中曽根康弘の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 草野議員にお答えをいたします。
 まず、円高不況の原因でございますが、最近の景気状況を見ますと、内需と外需、製造業と非製造業の間に景気の二面性が出てまいっております。この原因はどういうところにあるかと言いますれば、基本的には、日本の輸出が膨大に上りまして、黒字の数字もかなり世界的に見ても大きなものになってまいりました。そういうような輸出超過というものが経済の基本条件にありまして、円が強くなってきたということであります。昨年の九月二十二日のG5によりまして、アメリカのドルが余りにも高過ぎる、そういう点で世界的な調整が行われまして、マルクあるいは円が経済の基礎条件に合うような方向で再調整を行ったところでございます。
 しかし、やはり為替相場という問題は自律的に流動していくべきものでありまして、その流動の結果、今日のような事態になったわけでございますが、我々に言わしめれば、余りにも急激に、しかも変動の幅が大き過ぎたという感を禁じ得なかったところでございます。そういう意味におきまして、経済の基礎条件を反映する適正な安定帯、安定相場というものに移行するように念願しておりました。そういうような考えに立ちまして、関係各方面とも協議もし努力もしてきておるというのが現状でありますが、先ほど申し上げましたように管理されたフロートシステム、そういうようなシステムでいくことがやはり賢明であり、長期的には経済の基礎条件に合致する方向で動いていくものと確信しておる次第でございます。
 次に、減税の実施の問題でございますが、十月十六日の与野党国対委員長会談における合意を踏まえまして、実務者会談が行われておりますが、この会談の推移を自民党総裁としても注意深く見守り、その結果は守ってまいりたいと考えておるところでございます。
 次に、補正予算による経済効果でございますが、今回は、景気の着実な拡大を図り、そのためにも、公共投資の拡大等を中心とする総合経済対策を決定して、事業規模三兆六千億に上る補正予算を決定いたしました。これによりまして相当量の事業量も出てまいりまして、景気を支え、拡大させていく機能を果たすものであると考えております。そのためにも、補正予算の早期成立を念願してやまないところであります。
 四%成長の問題でございますが、六十一年度の成長率については、まだ第一・四半期の実績が出たのみでありまして、現段階で確たることを申し上げることは極めて困難でございます。いずれにせよ、この補正予算を実施し、そのほかの金融政策を弾力的に運用する等も加えまして、四%にできる限り近づけるべく努力をし、四%の旗はおろさない考えでおります。
 次に、一般公共事業の追加の問題でございますが、今回の補正予算におきましては、六十一年度歳出千三百三十億円を追加するということによりまして、公共事業等についても配慮を示したところであり、事業費八千五百億円を確保し、災害復旧まで入れますと一兆四千億円を確保しておるところであり、これらの着実な実施によりまして景気を支え、拡大していくつもりでございます。
 積極財政への転換の御質問でございますが、やはり臨調路線を誠実に守ることは当面必要であると思っております。しかし、行革審の答申におきましても、臨時緊急の措置はこれを認めておるところでございまして、今後の予算編成等も通じまして景気の実態をよく見詰めつつ、着実な予算編成を実現してまいりたいと考えております。いずれにせよ、六十二年度の予算編成は今後行うべきことでございますが、事業量というものにつきましてはある程度確保しなければならない、こう考えております。
 地価対策でございますが、全国的には安定しております。しかし、東京都心部等で著しく上昇しているところがあります。それらにつきましては目下検討しておるところでございますが、やはり土地の供給促進を促すこと、土地取引の条件規制を強化すること等々を検討する必要があると考えております。国土利用計画法の改正についてはいろいろ問題もありまして、なお関係各省庁で検討しておる最中でございます。
 既往債務の金利の引き下げの問題については、本年六月、円高等内外の経済事情の急激な変化によって影響を受けている中小企業者に対して、政府系中小企業金融機関からの既往借入金の返済負担を軽減するため、元利返済資金の融資等に係る新たな制度を創設したところであります。去る九月の総合経済対策において、本制度の趣旨の徹底等を含む融資弾力化対策を決定いたしました。今後とも本制度の着実な実施を図って、中小企業金融の円滑化に努めるところであります。
 下請取引、官公需の問題につきましては、親企業によりまして下請中小企業に対する円高影響等が不当に転嫁されないように、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用を図るとともに、親企業に対する指導を強化してまいりたいと思います。中小企業に対する官公需の確保については、去る七月に、官公需の契約の目標を過去最高の三九・八%としたところでありまして、鋭意これが実施について努力しておるところであります。今後とも努力してまいるつもりであります。
 雇用対策につきましては、最近の景気動向、産業動向にかんがみまして、私らも心配をしておるところでございます。一週間前に労働大臣を呼びまして、各方面にどの程度の、また各地域別にどの程度の雇用問題が発生するか至急検討し、それに対する対策をあらかじめ講じておくように指示しておきました。昨日、通産大臣と労働大臣の間におきまして、ハイレベルにおけるこの雇用対策に対する協議機関をつくったところでございます。政府全体といたしましても、今後懸命に努力してまいるつもりでおります。
 老人保健法の問題につきましては、老人保健制度の中の保健事業については、健康手帳とかあるいは健康教育とか健康相談とか健康診断とか機能訓練とか、さまざまなことも行っておるところであり、今後とも努力してまいりたいと思っておるところであります。昭和六十二年度を初年度とする第二次五ヵ年計画を策定して、一層の推進を図ります。また、老人保健制度の改正は、人口の高齢化が急速に進む中で、長寿社会にふさわしい高齢者の保健医療制度を確立するためにぜひ必要なものでありまして、撤回する考えはありません。
 次に、減税先行論の問題でございますが、今回の税調答申では、昨年九月の私の諮問にこたえまして答申をいただいたわけであります。政府としては、この答申の趣旨を踏まえて、国民の選択の方向を十分酌み取り、政府、与党相談をして適切に対処していくつもりでありますが、いわゆる税収中立性の原則というものは、これは維持していく必要があると考えております。
 新型間接税については、私が選挙中申し上げた公約はこれを守る、そういう考えに立ちまして、党においていろいろ検討していただくというところでございます。
 次に、非課税貯蓄制度の見直しの問題等につきましても、多額の利子が課税ベースから外れて、いわゆる所得種類間の税負担の不公平をもたらしている現状にかんがみ、一部、老人、母子家庭等に対してはマル優や郵便貯金の非課税制度を維持しつつ、課税を行う方向で見直すことを先般の政府税調は答申してきております。この提言につきましては、慎重に検討してまいりたいと思います。
 年金課税の問題につきましては、公的年金を受給する老年者に対して、基本的には、現行程度の控除の水準を維持しつつ、税制度の整備合理化を図ることを提言しておりますが、この答申の趣旨を踏まえまして対処してまいりたいと考えております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

speech_id: 110705254X01119861031_016

発言者: 中曽根康弘

speaker_id: 15356

日付: 1986-10-31

院: 衆議院

会議名: 本会議