中曽根康弘の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 宮地議員にお答えをいたします。
 まず、法案と与野党合意の問題でございますが、今回の法律案は、少額貯蓄非課税制度あるいは郵便貯金非課税制度に加えまして、少額公債利子非課税制度等を存続して、勤労者財産形成住宅貯蓄についても税率を半分に軽減する等の相当の見直しを行っておりまして、五月十二日の与野党国対委員長合意に言う売上税関連六法案の再提出に当たるとは考えておりません。やはり十二回行われた税制に関する協議会の結果及び報告を考慮いたしまして、十分検討して提出いたしたものでございます。
 それから、一括した理由でございますが、今回の法案に盛り込まれました各改正事項は、国税に関する制度全般に係る改革の必要性にかんがみまして、その一環として措置したものであります。今回の所得税の改正は、税率構造の累進緩和、配偶者特別控除の創設等により所得税負担の軽減合理化を図るとともに、恒久財源の確保の観点も踏まえまして、利子課税の改善合理化により課税ベースの拡大を図る措置を一体として行うとしておるものであり、個々の納税者にとっても、負担の軽減と増加が一体として明らかにされることが適当であると考えました。したがって、これらを切り離しまして別の法律案とすることは適当でないと考えたものでございます。
 減税財源の措置の問題でございますが、今回の税制改正に伴い生ずる財源不足額については、今後の各年度における歳入歳出両面を通ずる財政運営全体の中で処理してまいるつもりであります。なお、今後の展望につきましては、衆議院議長あっせんによる、直間比率の問題もあり、税制改革は急務であるとの御指摘に基づき、税制改革協議会がなお検討を続けられるということでありますので、その推移を見守りながら対処してまいるつもりでおります。
 不公平税制の問題でございますが、今回の税制改正では、資産に関する課税については、公平、公正という抜本的見直しの理念を踏まえ、利子課税の見直しを行うとともに、有価証券の譲渡益についても思い切った課税ベースの拡大を図っております。また、土地の譲渡益についても、超短期所有土地等に対する重課制度の創設、個人の事業用資産の買いかえ特例の縮減等、課税の一層の適正化を図るほか、土地の登記に対する登録免許税の引き上げ、有価証券取引税の見直し等の措置を講じておるところでございます。利子課税制度については、現行制度に内在するさまざまな問題を解消するための抜本的改組が必要であるとともに、この改組は、本格的減税のための恒久財源を確保するため不可欠であると考えた次第なのでございます。
 八月七日の与野党幹事長・書記長会談において、今回政府の提出した税制改正法案について、自民党から「利子課税制度のあり方については、総合課税への移行問題を含め、五年後に見直しを検討する。」ことを含む四項目の修正が示されまして、これによって国会審議の正常化が図られたと承知しております。今後国会の審議が進められる中でこの点についての具体化が図られる場合には、政府としてもこれを尊重してまいる考えでおります。
 次に、財形貯蓄の問題でございますが、一般的に貯蓄を優遇する必要性は、現在は前より非常に少なくなっておるという状態です。いわば現役のサラリーマン等を対象とする財形制度については、これを特別扱いして非課税制度を存続するということは、公平、公正を旨とする今回の税制改正の基本理念から見て必ずしも適当ではない面もあるのです。しかし、勤労者の財産形成の中でも、老後に備える年金貯蓄及び住宅取得のための貯蓄については、特にこれを支援する必要が高いという判断から、この二つの目的のための、財形貯蓄については低率による分離課税を行う特例措置を御提案した次第なのでございます。
 しかし、先ほども申し上げました幹事長・書記長会談において、年金、住宅に係る財形貯蓄の利子は非課税とするという修正が示され、国会の審議が正常化されました。今後審議の状況によりその具体化が図られる場合には、政府としてもこれを尊重してまいる考えでおります。
 次に、減税の規模の問題でございますが、今回の所得税減税は、中堅所得層の重圧感、不公平感に配慮して、働き盛りの中堅サラリーマンの税負担を大幅に軽減し、あわせて内外からの内需拡大の要請にこたえたものであります。財源不足につきましては、六十二年度分については、六十一年度分剰余金を含め歳入歳出両面を通ずる六十二年度財政運営全体の中で処理するほか、六十三年度以降についても、今後各年度における歳入歳出両面を通ずる財政運営全体の中で処理してまいるつもりであり、一時的な財源であるNTT株式売却益を恒久的な財源をもって充てるべき減税に使うことは必ずしも適当でないと考えております。
 さらに、先ほどの幹事長・書記長会談におきまして、自民党から二千億円の減税上積みを含む四項目の修正が示されまして国会運営が正常化いたしましたが、これらにつきましても、政府といたしましては、具体化が進められる中で尊重してまいるつもりであります。
 住民税の減税につきましては、この財源は道府県民税利子割をもって充てるといたしております。利子割収入が平年度化するまでは数年を要します。昭和六十三年度に見込まれる収入は、最終的に予定している利子割収入の一部のみであります。そのため、現下の厳しい地方財政の状況にもかんがみまして、平年度の利子割収入に見合う規模の減税は、六十三年度、六十四年度の二段階で実施するということにしたものであります。
 地方財政対策でございますが、巨額の借入金残高を抱えているなど、地方財政は極めて厳しい状況に置かれている上、各地方団体の財政運営においても公債費負担が増大してきておりまして、財政構造の健全化を図る必要がございます。このような観点から、補正予算に基づく追加公共事業費等に係る地方負担についても、全額を地方債によることなく、三千五百億円の地方交付税の増額を図ることといたしました。今後とも、行財政の守備範囲の見直し、行財政運営の効率化等により、引き続き地方歳出の徹底した節減合理化とともに、地方一般財源の充実も図っていく必要があると考えております。
 補助金カットにつきましては、行政改革を進め効率的な政府を進めていくためには、やはり補助金カットは進めなければならぬのでございます。今後ともこの整理合理化は引き続き推進いたしたいと考えております。もとより、地方公共団体とよく相談した上で、これはそごのないように行いたいと思う次第でございます。
 長短区分の変更の効果でございますが、今回、税制上の措置として超短期所有土地等の譲渡益に対する重課制度を創設するとともに、土地譲渡所得に係る長短区分を十年から五年に変更する措置を講じました。これらは土地の供給増に配意したものでありまして、相応の効果があると期待しております。
 土地の私有権の制限の問題でございますが、憲法にあるように、公共目的のためには私権もある程度制限せざるを得ないと認められておるところであり、所有権には責任を伴うということも学説で通説となっておるところでございます。しかし、公共性の濃淡という問題になりますと、そのとき、その場所によっておのおの変わってまいります。東京都心の場合と地方の府県の山岳地帯の場合とでは、公共性の濃淡は著しく違ってまいります。そういうような全体としての考えから、適正な公共性をどの程度認めるかということは非常に難しい問題でございます。
 現在、土地収用法等がございますけれども、この発動はなかなからゅうちょされている面もございます。しかし、現在の東京やその他大都会の地価の状況等を見ますと、これらについて私有権がある程度、公共性のためにさらに制限を受けるということは、理論的にはやむを得ない状況に来ておる。しかし、具体的にどのようにするかということは相当な研究を要する部分がありまして、現在さまざまな審議会その他におきまして検討を加えられておるところでございます。今後とも、我々としては慎重にそれらに対処いたしますが、基本的には今申し上げましたような状況で、公共性というものをやはりある段階においては考えでいいのではないか、そう考えておる次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 中曽根康弘

speaker_id: 15356

日付: 1987-08-18

院: 衆議院

会議名: 本会議