中曽根康弘の発言 (予算委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○中曽根内閣総理大臣 私は、国民の皆さんの御支援をいただき、御指導をいただきまして、在任五年目になりますけれども、なすことも少なくお恥ずかしい限りであると思います。仮に多少でもなすことがあったとすれば、それは国民の皆さんの御支援のたまものであり、かつ自由民主党の党員の皆さんの熱烈な御支援のたまものであり、かつ野党の皆様方の御理解をいただいた結果であると考えております。
 「戦後政治の総決算」と申し上げましたのは、私は戦後四十年間、昭和二十二年から国政に携わりまして、戦後の日本の歴史と功罪をともに分かち合ってきたものでございますが、戦前の経験もございます。そういう意味で、日本の戦争前、戦争後というものも比べ、これから二十一世紀に向かって日本が進む道を考えまして、そして、ここでこれをやらなければいけない、そういう考えに立って総決算という言葉を申し上げたのでございます。
 私は、戦後の四十年間、日本のこの歩みというものはすばらしい時代をつくったと思っております。よく申し上げているとおり、これは世界の歴史においてもほとんど並ぶことのないぐらいなすばらしい四十年間を日本人はつくり上げたと思っております。特に、民主主義が岩盤をしっかりと構築いたしました。そして、人権が尊重され、平和は続き、それから婦人の参政権を認められるとか、婦人の地位が著しく向上もし、それから中央と地方の格差が非常に減ってまいりました。それから国民の富が、余り大尽もいなければ貧しい方もいないという、中堅層に固まったちょうちん型の社会に日本はなってきまして、アメリカあたりは貧しい人と富んだ人の差が一対九ですが、日本は一対三であります。
 これはいかに日本の社会というものはほかの国に比べて公平、公正に近いかということを示して、これはぜひとも堅持していかなければならぬと思いますし、あるいは戦後の文化あるいは教育等を見ましても、子供たちを見ましても非常に伸び伸びとしておりますし、人権は保障され、言論の自由は確保され、国民の皆さんは好きなことを言える時代になりまして、この成果は我々はさらに持続していかなければならぬと思っております。
 しかしまた、一面見ますというと、この四十年間にさまざまな病理的現象も出てきております。それは、いじめであるとか、そのほか教育問題にも出てきておりますし、あるいは官庁が肥大化いたしまして、ややもすれば税金が重くなるという心配を国民の皆さんはお持ちでございます。そういう面のほかに、今や国民の重税感、特にサラリーマンの皆さんが減税してくれ、家庭の主婦の皆さんが減税せよ、そういう御注文が非常に強くなってまいりまして、不公平税制に対する指摘も強いのです。
 そういう意味におきまして、ここで四十年間の税制を再検討いたしまして、みんなが気持ちよく、これは国民でありますから、出せる人は税金を負担願うのは当然でございます。身分に応じ、力に応じて適切な税金を御負担していただいて、みんなに公平に、まあお国のためだから出しましょう、そういう税の体系にここで転換する必要がある。そういう意味において、行政改革、財政改革、それから教育の改革、それから税制の改革ということを申し上げまして、逐次実行し、今税制改革の大問題に、ここに来ておるところでございますが、これは二十一世紀の日本を見ますとどうしてもやらなければならぬときに来ていると思います。
 と申しますのは、今の税制の体系で見ますと所得税、法人税、お酒の税金、これが中心です。大体所得税で十六兆、それから法人税で約十二兆ぐらいですか。個人の所得税は四兆ぐらい、自主申告のもので事業所得など。そのほかお酒の税金で約二兆円ぐらいいただいておる。これが税金の中心でありまして、あとは相続税とかあるいは物品税とか、そのほかで約十一兆円ぐらいいただいておる。
 そうすると、これからの日本を考えますと、所得税を減らさなければいけない、法人税も外国並みに減らさなければいけない。これを減らしていくというと、国のお金をどこから持ってくるかという問題になります。しかも、外国はどんどん法人税も所得税も下げております。そうすると、日本が国際的にも競争力を持っていくためには外国並みに所得税も法人税も下げなければ、これは競争できません。今、もうそういうときに来ておるわけです。その上に国民の皆さんの重税感、不公平感があって、サラリーマンや家庭の主婦の皆さんからいつも我々は言われているわけですから、そういうひずみを是正して、そして正常な、国民がまあまあと言って協力してくださる税の体系に変える、そういうときになった。
 それで、所得税、法人税を下げなければいかぬというのに、では何でそれを補うかという問題が出ます。そうなると、もしそこに手をつけないでこのまま行ったら、所得税、法人税は減税していかなければならぬでしょう。そうなると税というものは、赤字公債に頼るわけにはまいりません。どこかで求めなければならぬ。そういう意味で、税制調査会等におきまして、今回の売上税あるいは利子課税という問題でこの問題を解決しようとしたわけでございます。これについて今いろいろ御意見が出ていることをよく承知しておりますが、よく御理解願う必要があると思っています。
 このまま行ったら国の財政は萎縮してまいりまして、そうして結局縮小再生産に日本の経済は入っていきましょう。これは景気を上げるという力と反対の方向に参ります。それから、地方財政は今の所得税、法人税、酒税の三二%を交付税でもらっているわけですから、これが減っていけば地方財政も非常に厳しくなる。それから、公共事業費ももう縮小に入っていかざるを得ない。そういうことで、国全体がこのまま放てきしておいたら、これはますます萎縮して小さくなっていく。
 それから大事な点は、いよいよ福祉社会、長寿社会が参ります。現在は、人口で見ますと、二十以上から六十まであるいは六十五までと言われますが、その働く人と、それから老人になった、援護を受けている、老人として扱われている方との比率は、今六人で一人養っています。しかし、二十一世紀、もう十年ぐらいたつというと三人で一人を養わなければならぬぐらいに老人がふえてまいります。そうなると、その老人を三人で養わなければならぬということになれば、養う方は税金が高くなったり、あるいは社会保険料が高くなったりせざるを得ません。そういう将来を考えてみると、日本の社会保障制度を健全に維持していくためにも、将来そういうものに耐え得るような国の財政構造に合しておかなければいけない。
 そういうような考えに立ちまして今回の税の改革をお願いしておるのでございまして、国民の皆さんに十分御説明申し上げたいと思っておるところでございます。

発言情報

speech_id: 110805261X00319870303_003

発言者: 中曽根康弘

speaker_id: 15356

日付: 1987-03-03

院: 衆議院

会議名: 予算委員会