勝木健司の発言 (本会議)
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○勝木健司君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係各大臣に対し質問を行うものであります。
今、我が国はかつてないほど大きな試練にさらされようとしております。世界に例を見ない急速な高齢化の進行がそれであります。
人口高齢化の基準であると言われます老年人口率七%がその倍の一四%になるのに、アメリカでは七十五年、スウェーデンでは八十五年、フランスでは百十五年と、他の諸国がゆっくりと高齢化していったのに対し、日本はわずかに二十五年という短期間のうちに高齢化が進行いたします。この驚くべき事実を前にして、今、政治に求められているものは、来るべき高齢化社会に向けてどういう姿勢でこのことに取り組んでいくかということであります。年金、医療はもとより、雇用問題、住宅問題、公共施設など高齢化に向けた総合的な対策を講じていかなければなりません。またお年寄りを大切にする心や、お年寄りや身障者が若い人や健常者と一緒に生活することが当然であるという考え方、いわゆるノーマライゼーションの普及など教育的観点からの対応も必要であると考えるものであります。
まず、総理に、高齢化社会に向けてどういう姿勢で臨もうとされておられるのか、その御所見を明らかにしていただきたいのであります。
私は、今回の老人保健法等の改正案を見る限り、目先の財政効果にとらわれ過ぎて、長期的な展望を持たないものと考えざるを得ません。ここ数年の政府・自民党の政策は、行政改革イコール・マイナスシーリングという誤った認識のもとに予算が編成され、その結果、当面の財政事情によって福祉の後退、国民負担の増大を行ってまいりました。本案もまたその延長線上に位置づけられるものであります。
もとより、私は行政改革を否定するものではありませんし、高齢化とともにある程度の負担が増大することもまた避けられないと考えるものであります。しかし、行政改革というものは効率的な行政体制によって生じた財源を、福祉とか教育など国民生活の向上に寄与することを目的とすべきでありまして、決して政府みずからの経済政策の失敗によって生じました歳入欠陥を穴埋めするためのものであってはなりません。また国民に負担を求めるのならば、将来の社会保障の姿と負担の水準というものを明らかにした上で、国民の理解を求めることがまず必要であると考えますが、総理はいかがお考えであるのかお聞かせいただきたいのであります。
次に、本案に関する問題点につきまして幾つかお尋ねをしてまいります。
まず、一部負担の引き上げについてであります。
衆議院におきまして修正が行われ、七十歳以上のお年寄りにつきまして、外来一月四百円を千円にしようという政府案が一月八百円に改められました。しかし、これでもなお倍の引き上げであり、お年寄りが一人で幾つもの医療機関にかかっている現実を考えれば、外来で一月八百円の一部負担はなお急激に過ぎると考えるものであります。
また、入院につきましても、一日三百円を五百円にし、しかも二カ月の限度を撤廃しようとするものであります。お年寄りの入院にかかわる費用のうち、いわゆるお世話料等の保険外負担は月五万円とも言われております。その上に加えて、このような負担増が行われれば、月額二万七千二百円にすぎない老齢福祉年金では老後の生活を支えていくことはできません。このような急激な形での負担増は絶対に避けるべきであると考えますが、厚生大臣の御所見をお聞きしたいのであります。
次に、加入者按分率の引き上げについてお伺いいたします。
加入者按分率につきましても、衆議院におきまして若干の修正が行われましたが、この修正内容では極めて不十分であると言わなければなりません。今回の按分率引き上げにつきまして、政府は、財政調整による負担の公平を理由に挙げておりますが、本当のねらいは、問題を抱える国保財政を他の被用者保険、言ってみればサラリーマンと企業に肩がわりさせようというものであります。このことは、現在、円高による不況で厳しい対応を迫られております企業と、そこに働く勤労者に対する形を変えた増税であると考えますが、大蔵大臣並びに厚生大臣の御見解はいかがでありましょうか。
また、とりわけ、加入者按分率を一〇〇%とすることは到底容認することはできません。このことは、おのおの保険制度がみずからの保険に所属する老人の医療費につきまして自己責任を負わなくてよいということにもなり、医療費適正化などの経営努力を否定することになりかねません。按分率一〇〇%を法案から削除すべきであると考えますが、総理からの明快な御答弁をお願いしたいのであります。
現在、被用者保険は黒字傾向にありまして、六十年度決算を見ましても、健保組合二千九百六十七億円、政管健保三千十億円の黒字をそれぞれが出しております。このことはおのおの組合のたゆみない経営努力の結果によるものでありまして、当然その黒字分は加入者に還元すべきであります。こういう見地から、被用者保険の家族給付率の改善を図るべきでありますが、その意思がおありかどうか、厚生大臣にお伺いをいたします。
次に、国民健康保険につきましては、市町村が経営主体となっていること、低所得者層が大半を占めていることなどによる財政の不安定性、被用者保険との保険料負担の不均衡、医療費適正化の不徹底などの問題を抱えております。この際、経営主体や国保制度の概念の再検討などを含め、国民健康保険制度の抜本的見直しを図る必要があると考えますが、厚生大臣並びに自治大臣はいかがお考えでありましょうか、お伺いをいたします。
次に、老人保健施設につきましてお尋ねをいたします。
人口の高齢化に伴いまして、寝たきり老人の数は年々増加し、昭和七十五年には百万人を超えると言われております。こうした寝たきり老人に対する対策など非常に重要であると考え、今回、政府が提案し、取り組もうとする姿勢については一応の評価をするものでありますが、その進め方につきまして問題があると考えます。
政府は、まず法案を成立させ、その後の審議会で施設の機能、施設基準等を設定することにしておりますが、これは順序が逆であると言わなければなりません。老人保健施設を将来の高齢化社会を支える基幹的施設として位置づけるのであれば、研究調査費をつけまして、二、三年のパイロット計画を立てて実験的に行ってみた後に、確固たる見通しのもとに法律をつくるべきであると考えますが、このことにつきまして総理の御所見を承りたいのであります。
また、財源措置につきまして、従来の措置費と受益者負担というものを医療保険と受益者負担へと大転換するということは、保険財政上、重要な問題ではないかと考えるのでありますが、厚生大臣はどうお考えでありましょうか。
以上、数点にわたり御質問してまいりましたが、本法案は国民の合意を得られないまま、当面の財源対策のみを考えた安易な負担転嫁であると
言わざるを得ません。これはまさに福祉ビジョンの欠如を示すものであります。さきにも申しましたように、急速な高齢化社会を迎えようとしている我が国にとりまして、今こそ将来安心して生活できる社会のあり方というものを示すべきときであると考えます。そこで私は、この際しっかりとした二十一世紀に向けての長期的展望に立った総合福祉ビジョンを総理に明確に示していただきたいのであります。
本法案は、幾つもの重要な問題点を含んでおります。将来の高齢化社会をしっかりと見据えて万全の対策を講じていくことが望まれている今日、拙速を避け、十分な審議、検討を行うべきであることを申し添えまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕