荻原宏康の発言 (科学技術委員会)

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○荻原参考人 一番最初にごらんに入れますのは、そこにありますデバイス、素子の配線パターンと称するものです。お回ししますけれども、半導体をつくる上で、半導体をつなぐ回路をこの物質でつくってあります。非常に細かいものですので、これをごらんに入れたいと思います。その次には、テープまたはシートというもので、先ほど田中先生がお話しになった三月十八日のアメリカの物理学会の際に、どうだ、こういうものはというのでアメリカの研究者が皆さんにごらんに入れているのがたくさんありましたけれども、それと同じものをここにごらんに入れます。これがシートです。それから、ここに巻いてありますのがテープです。これも篤とごらんいただきたいと思います。それから、ブロック成形体といいますのは、皆さんのお手元に写真を差し上げてあります。一つは、磁気の中で超電導で浮いている図がございます。その物質がこれでございます。それから、同じように実験ができるもので一円玉みたいなものがありますけれども、これもごらんいただきたいと思います。最後に、超電導線というのがやはり基本的に話題になりますので、二種類ほど、銅でつくったものと銀でつくったものとをごらんに入れます。
 ということでございまして、どれもこれもとにかくつくろうと思えば、我々プロの手にかかりますとと言うとあれですが、すぐにそのぐらいのものはでき上がってしまいます。問題はそこから次のところにあることをこれから申し上げたいと思って、これを持ってまいりました。
 まず一つ、その中で特性が出ないと話にならない、つまり、超電導が超電導であるというのがそのものの形の中で実現していないといけません。三月十八日以降いろいろなことが新聞発表になったり、あるいはアメリカの学会あたりの中で何ができたかにができたという報告がありますけれども、その後フォローされて超電導らしい特性が完全に満足に出たというものがないことは、今、田中先生の報告の中に出てきたとおりです。
 さて、それがなぜかということをこれから申し上げながら、これから何をしていただけばいいかという話をさせていただきたいと思っております。
 超電導線あるいは超電導体というものを見たとき、その値打ちというのを判断するのに何で判断するかといいますと、まず基本的な性能というのが三つございます。臨界温度、臨界磁界、臨界電流密度という三種類のものをそこに書いてありますが、超電導体というものは、この三つの特性がかなり十分エンジニアリング的な性能を持つことによって我々は技術として使っています。そこに「元素Hg」というのがありまして「臨界温度四・二K 臨界磁界〇・〇四一T 臨界電流密度*」というぐあいに書いてあるのは、これは一番最初に超電導が一九一一年に見つかったときのものです。現在それから約半世紀を楽に突破しまして、「合金・化合物」というところに「NbTi」と書いてありますニオブ・チタンと我々呼んでおる合金で申し上げますと、臨界温度が十度ケルビン、臨界磁界が十一テスラ、臨界電流密度が百万から一千万アンペア平方センチ当たりというものを今使っております。現在出てきておりますセラミックスは九十四ケルビンで、臨界磁界あるいは臨界電流密度というのは現在研究中あるいは増強しようという方向にありますので、化合物、合金の性能までは十分いってないものです。
 こういう段階になければならないのですけれども、もう一つ応用上重要な性質としては、とにかく材料であることというのが非常に重要です。新聞などでは超電導材料が見つかったという言い方をしておりますけれども、正しい意味で材料というのは物をつくるのに使えないとだめなんで、物質というのは使えるレベルまで行って初めて材料と言っていいわけです。その意味で「工業材料」というぐあいにわざわざ書きましたけれども、そう書かないまでも、材料と言った以上は、安定に大量供給してくれる、それから性質が信頼性を持って使うことができる、あるいは加工に値するものであるという性質が要るのです。その意味で言いますと、現在のものは、こういうものについて材料という名前はまだ少し大げさ過ぎる名前になっております。
 それから扱いやすさというのはやはり大切で、例えば電線につくったときに、線を巻くとかそういう話をするのに、強く引っ張っても切れない、あるいは簡単に巻けるというような性質が非常に重要なものになってまいります。
 さて、その意味でそれでは今のものはどうなっているかということになりますので、これも例をもってごらんに入れたいと思います。
 一番後ろから二枚目に大きな丸い挿絵を差し上げてあります。これは、現在恐らく一番世の中で進んだ超電導線と言われているものの断面図です。この中に小さい星のようにぽちぽちと点がありますけれども、これがニオブ・チタンという超電導体でつくった超電導材料そのものです。この太さは〇・五ミクロンという太さです。皆さんの髪の毛の太さというのが大体三十ミクロンから百ミクロンぐらいですから、これはその中に何十本という数字で入るくらい細いものです。これ全体が導体の中に入りまして、全体で〇・一ミリメートルという太さになっています。それから、これはこのままの図ではわからないのですけれども、ずっとねじれています。ツイストと称しまして、長さ方向にずっと場所が変わってぐるぐる回るような格好になっています。〇・一ミリメートルの太さの中に〇・五ミクロンという線が入って、ツイストと称する非常にファインなより線加工が行われているというのがこの線の特徴です。これで大体六アンペアから八アンペア流します。電流密度としましては、恐らく百万アンペアレベルの電流を流しているものです。
 あと、浮上式鉄道、それからもう少し進んだ変圧器というものに使われるための起電導線も大体これと同じような構造になっていまして、極端なことを言いますと、もう〇・一ミクロンという細さの超電導線が一千万本入って全体は一ミリにしかならないというように非常に進んだ加工技術で今の金属の超電導線というのはでき上がっています。
 そこまでいきませんが、磁気浮上で今宮崎で走っております超電導線といいますか、超電導コイルを巻いた線まで含めたサンプルがありますので、また同じく、ちょっと重いですけれども、ごらんいただきたいと思います。これは現実に使われている超電導線でございます。
 さて、こういう超電導線の要件というのを線だけに限ってみますと、加工技術の極限というものへ挑戦しているという感じがあることはすぐ理解していただけるのではないかと思います。それの要点というのを三つほど申し上げますと、まず、安定化材というのと一緒に加工してそういう線にするということです。安定化材と称するのは、よい超電導性といいますのは非常に嫌な性質と言うと変ですが、常温にありますときには非常にかたいものなんです。ニクロム線だとかそういう抵抗体と同じように、かたいものほど温度を下げたときにいい超電導性を示します。冷やすために、熱を取り去っていくために、そこに銅をつけているのですが、その銅は御存じのように非常にやわらかい材料です。かたい材料とやわらかい材料を直径二十センチぐらいに一番最初の出発点のところから大体そういう形に仕上げておいて、全体が〇・一ミリになるまで細い線に仕上げます。そこまできれいに仕上げるだけの引き線をする加工技術というのがその中で体現されているわけでございます。
 あともう一つ、非常に細くするということも、超電導物質の超電導性を上手に使うための必要要件なんです。細くしますと一本の線で流す電流というのが小さくなりますから、たくさん入れなければいけないというので、細い線がたくさん入っております。最後の図面のところは、〇・五ミクロンの線が一万四千五百二十本入って〇・一ミリという導線の中におさめられていてそういう線になっている。これだけの細かいものが、ツイストと称する、ぐるぐるよじれた存在になっています。
 こういう技術というのは実は非常に新しく始まったもので、一番最後のページに超電導の歴史というようなものをごらんに入れてありますが、そのうち下から五つ目のところにステクレーの安定化理論というのがあります。そのときからこういう技術が必要だということが始まりました。つまり、大体、今超電導の応用技術をやっている人間が超電導の応用をやりながら必要性を発見し、それだけの加工力というのでしょうか、加工技術を育成してここまで来たものです。これはアメリカ、日本、ヨーロッパもありません。全部ほとんど同じような問題を発見し、同じように協力しながらここまで来た問題です。
 さて一方、今度見つかりましたセラミックスというものについて考えを述べてみたいと思います。
 まず、セラミックスといいますのは、材料あるいは物質というものを分類したときに三つに分類する、そのうちの一つのものです。有機物、金属、セラミックス、これで世の中の物質界あるいは材料というものは成り立っています。その意味で言いますと、金属とセラミックスとは性質からいっても何からいっても全く別なジャンルに属するものです。そういう意味で日本では非常にすばらしいファインセラミックスの技術あるいはエンジニアリングセラミックスの技術が発達していて、それで世界的に注目されているわけですけれども、ファインセラミックスにしてもエンジニアリングセラミックスにしても、現在開発されていて日本がすぐれていると言われている方向は、これは耐熱性がいい、あるいは非常にかたくて頑丈である、それから、かたくて摩耗が少ない、あるいは腐食に強いという面が非常に強調される方の技術の中で成功しているものです。これはある意味で言うと、金属を先ほどのような加工技術で上手に使っていくという方向とは逆な方向で、非常に高度の発展をした技術になります。
 もう一つ、焼結体であるという問題がございます。焼結体といいますのは微粒子を焼き固めたもの、これがある意味で言うとセラミックスなんですけれども、その意味では、微粒子のそれぞれ一つずつの粒の性質というのが、かなり長い時期まで材料の加工のいろいろな経過をたどりながら保存されていきます。最近は、高靱性セラミックスというので高い温度の中でばね的な動きをするものが見つかっていますけれども、これはセラミックス材料そのものの性質よりも、微粒子と微粒子をつなぎ合わせている面のところをコントロールすることによってああいう性質をつくっているのです。ということは、先ほど電線で〇・一ミクロンという線のことを言いましたけれども、それは〇・一ミクロンの線があったとしても、十キロとか五十キロの間、一様な金属が完全につながっているものなんです。ということで、セラミックスが微粒子で固体と固体との間の制御性によって例えばばねのような動きをするというのとはかなり違った意味になってまいります。
 それからもう一つ、日本の中では、機能性セラミックスといいまして、においをかぎ分けたりガス漏れを感ずるというようなセラミックスが非常に発達しておりますけれども、こういうセラミックスは、そういう特性を持たせるためには非常にがさがさな構造といいますか、中が粗な構造をしています。今回の超電導体も、次に申し上げますけれども、非常に酸素を上手にコントロールすることによりまして超電導性というものをつくっていきます。ということは、外界の酸素との間に上手に交換するという反応をさせながらこれをつくっていっているのです。
 次に進ませていただきますと、セラミックスというのは、別な意味からいいますと、酸素の塊あるいは酸素の骨格の中にほかの分子、今度のことで言いますとバリウムとかイットリウムとかいうものが含まれていて、超電導性というのを上手に出してくるという使い方をしています。とすると、酸素ということが非常に大事なもので、その酸素を出し入れしましてあるところの酸素をなくするというような反応によってこの超電導の特性を出しているわけです。
 さて、そうなってくるとということで、普通なら、先ほど超電導線というのは非常に長い間均質のものがつながっているという言い方をしました、それから、セラミックスはそうじゃなくて焼結体なので、粒が固まり合っているもので、粒の性質がいつまでも残るのだと申し上げましたけれども、さてそれでは長尺のものでないデバイス、今お見せしたものの中で言うとテープとか配線のパターンとかいうぐあいに、点のようなといいますかスポット的な、つまり長さじゃなくて広がり、それも非常に小さな広がりだけでいいというような使い方をしているものとしては、デバイス応用というのが先ほどから申し上げておりますようにあるのです。ジョセフソン接合素子がありますし、トンネル素子があります。それからSQUIDと称する超電導量子干渉デバイスと言っているものがあります。超電導トランジスタがあります。こういうものが今までもかなりの注力をされながら開発されてきました。ただし材料は、鉛、ニオブ、ニオブと窒素の化合物、非常に特殊ですけれども、バリウムとビスマスと鉛と酸素の化合物、これもやはり今回のペロブスカイト、酸化物超電導体のもとになったものと言ってもいいのかもしれませんが、十三度ケルビンまで超電導を示すという物質なんです。こういうもので随分合言いましたデバイス関係は研究されてきました。その中でわかっていることは、まず、非常に制御された格好で単結晶というもので均一な物質をつくるということをすると、かなり電流が流れたり使いやすいのですけれども、多結晶で普通に、今皆さんにごらんに入れたもののようなつくり方をしますと、臨界電流密度が一けたから二けた落ちるのです。先ほど田中先生から紹介ありました十万アンペアというような電流密度を持った性能の物質も、もしも多結晶体でつくりますと一万アンペア、千アンペアという普通のオーダーに落ちてしまいます。
 その問題はなぜかというのが今までも問題になっていました。どういう問題かというと、粒と粒という言い方をしましたので、表面とそれからその中側の性質の違い、これを二層構造と言っています。それから、結晶同士がつき合うための界面の問題。それから、表面が酸素と一我々の世の中は酸素あるいは水がたくさんあるところですので、それが行き来することによって酸化の進行ということが起こって性質が変わるということが比較的簡単に起こりやすい状況にあります。こういう問題のために、今までも、Pb、ニオブ、NbNというようなものまで含めていろいろな問題が出てきております。
 そのうちで、まず結晶制御をすることによって非常に大きな均質の物質をつくればいいじゃないかという考え方があるわけですが、それはもちろん技術があるわけです。そこにありますように、プラズマスプレーとか、化学蒸着法だとか、あるいはスパッタリングだとかいうやり方がありまして、自分が好きなように物質をつくり上げていくという技術は確かにあります。ただ、これはまだ基本的には非常に高い技術ですから、これをどのように技術化していくか、あるいは工業化していくかというのは、もともと問題としては含まれていることになります。
 さて、その意味でもう一歩入りまして、セラミックスで超電導体をつくってみるということでどのような問題があるのかということになりますが、先ほどセラミックスは酸素の塊あるいは酸素の骨格でできている、その酸素を取ったり入れたりして微妙に骨格を変えることによって超電導の特性を上手に出しているものが今の超電導酸化物であると申し上げました。そうすると、物をつくったときにいつ超電導性を持たせるような化学反応を起こさせるかというのが次に問題になってきます。化合物でこういうことをやるという経験は、実は日本には今まで一つあります。超電導体と称するものは恐らく世の中に今三千種類ほどあるのですけれども、実際に使われていますのはデバイス応用まで含めて約五種類と思っていただきたいと思います。そのうちの大きなものとしてニオブ3スズという超電導線になっている材料があるのですが、これは科学技術庁の金属材料技術研究所にいらっしゃった太刀川さんが太刀川メソッドという非常にすぐれた方法を発見されることによって工業化しました。それは超電導線の中にすべて後で反応する物質を取り込んでおいて、それが一つの方向にだけ反応するということで、自分の好きな状況を超電導線の中で起こさせることを非常に上手にコントロールするというのをインスピレーションでやられたのだと思います。そういうことができるものであるかというのが今度の超電導線の問題になります。
 今ごらんに入れましたものの中で、線になっているもの、銅で被覆したものと銀で被覆したものがあります。銅で被覆したものの方は、単に線をつくるために銅をかぶせて線を引っ張ったというものです。なぜかと言いますと、銅は酸素に非常に激しく反応するものですから、自分が持っているせっかくの骨格としての酸素まで吸い取ってしまいます。つまり、化学反応のコントロール以上に周りにつけた銅によって化学反応が制御されてしまいますので、銅は線の格好をつくるためにつけたのであって、全体として線の機能を持たせるためにつけたものではありません。後で銀の線をごらんに入れます。これは私どもが約千アンペア・パー・スクエアセンチメートルという報告をさせていただいたものですが、銀といいますのは、至るところで皮膚呼吸のように酸素を出し入れしながら自分は何も変化しないものです。つまり線が長ければ長くても、どんな長さのところでも、ある断面だけで超電導特性を出すことができます。それによって超電導性を出します。
 さて、磁気浮上だとか核融合だとか非常に大きなところに銀を使うというのは実用的かというと、これは違います。つまり、今は銀を使ってでも特性というもの、あるいは線をつくるというものを調べなければならない時期にあるのだということを申し上げるつもりでおりました。
 それから、その次にもう一つ問題として挙げなくちゃいけないのは、恐らく先ほど言ました一本の線が〇・一ミクロンあるいは〇・五ミクロンというのが一万五千本も入って全体として〇・五ミリあるいは一ミリという構造の超電導線をつくらなくちゃならないというのが超電導線をつくるときの問題です。セラミックスは続いてどんどん延びていくものではありません。田中先生の御説明にありましたように、延性と展性を持っていないというのがセラミックスの特徴です。ですから、セラミックスをそういうぐあいに線のように引いていって変形させますと、上にあります銅は確かに延びていきますけれども、中で起こっているのは粒が細かくなっていくという破砕が起こっているだけなんです。そうすると、破砕体として起こってきて新しく生まれた微粒子が上手にまたつながり合っているかという問題が非常に基本的な問題となってきます。そういうことで、もともと加工しようと思えば、セラミックスに関して言うと、こういう粒々をどう処理するかという問題に対してきちんとした回答をつくらなくちゃなりません。これはまだ完全にできていませんというよりも、そういう見方をしないで議論は進んでいます。
 さて、その次に輸送電流といいますのは、我々は一センチ平方当たり一千万アンペアから百万アンペアを流せて初めて超電導体だとしているわけです。今度のものにもそれだけの電流輸送をさせなくちゃならないのですが、これも田中先生から御説明がありましたけれども、これはBCS理論からもう一歩具体的に進んだグラッグの理論あるいはアブリコソフの理論と称するもので説明できる問題です。グラッグというのは、ギンツブルク、ランダウ、アブリコソフ、ゴルコフという四人の物理学者ですけれども、この人たちが、今言いましたように、なぜ超電導体には平方センチ当たり一千万アンペアというすごい電流が流れ、しかも全然熱が出ないで済むのかという理屈をきちんとつけたものです。簡単に言いますと、加工技術を金属なりなんなりに上手にすることによってその特性が発揮できるのだということになっています。例えば、合金系の線で言いますと、熱処理によって格子欠陥をつくる、あるいはディスロケーション、転移というものをつくる、それから析出というものをつくるということです。それから化合物系に関して言いますと、ニオブ3スズが今使われておりますけれども、非常に細かい粒をたくさん中につくってやるということなんです。こういうことによって第二種超電導体は非常に大きな電流輸送力を持つことができるのだということがわかっています。だとすると、現在あります議論は、すべてつくり上げたものをどう電流に流すかということだけで電流を流しています。それで到達したところが十万アンペアです。それから先は、この物質に今のグラッグ理論に基づく加工処理をどう施すかということが問題になります。まだそこまでやらないわけですから、十万アンペア以上のものが出てくるということがむしろ非常に珍しいので、いつになったらそういう加工技術なりなんなりをするような、この素材が材料的な性質を持ってくれるかというところが、これからの問題あるいは開発の問題になるのだと考えております。
 さて、そういうことで、今までのところ申し上げたことは、非常に難しい点があるという言い方をしているつもりはないのです。むしろ三月から五月のおしまいまでのこの短い間に、このものについてはこれだけのことがわかってきたのです。何をするにしても、研究開発は必ず問題点のあり方とか課題の摘出だとかいうことをします。これだけ立派にいろいろなものがそろったということは、この材料が学会あるいはそういう人たちから非常に注目されていることだと思いますので、これからがこういう問題が解決されていくべきだと思います。
 さて、どういうぐあいにやっていくかという話の中で考えを述べさせていただきますが、次の項目で、基礎研究から目的基礎研究に至るところはどういう問題があるかということを整理してみます。
 まず、非常に高い温度、今よりも高い温度で臨界温度を持つ超電導体を探す、これは非常に重要なことです。室温はその中で当然一つの目安になります。これには今の超電導体の理論をとにかく確立してほしい。BCS理論はもうそろそろ危なくなったのだという話は田中先生からあったとおりです。新しい理論を確立し、それによって次の予測を立てるというのが理論屋さんの存在理由なわけですから、これは頑張ってもらいたいということになるわけです。
 その次には、今言いました物性の確定です。この物質が実際的にはどんなものなんだという話を測定技術の開発研究まで含めてきちんと技術が使えるような言葉で展開できるように早くしてもらいたいと思います。その一つの中でもうわかっているものとして今考えられているものは、コヒーレント長さという量があります。これは超電導性がどのくらいに物質の中で波及力を持つか、あるいは力を持っているかということを示す量ですけれども、現在金属で使われているものよりも十分の一から五十分の一ぐらい短いものだということがわかってきて、非常にシャープな超電導性を示すということがわかっています。だとしますと、ジョセフソン素子だとか超電導トランジスタをつくるには非常に精密な技術開発、物をつくるときの技術力をもっと精密にしていくという方向の研究が必要だということがわかりました。
 それから、セラミックスが非常に多結晶であると申し上げました。つまり界面があって、一粒ずつ個性を持って自分の境を持っている物質だと申し上げました。そういう微粒子、粒が小さいということによる特徴のある超電導のあり方、それから一粒ずつが界面を持っているということによる超電導のあり方、そういうような物性がどうなっているかというのも決定する必要があります。
 さて、今申し上げましたのは、あくまでも金属で使っている現在の超電導の開発が非常に強力に展開されているという前提の中で、それと同じことに今の超電導体を使おう、使えるかという議論です。ただし、先ほど申し上げましたが、セラミックスは金属とは全くジャンルの違う物質です。つまり、セラミックス独得の使い方があっていいんじゃないか、それを新展開というぐあいに書きました。右側に簡単な図を入れてありますが、金属セラミックスの中でこういう材料の延性を利用することによって安定化極細多芯線という、最後にたくさん超電導性の具体的なものをごらんに入れたようなものをつくり上げました。一方、日本で名前を挙げておりますファインセラミックスは焼結という技術で、これは延性、展性を使うものとは全く逆方向の技術です。ですから、その方向での展開をすること、または焼結というのじゃなくて、ファインセラミックスの延びる力を見せたそれだけの技術力をもって、セラミックスにも延性的な使い方をするという開発にこれからセラミックス屋さんには移ってもらうということも一つの問題としてはあるのだろうと思います。いずれにしても、ここの問題の中では酸化物超電導体の生かし方を考えた展開がもう一つ問題になると思います。
 あとは、超電導体、今まで、金属系で現在あるもの、それからセラミックス、いつも対立的な考え方をしておりましたけれども、複合することによって日本は特にいろいろなものを上手に使ってきました。それが一つの解決策です。この辺のところは基礎あるいは目的基礎というところに入ると考えております。
 さてもう一つ、こういうものを引っ張ってきてくれたものとして、今まで日本の大きな業績の中には大型開発があります。これらの研究といいますのは、具体的には核融合、MHD発電、超電導発電機、超電導推進船、ジョセフソンコンピューター、超電導放射光施設、超電導磁気共鳴イメージング診断装置、こういった種類のものがありますが、こういうものが大型のプロジェクトあるいは全国的な一つの動機を持ったものとして動きがあるために、今までの個別の超電導体あるいは超電導性の工業化が非常に発展してきたものです。それぞれがいつ使われるかという問題は、社会的な必要性の時期というもので多少問題があるかもしれませんけれども、こういうものによってこれだけの展開が進んできたのです。
 あるいはもう一つ、大規模利用へのスタートといいますか、こういうものが非常に使いやすいものとして出てきたときには、草の根応用と私はそこに書きましたけれども、例えば、太陽電池で発電所をつくろうという動機よりも、むしろポケットコンピューターの中にアモルファスの太陽素子がたくさんついたということで大量に使われて、これは日本が大きな発達をしました。そういうようにして基本的な小さな使い方の中にみんなが使えるものを見つけること、その二つの道で恐らくこういうものが生きていく、あるいは開発が推進されていくのだろうと思っております。
 最後になりますけれども、このような進め方の中でこの開発、特に超電導酸化物を大きく使えるようにしていくための技術としましては、まず基礎研究と大型開発というのは公益的な立場から進めていただきたいと思っております。基礎研究の中で言いますと、これは大学、官公庁の研究所が主体になっていただきますし、このやり方というのは、田中先生のお話の中にありました技術ただ乗り論を払拭するには今一番いい時期だと思っております。アメリカの学会あたりでも、こういう話に対する日本の技術力は余りステレオタイプな物の言い方で考えると危ないのだという言い方をしているというのが、たしかきのうの朝日新聞の夕刊にも出ております。その好機だと思っております。
 次は大型開発ですけれども、官主導の大型開発が先ほど言いましたように日本のいろいろな技術をスティミュレートするのに役に立ってきました。酸化物に関しても同じことですけれども、超電導に関しましてはまだ酸化物云々ということじゃなくて、今まで進んでいる超電導の開発に対して酸化物の影響を余り感ずることなく大いに進めていただきたいと思います。その理由は、今超電導酸化物はまだ具体的な物を考えるほどには、具体的な工業材料としてのイメージをどうつなげるかというのは我々余り上手につかんでおりません。むしろ、先ほどからお願いしてありますような要件が全部出てきたところでそれが言えるのだと思います。したがって、核融合だとかそういう話については、まだまだ力を入れて今の方針を貫いていただきたいと思います。
 さて一方、国際協力といいますのは、超電導・極低温関係で言いますとバーマス体制、ベルサイユ・サミットの結果、九カ国でしょうか、そこの共同開発で材料研究がありますが、この中で日本が議長国を務めている唯一のものです。つまり日本の力がそれだけ認められています。それから超電導に関しては、これまでの日米協力だとか国際交流というのは非常に多くありました。日本とアメリカで研究者が交換し合ってというケースが、この中で言うと非常に多いのが恐らく超電導だと思っております。ですから、今回のアメリカの動きが非常に珍しい動きのような感じもしますし、さっきの「ビジネス・ウイーク」などに出てきている論調などでも、アメリカ人の中でも特に超電導で今まで強力に進めてきた人は、日本とアメリカのやり方の中で日本のやり方をよく知っていて、競争というものに対して疑問を持っている人たちがたくさんいます。つまり、これも実際には、国際交流は重要だけれども、今までもやっていた問題であって、特に今改めてこの件にということは余り心配ないのだろうと思っております。むしろ、今回の話の中で何となく神経を研ぎ澄まされている感じの方が心配です。
 最後に、特許になりますけれども、この特許の問題がいろいろ出ていますが、これも技術者としては取れるものは取りたいと思っております。あと権利行使の話といいますのは、国の話もありましょうし会社の話もありましょうし、これは別問題だと考えております。
 以上、最後に提案までさせていただきましたけれども、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。(拍手)

発言情報

speech_id: 110803911X00219870526_006

発言者: 荻原宏康

speaker_id: 12216

日付: 1987-05-26

院: 衆議院

会議名: 科学技術委員会