及川一夫の発言 (本会議)
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○及川一夫君 初めに、本論に入る前ではございますが、総理に緊急にお尋ねいたします。
昨日、ソ連政府が我が国の駐モスクワ大使館付駐在防衛官及び民間会社員に国外退去を求めたとのことでありますが、この経緯及び日本政府の対応についてぜひお答えいただきたいことをお願い申し上げておきます。
私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となっているいわゆるNTT株式の売り払い収入の活用に関する二法案について、この法案は減税の財源問題と密接に絡んでいるものと理解し、このままでは賛成できないとの立場に立ち、総理大臣を初め関係各大臣にその考えをただし、再考を強く求めるものであります。
以下、その理由を明らかにいたしたいと思います。
その第一点は、電気通信事業の現状に対する評価と株価の問題であります。
電気通信事業が百年以上の歴史を持ち、日本の産業、経済、社会の発展に寄与してきたことは今さら申すまでもありません。戦前はともかく、電信電話公社となった昭和二十八年以来七次にわたる拡充計画が推進され、この間、電話設備の自動化、自動即時化を中心とした設備投資額は、民営化を含め三十兆円を超えています。しかも、これらに必要とした資金は、自前とも言うべき電信電話債券の発行と内部資金を充て、政府からの手助けは財政投融資などの約一兆二千億円にすぎなかったのであります。
一方、昭和五十六年から五十九年までの四年間に、政府の赤字財政を助けるため臨時国庫納付金として計六千八百億円、民営化の際四兆九千六百億円に達していた債券の返済のため、二年間で元金と金利で計一兆六千億円を返し、さらに税額約七千億円を支払い、そして今本格的な競争の時代を迎えようとしているのであります。
総理、私はあなたのリップサービスを聞く気はありません。しかし、私は、NTTの株価が政府の予想を超え、その結果として売り払い収入の活用問題が生じていることを考えるとき、労使はもとより、電電公社並びにNTTの努力、我が国の産業経済そして政府財政に果たした貢献、国民そして利用者に培ってきた信頼がなければ達成できなかったのではないかと判断しているだけに、民営化の際の論議を思い起こし、改めてNTT事業
に対する総理の評価をお聞きしたいのであります。
第二点は、第一点の評価にも関連いたしますが、電気通信事業への新規参入をめぐる問題について総理大臣並びに郵政大臣にお聞きいたしたいと思います。
ずばり一言で言えば、新規参入の企業には育成政策をとり、NTTには、先発巨大企業であるという理由のもとに、許認可制度を盾に有形無形の規制を加え、いわば原則規制・例外自由というNTTのタイムリーな事業運営の展開を難しくしている現状は、極めて問題があると言わねばなりません。しかも、新規参入の企業は、ドル箱と言われる東京—名古屋—大阪間八千億円市場に限っての参加であります。この地域はいわば完成された田地田畑のようなものであります。水を入れ、種をまきさえすれば実りが約束されている市場であります。この意味で、新規参入企業は基本的施設への投資が不要であるだけに、低廉な料金あるいは値下げも容易にできるのであります。
これに対し、NTTは公共性、公益性、そしてあまねく公平なサービスの確保を至上命題とし、利益の有無だけで事業運営をしてはならないと法律で定められ、こうした地域を多く抱えての競争への参加であります。
このように、競争に入る出発の時点で大きなハンディがあって、果たして公正競争と言えるでありましょうか。アクセスチャージ問題が棚上げされている現状、第二KDDの調整が失敗しているだけに気になるのでありますが、競争のあり方と需給調整条項の意味、そして受益者負担の性格を持つ料金体系の検討とコスト主義の関係など、事業法制定から二年を経ている経過にかんがみ、検討を要する事項が多々あると思いますが、どのような認識を持っておられるか明確にしていただきたいのであります。
第三点は、NTT株売り払い収入の活用問題をめぐって、総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
その一つは、本件については、これまで政府及び各党とも「株式売却益の使途」という言葉を使ってまいりました。ところが、今回は「株式売り払い収入の活用」と改めているのであります。この言い直しの理由は那辺にあるのでしょうか。
特に、「使途」という言葉が「活用」に変わった点については、マル優制度廃止を推進するため、この法律を成立させることによって、NTT株の売却収入をもって充当せよという我が党初め野党の主張を封殺しようとする意図的なものが隠されているように思えてならないのですが、いかがでしょうか。
二つとして、売却益の使途あるいは売り払い収入の活用については、昭和六十年六月、国債整理基金に繰り入れることが決定し、六十一年度から実施され、実質的に二年目に入ったばかりであります。にもかかわらず、早くも今臨時国会でその活用範囲を広める提案がなされていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。第百一から百二国会にかけて、我が党は、電信電話債券の返済に充てよ、社会福祉の充実に使用すべきだなどの意見を表明してまいりましたが、提案が公共的事業への貸付金として充当させることに限ったことは附帯決議を無視しており、いわゆる使途の決定に当たっては野党の意見を尊重したいという当時の政府の態度表明にも反するものであり、納得できないのであります。
さらに、三つとして、活用の範囲を広める理由として、売り払い収入が予定する国債の償還額を上回ったことを挙げていますが、それなら、予定する償還額とは幾らを指すのか明確にしていただきたいのであります。
さらにまた、四つとして、本年度以降予定されている百九十五万株ずつ三年間、つまり五百八十五万株の売り払い収入は幾らになるのでありましょうか。六十二年度の予算上の売却予定価格は一株百十九万七千円となっていますが、果たしてこの価格で売却するのでしょうか。昨日の引け値でNTT株は二百五十六万円となっています。六十二年度は一括して証券会社に売却する方法をとるのでありましょう。この場合、常識的には直前一週間ぐらいの平均株価の三ないし五%引きで売却すると言われています。この常識と大きく外れないと思われる一株二百五十万円で私が試算をすると、六十二年度一年分で約四兆八千七百五十億円、六十四年度までの三年分ということになると、実に十四兆六千二百五十億円になるのであります。
そして、国債償還額を、大蔵省が発行している国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算に基づいて算出いたしますと、六十二年度は二兆二千億円となっており、三年分をまとめると六兆六千億円必要となっております。つまり、NTTの売り払い収入は予定された国債償還額を六十二年度で二兆二千七百五十億円、三年分まとめれば八兆二百五十億円も上回るということになるのであります。
総理並びに大蔵大臣、これだけの上回った売り払い収入を、地方自治体の社会資本の充実のみに活用されるというのでしょうか。野党からどんなによい提案があっても、その意見には耳をかさないというのですか。使途の決定権を政府・与党だけで独占しようというのですか。明確に答えてほしいのであります。
五つとして、なぜこれだけ確実な見通しがあるにもかかわらず、減税財源として使用することができないのですか。固執される理由が全く理解できないのであります。衆議院における論議では、使用できない理由として、将来償還財源にならないからと答えています。しからば、無利子で貸す金利分はどう理解すべきなのでありましょうか。先ほど指摘をした八兆二百五十億円を例にとれば、金利五%と見ても、年間約四千十二億円の償還財源が実質的に失われる計算になるのであります。もちろん、社会資本の充実への投資はそれなりに経済を刺激するでありましょう。そして、やがて税の増収という形において返ってくるとは思います。
大蔵大臣、もしこうした経済の原理をお認めになるなら、減税も即内需拡大策であり、景気の活性化にはね返って税の自然増収につながるのではありませんか。金利であれ、減税であれ、税という形において返ってくることと同じではありませんか。あなたはニューリーダーの一人と自負され、積極財政論者として知られています。この先、その信念どおり積極財政でいくのですか。それとも、中曽根総理が志向してきた緊縮財政でいくのですか。国民の重大な関心事だけに、ぜひ明確な態度を示してほしいのであります。
六つとして、総理、あなたは昨年の同日選挙において所得税の減税をぶち上げ、財源についてはいろいろ知恵を絞る、国有財産もある、NTTや日本航空の株の売却もある、減税財源に増税があるとは限らないと演説をしておられます。これは新聞記事の要約ですが、よもや誤報とはおっしゃらないでしょう。それとも、知恵を絞る一例として挙げただけであり、実施を約束したものではないとおっしゃるのですか。この演説で総理は三百議席を超える大勝利を決定的としたのですから、お答えいかんによっては、国民は、また公約違反の発言をしているという気持ちになるのではないでしょうか。はっきりとした態度を示していただきたいのであります。
また、総理が言う知恵を絞るということは、前言を翻し、理屈さえつけばへ理屈でもただただ押し通すということが総理としての知恵なのでありましょうか。私はそう思いたくないのであります。私なら、国債償還のための元金という性格を崩したくないというなら、百歩譲る形ではありますが、例えば減税財源のために売り払い収入を無利子で活用させることだってできるではないかと言いたいのであります。
そして、その返済は、既に六十一年度決算で明らかなとおり、二兆四千億円の自然増収があり、この伸び率九・六%は、内需拡大のための六兆円補正から来る景気の浮揚というプラス要素を含めれば、六十二年度にも十分維持されるはずであります。これを単純計算すると四兆七千億円がさらに上積みされ、六十一、六十二年度合わせて七兆円にも上る増収が考えられるだけに、売り払い収入から借りたとしても返せるし、我が党初め野党三党が主張する二兆円減税の財源は既に確保されていると言い得るのであります。
総理、そして大蔵大臣、これでもあなたはNTT株売り払い収入の活用の範囲を減税にまで広めることに反対なさるのでしょうか。国民は重大な関心を持っています。腹を決めてお答えいただきたいのであります。
最後に、税制改革に対する基本的な受けとめ方についてただしたいのであります。
総理、私は私なりに税制を勉強する過程で、ある発見をいたしました。それは、我が国の国語辞典あるいは百科事典によって税及び租税という言葉の意味を求めたところ、何と説明されていると思いますか。若干のニュアンスの違いがあっても、おおむね、税に対しては年貢ないしは貢ぎ物とあり、租税とは権力によって強制的に取り立てる金銭と書かれているのであります。これは国語学者の誤解なのでありましょうか、それとも認識不足によるものでありましょうか。総理、この解釈に疑問を感じませんか。
私は、税制改革に当たっては、やはり税とは何ぞやという問題を初め、本質論を交わさなければならないと思います。国民の理解と納得を前提に、その意識の改革を含めてやる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。そしてまた、各国の税制にはそれぞれの歴史があり、他国の例を当てはめるにしても、単なる人まねであってはならないこと、改革には国民の合意が必要であり、そのためには手順を大事にし、長い時間がかかってもそれを認め、やり通すといった気概が必要だと思うのであります。この立場に立つとき、なぜ今もってマル優廃止に固執されるのか理解できないのであります。
総理、冷静に考えてください。マル優を政府の提案どおり廃止したとしても、六十二年度、六十三年度、一体どの程度の財源が確保されるというのでしょうか。二百億、一千億程度の単位ではありませんか。政府が期待する一兆六千億などという財源は十年先の話なのであります。それでも固執されるのでしょうか。
一将功成って万骨枯るといいますが、総理、あなたは、引退の花道を飾ってもらうために、国民の意思に反した施策をとられてうれしく思うのでしょうか。総理の賢明さで腹の底の底をこの際明らかにすべきことを強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕