遠藤要の発言 (法務委員会)
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○遠藤国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。
この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
昨年、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民の権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民に親しまれ、真に国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じております。
以下、当面の重要施策について申し述べます。
第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。
最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、犯罪発生件数が漸増の傾向を示しているだけでなく、内容的にも、保険金目当ての殺人・放火事件、身の代金目的の誘拐事件、流通過程にある食品への毒物混入や組織暴力団の対立抗争に起因する銃器による殺傷事件などの凶悪事犯が多発しているほか、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事件、地方公共団体の首長による汚職事件、大規模かつ巧妙な租税逋脱事件その他の不正事犯もその後を絶たず、また、覚せい剤を初めとする薬物の乱用が引き続き一般国民の間に拡散しつつあると認められるのであります。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を呼号し、過般の東京サミットの際における迎賓館等に対する手製弾発射事件に見られるように、悪質なゲリラ事犯を相次いで敢行しており、他方、右翼諸団体による不法越軌行動も一段と尖鋭化の度を強めている状況にあります。特に、このたびの朝日新聞社阪神支局員に対する殺傷事件は、現に警察当局において厳正な捜査を行っていると承知しておりますが、これは、まれに見る凶悪な事件であり、もしそれが言論封殺を企図したものであるとするならば、それは民主主義の根幹を破壊しかねない重大な事件と言わなければなりません。加えて、次代を担うべき少年の非行は、依然高水準を維持しているのでありまして、今後における犯罪の動向には、引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。
私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいりたいと存じております。
なお、刑法の全面改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますので、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進めてまいりたいと存じておりますが、一方で、最近におけるコンピューターによる情報処理組織の著しい発展及び普及に伴い、刑法等従来の罰則によっては的確な対応の困難なコンピューター関連の反社会的行為の発生を見るようになり、この種反社会的な行為は今後増加することが予想されますので、緊急にこれらに対処するための立法措置を講ずる必要があり、また、最近の国際的なテロ活動を反映して、我が国としても国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する国際条約を早急に締結することが国際的にも要請されるに至っており、これらの条約の義務の履行の上で必要とされる国外犯処罰規定の新設等の刑法その他の関係法規の整備を行うことが必要と認められることから、これらの点について、法制審議会の調査審議を願い、本年二月二十六日答申を受け、これに基づいて刑法等の一部を改正する法律案を取りまとめ、今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
また、一昨年の第百二回国会において刑事の確定訴訟記録の保管に関する法律の制定を求める請願が採択されましたことにもかんがみ、その立案作業を行ってまいりましたが、これについても、今国会に刑事確定訴訟記録法案として提出したところでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護活動についてであります。
犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、広く国民の理解と協力を得つつ、刑務所、少年院等における施設内処遇と保護観察等の社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいりたいと存じております。
そのためには、まず施設内処遇につき、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努めるとともに、仮釈放のより適正妥当な運用を図り、また、保護観察等の社会内処遇において、保護観察官と保護司との協働態勢及び更生保護会における処遇態勢を一層充実強化し、関係機関・団体との連携をさらに緊密にするなど、現下の情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。
また、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出しましたところ、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となったのでありますが、その後、法務省では、同法律案の修正を求める動きのあった日本弁護士連合会と合計二十六回の会議を持って、意見の交換を行うとともに、留置施設法案を所管する警察庁と意見調整を図り、必要な修正を加えた上、去る四月三十日、今国会に同法律案を再提出したものであります。
同法律案は、もはや時代に適合しなくなった現行監獄法を全面的に改めるもので、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善を行おうとするものでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
第三は、一般民事関係事務の処理、人権擁護活動及び訟務事件の処理についてであります。
一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、我が国経済の発展に伴って逐年増加を続けている登記事務の関係では、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、事務処理の適正円滑な遂行を図るため、登記事務のコンピューター化を初めとする登記事務処理体制の抜本的改善に努めてまいりたいと存じます。
なお、民事関係の立法につきましては、養子制度の改善合理化を図るための民法等の改正及びそれに伴う戸籍法の改正について、それぞれ法制審議会及び民事行政審議会の答申を得、その趣旨に沿って民法等の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
次に、人権擁護活動につきましては、国民の基本的人権の保障をより確かなものとするため、各種の広報活動によって、国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めるとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じ、関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいりたいと存じます。特にいじめの問題及び教職員による体罰の問題、さらには重大な社会問題となっております部落差別を初めとするあらゆる差別事象の問題につきましては、その根絶に寄与してまいりたいと考えております。
さらに、訟務事件の処理につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、複雑多様化した今日の社会経済情勢と国民の権利意識の変化を反映して、例えば、選挙訴訟、環境関係訴訟、原子力関係訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られるように、社会的にも法律的にも新たな問題を内包する重要かつ複雑な事件が増加しており、その結果いかんが直ちに国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくありませんので、今後とも事務処理体制の充実強化を図り、事件の適正円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。
第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
国際交流の活発化に伴い、我が国に出入国する内外人の数は逐年増大し、我が国に在留する外国人の活動の範囲や内容も一層複雑多様化しております。同時に不法入国、資格外活動、不法残留等の外国人による法違反行為、特に周辺アジア諸国から短期査証で入国した者による不法就労事犯は著しく増加している状況にあります。出入国管理事務は、このような情勢に適切に対応するとともに、国際協調の一層の進展に即応する責務を担っているのであり、その重要性はますます高まっておりますので、このような情勢を踏まえ、今後引き続き出入国及び在留外国人の管理に関する事務の迅速適正な処理及び組織・体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
なお、かねて懸案となっておりました外国人登録法の見直しにつきましては、指紋押捺義務の緩和を含む外国人登録法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
第五は、簡易裁判所の配置の適正化についてであります。
簡易裁判所は、昭和二十二年に少額軽微な事件を簡易迅速に処理することを目的として設立され、現在全国に五百七十五庁設置されております。簡易裁判所の配置は、創立以来約四十年の間、基本的な変更が加えられないまま現在に至っておりますが、その間の経済の発展等に伴い、人口の都市集中、交通事情の発達等、簡易裁判所の配置に関連する諸事情は大きく変動しております。その結果、一方ではほとんど利用されていない簡易裁判所がある反面、事件が激増し、非常に忙しい簡易裁判所もあるといった事件数の両極化現象が生じる等、裁判所の運営上種々の問題が生じ、もはや放置することができない状況となっております。
簡易裁判所の配置の見直しの問題は、国民の裁判を受ける利便に直接関係し、また、裁判所の配置という司法制度の基盤にかかわる問題でありますので、昭和六十一年二月、法制審議会に対し本問題の審議を求めましたところ、同審議会は、慎重な調査審議を経た上、同年九月十九日、全会一致で簡易裁判所の適正配置に関する答申をいたしました。
答申では、簡易裁判所の配置が社会の実情にそぐわなくなっているため裁判所全体の合理的な運営が困難になっているとし、現在の交通事情の改善等を考慮すると、事件数の少ない小規模な簡易裁判所については、答申に示された基準に従い、その相当数を統合し、また、事件の激増している大都市の簡易裁判所についてもできる限り統合することにより、簡易裁判所全体の充実強化を図るべきであるとしております。
法務省といたしましては、この答申の趣旨を尊重して最高裁判所とも十分協議をした上、簡易裁判所の適正配置の具体案を確定し、今国会に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案として提案したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
最後に、法務省の施設につきましては、昨年に引き続き整備を促進するとともに、事務処理の適正化と執務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。
以上、法務行政の重要施策について所信の一端を述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)
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