千葉景子の発言 (本会議)
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○千葉景子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、総理並びに関係各大臣に質問をさせていただきます。
まず、緊急の課題といたしまして、国民生活に大きな不安を投げかけている三原山噴火に伴う諸対策についてお伺いいたします。
大島住民の皆様の突然の困難への遭遇に対し、心から御同情申し上げるとともに、一日も早い平常な生活への復帰を念願するものです。
新聞の報道によれば、三原山の大噴火に相呼応するかのように、阿蘇山と桜島が活発に動き始め、桜島では巨大な噴石がホテルを直撃したとのことであります。これらを見るに、火山国である我が国では、地震対策とともに火山噴火の予知体制が確立されなければなりません。
そもそも、大自然の力を人間の力で抑えつけることはできません。しかし、少しでも早く予兆を知ることができれば、それに基づく事前の対策を講ずることができます。専門家の所見によれば、予知のための国家予算を現在の数倍にふやせば、そして予知に携わる人と観測点を数倍にすれば、予兆はつかめるとのことです。このたびの噴火では被害は最小限に食いとめることができましたが、国民の生命と財産を守る国の責任を考えるとき、火山対策はその緊急性が迫られているのではないでしょうか。
総理、国を守るということは武器を持つことではありません。緑あふるる自然を愛し、何よりも人の生命を大切にし、お互いの人権を尊重し、平和を求め続ける社会をつくることです。これにこたえて誠実に謙虚に政治を行う政府があって初めて愛国心も生まれようというものです。火山対策についての総理の国民にわかりやすい御答弁をお願いいたします。
次に、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係各大臣に御質問をいたします。
現在、我が国は急速に高齢社会の道を歩んでおります。平均寿命も伸長し、二十一世紀には人生八十年時代が定着するものと思われます。今、私たちに課されていることは、老後に不安のない生活ができるようにするため、いかなる施策を講ずべきかを真剣に検討することではないでしょうか。しかるに、計画性のない行財政改革が進行し、特にマイナスシーリングでの予算編成に見られる防衛関係費の突出が社会保障予算に深刻な影響を与えております。
ここ数年度の社会保障予算の編成は、老人医療の有料化、医療保険に見られる国庫負担の現役被用者に対する負担の転嫁、公的年金における給付水準の引き下げによる国庫負担減らし、各種の社会保険における国庫負担の繰り延べ、国庫補助率引き下げによる地方へのツケ回し等、全く長期的展望のないものであり、むしろ将来の社会保障予算の硬直化要因を積み重ねていると言わざるを得ません。社会保障予算について、現在のように一律削減の対象にし、しかも単年度主義による編成を行うことは、そもそもが無理であり、このような予算編成方法をとり続ける限り、次から次へと福祉の後退を余儀なくされてしまうのではないでしょうか。二十一世紀高齢社会に向けて増大する社会保障の財源をどのように確保していく考えでいるのか、この際、総理並びに関係大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
以下、具体的に改正案についてただしてまいりたいと思います。
まず指摘しなければならないのは、患者の医療費一部負担の強化の内容とその理由であります。
政府案は、通院の場合、現行の一月につき四百円を千円に、入院の場合、一日につき三百円を五百円にそれぞれ引き上げるというものであります。さらに、入院の場合については、負担は二カ月を限度としていましたが、今後は期限を取り払い、入院している限り負担させるというものです。したがって、一年間通して入院した場合、現行の十倍もの入院費を要することになります。そうでなくても、入院すれば、入院費用だけでなく差額ベッド代、付添看護料あるいはお世話料など、いわゆる保険外費用が患者の大きな負担となっているのが現実です。その額として、月々十万円以上払っている方が入院中の半数以上を占めるという報告もありますが、厚生省はこれらについて患者の側から情報を集め、調査する努力さえ怠っているのではありませんか。
多くの老人は、加齢に伴って所得が減少するか、限りなくゼロに近づく場合が多いのが現実です。収入の大半が公的な年金だけだという老人も少なくありません。したがって、治療費一部負担の制度自身が老人及び家族に及ぼす影響は極めて大きく、事実、老人保健法施行直後、老人の受診率が急激に低下したことは明白なところです。現在でも何らかの形で受診を抑制している場合が多いことを高齢者の方々からお伺いいたします。
衆議院でごくわずかの修正がなされたものの、結局はお年寄りの医療費負担をふやすだけの内容には変わりありません。国民の納得できる明確な御説明をお願いいたします。
次に、本改正案で問題としなければならないのは、サラリーマンをねらい撃ちにした実質増税案だということです。
患者負担分を除いた老人医療費財源のうち、七割に当たる各保険制度からの拠出金の算定方法の変更によって、サラリーマン各制度からの拠出分は、改正しない場合に比べて、六十二年度には実に四千三百億円もふえ、国庫負担は逆に三千九百億円も減るというものです。これを政府は負担の公平のためだと説明しています。負担の公平とは何でありましょうか。そもそも五十九年度に創設した退職者医療制度は、政府の見込みどおりの加入者を得られませんでしたが、政府はその見込み違いとなった数字を前提に五十九年度以降の国庫補助率を引き下げたため、国民健康保険財政に重大な影響を及ぼしていることは周知の事実です。この改正案は、事実上、政府の見込み違いをサラリーマンの保険で穴埋めさせるものにほかなりません。しかも、政府の見込み違いによる国民健康保険の財政影響を何で他の制度から補てんしなければならないのでしょうか。保険制度は、その保険集団の範囲に限って保険数理を組み立てるものであって、他の制度を支えることになれば、もはや保険とは性格を異にするものと言わざるを得ません。
また、政府は、この改正のねらいが国庫負担の削減にあるのではないとたびたび説明しておりますが、老人医療費に占める国庫負担割合は、六十年度の四二%から六十二年度には三五%へと七ポイントも引き下がるのに対し、被用者保険側の負担割合は三〇%から四〇%へと一〇ポイントも増大するのであります。これでも国庫負担の減額がねらいではないと言うのでしょうか。
この際、本改正の真のねらいは何なのか、退職者医療制度の見込み違いを他制度の拠出金で穴埋めすることの不合理性、保険制度に対する考え方、増税なき財政再建に反した隠れた増税であることなどについてどのように説明いただけるのか、政府の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
次に、いわゆる中間施設として老人保健施設を創設することについてであります。
寝たきり老人は現在でも全国で七十万人に達し、今後も高齢化に伴い、その数は確実に増加いたします。しかも、特別養護老人ホームの定員数は絶対的に不足しているため、家庭にとどまらざるを得ない場合が多く、その数二十五万人とも言われています。これは家庭における介護に深刻な
問題を招いています。そして、その際の介護者の約九割は女性であり、老人問題はイコール女性問題と言っても過言ではありません。女は母をみとり、夫をみとり、そしてその後みずからは孤独な晩年を迎えるという構造が、女性には三つの老後があると言われるゆえんです。さらに、介護者自身の高齢化により、介護そのものが困難な事態も生まれています。
したがって、お年寄りや家族にとって今何よりも必要とされていることは、公的な責任に基づく地域介護システムの整備だと私は思います。そのシステムは、身体の不自由なお年寄りが、できる限り今暮らしている住まいから離れずに療養し、介護を受けられるようにするものでなければなりません。すなわち、在宅者訪問サービスを基本とし、介護施設は少なくとも小学校区に一つというように小規模で身近なものでなければなりません。
しかし、このたび政府から提案された内容は、老人病院に比べて医師の数は三分の一、看護婦は二分の一というように、必要な医療は到底確保されそうになく、また中学校区に一つ、五十名とか百名とかの規模を想定しているのであり、地域介護の面からも不十分と言わざるを得ません。その上、本施設による病床数を昭和七十五年までには二十八万床設け、これによって老人医療費の伸びが二ポイント程度抑えられるという説明は、一体どのような根拠によるものなのでしょうか。中間施設構想は、本来高齢者が地域生活を継続し得るための施策として登場してきたものであり、ノーマライゼーションを実現することにこそ意味があるのではないでしょうか。
最後に、医療以外の保健事業についてただします。
老人保健法は、予防から治療、リハビリテーションに至る総合的保健事業の実施によって、老後における健康の保持と適切な医療の確保を目指すと説明されてまいりました。そして、五十七年度を初年度とする保健事業の五カ年計画が作成されましたが、計画と実績の乖離は甚だしく、かけ声倒れになっているのが現実です。例えば一般健康診査、胃がん・子宮がん検診とも目標の七〇%程度にすぎません。これは市町村のマンパワーの確保に問題があるのであり、例えば保健婦がたった一人しかいない市町村が今なお過半数を占めているのです。国民医療費と健康診査受診率との間には強い相関関係が認められるのであり、受診率の最も高い二十市町村と最も低い二十市町村との間には、年間一人当たりの医療費に八万円を超える差が見られることも統計上明らかになっているのではないでしょうか。今日までの計画と実績の乖離をどのように認識し、反省されているのか。また反省の上に立って今後どのように取り組む考えでいらっしゃるのか、この際、明らかにしていただきたいと思います。
以上で質問を終わるに当たり、一言申し上げます。
人間は、高齢者であるがゆえに憲法に規定する生存権、生活権、平等権が保障されない状況に置かれることがあってはなりません。老人福祉法二条には「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」と明記されています。この「安らかな生活」こそは人間らしい生活であり、だれもが迎える高齢期においてこれが保障されることは、国民すべての願いであります。ぜひこの国民一人一人の願いを心にしっかり受けとめた誠意のある御答弁をお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕