若林正俊の発言 (科学技術委員会)
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○若林委員 ただいま三ツ林大臣から大学あるいは国立研究機関などによります研究開発を拡充強化していく、こういうお話がございました。そのことに関しまして、なお若干踏み込ましていただきたいと思います。
基礎的研究は申すまでもなくリスクが大きく、直ちに生産技術に結びつかないために、民間企業には多くを期待できません。また、その成果の公共性から見ても国が大きな役割を担わざるを得ず、どうしても国の研究所や大学の役割が重要になってくると思われます。今の国立研究所は、行政の必要性に基づいて研究を進めています。しかし、今後は重点的に基礎的研究を強化していく体制を整備していくべきだと思います。
殊に独創的な研究は、若い研究者の頭脳によってなされる場合が多いことはよく知られています。我が国のノーベル賞受賞者を見ても、例えば江崎玲於奈氏は三十三歳でエサキダイオードを発明しているし、福井謙一氏も同じく三十三歳でノーベル賞の受賞理由となったフロンティア理論を構築していると聞いております。一説によると、独創的なアイデアがピークとなるのは三十歳前後と考えられ、この三十歳前後のアイデアを生かすことが独創的研究開発の大きな推進要因となると考えられます。すなわち、三十歳前後の若手研究者が自主的な研究を推進し、能力さえあれば人、物、金をある程度自由に動かすことができるような仕組みを確保することが大切だと思います。その点から、国立研究機関が現在直面している研究者の高齢化、研究体制、組織の硬直化等の諸問題は創造的研究の推進にとって大きな問題であり、その抜本的解決が不可欠であると思います。
一方、大学は、本来基礎的研究の中心的な役割を担うところであると同時に、教育機関として人づくりの機能を持つ場でもあります。しかしながら、時として研究の指導的立場にある年長の研究者の判断により研究課題の選定、予算の配分、人事等の決定がなされるといった徒弟制度的な体質が残っている一面もあります。創造的な研究の多くが自由な雰囲気の中で優秀な若手研究者のアイデアから生まれていることを考えるならば、従来のような閉ざされた体質をかえて、技術評価システムの確立や競争原理の導入などによって人事の硬直化を打破し、科学技術全体の振興という観点から開かれた体質に脱皮していくことが必要ではないでしょうか。文部省の大学行政とも十分協議して真剣に取り組んでいただきたいと思います。
一方、創造的な科学技術の推進に当たっては、創造的な人材を育てていくことが極めて大切です。日本人には創造性がないと言う人もいますが、過去においても、例えば、鈴木梅太郎氏がビタミンB1を発見したり長岡半太郎氏が原子模型を発表したりしたように、日本人の手による幾つかの世界的業績もあります。今後は、特にこのようなすぐれた資質が埋もれることなく十分発揮されるような人材育成、研究所における研究体制等の環境条件の整術が重要だと思います。例えば、創造的研究を振興するためには独創性を育てるような研究評価を採用することもまた重要でしょう。研究者も人の子であり、よりよく評価される方に向かって進むものだと思います。研究管理者が独創性を重視して評価すれば、組織は自然に独創性を生む方向に動くと思います。そのためには、独創性を重視する研究評価の確立が必要なのではないでしょうか。確かに創造性豊かな人材を育てるということは、日本の社会の年功序列制や家庭における情操教育など、政策だけでは対応し得る問題ではありませんけれども、政府としても政策の展開に当たって十分な配慮が必要だと思います。
そこで大臣、創造的な研究開発の推進のための条件整術をどのようにしていこうと考えておられるのか、基本的なお考えをお伺いしておきたいと思います。