺いいたします。
 赤字公債の償還も、建設公債同様、一部を借換債の発行で賄う方式に変更された今日、私は、公債を区別する意味がなく、まして財政再建目標を六十五年度に固定するということに疑問を感じておるのであります。今後は公債全体を着実に減少させていく努力が無理のない財政再建策と信じますが。いかがでございましょうか。現時点で目標水準を無理に固定し、すべての政策を赤字公債脱却にこだわることは、逆に財政上も経済上もひずみをつくると思いますが、政府の率直な意見を期待するものであります。総理及び大蔵大臣の答弁をお願いいたします。
 続いて、財政再建のための税制改革について伺います。
 土光臨調による増税なき財政再建の提言は、現在の財政再建に大きな貢献をしたことは今さら申すまでもありませんし、それを実現した鈴木、中曽根二代の内閣の努力も高く評価されると思います。しかし、今日、大きく情勢が変化している中で同じ方策を続けていくことはいかがかと存じます。臨調答申自身、財政規模の圧縮については適度の経済成長を前提とする提言である旨述べられておりますし、経済がデフレ化する中で歳出削減に偏った財政再建を進めますと、逆に経済が縮小し、先細りが心配されるのであります。
 財政再建は、適度な経済成長の確保のもとに、歳出面の見直しに加え、歳入面の合理化があってこそ展望が開かれると思います。私は、党政調の副会長として二年度にわたり予算編成に参画させていただきましたが、従来、税制面の抜本改革が取り残されてきた嫌いがあると存ずるのであります。今日、新たな視点に立った政府の抜本的な税制改革に対する取り組み方を伺いますとともに、サラリーマンを中心とした減税についていかがお考えでしょうか、総理及び大蔵大臣の所見を求めたいのであります。
 次に、教育問題について伺います。
 臨時教育審議会は、昨年六月の第一次答申に引き続き、この二十二日には第二次答申の基礎となる第三回目の「審議経過の概要」を発表しております。その精力的な審議に基づく卓見に対して敬意を表するものであります。政府はこれまでの同審議会の答申及び審議経過の概要をどう受けとめ、教育改革を行う決意であるのか、お伺いいたします。
 御案内のとおり、明治以降今日までの我が国は、欧米先進工業国に急速に追いつくことを国家目標の一つとして、教育においてもその目標を実現するためのたゆみない努力を行ってまいりました。その結果、今日、その普及度と水準は特に初等中等教育において世界に誇り得るものとなっております。しかしながら、最近における家庭教育の低下や子供を取り巻く社会の急激な変化、さらには、いわゆる有名校への進学を求めての激しい入試競争は、子供の心身の健全な発達を妨げ、学力偏重の風潮を生んでおります。これでは、我が国の二十一世紀を託するに足る、創造力に富む、たくましい、思いやりのある青少年の育成ができるのか、まことに不安に思わざるを得ません。
 そこで、臨教審に改革のためのガイドラインを求め、政府に早急に着手していただきたい三つの課題を述べさせていただきます。
 その第一は、大学入試制度の改革についてであります。大学入学者の選抜については、瑣末な知識偏重のテストによる受験生の振り分けではなく、各大学が多様で個性的な入学者選抜を行うことにより、受験生がその個性、適性、能力を生かした進学が容易になるように選抜方法の改善を図ることは極めて肝要であります。この観点から、臨時教育審議会の第一次答申においても、新しいテストの創設等を提言しているほか、大学関係者の地道な改善努力を求めておるのであります。大学入学者選抜制度の社会への影響の大きさにかんがみ、関係者が英知を結集して、速やかに入試改善の実現が図られることを希望するものであります。
 第二は、教員の問題であります。「教育は人なり」と言われておりますように、教師に立派な人材を得ることは国の教育政策のかなめであります。初任者研修制度が検討されているのもかかるゆえんであろうと思うのであります。教職に真に適した人を選び、大事に育成していく制度を整えることが現下の急務であると考えておるのであります。
 第三は、道徳教育の強化であります。今の教育に最も欠けているのは、他人に対する思いやりの心ではないかと思います。最近の学校におけるいじめ、暴力の横行が何よりもそのことを物語っております。また、日本人としての自覚も足りないようであります。今日、我が国はかつてない豊かさの中にありますが、これからの課題は、いかにして心豊かな、たくましい、思いやりのある人間を育成するかではないでしょうか。学校における道徳教育を充実強化し、そのあり方を考え直す必要、今まさに大であります。
 これらについて総理及び文部大臣の所見を求めます。
 次に、国鉄改革問題について伺います。
 この国鉄の改革は行政改革の中でも最大の課題であります。年間二兆三千億円もの赤字を生み、二十五兆円にも及ぶ長期債務が累積する国鉄を抜本的に改革することは一刻の猶予も許せません。昨年七月提出されました国鉄再建監理委員会の分割・民営化の改革意見は、新事業体の経営責任と独立採算の維持を明確にするなど、苦心の中で練り上げられており、同委員会の御労苦に深く敬意を表するものであります。
 まず、政府はこの改革意見をどう受けとめておられるのか、国鉄改革の大胆な推進を実施していくための総理の決意を伺いますとともに、今後の具体的な対応策をどう講ずるか、運輸大臣の所見もあわせて承りたいのであります。
 現行の国鉄の経営形態において大幅赤字を出しているものが、単に形態を分割・民営化すれば一変して収支採算がいかにしてとれ得るようになるのか、国民の間には素朴な疑問があります。政府はこれをわかりやすく国民に説明することが、国鉄改革に対する国民の理解を得る上で必要であります。とりわけ地方においては、分割・民営化によって地方交通線の存続維持への心配や、北海道、四国、九州の三島の新事業体においては電化などの鉄道近代化投資を行っていけるのかどうか、地域開発の推進とも関連して心配されるのでありますが、いかがなるのでありましょうか。
 さて、国鉄改革を進めるには、長期債務の処理と余剰人員対策が最大の課題でありますことは申すまでもありません。長期債務の処理は一般会計の財源難が一方にありますが、これをどう進めていこうとされているのか。また、余剰人員対策については、目下、鋭意その推進に努力されているところでありますが、雇用吸収力の弱い地域については相当の困難も心配される状況にあります。この対応策をどう進めるお考えなのか、運輸大臣及び大蔵大臣の所見を承りたいと存じます。
 整備新幹線は、二十一世紀における我が国の基幹的交通機関としてぜひとも必要であることは疑いのないところであります。本格的着工は国鉄再建監理委員会の「意見」に基づき凍結されたままでありますが、過去の反省を踏まえて、早急に財源調達の基盤を確立し、新事業体の運営に支障のない条件をつくり上げて推進すべきであります。運輸大臣及び大蔵大臣の考え方を示されたいのであります。
 終わりに、我が自由民主党は、昨年十一月、立党三十周年を迎えました。特別宣言と政策綱領を採択し、新たな政治目標を掲げました。中曽根内閣がその先頭に立ってその目標達成に努め、国民のための健全な民主政治の確立を図られることを期待し、我々はそのもとに一致団結して日本国の発展と国会の権威高揚に全力を傾注することを誓い、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110415254X00319860130_012

発言者: 上田稔

speaker_id: 20988

日付: 1986-01-30

院: 参議院

会議名: 本会議