五十嵐清の発言 (社会労働委員会)

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○五十嵐参考人 おはようございます。日本労働組合総連合会の生活福祉局を担当しております五十嵐と申します。本委員会で老人保健法等の改正案について意見を申し上げる機会をいただきまして、大変光栄に存じます。
 まず、改正案についての見解から若干申し上げてみたいと思います。
 今回の改正案の主な内容を見てまいりますと、第一に老人医療費の公費負担の引き上げ、第二に患者一部負担の引き上げ、そして第三に患者一部負担の医療費スライド制の導入、さらに第四に老人訪問看護制度の創設、第五に初老期痴呆患者の老人保健施設の利用、そして、これは法案とは関係ないかもしれませんが、平成三年度予算措置でありますが、被用者保険拠出金の助成措置の継続という内容に集約されるのではないかと私ども考えております。
 公費負担の拡大では、老人医療費のうち介護費用に限定はされておりますが、従来の三割負担から五割に引き上げられ、今後介護施策を積極的に推進していけば、これがさらに額、率とも拡大をされるということについては、私どもとしては評価をいたしたいと思います。連合といたしましても、これらの内容については一歩前進との評価を行っているところであります。また関係者との間でも、私ども老人保健制度の改革に向けて共同提言というものをまとめて発表してまいりました、また取り組んでまいりましたその成果でもあるというふうに考えているところであります。しかし、連合といたしましては、長年にわたって老人保健制度における公費負担の拡大を求めてきたところでありますが、今回の措置では我々としてはまだ不十分であるというふうにとらえているところであります。
 しかしながら一方、公費負担の現行の枠組みに一つの風穴をあけるものであるといいながらも、今回の改正案では、この三割の公費負担をわずか一・二五%、つまり三一・二五%にしかならないわけでありまして、これまで私ども五割への引き上げを求めてきた者としては、大きな不満の一つであります。将来を展望しても、政府案によりますと、介護費用に限定をすれば、これは到底五割までには引き上げられないのではないかというのがあるわけであります。
 さらに、財政規模の面から見ますと、一部負担を引き上げることによって一千百八十億円と見込まれているわけでありますが、公費負担の引き上げはわずか七百五十億円程度であります。公費負担の拡大を前提として、私どもとしては、現行一部負担の引き上げというものをまさに清水の舞台から飛びおりる、その決意で取り組んできたわけでありますが、これではだれもが常識的な水準と納得できるところまではいってないのではないかと考えるところであります。したがいまして、私どもが公費負担を前提にして一部負担の見直しを図るということが、まさに逆手にとられたと言ってもいいのではないかというふうに考えておりますので、ぜひとも御賢察をいただきたいと思います。同時に、この点が私どもが不満としております第二点目であります。
 同時に、患者一部負担は公費負担の拡大及び現行定額制の維持を前提に見直すべきであるとはいいながらも、公費負担の拡大と一部負担の見直しとのバランスといいますのが今申し上げましたようにとられていない、図られていない、そればかりか、入院時におきます負担額は倍増でありますので、負担の激変を生じさせるものであると言ってもよろしいかと思います。老人保健施設の入所者との負担のアンバランス、整合性が言われておりますけれども、後ほど申し上げますが、保険外負担をそのままにしておいては大変な負担を強いるものでありますので、高齢者の生活実態に配慮されてない、この点が不満とする第三点であります。
 第四には、患者一部負担の医療費スライド制の導入であります。改正案では、老人医療費の伸びを指標といたしまして一部負担額を引き上げていく、これは高齢者の生活水準と無関係に引き上げられることになるわけでありまして、極めて問題であると考えます。そもそもの発想は、この点は老人医療費におきます患者一部負担の割合を五%にする、定額制の見直しでありますけれども、実質的には定率制と同様の役割を持たせるというものに尽きるものであって、私どもとしてはこの医療費スライド制については反対をせざるを得ません。
 また、新しく創設をされます老人訪問看護制度にいたしましても、制度の充実普及を図るため、看護婦なり、あるいは保健婦等の人員の確保をどうするのかという問題がございます。「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の完全実行での最大の課題はマンパワー、ウーマンパワーの確保にかかっていると言われる中で、この人員の確保育成対策は十分に明らかではないのではないかと思います。ある資料によりますと、平成元年の国民生活基礎調査でありますが、在宅要介護高齢者数は六十三万人に上るとの調査もあるわけでありまして、少なくともこれらの人々にこの訪問看護制度を適用するということになれば、それ相応の人員を配置しなければならないというのは言うまでもないことでありまして、その見直しや人員の確保育成は急を要するものではないかと考えるものであります。
 さらに、先ほども述べました保険外負担の問題であります。入院に伴う保険外負担は月額二万二千五百円程度との調査結果も発表されておりますが、実際にこういう経験をした人と私ども話をしていきますと、この程度で済むような病院があるならぜひ紹介をしてほしいという声が多いわけであります。多くの人はこれの四倍ないし五倍以上支払っているのが実態であるというふうに経験上指摘をされているわけであります。基準看護承認病院であれば、本来付添看護はあってはならないはずでありますが、これが実際には行われているわけでありまして、患者の一部負担の引き上げ、特に入院時におきます現行の四百円を八百円に倍増するということとあわせて、保険外負担の速やかな解消が図られなければ、本人はもとよりのこと、家族に対しても大きな負担を依然として強要することになるわけであります。差額ベッド代や付添介護料、お世話代などといった制度外負担の解消が図られるよう積極的な取り組みを推進すべきであると考えます。
 私どもは、これまで老人保健制度の抜本的な改革の方向といたしまして、公費負担を基本とした高齢者福祉医療制度というものの創設を提唱してまいりました。この考え方は、国の責任と負担を第一義として、国民のだれもが、いつでも、どこでも、安心して適切な医療を経済的な負担を感じることなく公平に受けられる医療制度の確立というものであります。これを基本目標に置きつつ、高齢者医療ではプライマリーケアを重視しながら、健康な高齢者づくりを推進するとともに、福祉にかかわる費用は全額公費負担によってでも賄うくらいの決意が必要ではないかと考えております。もちろん、私ども現役勤労者といたしましても、高齢化に伴う医療費増に対してそれ相応の負担をしていくということについては毛頭否定をするものではありません。しかし、その前提として求めておきたいと思いますのは、きちんと国がすべきことをやるのだ、つまりナショナルミニマムを確立することが前提にならなければならないと思います。
 老後生活の中で高齢者の皆さん方が大きな不安感を持っておりますのは、何といっても病気になったときにどうするのだろうか、あるいは年金を初めといたします所得保障の問題がどうなるのだろうかというものがあるわけであります。私ども現役労働者のアンケート調査におきましても、これから迎える高齢化社会の中で不安が大きいといいますのは、今後とも税や保険料が今以上に多くなるのではないか、それに合わせて給付水準が切り下げられるのではないかというものがあるわけでありまして、そういう不安感を払拭していただきたいというのが私どもの願いであります。
 いずれにいたしましても、今回提案されております老人保健法等の改正案には、ただいま申し上げましたように、大きな問題点があるというふうに考えております。しかし、公費負担の拡大に向けた施策や老人訪問看護制度の創設、初老期痴呆患者の老人保健施設の活用については、今でもベッド数が不足ぎみと言われている中で、この老人保健施設のより一層の充実が図られなければならない課題もあるわけでありましょうが、こういう問題、さらには被用者保険拠出金の軽減措置など、私どもといたしましても評価すべき点は少なくないと思います。
 しかしながら、何といいましても、今指摘しましたような問題点の解明と解決策を講じていただきながら、法案の修正、補強で高齢者の皆さんにとって安心できる制度の拡充を図っていただき、これから迎えます高齢化社会における老人保健、医療制度の充実を期していただきますように切にお願いを申し上げまして、簡単ながら私どもの意見開陳とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 五十嵐清

speaker_id: 17283

日付: 1991-04-23

院: 衆議院

会議名: 社会労働委員会