宇野勝の発言 (社会労働委員会)

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○宇野参考人 おはようございます。ただいま御紹介を賜りました全国町村会会長でございます滋賀県野洲町長の宇野でございます。
 まず初めに、諸先生方に、国民生活に関係の深い医療、年金、福祉などの諸問題について、日ごろ特段の御尽力を賜り、あるいはまた市町村行政についても格別の御理解、御高配を賜っておりますことに対し、衷心より敬意と感謝を申し上げます。
 本日は、公述の機会をお与えいただきましたので、第一線の行政に携わっている町村長の立場から、現在当委員会で審議されております老人保健法改正案に対しまして賛成の意見を若干申し述べさせていただきたいと存じます。
 御案内のとおり、我が国の社会は世界にほとんど例を見ない速度で進んでおります人口の高齢化あるいは出生率の低下あるいは女性の社会進出などにより大きく変貌しつつあります。この事態は町村においても例外ではございません。特に高齢化の進展は町村部においては極めて著しいものがあるのでございます。保健、医療、福祉の分野における行政の最前線にあります町村におきましては、介護対策の充実など高齢者対策の整備は喫緊の課題と考えているところでございます。
 このような観点から見て、近年の老人の保健、医療、福祉の分野における国の行政施策の展開はまことに時宜を得たものと考えております。今回の老人保健制度の見直しも、高齢化を迎える我が国社会の基盤整備の延長に位置づけられたものと考えております。
 まず、昭和六十一年の老人保健法の改正によりまして、加入者按分率が引き上げられて、昨年度からこれが一〇〇%となり、国民のすべてが公平な負担によって老人医療を支えていく体制整備が進められました。私ども町村は老人保健、医療、福祉の施策を預かる行政機関であると同時に、国民健康保険の保険者であるという役割をも果たしておるところでございます。六十五歳以上の人が五人に一人を超え、高齢社会を先取りしておる、そういう状態の国民健康保険の保険者として、財政危機の進行は右のような措置により、一応回避し得るものと考えております。
 平成二年には、老人福祉法の一部改正が行われ、施設、在宅を通じる福祉サービスを一元的に実施する体制が整えられ、私どもは、現在平成五
年度の全面実施に向けて老人福祉計画の策定に取り組んでいるところでございます。
 また、政府におかれましては、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」が開始され、二十一世紀に向けて、市町村が保健福祉サービスを拡充させるための基盤整備が進められることとされております。
 私どもは、これらの国の施策と相携えて、明るく活力のある長寿・福祉社会の実現に努めてまいる所存でございます。
 ただいま、本委員会で審議されています老人保健法等の一部を改正する法律案は、介護体制の充実、制度の運営の安定化を図るもので、まことに適当な、時宜にかなったものと考えます。
 第一に、老人訪問看護制度の創設についてでございますが、これは介護が必要な状態にある老人が在宅でも安心して療養生活を送ることができるようにするためのもので、在宅医療の推進にとって画期的なものと考えております。
 私の町野洲町は、現在九千三百世帯、人口三万三千の町でございますが、既に昭和六十三年度から国のモデル事業の指定を受けまして、訪問看護等在宅ケア総合推進事業の対象市町村となっております。したがいまして、先進的に訪問看護事業に取り組んでまいっているところでございます。野洲町では、現在行っておりますのは、それぞれがかかりつけのホームドクターの御指示を受けまして、五人の看護婦により今三十人のお年寄りに対し訪問看護を実施してまいっております。お年寄りにも大変喜ばれております。このようなことから、老人訪問看護制度が制度化されますれば、訪問看護事業が今後継続的かつ安定的に推進されることとなり、できるだけ在宅で療養したいという本人の意思、あるいは病院に入れるだけでなしに、自宅で介護したいという家族の希望がかなえられることになると考えます。
 第二に、一部負担金の見直しでございます。
 老人に過重な負担をかけたくないというのは広く国民に受け入れられる考え方だと思いますが、私は、高齢化の進展に伴い、老人医療費の増大は避けられない事態であることを考えるとき、過度な負担は避けつつも、必要な受診の抑制にならない程度の自己負担の見直しはやむを得ないものと考えております。
 御案内のとおり、現在、介護を要する高齢者は、病院、老人保健施設、特別養護老人ホームに入院、入所しておりますが、高齢者は病院の自己負担が比較的、相対的に低いため、老人保健施設や特別養護老人ホームよりもむしろ病院を選んでしまいがちなのが現状でございます。今回の改正は、これらの施設相互間の利用者負担の公平化の観点から見ても、さらには、これからの老人福祉施策を円滑に実施していく上での環境づくりとしても必要なことであると思います。
 第三に、公費負担の拡大であります。
 先ほど申し上げましたように、加入者按分率の一〇〇%への引き上げにより、老人医療制度を国民で平等、公平に支え合う体制が整備され、国民健康保険の運営は改善されましたが、一人当たりの老人医療費は若い世代の医療費に比べて約五倍に上ります。社会全体の高齢化の進展により、財政状態は依然として厳しいという認識を持っております。
 社会の高齢化に伴う財政の不安定化は、町村の医療費適正化や、町村の保健事業による中高年齢者の健康づくりに対して大変努力をしておりますけれども、そういう努力の範囲を超えるものであり、やはり社会全体で制度を支えていく必要があると考えております。
 他方、老人医療に公費をむやみに拡大するということは、公費の財源がやはり税であります。したがいまして、社会保険制度の建前からいっても好ましくないものと思われます。
 これらを総合的に勘案いたしますれば、今回の法律案の介護に着目した公費負担の引き上げは、地方負担の増加もありますけれども、保険者の財政負担を緩和する意味からやむを得ないものであると考えます。
 その他、今回の案では、アルツハイマー症による若年性の痴呆の方に対して老人保健施設の利用を認める改正が含まれており、現状ではなかなか難しい若年痴呆の人の療養、介護に適当なものと考えます。
 以上、老人保健法改正案に対して意見を申し述べましたが、せっかくの機会でございますので、私ども町村が現在直面しております最重要課題である高齢者保健福祉施策の推進について、この際、一言申し述べさせていただき、諸先生方の御理解を賜りたいと存じます。
 「高齢者保健福祉推進十か年戦略」が遂行されるに当たっては、我々町村長もみずから、高齢化の進む町村においては特に重大な問題として鋭意促進に努めていかねばならないものと考えております。
 しかしながら、これらの高齢者保健福祉施策を円滑に実施していくためには、総数で十万人に及ぶホームヘルパーさんや施設従事者の確保が問題であります。マンパワーの問題であります。しかも業務の性格上、単に人数をそろえるだけでなく、心と心の触れ合いのできる人材が必要となります。このような観点から在宅福祉施策の成否は、質、量ともに十分なるこれらの要員の確保にかかっておると考えております。
 また、特別養護老人ホームの緊急整備等の基盤整備も強力に推進していただかねばなりません。
 さらに、町村は二千五百九十ありますが、平均財政力指数は〇・三でありますので、財政基盤の脆弱な町村の現状から見て、さきに改正されました老人福祉法等福祉関係法の施行に伴う町村のいろいろな施設整備のための経費あるいはまた事務量の増加に対応する財政負担につきまして、国庫補助負担金あるいはまた地方交付税等において実態に即した十分な措置をお願い申し上げるものでございます。
 諸先生方におかれましては、市町村及び国保の実情を十分に御理解の上、改正法が原案どおり早急に成立いたしますようお願いを申し上げまして、陳述とさせていただきます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。大変貴重な時間をいただきまして、御清聴いただきましてまことにありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 宇野勝

speaker_id: 28229

日付: 1991-04-23

院: 衆議院

会議名: 社会労働委員会