林修三の発言 (内閣委員会)
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○参考人(林修三君) お答えいたします。
第一点の手作業の処理情報を今度の法案では対象にしておらないことの理由でございます。
これは、私が座長を務めました研究会でも一応そういうことにしたわけでございますが、その理由の主なことは、第一に、電子計算機による個人情報の処理というのは手作業の処理に比べて記録を大量に処理できる、それから迅速に処理できる、それから情報の集中等、結合及び検索が非常に容易である、それから一たんコンピューターとかあるいは磁気テープに入力されますとそれを簡単に訂正できない、そのようなところで記録とか処理の不透明性がある、そういう点においてマニュアルの処理に比べて非常に際立った特色があるわけでございます。こういう電子計算機の利用の拡大ということに対してそういう今のような電子計算機処理が国の持っておる個人情報について行われている、これに対する国民の不安感あるいは個人の権利利益が侵害されるおそれがあるんではないか、そういうようなことを背景といたしまして行政に対する国民の信頼を確保する、そういうところからこの個人情報の保護の法案をつくろうということにしたわけでございます。そういう意味から申しますと、手作業の処理で行われているものは、今申しました電子計算機処理情報とは違いまして特に情報の集中、結合、検索あるいは記録処理の不透明性というようなところには余りそういう問題がない。それから、現在においては国の機関においても情報の的確迅速な処理のためには大量の情報につきましては原則として電子計算機処理に移るという方向をとっております。それぞれの事務についていろいろの事務的なものはございまして一挙に進んでいないものもございますけれども、方向としては大量な情報につきましては電子計算機の処理でいかなければとてもやれない、大体そういう状況にあることは明らかなところでございます。そういう意味から申しますと、手作業の処理で行われているものについてまで今直ちにこの個人情報の法制を適用する必要はそれほどないんじゃないか。そういう趣旨でこれは電子計算機処理情報に一応限っていこうということにしたわけでございます。
それで、お話のとおりに、OECDの理事会の勧告あるいはいわゆる加藤委員会でございますかの報告でも、手作業の処理についても範囲に含めたというものが出ておりますけれども、今申しましたようなことで当面非常に必要なのは電子計算機処理情報の問題であろう、これがやはりその特色からいって国民がそれに対する漠然たる不安と申しますかそういう点を持っているんではないか、そういうところからこういうことにしたわけでございます。
過去においては、日本の公的機関においては保有する情報はすべてマニュアルの手続でやっておりまして、マニュアルでやりますと情報全体の管理というのはなかなか難しいし、それを照合することも非常に難しい点がございまして、それは逆の意味においては、一般の国民の側からいっても公務員の守秘義務というのが非常によく守られている、そういうことから手作業で行われているものについてはそれが正当な理由なくして外部に流出したりほかの情報と結合されたりというような不安は余り持たなかったんだろうと思います。そういう意味で電子計算機処理情報について当面やるということが適当じゃないかということで、こういうような私たちの研究会でもやはりそういう報告をしたわけでございます。
それで、ただこの電子計算機処理情報に限ることにしたために今電子計算機処理のシステムで情報の処理はやろうというのを手作業にかえるというようなことはやっぱり防止すべきであるということでございますが、これは、大量な情報につきましてあるいは今後の公的機関における事務処理の状況といたしまして、今申しましたような電子計算機処理情報についていろんなコントロールが及ぶ、それを嫌って手作業にかえるという可能性は私はそうないんじゃないかと思っております。これは、実際上、行政機関ではそういう理由だけで今まで電子計算機処理でやっていたものあるいは電子計算機処理方式でやっていたものあるいはこれからそういうことでやろうというものを手作業の処理にするということはほとんど考えられないんじゃないかと思います。また、国の行政運営の方針としても、内閣を初め各省大臣等においてもそういうような傾向を許さない方向でひとつ行政の運営をやっていただきたい、それは可能なことであろう、そういうふうに思っておるわけでございます。
それから、センシティブ情報の問題についてのお話でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、何がセンシティブ情報かということについては範囲の確定がなかなか難しい。これはOECDでもそういうことを言っておりますし、実際問題としても他人に知られたくない情報というのは人によって非常に違うわけでございます。それで、共通的には、おっしゃるとおり確かに思想、信条あるいは信教の問題、そういうような問題が主だろうとは思いますが、もちろんそれだけには限らないわけでございます。したがって、センシティブな情報の収集制限ということを法的に決めることは非常に難しいわけでございます。
それから一方で申しまして、外国でもセンシティブ情報の収集についての制限規定を置いているところもございますけれども、しかし、公益的な理由なり公共的な理由で法令に基づいて収集することについてはそれは大体認めておるわけであります。また、行政の必要から言えば、公的機関としてある種のセンシティブ情報といえども法令の根拠を持って収集しなきゃならない必要性はこれはあるわけでございまして、それはどこの国でもそういう法的な措置はやっておるわけでございます。
我が国においては、行政は今の憲法上は法によって行うというのが建前であります。したがって、いろんな国の機関なり公的機関がセンシティブ情報を含めまして各種の情報を報告とか届け出とかあるいは申告とかいろんな形で国民の側から集めることを決めた法律がたくさんあるわけでございますが、そういう個人情報に関することでもすべて一定の法令の規定に基づいて報告を求めあるいは申告をさせあるいは届け出をさせているわけでございます。そういう法令は、殊に法律についてはすべて国会の御審議を経て、適正公正な行政のために必要な限度でそういうことができるんだということは特に戦後につくられた各法律についてはすべてそういうような趣旨が入っておりまして、当該行政機関においての行政事務を遂行する上で必要な限度においてそういう報告等なり届け出を求めることができるということになっておるわけでございます。私は、そういう意味においては全体的に申しまして今のこの個人情報を含めていろんな情報を国の機関が集めるあるいは持っていることについてはそれは公正適正な手続で行われている、そう言っていいと思うのでございます。
現在の我が国の行政では、法令に基づく行政のほかに割合広い範囲でいろいろな行政指導というものが行われていることは御承知のとおりでございます。行政指導は法令に基づかないで行われている点に一つの特色があるわけでございます。しかし、この行政指導は当然強制的な性質を持つものではないわけで、法令に基づかないで行われている以上、相手方の任意の承諾なしに行政指導をやることはできない。したがって、行政機関がいろんな情報を集めるにいたしましても、仮に行政指導によって集めるにしても、それは当然に相手方の任意提供ということがあるわけであります。しかも、それをやれるのはそれぞれの当該行政機関の任務なり目的の範囲に限られるわけでございまして、それがその範囲を出て違法なことをやっていれば当然に違法な処置として当該公務員についてもあるいはそういうことについても法的な措置もございますしあるいはいろんな制裁措置もあるわけです。そういう意味においては私は、現在の法律制度のもとで行われている個人情報の収集というものについては全体としてある程度公正妥当な適切なものの保障はあると思います。
先ほど申しましたように、個々の具体的なこの情報はとってはいけないというようなことは法的にはなかなか否定しにくいことで、しかも仮に個人のプライバシーに関係のあるようなものにつきましても公的な必要で場合によっては法令に基づいて収集しなきゃならない場合もあり得るわけでございます。そういうものについては法による行政という背景で行われていることにおいてやはり国民から信頼してもらうということが必要だろう、また信頼も受け得るんじゃないかと思います。また、この法律では、そうして集めたもののファイルにつきましては保有、管理についてのいろんな制約を課しております。特に目的外使用とか機関内における結合についてのいろんな制限をかけておりますが、そういう面においても国民の信頼を確保するに足る点があるんじゃないか、そういうふうに考えております。