福井俊彦の発言 (大蔵委員会)
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○福井参考人 お答えを申し上げます。
ただいま沢田委員から、いわば一九九〇年代の世界経済の運営全般にわたる大変基本的な御質問をちょうだいしたというふうに感じます。その中でも、日本それから日本の金融政策の役割いかんというふうな御趣旨のお尋ねではなかったかというふうに受けとめさせていただきました。
一九九〇年代の世界経済は、もちろん日本を含みます先進主要国が引き続き一段と高いレベルの経済パフォーマンスを追求していかなければならないことは申すまでもございませんが、八〇年代から引き続き持ち越しておりますLDCの経済のレベルアップの問題もございます。さらに、ただいま沢田先生御指摘のとおり、東欧諸国の経済のレベルアップという新しい問題も抱えるに至っております。さらに、これも沢田先生の御指摘のとおりでございますが、私どもが希望しておりますとおり湾岸戦争が一刻も早く終わって、みずから破壊した経済的な痕跡をみずからの力でこれを復興させていかなければいかぬ。経済的にいいますれば、こうした復興需要にも適切にこたえていかなければならないという世界経済的な課題があるわけでございます。これらすべての課題が一九九〇年代長きにわたって世界的に新しい資金需要として起こってくるわけでございまして、物事を処理いたしますいわゆる事前の段階からいえば、世間一般に言われておりますとおり大きな資金不足があり、それにいかに対応していくかという問題があることは御指摘のとおりでございます。
〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
ただ、大変大きな問題でございますので、私の答えがどうしても原則論的になることはお許しいただきたいと思いますけれども、お金の問題というのは、新しい仕事をしていきますときに、新しい段階ではなかなかつきにくい。これは国内での事業のことを考えても御理解いただけると思いますが、しかし、その仕事がうまく円滑に動き出せばお金というものは自然についてくる部分、あるいはつけようと思ってつきやすくなっていく、そういう性格を備えたものでございます。したがいまして、この九〇年代を展望して大きな資金不足があるといいましても、問題のポイントは、お金がいかにしてつきやすくなるかという実体的な条件をいかに整えていくかということではないかと思います。
先生御指摘の九〇年代の経済の展望を前提にいたしますと、これを平たく言えば、世界経済のレベルアップに、そのレースに参加してくるメンバーがだんだんふえてくる、つまり間口の広い経済になっていくということであります。それを、一定の制約があります資源を一層有効に活用していく。そして環境の問題も一つの制約でございますが、地球に優しい経済運営という言葉が最近出てきておりますけれども、世界的にそういう姿でこれを実現していく。その姿の根本のところは、我々日本を含めました先進国について言えば、むだな消費を省く。従来からも消費が決してむだに行われてきたとは思っておりませんけれども、しかし今後の世界経済を考えますと、ますますむだの少ない消費が必要だ。それから企業の生産活動について言えば.これはもう日本は先頭を切って省資源、効率的な生産体制をこれまで築いてきておりますけれども、今後の世界経済を乗り切っていくにこれで十分かといえばまだまだ不十分、一層省資源的な生産活動体制を整えていくということがどうしても基本になると思いますし、それから、これから経済のレベルアップを実現していこうとしているさまざまな国、これは東欧諸国についても同様でございますけれども、これはそれぞれ属しております国の方々がこれから経済にキャッチアップしていくわけですから大変きついわけでありますけれども、やはり必要な消費はするけれども、同時に貯蓄という心を初めから持つということが大変大事だと思いますし、その貯蓄を極力投資に振り向けて、これらの国々においても投資活動、そして有効な生産活動の芽を着実に築いていく、これが大変重要なことではないかというふうに考えております。
これを全体、先進国、それから、これからキャッチアップを要する国あるいは戦争の被害を受けて復興をしなければいけない国、すべて含めまして言えますことは、貯蓄の重要性、そしてそれを投資に有効に振り向けて、貯蓄・投資のメカニズムを有効に働かす、その中に資源節約ということが一層厳しく効いてくる、そういうメカニズムを働かせることが非常に大事じゃないかというふうに思います。そうしたメカニズムが、これは一挙に築くことは大変難しゅうございますが、少しずつでも芽生え、かつそれが持続するのだということがはっきりしてまいりますれば、お金というものはかなり自然についていくものではないかという気がいたします。先進国の持っております貯蓄が、これが援助という形を通じたりあるいは融資という形を通じてこれから経済のレベルアップを図っていく国々の必要な投資に資金が振り向けられるようになるでありましょうし、もしそれで足りなければ、これだけ信用メカニズムが世界的に発達している現代の世界経済におきましては、必要な追加資金は必ず有効な信用拡大でもって賄われるということでございます。そういうメカニズムが働けば、いわゆるインフレを起こすことなく、徐々に貯蓄・投資のメカニズムが有効に働いて、世界経済の拡大再生産、しかも省資源を伴いながらの望ましいパスという実現の道がだんだん見えてくるのではないかという気がいたします。
そういう前提条件を整えないで、仮に無理をして資金を用意したらどういうことになるかと申しますと、その資金はやはり経済のレベルアップに必要な貯蓄・投資メカニズムを作動させない資金として使われる、つまり単純に言いますと、その資金は消費のために費消されるという形になります。そうしますと、生産力の向上も伴わないということでございますので、結果としては、せっかく用意した資金が世界経済にとってはインフレ的な影響を残す資金として尾を引くということになるわけでございます。
したがいまして、繰り返しになりますけれども、事前的に見た資金不足は大きいけれども、前提条件をこれからみんなで苦労して整えていけば必ず資金というのはつく条件が出てくるし、結果として資金不足の問題を乗り越えていくことは十分可能じゃないか。
日本の金融政策について申し上げますれば、引き続き世界経済の中で、物価安定を軸に持続的な経済成長のパスをしっかり確保していくということが一番基本になると思いますし、これは金融政策だけではできませんけれども、今後の世界経済に参加者が非常に多くなるということを考えれば、環境を含めて広い意味の資源節約の、広い意味の経済政策のバックアップを十分受けながら金融政策の成果も上げていく必要がある、こういうふうに考えている次第でございます。