井上和久の発言 (本会議)

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○井上和久君 私は、公明党・国民会議を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行うものであります。(拍手)
 新しい世紀を目前にした今、文明的レベルで世界が大きく劇的に大転換してきました。それは、一国のシステムを根底から変えるという五十年、百年規模の改革に匹敵する多国間、地域ブロック間の変容であり、とりわけ社会主義諸国が急速に民主化へ動き出し、新しい秩序を求めてさま変わりする転換の時代に突入したと言えます。
 振り返れば、二年前の一九八七年十二月、ワシントンにおける米ソ首脳会談でINF全廃条約が調印されたときから、世界はニューデタントの時代へと回転を始めました。翌八八年五月には、アフガニスタンに侵攻していた駐留ソ連軍の撤退が開始され、七月にはイラン・イラク戦争が終結し、また、ゴルバチョフ書記長がアジア・太平洋地域の七項目平和提案を発表するなど、緊張緩和はすさまじい勢いで変化をしていきました。この動きをさらに進展させたのが、昨年十二月のゴルバチョフ書記長の国連におけるソ連軍五十万人の一方的削減演説と本年一月のソ連東部からの兵力二十万人削減案等であり、また五月の歴史的な中ソ和解と言えるのであります。
 米ソ間では、さらにその後、化学兵器の削減交渉や両国軍首脳の相互訪問がなされ、世界じゅうが注目した十、十一月の東欧各国の民主化運動と運動していき、ついには東西の緊張関係の象徴的存在とも言えるベルリンの壁が崩壊し、東欧に新しい風が吹き始めました。
 一昨日のマルタの米ソ首脳会談は、その結実点として対決から対話、そして米ソ協力協調時代さえ思わせる急接近ぶりでしたが、八七年十二月のワシントンからマルタ会談まで、この間、わずか二年という超短期間の激変に驚かされます。
 ポーランドのワレサ氏が「今、地球が回っている」と言い、チェコのドプチェク氏は、熱狂する百万の民衆を前に「我らが新世代に、万歳」と叫んだそうであります。これらの発言が全く誇張に聞こえないのも、変革が私たちの予想をはるかに超えて超スピードで劇的に転換してきたからでありましょう。
 さて、米ソのニューデタントからアンタントとまで言われる時代をもたらした主要な要因は、幾つかあるでしょうが、その一つは、多額な軍事費による経済の破綻という経済的要因であり、さらには、ヤルタ体制以来の行き詰まった軍事抑止論を清算し共通の安全保障観、いわゆる防御的防衛等の政策に改めるという政策的要因からでありましょう。この防御的防衛、非挑発的防衛政策は、八年前から公明党が主張してきた専守防御論、地域保全能力に任務を限定した防衛構想とくしくも合致するものであり、時代が我々の正当性を証明してきているとさえ言えるのであります。
 こうした世界のニューデタント、平和、軍縮が進展する反面、アジア・太平洋地域の軍縮は遅々として進んでいません。それどころか、逆に、朝鮮半島の緊張や西太平洋の海の核軍拡は進む一方です。その意味では、地政的にも経済大国日本に課せられた平和的役割は極めて大きいと言えますし、世界の平和に貢献するというかけ声だけではなく、今や我が国は具体的な成果を上げる責務を問われていると言えるのであります。
 ソ連は、バルト海における非核化、いわゆる核ミサイル搭載潜水艦の廃棄や極東兵力約六十万人中の十二万人削減などのゴルバチョフ提案を初め、日ソ双方の軍事視察団や兵力データの相互公表をしようというヤコブレフ提案など、極東の緊張緩和、信頼醸成に積極的な姿勢を示しています。
 しかし、残念なことに、アジア・太平洋地域の海の核軍縮、通常戦力等の地域軍縮を話し合う協議機関などはなく、あるのは、我が国の防衛白書に象徴されるような旧態依然とした冷戦的発想の潜在的ソ連脅威論のみであります。
 こうしたソ連脅威という大義名分を振りかざす一方、防衛費は四年連続してGNP比一%枠を突破し、自衛隊の行動範囲も洋上防空へと年々拡大し、兵器はイージス艦のハイテクによる重装備化など、昨今の我が国の軍事力増強路線は、ニューデタント時代に逆行しているのではないかと多くの国民が不信感を抱くのも当然かもしれません。
 現在次期防衛力整備計画が策定中ですが、我が国防衛政策上の大きな曲がり角期にありながら、政府は、大綱水準の達成後もその維持のため多年度の防衛計画は必要であるとしていますが、私は、防衛費、防衛計画を含めて、世界のニューデタント下、我が国は今こそ基本的次元から防衛政策を見直すときに来ているのではないかと考えるものであります。
 我が党は、以上のような基本的認識と旧態依然とした防衛政策のもとの自衛官増員という増強路線の一環ともいうべき今回の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対をするものであります。
 以上です。(拍手)

発言情報

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発言者: 井上和久

speaker_id: 8706

日付: 1989-12-05

院: 衆議院

会議名: 本会議