林修三の発言 (内閣委員会)
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○参考人(林修三君) 林修三でございます。
私は、個人情報の保護の問題につきましては、かつて行政管理庁の行政管理委員をいたしておりまして、その時期にこの問題についてかかわりを持って以来、十数年にわたってこの問題についていろいろ関係を持ってきております。また、我が国の法律制度につきましては長い間法制局におりまして携わってまいっております。そういう経験等から、この法案について若干の意見を申し上げたいと存じます。
まず、我が国における個人情報保護対策のあり方について述べたいと存じます。
近年の我が国における情報化の進展、特に電子計算機による個人情報の処理の急速な拡大は国民の間に不安感や個人の権利利益の侵害のおそれを生じさせており、その保護対策の必要性が指摘されております。
諸外国では、昭和五十五年のOECD理事会の勧告もあり、多くの国において個人情報の保護に関する法律が制定されてきております。
そのOECDも勧告を実施するに当たっての具体的措置につきましては、その国の法制度あるいは国民性、伝統などの違いによる加盟国の裁量の余地を認めており、各国の保護法制も国によって相当異なっている面がございます。したがって、我が国の保護法制を考えるに当たっても、諸外国の法制をそのまま持ち込むということにはまいらない点がございまして、我が国の国情というものも当然に考慮するべきであろうと存じます。
ここで、いわゆるプライバシーの保護と個人情報の保護の関係について少し意見を申し述べたいと存じます。
プライバシーの観念は、我が国においては現在まだ実定法上のものではなく、専ら学説または判例の上で論じられているものでございまして、その内容は、まだ必ずしも明確ではございませんが、一応他人にのぞき見されたくない自分に関する事柄を他人にのぞき見されない権利ないし利益といったものと考えられております。一方、この法案は、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定めるものでございまして、その範囲内でプライバシーが保護されるというものであって、世間で慣用されているプライバシーの保護という用語を使わずに個人情報の保護としてあるのは、より内容に正確であり適切なものではないかと存じております。
以上のような基本認識からいって、この法案の内容は全体的に妥当なものと存じます。また、全体としてOECDの勧告にも沿ったものと認めてよいと思います。
しかし、この法案についていろいろと議論があることは私も承知しております。それらのうち主要なものについて、以下、四点について私の意見を申し述べたいと存じます。
まず第一に、本法案の目的でございますが、これに関して、行政運営優先の法案だというような意見があるようでございます。これにつきましては、OECD勧告がプライバシーの保護と情報の自由な流通との調和を目的として出されたものであるように、我が国の制度化に当たっても、国民一般の利益につながる行政情報システムの発展にも資するものとする必要があり、本法案の目的規定が「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」というようなことになっておるのは適切なものであると思います。
第二に、第四条の保有制限でございますが、これに関連して、いわゆるセンシティブ情報の収集制限を明確に規定すべきであるという意見が言われておるようでございます。これにつきましては、OECDの議論においても、センシティブ情報と万人に認められるような情報を定義づけることは非常に困難、むしろ不可能であるとされております。それから、他面から申しますと、この収集制限の規定を置いている国でも、法益的なあるいは公益的な必要のある場合のセンシティブ情報の収集規定を置いている国は幾らでもあるわけでございます。そういう意味で、本法案が個人情報全般を対象として保有制限をかけることによって実質的にいわゆるセンシティブ情報をも含めて個人情報の収集を実質的に制限する、つまり保有制限の規定であるいは目的外使用の規定を置くことによって実質的にこの個人情報の収集制限にも寄与しているというやり方は、適切なものではないかと思っております。
また、適法公正な手段による収集ということを規定せよと言われておるようでございますが、これにつきましては、我が国の現在の憲法下における行政の原則は法に基づいて行われることになっており、行政機関を対象とするこの法案においては特に改めて規定する必要はないものじゃないかと思っております。
第三に、事前通知、公示と開示の適用除外事項について申し上げたいと思います。これにつきましては、各種の適用除外が多過ぎるんじゃないかという意見が出ております。しかし、この法案を詳細に見てまいりますと、各段階における適用除外はそれぞれ公共の利益や本人あるいは第三者の利益に配慮されたものであって、いずれも必要最小限度のものと考えてよいと思われます。
政令委任事項が広いんじゃないかという御議論もあるようでございますが、この政令委任事項については前各号に準ずるものというような縛りもかけられておりまして、必ずしもそういう意見は当たらないんじゃないかと思っております。
最後の論点として、民間部門の保有する個人情報の保護の問題がございます。これにつきましては、私も将来的には立法化が必要だと思っておりますが、民間部門については営業の自由との調整が必要なことなど別途の問題もございまして、今直ちにこの法案に盛り込むというのは適切ではなく、閣議決定もございますように、それぞれの関係省庁で早急に検討、措置を考えてもらいたいと存じております。
結論として申しますと、我が国の急速な情報化の進展等にかんがみ、政府案の一刻も早い成立、施行が非常に大切であると存じております。
ただし、この法律案は我が国にとって全く新しいものであり、また個人情報の保護にとって必要な具体的措置の詳細まで法律で規定できるものではございませんので、この法律の施行に当たっては、可能な限り明確な運用基準を定め、その適正、厳格な運用を図っていっていただきたいと存じます。また、この法律施行後においては、必要に応じて積極的に制度、運用の改善を図ることが必要だと存じます。
以上、この法律案についての私の意見を申し上げました。
ありがとうございました。