若林正俊の発言 (科学技術委員会)

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○若林委員 今大臣から御説明がございましたけれども、若い研究者がそれぞれの専門専門相寄りまして共同して課題に取り組む、そういうプロジェクトチームを課題ごとに弾力的に編成をしていく、こういった人事面も含めました配慮が行われなければ、なかなか形の上で制度を整えて予算をつけても実効が上がらない。大変難しい分野と思います。ぜひともこのような雰囲気づくり、自由な環境づくりというものに御配慮を願いたいと思います。
 次に、こうした基礎研究の中で、近年とりわけ大きな注目を受けておりますバイオテクノロジーについて伺わせていただきます。
 既に御承知のように、産業革命以来、先進国は膨大な石炭、石油といった化石燃料を消費して工業製品をつくり出し、社会経済の発展を果たしてきたところであります。至って軽便かつ経済的な化石燃料の使用は、まさに近代社会の発展と軌を一にして伸びてきました。したがって、これら石炭、石油の確保は国の死命を制する問題となっており、多くの国際的紛争もこれを契機として起こったことが珍しくありませんし、あるいは近く第一次オイルショック、第二次オイルショックがいかに世界経済に甚大な影響を与えたかは、私どもの記憶に新しいところであります。さらに、近年化石燃料の使用によって環境問題や全地球的な気象問題までも引き起こされることが明らかとなり、今までのように無条件に化石燃料に頼り切っていくということは許されない状況となってきております。
 こうした中で思い起こされるのが、従来の工業的な手法とは異なる生物を利用した生産方法であります。農業は有史以来人間が利用してきた生産手法であり、これにより私たちの先祖は長い歴史を生き抜いてきたわけであります。高温、高圧、急激な化学反応を中心とした工業的生産方法にかわって、常温、常圧、緩やかな化学反応で必要なものを、しかも循環的に生産する生物的生産方法に着目することは、大変意味のあることであります。とりわけ、最近バイオテクノロジーとして発展してきた分野は、分子生物学など最先端の科学技術として結晶してきた分野であり、基本的には、今私が申し上げてきた化石燃料の時代からバイオの時代への転換をもたらす重要な技術分野と考えるのであります。
 とりわけ、我が国では、バイオテクノロジーの分野においては、みそ、しょうゆ、酒などの醸造を初め伝統的な産業活動が活発で、技術の蓄積が多いのであります。例えば、酒づくりのときに行われる火入れは低温殺菌の手法としてパスツールが発明する二百年も前から行われていたことであり、我々の先祖が経験から学んだ事実をいかに技術として活用していたかがしのばれるのであります。また、風雨に強く連作が可能で収量が多い稲の開発は、気象の変化が激しく耕地面積の乏しい我が国にとっては必須の事柄であり、多くの新品種が作出され、利用に供されてきているのであります。またさらに、昆布のうまみ成分であるグルタミン酸は、明治時代に池田博士が世界で初めて抽出に成功したものであります。このような発酵あるいは農業などの実務に即したいわゆる応用研究、実用化開発については、我が国は世界に冠たる水準を歴史的に確立してきております。
 さて、今日注目を浴びているバイオテクノロジーの歴史は極めて新しいものであり、第二次大戦後、二十代のアメリカのワトソンと三十代の英国のクリックによって、遺伝子が二重らせん状のDNAから成り立っていることが発言されて以来、多くの革新的な発見、発明が相次ぎ、極めて急速に進歩を遂げてきている分野であります。この分野の技術の発展には、我が国からも東京大学の長野泰一博士によるインターフェロンの発見、大阪大学の岡田善雄博士による細胞融合の成功等、偉大な貢献があるのでありますが、その中心となったのはやはり欧米諸国の学者であると言われております。このことは、ノーベル医学・生理学賞の受賞者がいまだ我が国からは出ていないということからも明らかでありますし、また、一国の科学技術水準は論文の引用数によってはかられると申しますけれども、ある資料によりますと、引用度の高い千人の研究者のうち七百三十六人がアメリカ人、八十五人がイギリス人で、我が国からの研究者は十一人という調査のあることからも、そのことは否定できないことだと思うのであります。
 そこで、事務当局からで結構でありますが、このような中で我が国のバイオテクノロジー研究の現状が一体どうなっているのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。

発言情報

speech_id: 110803911X00119870514_022

発言者: 若林正俊

speaker_id: 28629

日付: 1987-05-14

院: 衆議院

会議名: 科学技術委員会