高沢寅男の発言 (本会議)

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○高沢寅男君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました日米地位協定第二十四条についての特別協定の改定議定書につきまして、反対の立場に立ちつつ、竹下総理及び関係大臣に対し御質問をいたします。
 さて、振り返ってみれば、昭和五十三年度以降、我が国は思いやり予算という名のもとに、本来ならば日米地位協定第二十四条に基づいてアメリカが負担すべき在日米軍基地の日本人従業員の福利厚生費や、さらには米軍の施設費について肩がわり負担をしてまいりました。この思いやり予算の金額は、昭和五十三年度には六十二億円であったものが、わずか九年たった昭和六十一年度には八百十八億円と、実に十三倍以上に急増いたしているのであります。しかも、これに加えて、政府は、昨年昭和六十二年度に新たに在日米軍労務費の特別協定を締結し、在日米軍基地で働く日本人労務者の諸手当の二分の一を限度として、五年間の期限を限って日本側で肩がわり負担することとしたのであります。この特別協定によって六十二年度に新たに計上された日本側負担分は百六十五億円であります。ところが、それから一年しかたたない今、さらに政府は、この特別協定を改定して、日本人従業員の諸手当の二分の一ではなく、今度はその全額を負担することとしようというのであります。この背景として急激な円高・ドル安の進行があったことは確かでありますが、しかし、アメリカの要求に対する日本政府の対応は、余りにも唯々諾々とした自主性のない態度と言わざるを得ないのであります。
 私は、以下、この改定議定書についてお尋ねするものでありますが、まず第一に、総論として、アメリカの世界戦略の大きな変化が進行しつつあることを指摘し、それとこの思いやり予算との関係を総理にお尋ねするものであります。
 一九六九年七月、ベトナム戦争の手痛い敗北に追い込まれつつあったニクソン大統領は、いわゆるグアム・ドクトリンを発表し、アジア・太平洋地域における憲兵の役割をアジア諸国に肩がわりさせることを宣言いたしました。これは、アメリカが全世界に張りめぐらした軍事的プレゼンスを持続することがもはや不可能な時代が来ていたことを物語っていたのであります。それ以来約二十年たちました。アメリカの軍事的、政治的、経済的な世界国家としての能力が破綻したことは、今やだれの目にも明らかとなりました。アメリカは世界最大の債務国に転落し、財政と貿易において巨大な双子の赤字を背負い、あれほどに強いアメリカを叫んだレーガン大統領も、ついに二月十八日に議会に提出した予算教書では、実質的に国防費を削減せざるを得なくなったのであります。その国防報告には、陸海空の兵員の削減、小型ICBM、すなわちミゼットマン計画の中止、衛星攻撃兵器の開発の取りやめ、海軍六百隻艦隊計画の規模縮小などが明記されているのであります。これと時を同じくして、昨年十二月八日に米ソ間にINF全廃協定が締結され、引き続き米ソ間で戦略核の半減を目指した協議が進められておりますが、これは少なくともアメリカの側から見て、過去四十年にわたって展開されてきた、いざというときには対ソ全面核戦争を発動するという戦略計画に重大な変更が加えられたことのあらわれであります。これは、ニクソン・ドクトリン以来のアメリカの軍事プレゼンスの縮小過程に、今後さらに加速度をつけるであろうことは疑いありません。これは、本来ならば世界の緊張緩和と軍縮を促進するものであり、我々の歓迎すべき変化であるはずであります。
 ところが、総理、アメリカの戦略思想は、今や全面核抑止戦略から柔軟反応戦略に切りかえられ、より小単位の、より小回りのきく、より機動性のある、より高度のハイテクを備えた、そういう新しい戦力の整備が追求されることになりました。しかも、それと見合って、我が国の軍事的役割分担に対するアメリカの要求は、ますます強化されてきているのであります。ことしに入ってにわかに日米関係の表面に躍り出てきた米軍の有事来援の問題、それに伴う米軍の装備、弾薬等の事前集積の問題、それに対する日本のWHNS、すなわち、米軍来援を受け入れる側としてとるべき対米支援行動の問題、それに伴って日本国民の権利や財産に制限を加えるための有事法制整備の問題等、これらはすべて私が指摘したような日米間の軍事協力の枠組みの上にあらわれてきたものであります。総理、アメリカのねらいとするところは、ただ単なる日本有事の際の日本の防衛ではありません。アメリカの最大のねらいは、極東有事に際してアメリカ自身の負担と犠牲は最小限にとどめ、自分にかわるアジア・太平洋地域の憲兵の役割を最大限に日本に肩がわりさせようとすることにあります。日米安保協力ガイドラインで共同研究の進められているシーレーン防衛作戦計画も、洋上防空、対潜水艦作戦計画も、すべてはこの一点に収れんされてくることになるのであります。
 総理、昨年九月にアーミテージ米国防次官補が、韓国を訪問いたしました。その際、アーミテージ次官補は、米韓連合司令部の指揮系統を再検討する旨の発言をしているのであります。現在、米韓連合司令部の司令官は在韓米軍司令官が兼任いたしておりますが、もしもこの指揮権を韓国側に渡すとなれば、それは必然的に在韓米軍の撤退につながるのではないでしょうか。レーガン大統領の前任者であるカーター大統領の時代にも、在韓米軍の撤退の方針が出されたことがありました。ことしの十一月に行われるアメリカ大統領選挙で共和、民主いずれの大統領が当選しても、この新大統領が在韓米軍の撤退を打ち出す可能性は極めて大きいと私は考えるものであります。
 そこで、総理にお尋ねをいたします。
 あなたは、私が指摘したようなアメリカの世界戦略の大きな変化、すなわち、アジア・太平洋地域におけるみずからの軍事的プレゼンスとコミットメントを次第に縮小し、この地域の防衛の役割と責任を日本に肩がわりさせようとする戦略計画の変化をどのように認識されておりますか、お尋ねをいたします。またあなたは、このアメリカの戦略計画の変化に乗じて、あるいはアメリカからの日本の軍事力増強の要求にこたえて、日本を米ソに次ぐ第三の軍事大国に仕立て上げようとするお考えをお持ちでしょうか、いかがでしょうか、お尋ねいたします。また、このたびの在日米軍に対する労務費特別協定を改定して思いやり予算の大盤振る舞いをされようとしていることは、これもアメリカの極東戦略の肩がわりというねらいを込めてのことでしょうか、いかがでしょう。総理のお答えをお願いいたします。
 次に、瓦防衛庁長官にお尋ねをいたします。
 あなたは本年一月十九日、カールッチ米国防長官との会談に当たり、米軍の有事来援問題に関連する日米共同研究をあなたの側から提起されたとのことであります。これは極東の政治、軍事情勢についてのいかなる状況認識に基づいてなされたものでありましょうか、お尋ねをいたします。瓦長官、あなたは、昭和四十年本院において、我が党の先輩議員岡田春夫氏が、自衛隊の当時の統幕事務局長を長とする制服グループが極秘のうちに研究立案していた三矢研究計画というものの存在を明らかにし、時の政局を揺るがす大問題となったことは御記憶かと思います。問題の三矢計画は、朝鮮有事を想定し、在日米軍と共同して日本自衛隊が朝鮮半島に向かって軍事作戦行動をとることとし、そのために必要な諸措置の計画を図上作戦のシミュレーションで作成したものでありました。私の見るところ、あなたが米国防長官に提起された米軍の有事来援の日米共同研究は、これに関連するポンカス計画あるいはWHNS計画あるいは有事法制計画とつなげていくと、その内容はまさしくかつての三矢研究計画とうり二つのものとなってくるのではないでしょうか。防衛庁長官として、あなたはこのことをどのように認識をされているのでしょうか、お尋ねを申し上げます。
 もう一つ防衛庁長官にお尋ねしたいことがあります。
 在日米軍への思いやり予算はあなたの所管される予算であります。この思いやり予算が支出され、それを在日米軍が使用している内容を見ると、こんなものまで日本の国民の税金で出しているのかと思わざるを得ないような、いかがわしい内容のものまで含まれています。これは今国会の予算委員会において大いに論議されたところであります。また、逗子における池子米軍住宅の建設あるいは三宅島における米軍機夜間発着訓練基地の建設など、それぞれの地元住民の圧倒的反対の世論をねじ伏せて無理やりに推進されようとしていますが、その費用もこの思いやり予算から支出されるということは、どうしても私の納得できないところであります。ところが、私の調査によれば、さらに重大な憲法違反の予算支出がなされているのであります。すなわち、昭和五十八年度、五十九年度に、在沖縄の米軍基地、キャンプ・コートニーの施設整備のために支出された防衛施設庁予算の中に、教会の建設費が含まれているのであります。教会とは、キリスト教の教会であります。これは、明らかに憲法第二十条及び第八十九条に対する違反であります。防衛庁長官、あなたは、この憲法違反の予算支出をいかがお考えでありましょう。その責任も含めて、あなたの御所見を明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、宇野外務大臣にお尋ねいたします。
 昭和六十三年度の外務省予算要求額は四千四百十六億円であります。しかし、この中からいわゆるODA関係の対外援助予算を差し引き、純粋に外務省が展開される外交活動のための予算を見れば、わずかに千百十九億円にすぎないのであります。外務大臣、昭和六十三年度の在日米軍のための思いやり予算は、総額千二百三億円であります。この金額と、あなたの外務省の純粋の外交活動の予算千百十九億円とを比較されて、大臣の御所見はいかがでしょうか。外務大臣、これは単なる金額の比較の問題ではないのであります。最近の我が国の安全保障政策は、まず防衛庁当局が日米の軍事関係を利用して既成事実をつくり、その後を引きずられながら外務当局がつじつま合わせに忙殺されるというケースが多いのではないでしょうか。言うまでもなく、一国の平和と安全を守る基本的任務は外交にあります。仮に武力による防衛を認める立場に立っても、防衛はあくまで外交のしもべでなければなりません。この主客が転倒したところから、日本は、第二次世界大戦の悲劇を経験したのではないでしょうか。この経験は、断じて忘れてはならない経験であります。
 外務大臣の御所見と御決意をお尋ねをいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕

発言情報

speech_id: 111205254X01219880331_009

発言者: 高沢寅男

speaker_id: 6418

日付: 1988-03-31

院: 衆議院

会議名: 本会議