黒田寛人の発言 (科学技術委員会)

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○黒田参考人 東京大学物性研究所の黒田でございます。
 私は、ここでSORと並んで今後の発展が期待されておりますレーザーについて意見を述べさせていただきます。まず最初に、簡単にレーザーの原理と現状を御説明させていただきまして、その次に、私たちが現在急務と考えておりますレーザーの短波長化、高輝度化及びその性能の高度化、そういうことを中心にお話しさせていただきたいと思います。
 お配りしたブリーフがございますけれども、最初の一ページに書いてございますレーザーという意味は、皆様御存じのようにライト・アンプリフィケーション・バイ・スティミュレーテッド・エミッション・オブ・ラジエーション、誘導輻射放出による光の増幅、こういう長ったらしい名前でありますけれども、もともとはレーザーの概念は全くマイクロ波から来たわけでありまして、マイクロ波の領域には、マイクロウエーブ・アンプリフィケーション・バイ・スティミュレーテッド・エミッション・オブ・ラジエーション、メーザーという概念がございまして、実はメーザー、レーザー、それから後で述べさせていただきます軟エックス線領域のレーザー、こういうものは、先ほどお話がございましたように、光の周波数領域あるいは波長領域からずっと連続的に続いているものでございまして、特にそこで断絶があるわけでございませんで、メーザー、レーザー、短波長のレーザー、そういうふうにつながってまいります。そういう意味で、コヒーレントと申しますか、光の発振器をつくろう、こういうアイデアと申すより、むしろこれはマイクロ波を始めた方たちが、より短波長、より短波長へという発想から光を考えましたように、今の私たちレーザーに携わっております者は、より短波長化、よりエックス線の方へ、短波長化、高輝度化、もっと光をという意味でありますけれども、そういうことは当然の、昔からの現実的な欲求及びその要請でございます。
 それで、光の発振器と申しますと、皆様方多分、光というのはどこにでもある、大昔から使っていて光というのは珍しくないと思われるかと思います。実はここにございます蛍光灯もそうでございますし、あるいはテレビもそうでございますけれども、いわゆる光の発振器、コヒーレントの発振器というものは全く存在しなかった。それが、例えば真空管ができまして、真空管を使いますと、皆様方もあるいは大昔に実験をやられたかもしれませんけれども、ぽんと信号を入れますとぽんと忠実に信号が出てくる。それで信号でラジオができてテレビができてきたわけでございますけれども、光の方はそういうことは全くできなかった。いわば光は大昔の煙と同じようなものを使っている、それは逆に、太陽がもともとあったために自然に使ってなれてしまったという面もあるかもしれないのですけれども、いわば位相の相関が全くない、エレクトロニクスからいくとノイズ、雑音であるという光を使って皆満足してきた、そういうことであります。ですから、そこには単なる強度の情報、何となく強さがこの程度という情報は使えますけれども、それがどういうコヒーレンス、コヒーレンスと言うとわかりにくいのですけれども、例えば海の波を考えていただけばいいのですが、どういうゆったりした波で大波が寄せてくる、波の谷の上と下とか、そういう情報が全く使われておりません。そういう意味で光は実に寂しい思いをしてきたというわけであります。ところが現在は、電気や音に関しては、例えば超音波も発振器がございますし、電子回路でもすばらしい電子発振管があるということで、発振現象は非常にノーマルで、エレクトロニクスあるいはそれに光を使ったオプトエレクトロニクスはもはや社会の中に融け込んでおるわけであります。そういう意味で、光は長い間信号ではなくて雑音状態であったわけで、その雑音状態のままでは、いわば車のエンジンをかけますとラジオががりがりと鳴るようなものでありまして、制御することはほとんどできませんで、いわゆるエレクトロニクスにはなり得ないということであります。
 一ページの下に書かしていただきましたように、そういう意味でラジオ、電子レンジ、テレビ、光通信、レーザーができましてレーザー加工、レーザーメス、レーザーレーダー、こういうものが発達してきたわけでありますけれども、そこでの欲求、ニーズは、常に周波数をふやしたい、もっと一秒間にたくさん情報をとりたい。例えばレーザーですと、半導体レーザーなどを用いますと一ギガビット通信がいとも簡単にできます。ところが、これの短波長化が進んでいきますと、それにさらに輪をかけて千ギガビット通信というものも可能になります。それから波長が短くなる、いわゆるマイクロ波からレーザーあるいは短波長レーザーになってきますと、相互作用ができると申しますか、働きかけて情報を引き出せる大きさがその光の大きさと同じぐらいになってまいります。ですから、マイクロ波ですと電子レンジの程度でございますけれども、それがレーザーになりますとサブミリ、さらには数千オングストロームのところに働きかけて、物質の根本にかかわって物質がどういう状態であるかということを探る、その辺は先ほど上坪参考人の方からお話があったわけでございますけれども、そういうことをより原子、ミクロのレベルまで使ってやりたい。さらにそこに、シンクロトロンとはちょっとまた違う性質でありますけれども、レーザーの持っているコヒーレンスを入れますとさらにそれの情報あるいはできることが飛躍的にふえる、こういうわけであります。
 次の二ページに簡単に書かさせていただいておりますけれども、これは大変難しい概念ではあるのですが、レーザーの基礎になっております自然放出と誘導放出をごく簡単に漫画としてごらんいただくための絵であります。
 自然放出と申しますのは、ここに書いてございますように励起原子とでも申しますか、例えば光を当てるとか電子をぶつけるということで、ある程度興奮させられたような原子をつくる、すると電子が動くわけであります。そうしますと、それは外から全然信号を入れなくても、ある一定時間あるいは確率で、しばらくたちますとぽつんと落ちてもとへ戻ってくる。これはある意味では非常に好ましくない性質でありまして、エレクトロニクスで言いますと、アンプをつけて電源を入れておくと勝手にどこかでがりがりとノイズを出している、こういうことと同じであります。これはいわゆるエレクトロニクスからいくと大変好ましからざる性質でありますけれども、実はこれは、周波数が上がるに従って、光の持っているいい点でもあって悪い点でもあるわけで、これを自然放出と申します。
 それに対しまして誘導放出と申しますのは、光の場合に光の吸収のちょうど逆過程になるわけでありますけれども、外から光を入れますと、その入れた光に応じて光が吸収される、あるいは光を入れた量に応じて、逆に誘導されて、光と同じ波長で、光と同じような性質を持った光で光を出してくる。これはちょっと不思議な気がするのですけれども、ラジオのエレクトロニクスでありますとかテレビのモジュレーションは実はこれを全部使っておるわけであります。そういう意味で格別不思議な現象でもない。ただ、これをきちんと導き出すには量子力学が必要でありまして、アインシュタインのころから言われましたスポンティニアスエミッション、これは実は量子雑音という概念とつながるのでありますけれども、これが量子力学の基本概念でありまして、いわば量子論を使いますと自然放出が出てくる。それに対しまして古典論と言われております、波でかく格好でいっている限りは誘導放出しか出てこない。そういう意味でどうしても量子力学が入ってくるわけでありますけれども、一たんレーザーが発振してしまいますと後はほとんど全部古典論で済んでしまいます。そういう意味で、レーザーが発振してしまいますと、後は古典論というよりも半古典論と言われておりますけれども、従来のエレクトロニクスと全く同じ考えでよろしいわけであります。
 次の三ページに、もうちょっとわかりやすい、あるいはかえってわかりにくいかもしれませんけれども、その概念が書いてございます。上と書きましたのは、今申しました原子の励起された状態、例えば光を吸ったとかあるいは電子をぶつけられて何かちょっと状態が変わったとか、そういう状態であります。基底状態と申しますのは、一番下のところに電子がいっぱい詰まっているという状態であります。それに対しまして励起状態は、何らかの形で光を当てるか電子をぶつけて一個か二個か励起した、ただし圧倒的にまだ下の方が多くて、とても励起状態の方が多いとは言えないという状態であります。ところが、これがレーザーの概念につながるわけでありますけれども、反転分布状態、これはむしろ非常に異常ではありますけれども、基底状態の数よりも励起状態の数の方が多いというわけであります。ですから、例えば水力発電を考えていただけばいいのですけれども、電気を使うかあるいは水をバケツでくみ上げるかしまして、上の方のダムの高いところに水を上げた状態である。上げるためには何らかの形で、電気があるいは人力でもってバケツで運ばなくちゃいかぬ、こういうことであります。上がった状態というのはそう簡単にできませんで、これを負温度状態と呼んでおります。負温度というのはおかしいのですけれども、これは正常な温度ではそうはならないという意味で異常な温度。温度を仮定するとすればそういう逆転したような状態になるという意味であります。
 いずれにしましても、こういう状態を一たんつくりますと、先ほど申しましたように、ちょうど相当する光が入りますと、上に行ったり下に行ったりする確率あるいはプロセスはその数によりますので、この場合には吸収よりも上から出てくる光の方が多くなる、これを誘導放出と言っております。そういう意味で、レーザーのポイントはどうやって上準位をつくるかということと、上準位の寿命と申しますけれども、その時間、例えば何秒ぐらい、あるいは何億分の一秒ぐらいそこにとまっていてくれるかということをしっかり規定してやりたい、そのためにはどういう物質を選べばいいか、あるいはどういう環境に置けばよろしいか、あるいはどういう光を入れればいいかということを議論してまいるわけてあります。それで一番大事なポイントは、下から上に行ったり上から下に行ったり、光になりやすさ、そういう概念でありますけれども、これをちょっと難しい言葉ですけれども誘導放出断面積と言っております。これは、光を吸って下から上に持ち上げられたり、また上から下に落ちてきたりするしやすさということであります。これは物質によって決まります。ですからレーザー開発の第一のポイントは、どういう物質を選んで、どういう波長に対してどういう仕掛けをするか、そういう意味でいわゆる物性、物の性質というものが大変にきいてまいります。
 ところが、これがまた、後でちょっとお話ししたいと思うのですけれども、非常にややこしい点でありまして、例えばシンクロトロンあるいはコンピューターですと、設計がきっちりできて、これをこうすればこういいという非常なシステムをかけるわけでありますけれども、レーザーの場合には非常に多様性がありまして、この波長に対してはこれがいいということで、いわば特注の大変高度なものをつくるという面が常につきまとうわけでありまして、これが一つレーザーにとっていろいろ複雑な面を生んでおります。いずれにしましても、この上と下との大きさを大きくすることによってミリ波からマイクロ波、赤外、可視光、紫外、軟エックス線、さらにはガンマ線というぐあいに電磁波が定義できるわけであります。
 次の四ページに参りまして、では増幅はどうやって起きるかということをちょっと書かせていただきましたので、ごらんいただきたいと思います。
 ここでは、外から反転分布を起こしたところに小さい信号を入れますと、これはエクスポネンシャルで、センチ当たりのg倍になるとしますと、lセンチいきますとエクスポネンシャルで増幅します。ところが大入力を入れますと、これはエクスポネンシャルで増幅していたものが、結局そこに入っている原子の数が幾ら多くなってもn個は超えられませんので、最終的にはちょうど長さに比例するような形になってしまう、こういう増幅の過程をとります。ですから、レーザーの出力が非常に小さいときとレーザーの出力が大きいときでは、増幅過程にしろ設計にしろ、皆違ってくる。これがレーザーの大出力化、高輝度化に伴う一つの難しい点であります。いずれにしましても、レーザーを大出力化し高輝度化し、あるいは波長可変、短波長化にしようとしますと、どういう新レーザー材料、例えば固体でありますとかガスでありますとかプラズマでありますとか、そういうものを選んでまいりまして、それのエネルギーレベルがどうなっているか、量子力学に絡んだような分光学をやりまして、それの特性を決めてそれから設計にかかるという、非常に複雑な過程が入るわけであります。
 次の五ページに、それの概念と申しますか、どんなことかという漫画をかいておりますけれども、これがシンクロトロンとは違いまして、レーザーの場合には——バウンドエレクトロンと言っておりますけれども、原子核の周りを電子がいっぱいくるくる回っております。これが普通の物質であります。卑近な例で、その辺にあります金でもそうですし、あるいはシリコン、どんな物質でもこういうふうになっております。それで一番外側のところ、最外殻と呼んでおりますけれども、電子は中から順番に、パウリの原理と言っておりますけれども、スピンの法則を満たしながらきっちり詰まってまいります。そしてそれを光かあるいは電子でもってたたき上げる。それがたまたまたたき上げたり励起されるところが一番外側でありますと、これはエネルギーレベルの関係で外に行けば行くほど電子軌道と申しますか、輪と輪の間隔が狭くなっておりますので、たまたま出てくる光が可視光あるいは赤外のところに来る、こういうことになります。ところがそれがちょっと中ぐらいになりますと、例えば真ん中ぐらいのところから最外殻に電子が励起されて、それがまた落ち込むとしますと、たまたま真空紫外から軟エックス線、そういう光が出てまいります。それが今度は逆に、一番インナーシェル、内殻と呼んでおりますけれども、内殼の電子がたたき出されまして、そこに外から電子が落ち込みますとエックス線が出てまいります。実はこのプロセスが医学で用いているエックス線、レントゲン線でございます。そうして、物質の中に例えば電子ビームをぶっつけまして内殻を励起してそこにエックス線を通す、こういう過程でもってエックス線を出すことができます。
 いずれにしましても、光を当てるあるいは電子をぶっつける、こういう過程でもって今述べましたように反転分布、すなわち下側にいる数よりも上の方にいる数が多い、こういう状態が無事うまくつくれたとしますと、これをつくるためにはかなりの短い時間あるいは大きな出力を瞬間的に入れる、こういう努力からあるいは特殊な磁場をかけるとか、そういうことをやってコントロールするわけでありますけれども、無事外側にいる反転分布した状態がつくれますと、これで反転分布したレーザー媒質ができる、そういうことになります。
 それで、こういう場合に、例えば軟エックス線の方まで持っていこうとしますと、後で述べますように多価イオンのプラズマというものを使えるようになるわけでありまして、これの配置は、例えば水素やヘリウムなんかと全く同じ配置をしている。ただし原子番号が少し大きくなってZナンバーがふえてくる、ただし電子配置は水素やヘリウムと全く同じ、こういう状態をつくります。
 今までのは一般論でございますけれども、次の六ページに書いてございますものが初期のころのルビーレーザーの絵をかいてあるわけでありまして、これのエネルギーレベルは何で決まるかと申しますと、これは現実にはクロムの周りにどんなふうに酸素がいるかというようなことで、電子と格子の相互作用と呼んでおりますけれども、こういう結晶の中の電磁場、結晶の中の電子配置というようなことで、これが固体レーザーの基礎になっておりまして結晶場と呼んでおります。それがたまたま、全然関係ないと思っておりました最近の超電導のようなものでは、こういう概念が大変生きてまいってきているようで、大変それは一つのおもしろいと思っている例であります。
 次の七ページにその実例が書いてございます。これはレーザーと申しますと実は非常に概念は簡単でございまして、一番上に書いてございますけれども、そういうレーザー媒質、例えばルビーでありますとか、宝石は何でもよろしいわけでありますけれども、そういうものを集光器の中に入れて励起用ランプを光らせる。一番簡単にはカメラのストロボを考えていただければよろしいのでありますけれども、カメラのストロボをぴかっと光らせまして、そのストロボの集光するようなところにルビーとかそういう固体を置いておきますと、先ほど申しました光励起を増幅して反転分布が起きる。そのところに両側に鏡を立てておきますと、鏡の中を光が何回も往復するわけであります。そうしますと、一回行くたびに反転分布を生じておりますと、数倍に増幅される。反転分布が起きてなければただ吸収されるだけ。ところが、何回も何回も行っておりますと、ちょうど鏡と鏡の間を平行に行ったものだけがうまく増幅されて横に行ったやつは何回か反射したときには抜けてこない、戻ってこない、こういうことでありますから、いわばそこを無限回に近く行きますと、そのたびに光がセレクションにかけられて非常に性質のいい光だけが生き残って、しかもそれが増幅される、そういうわけでエネルギーが一つのものに凝縮していくわけであります。これを一種の光のボース凝縮状態と呼んでおりますけれども、いずれにしましても、こうやってレーザー発振させることができるわけであります。そうして、例えばレーザーの特色の一つに超短パルスを出せるとか非常に変調をかけ得るという特色がございますけれども、その場合に、中にいろいろな光学素子を挿入しまして、それで電気的なモジュレーションをかけてレーザーをコントロールする、こういう方法をとっております。
 八ページにレーザーの特徴を書いてございますのでごらんになっていただきたいと思うのであります。レーザーの特徴は、今もちょっとお話ししましたけれども、コヒーレンスがある。いわゆる光発振器である。そういう意味で非常に新しい光である。それから位相やモードの確定ができる。それから、これは大変言われているわけでありますけれども、スペクトルが著しく狭くし得る。単色光である。極めて高輝度である。大出力で明るい。それから超短パルスと申しますか、地球を一秒間に七回り半回るわけでありますけれども、それがコンマ三ミリ進む時間、一ピコ秒、10のマイナス12乗秒あるいはもっと短い三十ミクロン進む時間、その時間になりますとすべての物は凍って見えるようになるわけで、ちょうど物質の極限状態になるわけで、物質の根本が見える、そういう時間になるわけでありますけれども、そういうものも発生することができる。それから大出力で波長程度まで集光することもできる。そのために非接触で超微細加工もできる。それから指向性が強い。指向性が強いために、例えば月との距離がはかれて、月にミラーを置いておきまして、地球から光を発しまして、それで返ってくる時間をはかって月との距離が三十センチオーダーでわかる、こういうことがございまして、これによって天文学は大変な進歩を遂げたわけであります。
 それからレーザーの特色としまして、超小型化も可能である。光集積回路というものも話題に上っております。それから、光周波数が確定するために量子レベルを使って時商標準にすることもできる。それから今度は逆に波長可変も、この波長可変というところが実はレーザーにとって長らく苦手であったわけでありますけれども、最近は逆に波長可変も非常に得意である、そういうレーザーも出てまいりまして、レーザーも波長可変はかなり可能な状況になってきました。ただ、そうは申しましてもすべてを兼ね備えることはなかなか難しく、その一つに、電気と光の交換効率が決してよくない。例えば半導体レーザーだけは別格で数十%、電気の半分くらい光になりますけれども、ほかのレーザーではなかなかそうはいかない。そういう意味で、それはやはり光のコストが高くつくということであります。
 そういう意味で、レーザーの応用に関しましては、やはりレーザーでしかできないことをやる、普通の光で間に合うことは普通の光でやった方がよほどいいのでありまして、レーザーでしかできないことをやる、そういうときに最高性能を発生するということになると思います。
 次のページにございますのは、これはただごらんになっていただければよろしいのでありますけれども、これは、先ほど固体内のルビーの話をしたわけでありますけれども、それからすぐにエネルギーレベル、これが希土類と申しますイオンでございまして、最近超電導の絡みで希土類は大変有名になっておりますが、実はこの希土類のスペクトル、こういうものはレーザーの発展の段階ではもう既に二十年以上前から詳細に調べられておりまして、これはディーケという人が調べたわけでありますけれども、こういうスペクトルを全部丹念に調べる、こういうことを通して固体内のエネルギーレベルを全部決めていく、こういう研究を通してレーザーの設計をやってまいるわけであります。
 それで、例えば固体レーザーを今例にとっておりますけれども、どんなことが今話題になっておるかと申しますと、一つは、固体レーザーにしろ気体レーザーにしろ、波長域を拡大したい、可変化したい、こういうことで、十一ページに記載してございますけれども、例えば真ん中にクロムが入っているものはルビーだけではありませんで、似たような物質が二、三十種類開発されておりまして、ちょっとずつガリウムが入ったりスカンジウムが入ったり、その辺が大変超電導と似ておりましてあれなんですけれども、もともとレーザーの方ではその辺のスカンジウムを入れたりガドリニウムを入れたりガリウムを入れたりして、いわゆる先ほど申しました結晶の中の電場をコントロールするということを、これは結晶場と申しておりますけれども、エネルギーレベルに全部きいてまいりますので、これをやることによってレーザーの波長をコントロールして、レーザーの諸性質をコントロールしてまいったわけであります。
 十二ページに書いてございますのは、じゃこういうことをして、今現在固体レーザーの例をお話ししておりますけれども、固体レーザーあるいは気体レーザーにしろ高効率化するときにどんなことをやられているかということであります。いろいろ地道な努力がありますが、根本的なことは発想の転換でありまして、例えば半導体レーザー励起という、半導体レーザーで固体レーザーをポンピングしたらどうなるだろう、そういう概念でございます。これは実は半導体レーザーは大変すばらしいレーザーでありますけれども、一つは大出力化とかモードの問題とか、やはり問題は残るわけであります。それとレーザーのいいところを結びつけてやれば実は数十%の効率の固体レーザーもできる、このようなこともございます。それから、スラブレーザーと申しておりますけれども、非常に薄板を使ったレーザーで、薄膜を使いまして熱の除去を図る、こういうことをやりまして、現在固体レーザーに関しましても波長可変化、高出力化あるいは場合によっては、今までいろいろなレーザーがたくさんあって、ある意味での始末に困っていたわけでありますけれども、それを一つや二つかのレーザーでもって波長可変と紫外まで含めての波長変換をなし遂げていこう、こういう新しい概念の研究も進みつつあります。
 次の十四ページには、今紫外のレーザーとして話題になっている、エキシマレーザーの簡単な説明が、絵が出ております。これは固体レーザーと違いまして、ガスレーザーの場合には気体でございまして励起が光ではなかなかできません。放電でやることになります。それで上のところに書いてございますのはエキシマレーザー、エキシマと申しますのはエキサイテッドダイプレックス、エキサイテッドダイマー、そういうのの略でございまして、ふだんの状態ではくっつかないようなキセノンとキセノン、ふだんの状態ではくっつかないクリプトンとフルオライド、そういうものが、電気を放電して励起状態に上げているときに微妙に静電状態が変わりまして、ファン・デル・ワールス力と言っておりますけれどもくっついて、帯電しまして、それで励起状態をつくる、こういうフォーメーションになります。こういうものを用いますと、たまたまこれの遷移が紫外から真空紫外に参ります。それで現在非常に紫外から真空紫外が欲しい。例えば光CVDでありますとかあるいは生物の研究とか、そういうことに紫外の光が欲しいのでありますけれども、レーザーではなかなか困難であったわけであります。それがこういうものを使いますと、紫外が非常に簡単に出るということで、現在開発のピッチが上がっておりますけれども、いわゆるガスレーザーを使っておる関係上、なかなか寿命の問題でありますとか大出力化の問題とか、そういう点でいま一つ今後の開発が要請されているテーマであります。
 それで十五ページに参りまして、下の図をごらんになっていただきたいのでありますけれども、これはそうやって短波長化の努力が随分進んできたわけでありますけれども、じゃどこまでできたかということを一年前までを含めて書いてあるわけであります。この絵で見ますと、波長が二百ナノメーター、これを二千オングストロームぐらいと言っておりますけれども、この近辺がいわゆる可視から紫外であります。これに関しては固体レーザーの非線形効果やあるいはエキシマレーザーによりましてかなりカバーできるようになったわけであります。ただし、この辺には光CVDあるいはマテリアルプロセシングあるいは基礎科学の面で随分強い光が欲しいのでありますけれども、それより短波長になりますと、なかなかいい光が出なかった。この辺は、そういう意味でシンクロトロンの大変にすばらしい成果を挙げた領域であるわけですけれども、現在はレーザーでもそれが出るようになって、むしろシンクロトロンではできないコヒーレンスの絡んだような光が出るようになった、そういうことであります。
 それで現在は、ここに書いてございますように一番最短波長が、この表では二十ナノメーター、約二百オングストロームになっておりますけれども、アメリカの最近の研究ではこれが約百オングストローム、この絵で言いますと十ナノメーター、さらには八十オングストローム、八ナノメーター、六ナノメーターということで表をはみ出してしまいまして、ここ半年のうちに十から左の方に来てしまいました。短波長の極限としましては六ナノメーター近辺まで来ているということでありまして、いわゆるレーザー発振している領域が軟エックス線の方まで参りました。これが今後の開発の一つの大きなテーマであろうと私たちは考えております。
 その次の十六ページに参りまして、現在までのレーザー技術について簡単にまとめさせていただきます。
 現在までのレーザー技術では、ここに書いてございますように新固体レーザー、色中心レーザー、色素レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、自由電子レーザー、プラズマ再結合レーザーというものがございます。これが現在開発が急務であるわけでありますけれども、それぞれ開発の要素的技術の展開は随分されているわけでありますけれども、なかなか一つのレーザーでもって全部を網羅するというところまでは参っておりません。例えば新固体レーザーですと、先ほど述べましたようにブレークスルーはやはり半導体レーザーとのカップリングによってエフィシェンシーをうんと上げるということと、それからさらに軟エックス線のポンピングができるように性能を上げていくということがテーマでございましょうし、波長可変化の問題も残ってまいります。それから半導体レーザーに関しましても、半導体レーザーではやはり不満足な、よりレーザーらしさ、よりコヒーレンス、そういうものをどうするか、さらに二次元のアレー化によってコストをどう下げていくかとか結晶成長技術をどうやっていくかとか、いろいろな大きなテーマが残っております。それから特に気体レーザーに関しましても、エキシマレーザーは紫外レーザーとしていいレーザーでございますので、これをもっともっと伸ばしていって、紫外の汎用レーザーにして特殊な目的にも使えるようにしたい、こういう要求もございます。
 それから先ほどのシンクロトロンでお話がございました自由電子レーザーでございますけれども、これはどういうものか、もうちょっとお話しさせていただきますと、先ほどシンクロトロンのお話が出たわけであります。シンクロトロンの場合には、単に光をぶち回してと申しますか、電子をぐるぐる回してそれが行ったところで光を出すという段階で、例えばちょっと不正確でありますけれども、雨の降った後に傘をぐるぐるぐると回しまして、傘の先から雨垂れが飛んでいってどこに飛んでいくか、飛んでいったところが光っている、そういう状況を考えていただければいいのです。そこでもうちょっと工夫をしまして、傘をちょっと揺する、これはいわば磁場をかけたりして電子を揺する、先ほど上坪参考人が申されましたいわばウイグラーをかけたり、ウイグルと申しますけれども、電子をぐるぐるとくすぐるとか揺さぶってやるわけであります。いわば傘をずっと回しながら手でもって少し調節して微妙に振動させてやる。そうしますと、たまたまそれをうまくやりますと、雨垂れが全部同じ方向に飛んでいって、二番目の雨垂れと三番目の雨垂れが全部同じところに飛んでいく。そうしますと、そこでは全部の光が干渉してくることになって強度が増しますので、そこでいわばレーザーに近いような光が出てくる、こういうものでございます。これをアンジュレーターと申しておりますけれども、こういうものを組み入れていきますと、いわゆるシンクロトロンのいいところを生かしながら、原理的には高効率で波長変換が可変なレーザーができる。現在は発振は実験室段階でフランスあたりでやっておりますけれども、可視光がやっと出たという段階であろうと思います。ただ、やはり原理的にすぐれたレーザーでありまして、私たちは今後やっていくレーザーの中に、大きなものは固体レーザーあるいは軟エックス線レーザーとともに自由電子レーザー、こういうものを大いにやっていかなければいけないのじゃないかというふうに考えております。
 それからプラズマ再結合レーザーと申しますのは、レーザープラズマを使いました多価イオンのレーザーでありまして、特徴は百から二百オングストロームくらいでレーザー発振が実証され、軟エックス線のレーザーとして現在発振している唯一のものである、そういうことでございます。
 現在開発中のレーザーの概況を述べさせていただきましたので、次に、ではこれこれこういうレーザーを使ってどういう新しいことがあるだろうかというお話を少しさせていただきたいと思います。
 十八ページに書いてございますのは、いわば先ほどレーザーはレーザーらしさを使わないとしようがない、レーザーでしかできないことをやらなければコスト的には勝てないし、またもったいないというお話をしたわけでありますけれども、じゃ例えばどんなものがあるだろうかということをちょっと述べさせていただきます。
 例えば、極限条件というときに短波長を使うとどんなことがあるだろうか。紫外域になりますと一つ出てきますのは新物質、これはエキゾチックマテリアルと呼んでおりますけれども、こういうものの合成や制御ができるだろう。いわゆる普通に熱平衡の状態で炉でつくりますと、あるいは長い波長のレーザー、長い時間のレーザーでつくりますと平衡状態、いわゆる熱でもってした炉と同じようなものしかできません、ところが、非常に短い時間のパルスあるいは非常に短い波長のレーザーを当てますと、ごく表面だけで、非常に短い時間だけでいわゆる合金ができたり、表面の短い時間だけで化学平衡的にはあり得ないようものができる、これを新物質の極限条件における合成と呼んでおりますけれども、こういうことがぼちぼちできるようになってまいりまして、今後もっともっと短波長の、しかも先の強い、高輝度の光ができてくれば、こういうことがある程度産業的にも成り立つ。またこれのいい点は、逆に存在しなかった新しいものが人工的につくれるということでありまして、超LSIとの絡みでも大変期待されるわけであります、それから、例えば紫外の方になりますと、がんやウイルスの研究ということで、がんやウイルスを修復したりこういうものをコントロールしたりということが可能でありますので、そういう生体物理、生体医学への研究も非常な可能性がございます。
 それから、先ほど述べましたように、超短時間でどんなことができるか。光がコンマ三ミリあるいは光が三十ミクロン進むという時間はおよそほとんど電子がとまって見える時間でありますので、物質の極限、物質がどうなっているかということがわかる、そういうことであります。
 それでは、例えばもっともっと今のレーザーが高輝度化していって短波長化になって大出力になったらどんなことがあるだろうか。その一つは軟エックス線レーザーでありますし、核融合でありますし、レーザー加速、レーザーによる加速器をつくる、こういうことがございます。レーザーによる加速器と申しますと、多分おなじみではないと思いますけれども、電子を加速するのにマイクロ波でなくてもよろしい。先ほど述べましたようにマイクロ波は大変波長が長い。そうしますと、うんと波長の短いもので強力な光電場があればこれで電子が加速できる。そうしますと、場合によっては現在の加速器が非常にコンパクトになりまして、さらに加速エネルギーがふえる、こういうことも原理的には可能でありまして、そこに新しい物理、例えば相対論的効果とか場合によっては、フォトンロケットと呼ばれておりますけれども、レーザーでもってロケット推進をする、こういうことも可能になると考えられるわけであります。
 それで、こういうことをちょっと一言でその一面を述べますと、地球の上にそういう非常に小さなミクロな星の世界をつくってしまう、超高温な星の世界をつくってしまう、そこでどういう新しい物理があるかということが研究できるということになります。これも一つのテーマであります。
 それでは、もう少しあと残りの時間をいただきまして、皆様方では普通のレーザーに関しては多分もう御存じの先生方も多いと思いますので、あるいは余りおなじみでないかもしれない軟エックス線エリアについてごくごく簡単に御説明して、それであと、じゃ私たちはこれからどういうふうにすればいいと思っているかというお話をちょっとさせていただきたいと思います。
 軟エックス線レーザーの研究の歴史が十九ページに書いてございますけれども、これは水素分子の分子レーザーの発振以来、非常に進歩がとまっていたわけであります。それが次の二十ページに書いてございますけれども、歴史は大体こういうふうになります。
 それは、七四年ごろに反転分布というものがイギリスのアイアンとピーコックという人たちによって発見されまして、水素と同じような配置のカーボンということであったわけでありますけれども、大変利得は小さかった。それから七七年ごろになりまして、ソ連のツェリキンそれからやはり同じイリューキンという人たちが、クロルとかカルシウムとか、こういうものを使いまして五百オングストロームとか数百オングストロームのところで、発振ではないけれども反転分布によって増幅が起きているということを報告したわけであります。そして七四年から八四年まで、フランスのジグレという人たちがアルミを用いまして、百オングストローム領域のところで反転分布が起きている、レーザーの可能性があるということをかなり報告しております。
 一番明確な報告は、「フィジカルレビューレター」とかそういう物理学のしっかりした雑誌に非常にクリアに出ておりますのは、やはりアメリカが八五年になって明確なレーザー作用があるということで、ネオンと同じような配置をしたセレンということで二百六オングストローム、二百九オングストローム。それから、やはり水素と同じようなカーボンで百八十二オングストローム。その後、先ほど述べましたように、ここ半年ぐらいのうちにセリウム、イットリウム、そういうもので希土類を主体にして種々の発振線が見つかりまして、約六十オングストロームから百オングストロームでかなりの発振に近いラインが出ております。そういう状態でございます。
 そうして、時間もございませんので、どんなふうにしてその発振をしたかという漫画だけごらんになっていただければいいと思うのですけれども、二十二ページにございまして、これがそういうレーザーで励起した軟エックス線レーザーの実験をしたときの例でございますけれども、アメリカのデータであります。両側から約十テラワットぐらいのガラスレーザーでありますけれども、これを集光しまして、セレン、金属セレンを超高温、超プラズマ状態にしまして、その中で先ほど述べましたように反転分布をつくりまして、そこで発振させる。それでスペクトルを見て二百オングストローム近辺に非常に強い発振線があるということを報告しているということであります。
 ただ、これの基礎には、やはり先ほど述べましたように、量子力学でありますとか分光学でありますとか、そういうことが大変に重要でありまして、このレーザー発振の結果を見ますと、従来の量子力学を修正しなくてはいけないような効果があるのではないか。いわゆる電磁量子力学の根本にかかわる問題というものが二、三あるということが指摘されております。
 二十四ページに参りまして、では今まで述べたようなことを中心に、内外の研究状況はどうかということを簡単に御説明させていただきたいと思います。
 それで、研究状況ということを、先ほどお話がありましたSORのように、これこれの装置で何GeVであって何アンペアである、そういうことで述べるのは大変難しいのであります。と申しますのは、レーザーの場合、ガスレーザー、固体レーザー、例えば固体レーザーだけでもレーザーは五百種類ぐらいはあると思います。それから、いろいろなポンピングスキームにしても、やはり何十種類もございます。それから、目的に応じて波長、出力、コヒーレンス、すべて違います。そういう意味で、一概にはディファインすることは難しいわけでありますけれども、それをあえて大ざっぱに全体の傾向がどうかということを少し述べさせていただきたいと思います。
 例えば、アメリカでありますけれども、これはやはり極めて活発である。残念ながら、日本だけ特におくれているというわけではございません、日本を含めて、世界を含めて、アメリカは圧倒的な強みであるというふうに申し上げてよろしいかと思います。特に私が感じております、あるいは述べさせていただきたいのは、アメリカの場合にはとかく応用と見られがちでありますけれども、実は違う。基礎物理、原理を大変に大事にしている。特に、基礎物理、基礎科学の強みというのは大変なものでございます。そういう意味で、大学及び国立研究所にしろ、基礎物理に主体を置いた、基礎科学に主体を置いたオリジナルな研究ということをやっております。それと同時に、システム化も産官学の協同でかなりうまくいっているように思います。それでその特徴は、やはり研究者の層が極めて厚い。各領域のバランスがとれている。特に高出力領域ではバランスがとれているように思います。
 それに対して、日本は活発であると思います。ただし、応用主体である、特に、この後お話があると思いますけれども、光通信、半導体レーザー関係は極めて活発であります。ただし、この主体はやはり民間でありまして、その応用のためのものが非常に活発になっている。そういう意味で、基礎的な、先端的なオリジナルな研究はやはりアメリカよりかなり劣っていると申し上げてよろしいと思います。それから、特に量産化をねらったもの、コストを下げるとか、そういうことに関してはいいのかもしれませんけれども、半導体レーザー以外で、やはり研究者の数が少ない。私の印象では、半導体レーザーも全部含めて研究者の数はアメリカの十分の一ないと思います。実際は、広いレーザーの領域を考えますと、研究者の数はもっと少ない。そういうことで、日本の場合にはレーザーに携わっている研究者のまず絶対数が少ないということで、人材の養成ということは、後で少し述べさせていただきますけれども、非常に急務であろうと思っております。
 これに対しまして、中国は最近非常に活発化しております。特に固体レーザー関係の結晶育成、非線形結晶、そういうことに成果を上げつつあります。研究者の数も最近急速にふえております。
 それから西ドイツでありますけれども、西ドイツは限定された特殊な分野でありますけれども、基礎を重視して研究を着々と進めている、そういう印象を持っております。数は多くないのでありますけれども、余裕があって、特定のテーマに関しては研究の流れをずっと続けてきている、そういう印象であります。
 イギリスは、数は少ないのでありますけれども、特殊な分野に、あるところに強みを持っている。
 フランスは、平均的レベルと言ってよろしいと思います。ただし、原子力関係、アイソトープだとかそういうことに関しては非常に大きな努力をされているように思います。
 ソ連でありますけれども、ソ連はやはり基礎科学、原理的な研究を重視しておりまして、大変すぐれたものがあります。歴史も研究の歴史は随分あります。ノーベル賞をもらいましたバソフ、プロホーロフ、両氏を含めまして研究の蓄積は分厚いと思います。ただし、特定の技術に関しては未発展の分野も多いのではないかというふうに考えられます。研究者の層は大変に厚いと思います。
 こういうことを考えまして、今後やるべきテーマということでありますけれども、二十五ページに少しキーワードを書かせていただきましたけれども、一つは、新しい物理、新しい科学の探索をやるべきではなかろうか。特に光によって起きる新しい現象、こういうものはレーザー全体の中での突破口でございますので、新しい光量子工学でありますとか、こういうものをどうしても研究していく必要があるだろうと思います。
 その一つに、レーザーのコヒーレントで強力な光電場によって電子をコントロールする。電子を、単なる普通の、従来のエレクトロニクスの電場でなく、レーザーでもってコントロールする、これがある意味ではレーザーとエレクトロニクスが結びついたオプトエレクトロニクスの一つの行き方ではなかろうか。もちろんウイークの方ではいろんな行き方がありますけれども、一つのかなりのコヒーレンシーを生かそうとするところでは、レーザーのコヒーレントな電場でもって電子をコントロールする新しいオプトエレクトロニクスというふうに考えておりますけれども、こういうものが必要であろう。これに関しては実験や理論はまだほとんどございません。というのは、そういうレーザーが今までなかったわけでありまして、やっとそういうレーザーができてきて、実験も理論も進歩していける領域であろう、こういうふうに思っております。
 それから二十六ページには、例えば軟エックス線レーザーがどういう分野とかかわるか、とかこういう意味で先ほどお話がございましたように、シンクロトロンの例を見ましても、より短波長化、高輝度化、より強いエックス線、より強い真空紫外、これは研究者の一つの夢でございますけれども、こういうものがどうやったら得られるだろうか。そうしますと、これにかかわる分野をちょっと挙げてみたわけでありますけれども、従来のレーザーとは大変に異なった分野が含まれるということにお気づきかと思います。例えば超微細加工、超薄膜の問題とか、例えばオングストロームの平面をどうやってつくるか。これは多分超LSIの問題とダイレクトに関係をするでありましょうし、それからプラズマ物理、自由電子レーザー、加速器、エックス線天文学、それから天文学、もちろん固体物理も絡みますけれども、高エネルギー物理、こういう従来のレーザーとはちょっと違った分野が非常に必要になってまいります。
 それで二十七ページに、そういうことをいろいろ考えまして、今後の展望と課題ということで三つほどまとめてございます。
 展望と課題は、やはり私は短波長化と高輝度化、もっと光をということであろうと思いますが、その一つとして、特に波長域の拡大のためには、単なるやみくもにやるというのではなくて、新しい原理に基づく新しいレーザー作用の発見、そういう基礎をもっと重視すべきであろうと思います。そういう新しいレーザー作用の発見は、逆に言いますと、非常に難しい面がございます。と申しますのは、何をやればよいかが明確でない。そういう意味で、新しいところを切り開いていくソフトと申しますか、構築しなければならないわけであります。例えば半導体レーザー、日本は大変進歩したわけでありますけれども、そこでは、不純物をなくすとか、装置をよくするとか、真空を上げるとか、非常に明確な目標があったように思います。その目標を一つ一つクリアしていくことが大変にうまくできてきているようでありますけれども、例えば短波長化したいあるいは何々したいというときに、何をどうすればよいかよくわからないというとき、やはり原理にのっとって一つ一つ着々とやっていくしかないというように私は思います。
 それから、その次に自由電子レーザー、これもやはりレーザー作用の解明と、原理的に何をどうすればよいかという点をまず詰めるということであろうと思います。特に自由電子レーザーの場合は、先ほどお話ございましたように、シンクロトロン、加速器とのカップリングでございますので、高性能の加速器、そういうものの開発が急務であります。
 こういうことがうまくいきますと、波長域の拡大として、例えば卓上に置けるような軟エックス線レーザーとかあるいは超小型な紫外から真空紫外域の自由電子レーザーによる波長可変レーザーというものの可能性も非常に出てまいります。いずれにしましても、こういうことをやろうと思いますと、周辺技術でございますけれども、基礎物理、基礎科学と電子工学、光先端技術の融合ということが不可欠であります。
 それでは最後に、時間をほんの少しいただきまして、今後の施策への要望ということを述べさせていただきたいと思います。
 今も述べさせていただきましたように、やはり大事な点は基礎、原理的研究の追求をやるということであろうと思います。例えば光とは何であるか、そういう本質的な問題を研究するということも、実はレーザーにとっては大変重要なことであります。特に日本の場合に、応用面あるいは量産面あるいはそれを使っての民生ということは黙っていても進歩する、そういう一つの流れがあるように思います。ところが、新しいレーザーをつくる、原理的にマイクロ波、それからさらに高性能化していく場合には、基礎を重視して何をどうすればいいかということ、分光学、量子力学、そういうことを含めての新しい取り組みが必要であろうと思います。
 それから二番目には、レーザーの多様性を認めていただきたい。それはどういうことかと申しますと、例えば基礎理論は量子力学から始まりまして、レーザー媒質は物理、物性、化学それから励起プロセスワーク、パワーエレクトロニクス、電気工学、レーザーの発振はウイークな電子工学、それを実際に設計するのは機械工学、こういうことが全部入っておりまして、その辺がコンピューターを一つつくるなどということとはかなりニュアンスが違うわけであります。そういう意味で、レーザーの多様性からも、例えばレーザー媒質も、ガスがあって固体があってプラズマがあって半導体もあるというようなことで、非常に多様性があります。
 それからもう一つ、レーザーの多様性としまして、レーザーをより一層高度化するときに、レーザーを代替物として使ったのでは、ほっておいたら育たないわけでありまして、やはりレーザーが本当に養成されてレーザーの役割を果たすには、私は社会の成熟度がかなりかかわっていると思っております。やはり社会が成熟してまいりまして、恐らくこんなものがあればもっともっとこうなってくるというときにレーザーが伸びるんであろうと思っておりまして、そういう意味では、今後レーザーを伸ばすとともにその周辺のソフトも伸びていかなければいけないのではないかと思っております。例えば、紫外とか真空紫外とか軟エックス線レーザーというものができれば使いたい、そういうものがあればこういう研究ができるというふうに多分皆様お考えだと思うのですけれども、一番大変な困難なところはやらない、どこかでできたら後は使いたい、こういうことであろうと思いますけれども、それではやはりこれからはいろいろな面でまずいのではなかろうかと思っております。そういう意味で、やはり現在は人材の養成が急務であろうというふうに考えております。
 それから、もちろん人材の養成だけではありませんで、研究費の飛躍的な増加も必要であろうと思います。と申しますのは、やはり今までと違いましてある程度、ビッグサイエンスではありませんけれども小さなビッグサイエンスということになっておりますので、どうしても国の強力なガイドと施策が必要であろう。特に新しいところを開拓していって種をまくという時期には非常に必要であろうと思っております。
 いずれにしましても、電子から光の時代、さらにより短波長へということは明確であろうと思います。必ず来る時代であります。そういう意味で、例えばシンクロトロンもその例でありますけれども、電子から光、さらに短波長、より高輝度ということでありまして、これをもし何もしないでいますと、ほとんど何もしないで見ていて、それで最後になって、十年たって、あのときにやっておけばよかったということがあるのではないかというふうに私は何となく恐れているわけであります。
 そういうわけで、例えば大学における研究、教育の拡充、研究者の養成ということは重要でありますので、ぜひお願いしたいと思っております。例えば、これは仮称でございますけれども国立の光科学研究所の設立とかあるいは大学にリージョナルセンターと申しますか量子光学の研究センターをつくるとか、あるいは現在これだけ光が使われていてどうしてもっと大学に光工学科がないのであろうか、いわゆる電気工学、電子工学はございますけれども、光はこれだけ大事である、今後もっともっと大事になるというときに、光工学あるいは光子工学、フォトンエンジニアリングあるいはフォトンサイエンスというものがあってもしかるべきではなかろうかというふうに思っておりまして、産官学の協力と協同で今後こういうところを国策としてやっていただきたいというふうに考えております。
 大変雑駁でありますけれども、私の意見を述べさせていただきました。

発言情報

speech_id: 110903911X00119870730_008

発言者: 黒田寛人

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日付: 1987-07-30

院: 衆議院

会議名: 科学技術委員会