若林正俊の発言 (科学技術委員会)

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○若林委員 ただいま行われました三ツ林大臣の所信表明に対しまして、自由民主党を代表し、科学技術政策の基本的な進め方とバイオテクノロジーに関し、私の日ごろ考えていることを申し上げながら御質問をさせていただきます。
 今日はまさに科学技術の時代であり、我が国の平和と繁栄の持続は科学技術の振興にかかっていると言っても過言ではありません。
 翻ってみれば、我が国は、第二次世界大戦後、瓦れきの山の状態から急速な発展を遂げ、今日のような豊かな社会を建設し、先進国の一員としての地位を占めることができました。石油を初めとする天然資源に乏しい我が国がこのような発展を遂げることができましたのは、日本人の積極的な技術開発とその成果を利用して産業の振興に努力してきた結果に負うととろが大きいと思います。この流れを一言にして言えば、海外からの先進技術の導入とその改良による生産技術の優位性をばねに、鉄鋼、造船、自動車、家庭用電気製品などを中心として高度成長を遂げてまたということでしょう。また、高度成長のひずみとして出てきた公害問題も公害防止技術の開発によって克服し、さらに、二度にわたる石油危機も省エネルギー技術などで巧みに対応し、先進工業国の中で最も安定した経済発展を続けています。
 このように人的資源以外に誇れる資源を持たない我が国が今やアメリカ、ソ連に次ぐ経済大国になり得た背景には、技術開発の成果があるわけであり、今後とも科学技術の振興は我が国にとって最も重要な国民的課題であると言えます。
 しかし、我が国内外の諸情勢を展望いたしますと、我が国が現在享受している平和と繁栄の将来は決して平たんなものであるとは言えないと思います。
 まず、国際情勢を見てみますと、欧米先進諸国は慢性的な経済不振と失業問題に直面し、開発途上国の多くは、今日なお近代化への道を模索しております。このため、国際的な経済発展は鈍化し、御承知のように、我が国とアメリカ等との間では通商摩擦が増大し、経済戦争とまで言われるような危機的局面が生じています。一方、韓国、東南アジア諸国といった中進国からの追い上げも急で、我が国産業にとっては、まさに前門のトラ、後門のオオカミといった厳しい状況になっています。
 また国内的には、消費需要の多様化、産業の成熟化、あるいはいわゆる産業の空洞化による経済的活力の沈滞化が問題となりつつあります。さらに、過去に比べて低い経済成長の中で、今世紀末にはかってどの国も経験したことのない速いテンポで高齢化社会を迎えることとなり、社会福祉、雇用、産業、財政など、多くの分野で困難な問題に直面することでしょう。
 また、一時期、東京などの大都市圏と地方との社会的、経済的な格差は縮まってきたと言われ、地方の時代などと言われた時期がありました。しかし、近年の円高、貿易摩擦問題などにより輸出関連産業が打撃を受け、ひいては我が国経済そのものが停滞してきており、その中で地方の都市はその存立基盤である企業の縮小、廃止などにより極めて深刻な影響を受けています。その意味で、東京圏と地方の格差は逆に拡大しつつあるとも言えます。このような厳しい内外環境への対応を誤れば、今日までに築いてきた我が国の安定的成長の基盤はたちどころに揺らぐことになるでしょう。
 一方、最近では科学技術をめぐる国際競争が激化しており、一部では技術情報の海外流出を規制しようとする動きさえ出ています。まさに欧米先進諸国との摩擦も半導体等の製品から技術そのものへ、すなわち川下から川上へと拡大の様相すら見せております。また、最近では、外国が従来のように我が国に対して革新的技術を供与しなくなる傾向が見られ、我が国からの独自な技術ないし技術情報の提供なしには諸外国から技術を導入することが難しくなりつつあります。まさに国際競争の中に調和ある国際協調を見出す必要があり、科学技術政策に課せられた責務は極めて大きいものがあります。
 冒頭に述べましたように、今日はまさに科学技術の時代であり、歴史的に見ても、科学技術がこれまでの我が国の経済発展の原動力や社会的諸問題の解決のかぎとしての役割を果たしてきたこと、それにもかかわらず今後は今までのように外国の技術の導入に安易に頼ることができなくなってきていることをあわせ考えますと、我が国の今後の発展は、我が国自体が自主的かつ創造的な技術開発をしていくことができるかどうかにかかっていると言っても過言ではないと思います。
 今日、我が国は、国民総生産が世界全体の一割を超えるようになり、その経済力にふさわしい国際的役割を果たすことが強く求められています。その要請にこたえるためには、我が国が世界の技術革新をリードし、世界経済の成長の核を提供し、また、人類の福祉向上に役立つようにすることこそ大切だと思います。
 これまで我が国が歩んできた外国技術の導入路線に対しては、技術ただ乗りだとして欧米諸国から強い批判が出ています。このような批判にこたえ、みずから生み出した創造的科学技術により国際的な貢献を図っていくことは、世界経済の一割国家、そして技術先進国としての当然の責務ではないでしょうか。
 科学技術は、歴史上常に世界経済を活性化させる有力な手段でありましたし、南北問題や食糧問題、人口問題などさまざまな社会的問題を解決するためのかぎとしてその役割を果たしてきました。今後、我々が二十一世紀に向けてより豊かで活力ある人類社会を築き上げていくためには、人類が現在直面している地球規模の環境負荷の増大、資源の枯渇、人間疎外や事故の大規模化などに見られるような技術と人間との緊張関係の増大、さらには、急速に到来しつつある長寿社会への対応など、多くの問題にその場しのぎではなく根本的に取り組んでいくことが必要だと思います。そのための最も有力な手段が科学技術であり、その振興を通して我が国が世界に貢献することが強く望まれています。
 一方、近年の科学技術の研究内容は高度化し、研究費が増大し、高度で大型の試験研究施設が必要となってきたこと、さらに創造的科学技術を進めるに当たっては、異なる分野での密接な交流が不可欠となっていることなどからも国際的な研究協力が従来以上に重要になってきており、この点からも我が国が世界に貢献できる余地は大きいと考えられるのであります。
 また、技術進歩の流れから見ると、現在は新たな技術革新の胎動期ではないでしょうか。一九八〇年代に入って、マイクロエレクトロニクス、情報関連技術の進歩は予想をはるかに超え、新素材、バイオテクノロジーなど新しい分野での技術革新の芽生えも目覚しいものがあります。二十一世紀には、現在夢と思われているようなこと、例えば、がんの撲滅や老化の防止、地震の高精度の予知、コンピューターによる外国語の完全な自動翻訳などが可能になるかもしれません。科学技術は、二十一世紀の文化、文明を積極的に創造するという極めて重要な役割を果たすことになるでしょうし、二十一世紀の社会全体の仕組みが科学技術によって大きな変革を遂げるに違いありません。その際忘れてはならないことは、常に科学技術と人間との調和ある発展を図り、その上で科学技術を人間、社会の新しい発展と進歩に役立てていかなければならないという、いわば人間中心の考えだと思うのであります。
 そこで、大臣に伺いますが、以上のように科学技術は単に我が国立国の基盤であるのみならず、まさに次世代への人類社会発展のかぎであると言っても過言ではなく、さらに今後の人間、社会に深い関係を持つことから、科学技術の振興は我が国にとって極めて重要でありますので、まずその基本的な考え方について、所信表明でお伺いいたしましたが、さらに大臣の決意を聞かせていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 110803911X00119870514_016

発言者: 若林正俊

speaker_id: 28629

日付: 1987-05-14

院: 衆議院

会議名: 科学技術委員会