山田勇の発言 (本会議)

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○山田勇君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま提案されました所得税法等の一部を改正する法律案並びに地方税法の一部を改正する法律案につきまして、中曽根総理並びに関係大臣に質問いたします。
 まず、総理は、税に対する国民一般の感情をどのように認識しているのでしょうか。今日のような福祉社会にあっては、その福祉の財源や公共事業のため、ひいては国民全体の幸福の増進のために、国民がそれぞれの負担能力や公共サービスの享受の度合いに応じて喜んで税を納めるという気持ちを育てることが大切ではないでしょうか。国民のすべてが笑顔で税金を納める、何とすばらしいことでしょう。
 しかし、一般的に見て、現実はそれとはかなりかけ離れたものになっていると言わざるを得ません。その背景には、国民の間に蔓延している税に関する不公平感が挙げられます。すなわち、税制面では、重税感に加えて、トーゴーサンとも呼ばれるところの給与所得者を中心とする不公平感であります。
 一方、税の使い道である政府の支出面では、補助金などの非効率、むだ遣いに対する納税者の不信であります。この支出面については、行政改革の断行以外に方法はないわけでありますが、補助金の整理、削減はほとんど手つかずのままで、単に国の補助率だけをカットし、地方への負担の転嫁が行われています。
 中曽根内閣が成立以来最重要政策の一つとして掲げてきた行政改革の達成度について、五年間を振り返りどのような認識をお持ちでしょうか。まず第一に、総理の御所見をお伺いいたします。
 ところで、国民の税に対する不満のもう一方の柱であります税制面については、その改革が今や最も重要な政治課題となっております。この改革においては、当然、国民の不公平感を払拭することにその主眼が置かれなければなりません。
 そこで、第二に、利子課税制度の問題、すなわちマル優制度の廃止についてお尋ねをいたします。
 政府の提案理由説明によりますと、それは「実質的な負担の公平を確保する等の見地から」原則廃止するとされています。もしそのように考えるのであれば、なぜマル優の不正利用防止を図ろうとしないのでしょうか。例えばマル優カードの導入などによって個人預金の名寄せを徹底すれば、マル優の限度額管理は十分にできるはずであります。ところが、そのような努力を放棄して一律分離課税を行おうという政府の姿勢は、明らかに行政の怠慢と言わざるを得ません。
 しかも、マル優の原則廃止は、今後高齢化社会が一層進んでいくことを考え合わせるならば、問題なしとは言えないのであります。政府は、六十五歳以上の高齢者に対してはマル優を存続させるのだから十分だと考えているのでしょうが、六十歳で定年を迎え、これからは退職金を中心に生計を立てていこうと思っている人々にとってはどうでしょうか。長い間一生懸命働いて、やっと手にした退職金をほとんどの人は預金して、その預金が目減りするのを最小限に抑えようとするのであります。ところが、もし二〇%の一律分離課税が適用されるとしますと、実質的にはかなりの増税となってしまいます。しかも、マル優廃止の見返りともいえる所得税減税は、退職してしまえばその恩恵すら受けることができないのであります。また、マル優廃止は、小口預金者に対しても不公平をますます助長することになりかねません。
 政府は、大口預金者も同一の税率が課せられるのだから公平であり、むしろ大口預金者は多額の税を納めることになるとでも言うのでしょうか。金融の自由化が進み、大口預金の金利が通常の預金のそれよりも高くなっている現在、同率の課税では従来の税率よりも大幅に引き下がり、しかも、利率の高い大口預金者の方が利子の取り分においてずっと有利になってしまうのではないでしょうか。これでは金持ち優遇というそしりは免れません。このようなマル優制度の廃止に伴う問題について、総理並びに大蔵大臣はどのようにお考えになっているのかお聞かせを願いたい。
 第三は、所得税と地方税の減税についてであります。
 中堅所得者層の重税感、税の不公平感を解消するためにも、また、政府の国際公約でもある内需の拡大を促す意味でも、大規模な所得税減税は急務であります。我々は二兆円規模の所得税減税を先行させることを要求してまいりましたが、政府・自民党は、わずか一兆五千億円余りで済まそうとしているであります。
 地方税の減税についてもその規模は十分とは言えず、しかも、六十三年、六十四年と二段階に分けてようやく行うことになっております。これでは内需拡大に結びつく効果はそれほど期待できないのではないでしょうか。六十一年度の決算剰余金やNTT株売却益は、補正予算や国債整理基金への繰り入れ予定額を差し引いたとしても、合計三兆八千五百億円も余裕があると考えられるのでありますが、なぜ政府はその財源の一部を用いて減税の上積みを行おうとしないのでしょうか。
 加えて、減税の内容についても、扶養控除やサラリーマンの特定支出控除制度など不十分であり、給与所得者の不満を解消するのにはほど遠いものと言わざるを得ません。総理並びに大蔵大臣、自治大臣に御所見をお伺いいたします。
 第四は、株式売却益や土地に対する課税についてであります。
 勤労者の所得に対しては源泉徴収でいや応なく課税する反面、株式売却益に対しては実質野放し状態になっています。このため資金的に余裕のある人が株式投資に走り、最近の株価の高騰となったことは説明するまでもありません。土地についても政府の無策の結果、投機の対象となり、都心部の異常なまでの地価高騰を招いたわけであります。土地を持っている人はその恩恵を受けたでしょうが、これから住宅を取得しようとしている勤労者にとっては、マイホームを東京近郊に持つことはもはや不可能としか言いようがありません。このような一部の人ばかりが膨大な利益を享受し、持てる者と持たざる者との格差がどんどん拡大していることに対して政府はどのような認識をお持ちでしょうか。
 加えて、来年は固定資産税の評価がえの年に当たります。最近の地価の高騰を考えますと、大幅な固定資産税の上昇が予想され、このままでは都心部の人口の空洞化に一層拍車がかかると思われます。現在三本立てになっている土地の評価方法の問題を含め、土地税制のあり方について議論を十分深めておく必要があると考えます。以上について、総理並びに大蔵大臣、自治大臣の答弁を求めるものであります。
 さて、税制改革は総合的かつ長期的な視野に立つことが不可欠であり、その場しのぎの拙速主義であってはなりません。そこで、二十一世紀をにらんだ抜本的な税制改革の視点の中で、今回の改正案をどのように総理は位置づけているのか、お尋ねいたします。任期残りわずかとなった総理として、有終の美を飾る意味からも、後世の国民から、ああ、中曽根総理のおかげで喜んで納税の義務が果たせる世の中になったと評価を受けるような税制改革の基盤づくりを、後に続くニューリーダーの方々にしっかりとバトンタッチされることを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110915254X01019870904_029

発言者: 山田勇

speaker_id: 8023

日付: 1987-09-04

院: 参議院

会議名: 本会議