國松孝次の発言 (地方行政委員会)
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○國松政府委員 今回本法を立案する過程におきまして、アメリカ、イタリア、ドイツ、フランスといった諸外国のいろいろな立法例、これらの国におきましては、いずれも組織犯罪に悩んでおるという実情があるわけでございますので、そういった対策法規を持っておるわけでございます。そういうものももちろん参考にさせていただいたところでございます。
ただ、こういった各国の組織暴力対策法というものにつきましては、それぞれの国の実情、それからそれぞれの国の組織犯罪といいますか犯罪組織の実情に応じまして区々でございまして、それをストレートに私どもの方に取り入れるといいますか、参考にすることにはなかなかまいらないというのが、実はこの各国の法令を研究した場合の率直な印象でございます。したがいまして、私どもといたしまして、やはり日本の実情に即した形で、私どもの現在の法体系の中にどう位置づけるかということを日本独自の立場で考えて立法しなければならないということで今回の法律をつくったわけでございます。
ただ、今の御質問にございました、特にアメリカの組織犯罪対策法規というものでございますが、確かにアメリカの場合は、いわゆる組織暴力との闘いというのは、いわゆるマフィアとの闘いでございます。マフィアと申しますものは、知ったかぶりをするつもりはございませんが、十九世紀にアメリカにイタリア移民が流入してくると同時に入ってまいりまして、最初は、言ってみればイタリア系の移民の間でいろいろとかすりをしておるというような小規模の暴力的組織であったようでありますが、それがだんだん膨れ上がりまして非合法の活動をする。現在に至っては、合法な、大きな企業も支配をするに至る、特に労組を支配するというような大変悪い状況が出ておるというようなことでありまして、マフィアの勢力の増大に従いまして組織犯罪対策を強めていったというのがアメリカの法制の動きであろうというように思います。
その中でやはり一番中軸に置かれますのがいわゆるRICO法というものでございます。これは、一九七〇年に組織犯罪規制法というものができまして、それのいわば九編という形でつけ加わったものでございますが、このRICO法というのがやはりアメリカの現在のマフィア対策というものの根幹として活用されておるところでございます。
これの概要というようなものでございますが、これは要するに、我々のやり方と割と似ておるようなところがある、と申しますのは、このRICO法におきましては、RICO法におきます中軸となります不法な行為の立て方というものにつきましては、いわゆるラケティア活動、これは暴力団が典型的にやるような行為というような意味であろうと思いますが、ラケティア活動という概念をもちまして、これは法律によって全部列挙していくという形になります。要するに、マフィアのようなものがやりやすい典型的な暴力的な不法行為などということでございます。この本法におきまして、「暴力的不法行為等」ということで別表に列挙しております法律の内容とかなり似通ったものがある。
そして発想においても似たようなものがあると思いますが、こういったラケティア活動を繰り返すという違法行為と、もう一つ、不法に債権を取り立てるというこの二つの違法行為を軸にいたしまして、こういう違法行為によって、たとえ合法であれ一定の企業その他の団体の権益を獲得するとかその企業の支配権を得るということ自体を違法であるといってしまう。あるいは、今申しましたような違法行為によりまして一定の企業の権益を獲得してしまう、あるいはまたそれによって一定の企業等の事務を遂行するといったような行為を禁止するのがRICO法の基本的な立て方であります。
本法と比較をいたしますと、今申しましたラケティア活動というようなものを列挙していくというような発想が似ておりますのと、団体を指定するのでなくて、その一つずつの行為を規制していくといいますか、そういう発想は私どもの点と似ているのではないかと思います。
ただ、もちろん相違点もあるわけでございます。このRICO法と申しますのは、いわば対象範囲はだれでも、マフィアその他の暴力的組織が最もやりそうなことということで書いてはありますが、対象範囲は必ずしもそういったものに限りませんで、一般人、何人に対しても適用される法律として書かれている点が、我々の指定する暴力団だけを規制対象にするという本法とは若干違うところでございます。また、RICO法の場合は、今申しましたような違法類型と申しますのは皆犯罪行為でございますものですから、私どものように、犯罪行為にならない、その一歩手前のような形の暴力的要求行為を規制していくのとは若干違ってきている点がございます。
その他、イタリア、フランスあるいははドイツにおきましては、イタリアの場合は特にマフィアの本家のようなところでございますので、刑法においてマフィア型の結社の罪というのがございます。これはトータルに結社を発起することや加入することが犯罪として禁止されるということになっております。そのほかフランス、ドイツにつきましても、そういった犯罪結社型のものは加入そのものが禁止されるという、結社そのものの規制という形になっておるわけでございます。その点につきましては本法とは全く性格の違うものであると思うところでございます。