柳沢伯夫の発言 (税制問題等に関する調査特別委員会)

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○柳沢委員 今回の税制改革の見直しをめぐりまして、この二日間、実に長時間にわたりまして精力的な論議が交わされてまいりました。私も一人の委員として、この論議の応酬をかなり熱を入れて拝聴させていただいてまいったわけであります。
 これを聞きましての感想は、今回、税制改革の一環として導入された消費税につきまして、さすがに一人当たり国民所得二万ドルの経済を実現しておる日本の国だけあって、この仕組みそのものについては、これは我々国会の内外を問わず、特に実務に携わっておる国民の皆さん方、企業の皆さん方が見事にこれをこなされておる、したがって、この国会の論議におきましても、さほどに大きな論点になっていなかったように見受けられるわけであります。それに反しまして、国民の負担ということで大変議論が熱したわけでありまして、それを聞いておりまして、私はつくづくこの消費税の基本的な性格についての認識が、我々と皆さん方、野党の皆さん方との間で共通でないな、これがどうもこの消費税論議の紛糾する一番の根本原因かな、こんな感じを実は持ったわけであります。
 そこで本日、私、端的にこの問題に焦点を絞りまして、皆さん方との間で対話を交わして、そうしてその中から何とか接点を見出して、こんなにも対極的でにっちもさっちもならなくなっている国会の論議の中から、そういう対決じゃなくて、お互いに建設的な方向を持って一つの合意点を見出していく、こういうことの役に立ってみたい、こういうことを考えて、以下質問をさせていただくわけでございます。
 そこで、皆さん方が御提出になられましたこの税制再改革基本法というものを見せていただきまして、特に私は、この「税制再改革の基本原則」といった、若干税制の基本に触れているところについて目を落とさせていただいたわけであります。正直申しまして、余りこんなことで演説していると時間がなくなりますので、はしょった話をさせていただきますが、これ一つ見ても、我々のように若干この問題について、何というか経験を持っている人間からすると、全く体系的でない、一体何を考えているんだろうか、こう思うのですよ。そのことについて私、コメントを求めようとも思わないのですが、正直言って、我々がこういうものを読んだときにどう感ずるかということだけちょっとお聞き願いたいと思うのです。
 それは、「一 国民の租税に対する信頼を確立するため、税負担の公正及び公平を確保すること。」こういうことを書いてあるのですね。まず、「公正」って何だろうか、我々の普通のワーディングで言いますと、言葉遣いで言いますと、これはすぐれて執行の公正なんですよね。そうすると、こういうものをいきなり出されるとおやっとまず思いますよ。「公平」、これはもう皆さん方ここでしょっちゅう応酬されていますからおわかりのとおり、垂直的公平、水平的公平というものがその中身だな、アリストテレスの昔からこうですよ、これは。そういうことを感ずる。
 ところがその次に行って、「二 総合課税主義を基本とする応能負担原則を重視し、かつ、応益負担原則にも適切に配慮すること。」こう書いてある。「応能負担原則」というのは、もし垂直的公平というのを一号で言っているのだったら必要ないことなんですね。そうすると、この二号は一体何を言っているのだろうか。「応益負担原則にも適切に配慮する」ということを何かをおもんぱかって言っているのだろうか、こう思うのですよ。
 それから三つ目、三号は、「直接税を主とし、間接税を従とする」、こう書いてある。これはもう二号で言っているのですね、総合課税を重視すると言っているから、またトートロジーですね。直接税を主として間接税を従とする。正直言うと、この直接税、間接税というのは徴税技術あるいは課税技術の話であって、その方式の話であって、負担の問題じゃないのですがね。しかし、それでもそう思う。その後で「所得、消費、資産等に対する課税を適正に行うこと。」と書いてあるから、実体的内容はこの後者にあるのかな、そうすると後者は一体何を言わんとしているのかな、恐らくこれは何も言ってないなという感じが我々はするのですよね。
 それから四号は、これはわかりますね、「地方財政の確立を図る」と書いてある。しかし、国税との関係で言うのだったら、その関連をもうちょっとはっきりさせてもらいたいなと思うのですよ。
 それから、五号は何を言い出したかというと、「税制が活力のある福祉社会を支える基盤となるようにする」、こう書いてあるのだけれども、我我ちょっと皮肉を言わしていただくと、「活力のある福祉社会」というのは毒を含んでいるんですよ。どういう毒かというと、福祉社会だけれども公的部門だけでは面倒見切れぬよ、民間の活力でもって福祉社会をそれ相当に支えてもらわぬといかぬよという含意を、インプリケーションを持っているのです、この言葉には。そうすると、こんな言葉を税制の中に持ち込んできて一体何を言わんとしているのだ。応能負担で垂直的公平を重視しようと言っているのに、活力ある福祉社会とは一体何だ。私なんて、これをすうっと読んでいくだけで頭があっちへ行ったりこっちへ行ったりして、本当に体系的に腑に落ちないということです。
 だから我々は、私の見解だけが別に正しいというわけじゃないのですが、もう少し、法律案なんですから、法律なんですから、私はこれを見て、正直言って、法制局を通っているのだろうか。衆議院法制局には私のかつての同僚がいますから、あのやろうと言っちゃいけないかもしれませんが、あいつ一体何しているのだろうかなって思ったのですよ。言葉を訂正します。そういうふうに思いますよ、私なんて。そういうことで、ことごとく私どもは、もうちょっと何か事を法律として運ぶに当たっては周到であってもらいたい、こういう気持ちを率直に言って持つわけであります。これは皮肉でも何でもないのですよ。本当に我々の立場から見るとそう見えちゃうということをちょっとコメントさせていただきたいのです。
 まあしかし、そんなことを議論していても仕方がありませんから先に進みますけれども、結局この基本原則で言っておられることというのは、きのうも我々の尊敬する武藤先生がここで政府側との応酬でおっしゃられたように、要するに皆さん方は総合課税主義による所得税を中心とした税体系でいきたいよ、こういうことをここで、いろいろ言っておられるけれども、どうもおっしゃっているようだというふうに理解がなされるわけですけれども、それでよろしゅうございますね。どうぞ。

発言情報

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発言者: 柳沢伯夫

speaker_id: 2771

日付: 1990-06-14

院: 衆議院

会議名: 税制問題等に関する調査特別委員会