八木哲夫の発言 (社会労働委員会)
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○八木参考人 健保連の副会長の八木でございます。老人保健法の御審議に当たりまして、私どもの意見をお聞きいただきます機会を設けていただきましたことにつきまして、心から御礼を申し上げたいと存じます。早速入らせていただきたいと思います。
御承知のとおり、高齢化がますます今後進展するわけでございますけれども、高齢化社会におきまして老人の健康を守り、適切な医療を確保するという面で老人保健制度の果たします役割はますます重要となってきております。
ところで、老人保健制度が創設されて以来今日までの経緯を見ました場合に、特に六十一年の法改正以来被用者保険に対しまして過重な負担になってまいっておりまして、このまま高齢化が今後進展いたしました場合に、将来の被用者保険制度の存立も、拠出金の負担ということから非常に危なくなるのではないか。さらに、被用者保険を含めまして老人保健制度自身が崩壊する危機感というものを持っているわけでございます。そういう面で、私どもは二十一世紀の高齢化社会に十分安定した機能を果たせます老人保健制度を再構築すべきであるということで、制度の根本的な改革、特に国の責任と負担を強化する方向での改革というものを提言いたしているところでございます。
今回の改正案に対します私どもの基本的な考え方といたしましては、私どもの要求しております主張からいたしますと、決して満足できるものではなく、十分なものではないというふうに考えておりますけれども、少なくとも私どもが主張しております基本的な方向に沿った改革である点では一歩前進であるというふうに受けとめているところでございます。
提案されております法案の具体的な内容につきまして申し上げたいと存じます。
第一点は、公費負担の問題でございます。
私どもは、公費負担を三割から五割に引き上げるべきであるという主張をいたしております。老人医療の性格から見まして、どちらかと申しますと福祉的なあるいは社会保障的な性格が強いわけでございますし、現在の老人保健が各社会保険の共同事業ということになっておりますけれども、社会保険というのは本来その構成員なりあるいは家族のための制度であるわけでございますし、国民的な課題であります老人保健の共同事業に参加するということは、ある程度必要ではございますけれども、おのずから社会保険の限界というものがあるのではないか。今の社会保険のシステムということを基礎にします老人保健制度のあり方という点につきましては、基本的に大きな問題があるのではないか。そういう面から私どもは三割から五割ということで、国の責任というものを大きく中心にしました公費負担の引き上げというものを主張しているところでございます。今回の改正案におきまして、老人保健の医療費全部ではございませんが、介護部分に着目しまして、公費負担が三割から五割に引き上げられることは、公費負担の引き上げという面では大きな前進であると受けとめておりますけれども、老人医療費全体ではないわけでございますので、私どもとしましては、さらにこの範囲を拡大すべきであるというふうに考えておるところでございます。さらに、今回の改正案におきまして介護部分に着目しているということでございますので、老人訪問看護制度が創設されることになっておりますけれども、少なくともこういう部分につきましては、さらに公費負担の拡大を図るべきであるということで、将来におきます公費負担の一層の拡充をお題いしたいと存じているところでございます。
なお、昨年、老人保健法の改正が見送りになりまして、按分率が一〇〇%に引き上げになったわけでございますけれども、それに伴います当面の被用者保険の負担増に対する措置といたしまして、特別保健福祉事業ということで九百億の措置が講ぜられ、本年の予算におきまして、さらに百億上積みになったわけでございますけれども、これらの措置というのは被用者保険の負担増に対する措置でございますし、ぜひともこの制度は継続していただきたいと思います。この措置ですべてがカバーされているわけではございませんので、この措置の一層の拡充という点をお願いしたいと思う次第でございます。
次に、改正案の内容で第二点の一部負担の問題について申し上げたいと思います。
老人保健の一部負担の考え方につきましては、お年寄り自身においても健康に対します自己責任の考え方、あるいは医療費に対するコスト意識を持っていただくという必要、さらに、この制度が若い世代を含めまして各世代で共同して負担しているという面から申しましても、世代間の負担の均衡という点から申しましても、一部負担の見直しは必要であろうと存じますし、さらに、在宅療養者との関係、老人保健施設あるいは特別養護老人ホーム等の他の入所施設に入っておられる方々との負担のバランスからいたしましても、無理のない負担ということはぜひとも必要であると考えるところでございます。
私どもは、率直に申しまして、コスト意識を持っていただくという面から五%程度の定率負担を従来主張しておったところでございますけれども、一部負担のあり方につきまして関係者からいろいろ御議論もあるわけでございますし、定額ということである程度今まで定着している面もございますので、関係者のコンセンサスを形成するということが最も大事でございますので、私どもも定額でやむを得ないというふうに考えておるところでございます。
なお、一部負担が定額ということでございますと、当然医療費の上昇に伴いまして費用もふえるわけでございますので、一部負担の見直しということは必要でございますし、医療費の上昇に伴います一部負担のスライドということも必要であろうと思われます。さらに、社会保険におきましては、本人においてもあるいは家族においても一割なり三割という定率の一部負担をしているところでございますので、医療費に伴いますスライドという点についてもやむを得ないのではないかと考えられますけれども、この考え方は新しい制度でこざいますので、国民の理解を得るということがぜひ必要ではないかと思われるところでございます。
なお、現在、一部負担の問題と絡みまして、保険外負担問題、付き添いの問題でございますとかお世話代等の保険外負担が現実に行われている実情でございますので、こういうような保険外負担の解消という点につきましても積極的に取り組み、その解消を図るべきであると考えているところでございます。
第三点といたしまして、訪問看護制度の創設でございます。
在宅対策は最もおくれている分野でございますし、政府がゴールドプラン等でこの推進を図っているところでございます。そういう面で、新たに在宅訪問看護制度が創設されるということは、私どもとしましても、ぜひこの方向というものを伸ばしていただきたいというふうに思いますし、この在宅看護体制の充実というものに期待いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
なお、看護婦等のマンパワーの確保という点は、これからのこの面の施策の推進に当たりまして最も重要な分野でございますので、この問題につきましてもぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思う次第でございます。
それから、その他の問題といたしまして、今度の改正法案の中には、介護の方法とか、あるいは介護機器等の研究開発というような努力規定あるいは医療の効率化の問題あるいは診療報酬のあり方等の問題につきましての検討規定というものが盛り込まれておりますけれども、これらの課題というのは非常に重要な課題でございますし、今後の老人医療のあり方におきましても大きな問題でございますので、ぜひこれらの検討課題というものにつきましては積極的に取り組んで、早急に取り組んでいただきたいというふうに考える次第でございます。
なお、これらの問題に関連いたしまして、私どもは、老人医療の負担のシステムの問題もさることでございますけれども、老人医療費が今後急増するわけでございますので、適正な老人医療費の確保ということが必要であるわけでございますけれども、その面で、医療水準の向上あるいは老人人口の増等に伴います医療費の増はやむを得ないわけでございますけれども、医療費の中のむだをできるだけ排除するという面で、適正な医療を確保するということはぜひとも必要であろうというふうに思われる次第でございます。
そういう面から申しますと、現在の診療報酬の体系が出来高払いになっておりますので、この中には薬づけ、検査づけと言われるような多くの欠陥をはらんでいるわけでございます。私どもは、老人医療におきましても、ある程度症状が固定化しました慢性の疾患に対しましては、包括的な定額払い方式というものを採用すべきであるというふうに考えておるところでございますので、これらの検討規定につきましても早急にそういう方向で取り組んでいただきたいということをお願いする次第でございます。
以上、改正案に対します私どもの考え方なり、あるいはお願いを申し上げた次第でございますけれども、今回提出されました改正案というものは、私どもの考え方から申しますと決して十分なものではございませんけれども、一歩前進でございますし、さらに、この改革によりまして、保険者に対します負担軽減ということは、現役世代の実質的な負担軽減につながる措置、毎月百三十億の負担軽減につながる措置でございます。改正法案におきましては、七月実施というものが予定されているところでございますので、一日も早い早急な成立ということをぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。
以上、私どもの考え方を申し上げた次第でございます。御清聴どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。(拍手)