野中広務の発言 (国際連合平和協力に関する特別委員会)
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○野中委員 さて、私は今国会を振り返って、今国会の意義は一体何だったのだろう、こういう気持ちに今なっておるのであります。戦後四十五年間、地球上に数知れない戦争や紛争があったにもかかわらず、我が国は一度の戦火にもまみれることなく、平和に、かつ経済の発展をつくることができてまいりました。しかし、その間幾度か我が国の国際協力のあり方について、あるいは警察予備隊から自衛隊へ変わってきた自衛隊の存在について、ときにはまま子のごとく扱い、現在では国民の大多数の認知するところでありますけれども、そのときどき、自衛隊の根本的なあり方を避けて通ってきた感じがするのであります。近代国家日本の危機管理につきましても、また同様に避けてきたのではなかろうかと思うのであります。
米ソが対立する構図が変わってまいりまして、世界の地図が音を立てて変わろうとしており、日本の国際国家としてのあり方が改めて問われようとするときに、今回の中東紛争というのはまさしく起きたのであります。国連平和協力法案審議の今国会は、まさしくその日米安保条約の傘の下で、米ソ対立の構図の中でどっぷりと平和と豊かさにつかり込んできた日本が、今サミット参加国にまでの道のりを歩んできて、新しい国際秩序の中で今我が国は何をなすべきか、これが論ぜられなくてはならないし、そういう重要な歴史的節目にある今国会ではなかったかと思います。
連日の論議を聞きますと、きのうまでで六十九時間九分という審議が行われております。本日予定される六時間五十分を加えますと実に七十五時間五十九分という審議をやってきたのでございますけれども、しかし残念ながら、論議は四十年ほど前の朝鮮戦争や三十年ほど前の安保改定のときと同じような、若者を戦場に送るのか、若者の血を流すのか、青年よ銃をとるな、憲法違反だ、集
団自衛権だ、やれ海外派兵だという法案の基本から外れた論戦に、政府側答弁も残念ながらこういう重箱の隅をほじくるような揚げ足取りのわざにひっかかって一貫性を欠いてきたものであり、これを報道するマスコミの一部もまたヒステリックに開戦前夜のような報道をし、テレビの報道は、戦車が走ったり飛行機が爆撃をしたり地上戦が行われたりするような画面が国民の目に恐怖感を与えてき、否定的な世論を喚起するような意図ともとれるような状態から、法案審議の本質が、国際的な責任性が埋没をしてしまって、国家と民族の将来に責任を持たなくてはならない国会の使命とはかけ離れた論争のまま今日を迎えてしまったというのは、私はまことに残念でならないのであります。
私は今、この今国会における意義は一体何だったんだ、そんな自問自答をしておるのであります。このまま我が国が、口では金以外の、日本も汗を流さなくてはならない、協力をすべきだと言いながら手をこまねいていることは、将来の我が国のよって立つこの国際社会に、まことに孤立化の道をたどり、危険だと思うのであります。日本がもしクウェートのような状態になったら、一体どの国が助けてくれるんでしょう。どの国が守ってくれるんでしょう。限りなく不安であり、私は無責任であると思うのであります。
しかし、事ここに至っては、もう一度土俵を変えることも必要かもわかりません。しかしその際にも、私は第一に、国家の運命の責任者である総理の信念と決断のもとに、迅速かつ期間を限って、今何をやるのか、あるいはやれないものについてどう法律的に詰めていくのか、そういう政党間の共通の議論を深めて、早急に新たなスタート台に立って、日本がいかに何ができるかを早く決めるべきであると思いますし、集約をするべきであり、かつ実行するべきであると思うのであります。そのような状況と取り組むために、総理のお考えをこの際お伺いをいたして、私の質問を終わりたいと存じます。