若林正俊の発言 (科学技術委員会)
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○若林委員 技術蓄積の多いバイオテクノロジーの分野で我が国に基礎的な研究成果がなお少ないというのは、今お話がございましたように、一つには研究費の不足に起因しているのではないかというふうに考えられるのであります。例えば、今お話にございました米国でありますが、保健、医療分野の研究を担当している国立衛生研究所の年間研究開発予算のみで約八千億円でありますが、これは、我が国の産学官すべての応用研究を含む研究開発費に匹敵する額です。したがって、研究費を大幅に増額し、基礎的・創造的研究を拡充することが我が国にとって緊要な課題と考えるのであります。政府においても、今後、バイオテクノロジー分野の研究開発を強力に推進するようにお願いしておきます。
さて、先ほど申し上げたように、組み替えDNA技術や細胞融合技術等先端的技術の発展により、バイオテクノロジーは新たな時代を迎えようとしているのであります。私たちの身近な場面でどのような応用が可能かを考えてみますと、まずその第一に医療関係が挙げられます。従来製造が困難であった新たな医薬品の大量かつ安価な生産、生体に影響の少ない医薬品の提供がこのバイオテクノロジーによって可能となります。糖尿病の治療に必要なインシュリンは化学的な合成が困難なため、従来、豚の膵臓から抽出されており、極めて高価な薬品でありますけれども、これが最近では遺伝子を組みかえた大腸菌による生産が実用化されてきております。また、小人症の治療に必要なヒト成長ホルモンなども、現在積極的に開発が進められているのであります。また、B型肝炎、インフルエンザ、マラリア等のワクチン開発にも組みかえDNA技術は活用されてきています。バイオテクノロジーは、さらに治療や疾病の予防などにも大きく役立つものと期待されております。我が国における死亡原因の第一位となっているがんについては、中曽根総理の提唱により対がん十カ年総合戦略が策定され、研究開発資源の効果的な集中的な投入によりさまざまな発がん遺伝子が発見されているのは御承知のとおりであります。また、エイズにつきましても、病原ウィルスの遺伝子は捕捉されてきているのであります。こうした研究の成果を見ますと、私たちがこのような病気の苦痛から解放される日が必ず来るだろう、このように信じられる次第であります。
しかしながら、現状においてこの分野における私たちの知見はまだまだ小さいと言わなければなりません。遺伝子がどのような条件、メカニズムで体内で発現し、疾病に至るかということは、ほとんど解明されていない状態であります。実際、我々が持っている生命現象に対する理解は、残念ながら極めて未熟な状態であると言わなければならないのです。健康な状態についてみても、認識、思考、免疫による生体防御などの高次の生命現象についてはいまだ初歩的な知見しか得られておらず、さらに、システムとしての生命現象の解明には長期にわたる取り組みが必要となっています。
このように考えると、私たちがバイオテクノロジーに対して取り組むべき姿勢もおのずから明らかであると思います。人類は今まで多くのフロンティアに挑戦してきました。最近では宇宙、これは長い間人類の夢でありましたが、ついに人類は月に第一歩をしるし、土星や金星の内側をのぞくに至りました。また深い海の底、そこにすむ不思議な生物や地球創成の秘密は、私たちに無限の知識を供給してくれます。そして、こうした意味で私たちに残った最後のフロンティアが実は私たち自身の問題、すなわち生命現象であったわけであります。
そこでお伺いいたしたいのですが、こうしたことから、人間における生命現象の研究について科学技術庁はどのような取り組み方をしておられるのでしょうか。