田渕哲也の発言 (本会議)
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○田渕哲也君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表して、総理の所信表明に対し質問を行います。
去る八月二日、イラクのクウェート侵攻という重大事件が発生しました。
これに対する我が国政府の対応は不手際の連続です。情報収集能力の弱さや危機管理体制の不備から在留邦人の退避がおくれ、むざむざと百四十名を超える人たちが人質にとられました。また、国際協力面での貢献策の策定が遅く、かつ小出しで、四十億ドルもの多額を出しながら余り評価されないという結果を招いております。さらに、人的貢献への対応は、事件発生後七十日もたってからやっと国会で論議を始めるというのんびりぶりです。
このような緊急非常の事態には、平素からの備えとともに、トップに立つ者の決断力とリーダーシップが強く求められますが、この点について総理ほどのような認識を持っておられるか、お伺いします。
次に、東西冷戦の終結、ヤルタ体制の崩壊という、まさに人類の歴史的な転換点ともいうべき国際情勢の変化についてであります。
これからの国際情勢の動きは予断を許さない面もありますが、常識的に展望できることは、第一に、複数政党による民主主義政治体制と市場原理を基本とした経済体制等が共通の価値観として世界に広がっていくことです。第二は、米ソ二大国の力が相対的に低下し、国連の役割が重要さを増すこと、その中で日本、ドイツなどがその力に応じた役割を求められることです。第三は、米ソの支配による枠組みが弱まることにより、民族主義の台頭や国境紛争が激化し、地域紛争はなくならないことなどが予想されます。
このような世界情勢の変化の中で、イラクのクウェート侵攻が発生しました。新しい時代における国際ルールの確立という見地に立てば、今回のイラクの不法行為をどうただすかということがこれからの国際秩序のあり方を探る試金石になると言っても過言ではありません。そこで問われるのは、国際社会がその秩序維持機能を発揮できるかどうかですが、その中で我が国は何をすればよいのかということであります。
最近、テレビで報じられた中に、日本だけでなく、もしアメリカ、イギリス、フランスなど多くの国が我が国と同じように平和外交政策をとり海外派兵をしなければ、イラクのクウェート侵攻、併合のような無法行為はだれがどのようにとめるのですかという声がありました。我々はこれにどう答えるべきでしょうか。日本は特殊な国だからできないが、アメリカやイギリスやフランスなど他の国にやってもらおうというのでは、我が国の平和主義は普遍性を持たぬことになります。また、それは国連がやるべきだというのであれば、我が国は国連憲章や国連決議による義務を果たす用意があるのかということが問われるでしょう。
また、世界じゅうすべての国が日本のようになれば世界は平和になるという答え方もありますが、現実に世界はそのような状態になく、それゆえにイラクの侵攻も起きているのです。この現実にどう対処するかを説明でき、また、世界がみんな我が国のような平和主義になるための具体的方策とプロセスを示すことができなければ、この答えは空論にすぎません。海部総理ならばどう答えられるか、お伺いしたいと思います。
私はここで、我が国の憲法について考えてみたいと思います。
憲法の平和主義の理念はその前文に述べられております。それには「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と述べ、さらに「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と結んでおります。これは正義と秩序を基調とする国際平和を求め、そのための積極的な貢献を国民に要請していると見るべきですが、総理の見解はいかがですか。
また、国連について考えてみることも必要です。国連は、東西冷戦下では米ソの拒否権の応酬で、創立時に期待されたような機能を発揮できず、無力でした。しかし、冷戦が終結し、米ソが世界秩序の維持のため協力して動く兆しが見え、国連は大きく変化しつつあります。このたびの国連総会で多くの国の代表が国連の役割への期待を表明し、またブッシュ米大統領も、国連が国際的な集団安全保障の中核的役割を果たす可能性が生まれつつあると述べております。冷戦後の新しい時代において、国連を中心とする新しい秩序を生み出す方向で各国が協力し始めているのです。
そこで重要なことは、我が国の憲法の平和主義と国連中心主義との関係です。イラク問題をめぐる論議の中で、我が国は憲法の制約があるから国連を軸とした活動に無制限に参加することはできないということも指摘されております。
そこで、総理にお伺いしますが、我が国憲法と国連憲章に定められた加盟国の義務の間に相入れない点があるのかないのか、あるとすればどの点かということであります。さらに具体的には、国連憲章第七章に定める侵略を鎮圧するための国連の平和強制活動に我が国が参加することは憲法に反するのか否か。また、国連の停戦監視などの平和維持活動などについてはどうか。
さらに、国連事務総長のガイドライン報告によれば、平和維持軍は自衛のための防衛的性格の武器を装備するとあるが、この場合の自衛のための武力行使は憲法上許されるのかどうか。また、現在、中東に派遣されている多国籍軍は、国連決議を達成するためのものであっても、正規の国連軍ではありません。この場合、これに参加することはどうか、また、これに対する後方支援あるいは資金援助についてはどうか、お尋ねいたします。
我が国憲法の平和主義は、国際連盟規約、不戦条約、国連憲章という戦争違法化の流れの中で、戦前の日本の過ちに対する反省を踏まえて定められたものであり、それが我が国の戦後の対外姿勢を定める上で貴重な路線を敷いてきました。しかし、他方、国連による平和の維持回復活動への参加は、国際社会の公共価値の実現であり、加盟国にとって公共的義務と言わねばなりません。国連による平和維持の仕組みは、国連憲章第一条、第二条に見られるごとく、個別国家の武力行使の抑制と平和の維持回復のための共同行動の二つを組み合わせることにより機能させようとするものであります。
その意味から、憲法の平和主義と国際的公共義務をどう調和させるかが、我が国が冷戦後の新秩序づくりにどうかかわっていくかを決める重要なポイントであります。そして、我が国が何をなすべきか何をなさざるべきかを明確にすることが必要です。この点をはっきりしないと、新しい時代という海に我が国は羅針盤なしで船出をすることになり、常に迷走を繰り返すことになりましょう。総理はこの点についてどのように考えているか、明確に答えていただきたい。
イラク事件への対応について、国連平和協力法案がこの国会に提出されましたが、これは今までに述べたような、これからの我が国の進路についての展望をしっかり踏まえた上でその方針を決めるべきであります。もし自衛隊の派遣を必要とするならば、その前提として、それが多数の国民の支持を得ること、また法的な基盤がしっかりと確立されていること、そして自衛官が自信と誇りを持って任務を遂行できる体制をつくることが不可欠であります。そのためには、憲法の枠内ということが明白であること、シビリアンコントロールを確立すること、さらに国連との協力の枠組みが明確であること、武力行使を目的とするものでないこと等が必要と思いますが、総理の所信をお伺いします。
次に、我が国としての平和解決への努力についてであります。
総理は、先日、中東を歴訪された際に、イラクのクウェート侵攻後、西側首脳として初めてイラク首脳と会談をされました。話し合いが平行線をたどり、進展が見られなかったのは残念です。しかし、事態打開のための政治的な対話の継続に合意したこと、イラク側がミッテラン仏大統領の和平構想を公式に評価したことは注目に値します。まだ平和解決への道が全く閉ざされたわけではありません。総理がラマダン第一副首相との会談から得られた感触として、平和解決の可能性についてどう判断されますか。また、我が国としてそのために具体的に何をなし得ると考えられますか、総理の所信をお伺いします。
次に、日朝関係についてであります。
先般訪朝した自民、社会両党の代表団と朝鮮労働党の話し合いで両国の関係改善への扉が開かれたこと、また長年にわたり拘留されていた紅粉船長、栗浦機関長が解放されたことは喜ばしいことであり、衝に当たられた方々の御努力に敬意を表したいと思います。
しかし、自社両党と朝鮮労働党が調印した共同宣言には、植民地時代だけでなく戦後四十五年間に北朝鮮が受けた損失にも謝罪し償うことが明記されておりますが、これは納得できません。戦後北朝鮮が受けた損失の内容がつまびらかではありませんが、我が国が責任を負うべきものはないと思いますが、政府の見解はいかがですか。
また、これは政府間の交渉を拘束するものではないと言われていますが、政府の考えをお聞きしたい。
さらに、金丸元副総理が釈明のため訪韓された際、盧泰愚大統領は、日朝の関係改善を進めるに当たって、日韓の間で十分協議を行うこと、北朝鮮が国際原子力機関の査察を受け入れること、賠償は国交正常化後に行い、しかも北朝鮮の軍事力の強化につながらないこと等々の五項目の要望を示されたが、いずれも重要なことと思います。これについて政府はどのように対処するつもりか、お伺いします。
最後に、消費税についてであります。
選挙の結果、いわゆる衆参ねじれ現象が生じ、野党の消費税廃止法案も自民党の見直し法案もいずれも国会で成立しない状況となりました。このような政治状況の中で、与野党がそれぞれ自説に固執するならば、この問題は一歩も進まず、現行の消費税がそのまま存続することになります。
今の消費税には次のような重大な欠陥があります。
その第一は、消費者が納めた税金が必ずしも全部国庫に納付されず、一部が業者の懐にとどまるといういわゆる益税が発生することです。この金額は数千億円ないし兆を超える多額に上るとも言われております。政府はその実態を明らかにしていただきたい。第二は、消費税が生活必需品にも一律にかかるため、低所得者や高齢者に厳しい逆進性を持っていることです。第三は、将来の福祉ビジョンがはっきりしないまま税率がどんどん上がるのではないかという不安です。
民社党は、これらを改革するため、一、免税点や簡易課税制度、限界控除制度などの見直しとインボイス方式の導入を検討すること、二、食料、教育費、家賃、医薬品などを非課税にすること、三、福祉ビジョン、行革ビジョンの作成とともに、税の名称を年金福祉税などに改め、税金の使途は福祉に重点を置くことなどを骨子とする改革案を提示しました。
今、各党がそれぞれ改革案を出し合い、本音で協議に入ることにより、現行消費税の欠陥を一日も早く取り除くことが必要です。建前にこだわり、この問題の解決を先延ばしにすることは、国民の利益と公正を守るべき国会また公党として無責任な態度と言わざるを得ません。総理並びに大蔵大臣はこれに対しどのような方針で取り組まれるのか、明確に示していただきたい。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕