嶋崎譲の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○嶋崎譲君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました昭和六十二年度補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。(拍手)
 御承知のように、現在我が国の経済はかつてない厳しい環境に直面しております。対外経済不均衡、とりわけ対米不均衡は、アメリカの議会において我が国をねらい撃ちした通商法案を今夏のうちにでも成立させようとしており、また、為替相場も、最近は若干円安傾向に転換してはいるものの、我が国経済にとりましては依然として厳しい水準を維持しているのであります。最近の民間調査機関の報告によりますと、円高による倒産は千件を超えたとも言われております。
 こうした厳しい経済状況に対処するため、政府は、六兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策及び所要の対外経済対策を講ずることを内容とする緊急経済対策を決定し、これを実施するため、その裏づけとして本補正予算が編成されたのであります。しかし、この補正予算では、内外の経済的課題にこたえることは不可能であると言わざるを得ないのであります。
 具体的に反対の理由を述べます。
 まず第一の反対の理由は、緊急経済対策そのものが、ベネチア・サミットの場で日本の国際収支黒字と国際的政策協調の怠慢を批判されることを回避するために、性急に具体化されたものでしかないという点であります。
 円高不況によって、上場企業の十社のうちの一社は営業赤字を出し、造船、鉄鋼、電機等、製造業の打撃は特に厳しい実情にあります。電力、ガスの非製造業も、昨年までの円高メリットが、不況による産業用電力の消費の減少で足をすくわれる状況にさえあると言われています。そして、失業率は三%を超え、最悪の状況が数カ月続いております。また、六十年九月のプラザ合意以来、日本の国際収支の黒字はふえ続け、急激なかつ大幅な円レートの上昇にもかかわらず、日本の黒字は六十年度五百五十億ドル、六十一年度九百三十八億ドルとふえ続け、海外からは日本の市場開放と思い切った内需拡大策による輸出依存型経済の転換が求められているのであります。
 こうした状況にもかかわらず、中曽根内閣は、日本経済にとってマイナス効果しかない売上税中心の税制改正を盛り込んだ六十二年度欠陥予算を提出し、その欠陥性をみずから認めるかのように、予算案の審議中に大型補正に言及するという、まさに泥縄式の対応でしかなかったのであります。
 総理は、臨調路線でがんじがらめに締め上げられた緊縮政策のもとでは、外国からの内需拡大要求を利用して、つまり外圧を利用して経済政策をつくるという対応に終始してきたのであります。したがって、本補正予算も旧来の発想の枠を超えず、中長期的な展望もない六十二年度予算と同様の欠陥が存在しているのであります。円高不況の深刻化がだれの目にも明らかであった昭和六十二年度予算編成を取り巻く状況にあっても、超緊縮の当初予算を編成しておいて、二兆円を超える補正予算を組んでも、その経済に対する効果は期待できるものではありません。今ほど抜本的な財政政策の転換が要請されているときはないのであります。
 ところが、先日発表された行革審の中岡報告でも、行財政改革の基本路線を堅持し、臨時・緊急の措置として公共事業等の増大が認められているにすぎません。中長期的展望を持った財政運営の転換が全く図られていないのであります。六兆円の緊急対策で六十二年度のGNPを仮に実質〇・九%程度押し上げても、六十二年度実質GNP成長率は二・五ないし三%程度で、政府の見通し三・五%はとても達成できないと私は思います。このことは、六十二年度において円高不況の脱出は望めないことになるのであります。
 第二に、本補正予算には、内需振興に不可欠な個人消費の拡大のための大幅所得減税が盛り込まれていない点を指摘しなければなりません。
 真の内需拡大の方策は、中間的な需要の追加ではなくて、最終需要の拡大でなくてはならないからであります。したがって、我が党など野党は、さきの通常国会で議長裁定によって設けられた税制改革協議会において、まず早急に昭和六十二年度所得税等の減税の規模、方法を決定し、補正予算に盛り込むよう主張してきたのであります。しかるに、政府・自民党が、前国会において与野党合意のもとで廃案となった税制改正、その中の少額貯蓄利子非課税制度、すなわちマル優の廃止に固執し、それを減税財源にあくまでも充当しようとする言動は、この問題の経緯並びに議会制民主主義の本旨に照らして断じて認めるわけにはいきません。(拍手)前年度決算剰余金や歳出入の見直し、さらにNTT株の売却益の一部などを財源にして、増税によらない今年度二兆円規模の所得減税を早急に実施するよう強く求めるものであります。(拍手)
 第三に、本補正予算の大きな部分を占めております公共事業についてでありますが、その事業規模、内容とも、国民の期待にこたえ内需拡大に資するものにはなっていないのであります。
 これからの公共事業は、新前川リポートでも述べているように、生活関連の社会資本の充実という観点から進められなければなりません。しかし、本補正予算は、こうした視点に欠けております。量の面でいつでも、一般公共事業費を一兆二千八百億円余り追加し、災害復旧事業や財政投融資、地方単独事業、補助事業を合わせて五兆円規模の事業量を確保するとしておりますが、当初予算を考えれば十分な事業量とは言えませんし、計画どおりの事業の実施さえ危ぶまれます。不況地域に重点配分すると言いますが、経済力が弱く財政的にも厳しい自治体に補助金を交付したとしましても、どれほどの事業量が確保できるのでありましょうか。自治体の負担を増大させるだけに終わってしまう可能性さえあります。国の一般会計の一兆三千億円弱というのは、極めて不十分な対応と言わざるを得ません。
 また、事業内容についても、内需拡大効果の大きなものに重点配分するとしておりますが、従来の配分方式を、ニーズに応じて再配分する方式の検討もなしに、地価を抑制するための有効な土地政策、経済政策が欠落しているため、国民生活基盤の整備が思うように進んでいないのであります。さらに、NTT株の売却益四千五百八十億円を公共団体や第三セクターや民活事業に無利子で融資するとしておりますが、幾ら無利子といえども返済せねばなりませんし、特に民活事業は利益の上がるものしか対象になり得ません。これでは国民の要求にこたえる公共事業を行うことは十分ではないのであります。
 第四に、雇用状況が深刻化しているにもかかわらず、公共事業の拡大以外、雇用失業対策が全く講じられていないのであります。
 当初予算におきまして三十万人雇用開発プログラムが大々的に打ち出されておりましたが、それにもかかわらず、今や失業率は三・二%を超え、史上最悪の状態であります。景気は底を打ったとの見方が一部にありますが、まだまだ円高不況、産業構造調整は続いていくと見られ、失業問題が一層深刻化していくことは明らかであります。何らかの抜本的な対策が必要不可欠であります。それにもかかわらず、本補正予算におきましては、緊急対策が不十分なばかりか、中長期的な対策も全く明確になっておりません。
 最後に、世界経済の活性化のためにも、軍縮の課題は避けて通ることはできません。
 平和憲法を持つ我が国は、率先して軍縮の働きかけを行うべきであります。しかるに、あろうことか中曽根内閣は、昭和六十二年度予算編成に当たって、円高、原油安など十分にGNP一%の枠に防衛費をおさめられたにもかかわらず、意図的にそれを突破したことは天も恐れぬ行為と言わなければなりません。(拍手)そればかりか、米ソの核均衡論の立場に立って、アラスカへの核兵器の配備を積極的に主張するに至っては、平和憲法に基づく平和外交のスタンスの枠を逸脱し、非核三原則の国会決議の精神を否定するものと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 加うるに、政府は、最近、東芝機械事件に関連して、事件のよって立つ因果関係もきわめずに、しかも閣内不統一の現状のもとで通産大臣を訪米させ、事態に対処しようとするがごときは、アメリカの意向に唯々諾々追随するだけであって、日本の主権国家としての存在さえ問われかねません。この問題で我が国がとるべき立場は、武器輸出禁止三原則の国会決議並びにそれに伴う政府統一見解に即して、東西両陣営を問わず厳しく対処することであり、これが平和日本の選択すべき唯一の道であります。
 我が党は、政府の補正予算編成に当たって、国民の軍縮平和の願いと、INF全廃に見られる国際的な軍縮の動向を踏まえ、円高による為替レートの変更、売上税の創設中止という条件を生かして、防衛費の対GNP一%の枠を今年度予算執行において厳守するよう申し入れてまいりましたが、中曽根内閣がいまだにその姿勢を示さないことは、まず初めに一%突破ありきの方針をみずから示したものにほかならず、断じて容認することはできません。
 以上の理由を申し述べ、私の反対討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 110905254X00519870717_008

発言者: 嶋崎譲

speaker_id: 860

日付: 1987-07-17

院: 衆議院

会議名: 本会議