柳沢伯夫の発言 (税制問題等に関する調査特別委員会)

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○柳沢委員 菅提案者からお話しをいただいた同一所得に対しては同一課税をしたい、ここに、皆さん方が基本的に消費税に対し、また所得税に対して認識不足があるんですよ。そういう認識だから、今提案されている消費税に対してあの程度の議論しかできない、正直言っちゃうと。そこが問題なんです。
 これは私はいろいろなものにくるんで申し上げましたので、問題点がわからなかったかもしれない。しかし、担税力があるのは所得だけだ、これはもうどの教科書にも書いてある。私、正直言って伊藤先生がどの財政学者に学校時代に習ったかまでちょっと調べてきましたけれども、その学者の先生方も言っておるわけですね。言っておる。
 しかし、この所得の担税力というのは毎年毎年、一年一年切って所得を計算するというところに大変な実は問題があるのですよ。それがまさに今言ったように、お父さんはあと三年、四年しかこの五百万の所得を上げられない、後はもう下がる一方だ、体の都合で、年齢の都合で、こういうこと。これがしかし、サラリーマンの方も同じように五百万の所得を上げている。ハウスに入って汗だらけで、あと三、四年しか五百万の所得が上げられないという人が、所得税ではどんなにあがいてみても、課税標準の上でこれをどんなに工夫してみても、その本当の持っている担税力に対して適合した税制というのはつくり得ないのです。これが所得税の限界なんです。これは皆さんが言っている総合合算をしたらどうのこうのということと全く関係ない。
 そこで、今学者の人たちももう言っているのですよ。公平というのは、所得じゃないんだ、消費の方が、結論を言っちゃうようですけれども本当の担税力を表現しているものですよということを言っておるのです。
 それはどういうことかと申しますと、要するに本当の担税力というのは、例えば所得に対する一番適切な課税というのは生涯所得が最も適切な課税ベースになるべきだというのです。生涯所得、一生涯の所得なんです。たまたまそのとき、体の都合のいいときに五百万の所得が上がっているという農家の人がいても、それはだんだん縮減していくようなそういうカーブのもとの五百万だ、四百万だという。それに対してサラリーマンの方は、今四十五歳で五百万取ったけれども、またさらに八百万、一千万といくかもしれない。そういう生涯所得のカーブの展望のもとの四百万、五百万であるとする。そうすると、一体それは同じ四百万、五百万――今、菅さんは、同一所得は同一課税が正しいと思う、これはその限りではもっともらしく聞こえるのだけれども、そういう生涯の一つの展望のもとに立ったら、ある一年間にたまたま同じ所得である、どんなに厳密に計算しても。そういうものは同じ担税力を持たないのです。そこに所得税の一番の問題があるのです。
 それが、一体どうしたら正しい担税力を表現した課税ベースがつかめるか。このときに、他方で消費者行動の経済学が発展して、皆さん御承知のとおり恒常所得仮説というのが出てきたのです。我々が消費をするときには、自分の所得が一体どういうふうに、恒常的にこの一生涯を通じて大体どのぐらいになるかという観点でその都度その都度の消費行動をするのですよということなのです。だから学者は、今や本当の生涯所得というものが最適の課税ベースだとしたら、それはむしろ消費こそ課税ベースにとるべきではないかということを言っているのです。伊藤先生がお習いになった当時の財政学にはこれはなかった。しかし、最近の財政学の本を見れば、どこにも書いてあるこれは全く基礎的な概念なのであります。
 ここを忘れてはだめなんです。この消費税論議の一番大事な点が実はここにあるということを皆さん方はもう少し、もし知っていてこれを全然論議に上げないとしたら非常にフェアでないし、知らないのだったらやはりちょっと不勉強のそしりを私は正直言って免れないだろう、こういうように思うのであります。いかがでしょうか。

発言情報

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発言者: 柳沢伯夫

speaker_id: 2771

日付: 1990-06-14

院: 衆議院

会議名: 税制問題等に関する調査特別委員会