中野鉄造の発言 (本会議)
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○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
初めに、今回の三原山爆発により避難されている大島住民の皆様方に衷心よりお見舞いを申し上げます。
政府としては、火山噴火予知連のコメントを十分踏まえ、さらに予知体制の強化に取り組んでいただくとともに、教育、医療問題等、東京都と綿密な連絡をとり、万全の態勢をとっていただくよう強く要望いたします。
次に、質問に入りますが、今日、我が国は欧米先進国をはるかに上回るスピードで高齢化が進んでおります。厚生省人口問題研究所の今年八月の推計によりますと、六十五歳以上の人口は今から三十五年後には三千二百万人に達し、全人口のうちほぼ四人に一人が高齢者という超高齢社会が到来するものと見込まれます。しかしながら、この長寿社会が高齢者にとって住みよい、暮らしよい
場となるか否かは、これからの政治、行政の容易ならざる課題であります。
総理は、今回の所信表明の中で、「二十一世紀初頭に到来する本格的な長寿社会において、経済社会の活力を維持しつつ、国民が長い人生を安心と生きがいを持って過ごすことができるようにする」ことが「国政上の重要な課題であります。」と言われました。しかし、政府がこれまで実施してきた施策、これから実施しようとしている施策を考えてみますと、果たしてこの重要な課題が前向きに解決されているのか甚だ疑問であります。
すなわち、これまでに健康保険本人の十割給付の廃止と定率負担の導入、国民健康保険の国庫補助率の引き下げと相次ぐ福祉切り捨てが続き、さらに今回の老人保健法の改悪案。これら一連の制度改正の流れは、結果的に、一言で言えば、それは国民への負担の押しつけであり、国庫補助の減少はそのまま国の責任意識を軽くすることにほかならず、国民に多大な不安を与えつつあります。そこで、まず最初に、医療費における国民の負担という見地から、本年六月に閣議決定されました長寿社会対策大綱について触れたいと思います。
この大綱は、「人生八十年時代にふさわしい経済社会システムの構築を図るもの」とされておりますが、大綱とはいえ全体として甚だ抽象的であります。特に、社会保障制度の中核である医療保険については、「現行医療保険制度の基本的枠組みを維持しつつ、給付と負担の公平化を図る。」とありますが、保健・医療・福祉サービス等の部門と異なり、ここには文面の語句でさえも、充実とか強化、そういった言葉さえも全く用いられておらず、単に「医療に係る国民の負担を将来にわたり適正な水準に維持する」云々が言われているのみであります。したがって、医療保険の部門に関する限り、長寿社会対策大綱と呼ぶよりも、むしろ長寿社会における政府財政対策大綱と呼ぶのがふさわしいのではないかという思いがいたします。したがいまして、今回のこの老人保健法の改正案並びにこうした国民負担強化路線を前にして、どうして国民は安心と生きがいを持って老後を過ごすことができますか。総理の所見をお伺いいたします。
次に、本法案の具体的な問題に関して関係大臣にお尋ねいたします。
第一点は、一部負担金の引き上げについてであります。
昭和五十八年度以降最近までの消費者物価上昇率は五%に満たず、老人一人当たり医療費の増加率も五十八年度から六十一年度にかけて二割強にすぎないと見込まれており、何がゆえに原案の外来を二・五倍、一年間入院すれば負担金が十倍という大幅な引き上げになるのか、全く理解に苦しむのであります。昭和六十年の厚生省の国民生活実態調査によれば、全国の高齢者世帯のうち多少ともゆとりのある世帯は一割強にすぎません。衆議院において外来の一部負担金が減額修正されたとはいっても、老人世帯にとって負担の強化であることには変わりありません。今日、各家庭において、ただでさえ若い世代に気兼ねがちな卑屈な思いをしながら生活している老人が少なくありません。特に、所得のない老人にとり医療費の支出増は大変な苦痛であります。厚生省が従来から言われてきた一部負担については無理のない範囲にとどめるということについて、何をもって無理がないと言うのか。このような老人の立場に立った現実からあえて目をそらし策定された今回の案ではないのか。厚生大臣及び大蔵大臣の所見を求めます。
第二点は、加入者按分率の引き上げについてであります。
政府原案では、現行の四四・七%からわずか二年で一〇〇%にしようとしております。この最終目標につきましては、制度間の負担の公平という立場から理論的には理解できるのでありますが、一体、政府は、前回の老人保健法案の審議の結果、老人保健制度の実施に伴う保険者の負担増が著しく大きくならないための取り扱いがなされた経緯をどの程度考慮したのでありましょうか。厚生大臣は衆議院の本会議において、医療保険制度の財政状況の大きい変化が今回の見直しの重要な根拠である旨の答弁をしております。これについて、私は、衆議院において加入者按分率の引き上げのテンポを緩やかに措置されたことは一応認めるものであります。しかし、退職者医療の見込み違いによる国庫補助の減少が国民健康保険財政の赤字の大きな原因であるのに、保険者間の財政調整に関してこのような改正を行い、国庫補助を削減するのは問題ではないでしょうか。厚生大臣及び大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
もとより産業構造の変化、高齢化の進行等により、国民健康保険の財政の安定を保つことが困難になりつつあることは十分承知しております。だからこそ、国民健康保険については医療費支出の適正化や保険料の付加の合理化、さらには国庫補助率の改善等を含めた抜本的制度改正の検討こそ急務ではないかと思いますが、あわせてお考えをお尋ねいたします。
第三点は、保健事業についてお伺いいたします。
私は、政府が六十一年度予算に対前年度比三六%増の予算を計上した努力を認めるにやぶさかではありません。しかしながら、保健事業の問題は実績であります。例えば五十九年度における一般健康診査は、予算人員の七割、胃がん検診は五割という実施状況であります。また大都市における検診の受診率は、胃がんを例にとると、そのほとんどが三ないし七%の低位にあります。このような保健事業の実施状況の改善のために、政府はどのような対策を講ずる考えでありますか、お伺いいたします。
第四点は、老人保健施設についてであります。
我が党は、基本的には現今の核家族化現象のもとでは、その必要性自体は認めるものであります。しかし、ここで言う老人保健施設は、医療を行う施設であるにもかかわらず、医師の施設管理責任が明確でないなど、医療法に反する疑いがある。また特別養護老人ホームとの機能の区分が明確でないこと、病院でないのにそのベッドが医療計画上の病床に算入されること等、現行の医療及び福祉に関する制度上の位置づけが不明確かつ不十分であります。さらに、施設療養費を定額制にすることは、いわば医療の請負制であり、現行医療制度に反するのではないか。この種の施設については高齢者が食い物にされるおそれはないのか、こういった問題等まだまだ審議を要する点が多々あります。これらの点について大臣の所見をお伺いいたします。
以上、私は若干の項目にわたって質問をいたしましたが、本法案はいわゆる老後の安心と生きがい対策にはほど遠い、しょせんは単なる財政対策に終始したものであり、現在の老人を物心ともにますます窮地に追い込むと同時に、働き盛りの国民はさらに負担を強いられ、いたずらにみずからの老後生活への不安と政治に対する不信を増幅するにすぎない改悪案であると言っても過言ではありません。以上の点を強く主張し、政府の社会保障施策への猛省を促して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕