大内啓伍の発言 (本会議)
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○大内啓伍君 私は、民社党を代表して、総理の施政方針演説並びに当面の重要な国政課題について質問をいたします。
一月十七日の対イラク軍事行動の開始は、その平和的解決を願っていた世界の人々の期待に反したまことに残念な事態でありました。しかし、一月十五日までに撤退を求めた国連の六百七十八号決議がイラクによってあからさまに踏みにじられる事態を放置すれば、国連の権威は完全に失墜し、国連はもはや無力な存在として、米ソ冷戦解消後の国連を中心とする新たな国際秩序の構築は望むべくもありません。また、イラクの侵攻によって、何の罪もないクウエートの前途ある青年と子供と女性が、目を覆うような残虐行為によって真っ先に犠牲にされた事実を看過することはできません。(拍手)そしてその犠牲は、イラク軍の支配の中で今日ただいまも続いているのであります。昨日も、なぜ十八時間しか待てなかったのかという議論もありましたが、クウエートの人々が過去五カ月半の長きにわたって地獄の苦しみの中にあったことをさらに長引かせようとでもおっしゃるのでありましょうか。(拍手)
それらのことを思いいたすときに、国際的な無法と暴力がまかり通るとき、それを力によって守らなければならないときがあるという見地から、それはぎりぎりの必要やむを得ざる選択であったと考えます。(拍手)
既に、世界の二十八カ国がこの軍事行動に参加し、日本と同じ戦後の敗戦国であるドイツも、ジェット戦闘機十八機とパイロット二百七十人をトルコに派遣し、お隣の韓国も、軍医療団百五十四人をサウジアラビアに派遣しておるのであります。このとき、我が国だけが手をこまぬいて傍観者を決め込んで、日本の特殊事情を理解してほしいでは、世界の国々、世界の人々が納得するはずはありません。(拍手)同本が目に見える、内容のある、時宜にかなった貢献をするよう、米国を初め各国が日本に求めており、我が国は誠意を尽くしてこの要請にこたえなければなりません。(拍手)
この事態に対し、政府は、一月二十四日、九十億ドルの多国籍軍に対する追加支援を決定されました。この資金協力は、戦争開始前の戦争抑止のための後方支援とは異なり、開戦後の多国籍軍の戦費に対する負担であるだけに、それは紛れもなく戦費支援策の性格を持つものであります。
現に政府は、九十億ドルの積算根拠として、向こう三カ月間の推定戦費が一日五億ドル、計四百五十億ドル程度と推定し、その二〇%を日本が負担することにしたと言っていることでも明らかであります。とすれば、それは、日本は憲法上、多国籍軍の軍事行動に直接参加することは許されないので、せめて資金面でこれを手助けするということになります。もしそうだとすれば、政府はこの際、国民に対し、次の諸点を明らかにすも責任があると存じます。
第一は、それはいかなる憲法解釈によるものであるか。第二は、それはどのような政策的な配慮によるものか。第三は、なぜ日本が米国とほぼ同率の負担をすることが必要なのか。
特に第三の点については、アメリカのベーカー国務長官が二十六日の記者会見で、サウジアラビア、日本、クウエートから拠出される総額三百六十億ドルは、多国籍軍ではなく、米国への財政支援と受けとめている、それは我々が日本政府に頼んだものだと述べているが、もしそれが本当であれば、将来に大きな問題を残すことになります。
それらの諸点について、海部総理の明確な説明を求めます。(拍手)
私は、国連決議を遂行するための多国籍軍の軍事行動に対して、日本が資金面で支援、協力することは、国連を国際的平和維持の唯一の機関として強化していく上で、国際国家日本として果たさなければならない不可欠の貢献であるとともに、日本外交の基軸である日米関係を維持していく上でもやらなければならないぎりぎりの対応であると考えております。(拍手)
同時にそれは、憲法九十八条が規定する「確立された国際法規は、これを誠実に遵守」し、また、その前文にうたわれている「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」、我が国は「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という憲法上の要請にこたえるものと確信いたします。(拍手)この私の見解について、海部総理の御所見を承りたい。
ところで、政府は、さきの九十億ドルの支出財源をいまだに明らかにしてはおりません。我々は、その財源については、今いろいろ取りざたされているような安易な増税や赤字国債の発行に求めてはならないと考えます。最大の戦費を使っている米国すらも、増税を回避する努力を尽くしているのであります。重要なのは、まず政府自身が汗を流すことであります。
かつて、八一年の財政危機に直面したとき、第二臨調をつくり、「増税なき財政再建」を掲げて、行革で財政の再建を図ったことを総理は想起すべきであります。すなわち、今なすべきことは、国民に負担を求める前に、既定経費の思い切った削減と新たな行政改革の断行によって税金のむだを省き、また、国有地や日本たばこ産業株式会社など政府保有株の適切な放出を行うことなどにまず着手すべきだと考えますが、政府の方針を明らかにされたい。(拍手)
また、政府は、九十億ドルの追加支援とともに、避難民輸送のために、特例措置として、自衛隊輸送機を派遣することとし、このため自衛隊法百条の五に基づく特例の新政令を決定されました。
去る一月十七日の党首会談で、私は、危険地域への民間機のチャーターが極めて至難な状況の中では、人道的な見地から自衛隊輸送機の使用についても真剣に検討するよう提案した立場から、政府がその派遣を決意されたことは、責任ある姿勢としてこれを評価いたします。(拍手)武力行使を目的としない難民救済こそは、人道主義と平和を求める日本の立場として、どの国よりも率先してやらなければならない重要な国際協力だと考えるからであります。(拍手)
そうした崇高な活動の遂行に当たって、危険なところへは自衛隊は一切派遣しない、危険なところはすべて民間にお願いする、そういう姿勢でどうして民間の方々がこれに納得して協力するでありましょうか。(拍手)また、日本としての責任を遂行することができるでしょうか。民間だけでできるというなら、その具体的な計画を示すことが公党の責任ではありますまいか。(拍手)
しかし、私は、人道的な目的にせよ、初めて自衛隊輸送機を海外に派遣するという重要事項の決定に当たって、政府の考えだけでいかようにもできる政令でこれを処置することは、極めて不適切だと考えます。現に、さきの臨時国会の論議でも、政府は一貫して自衛隊法を改正しなければできないという答弁を繰り返していたではありませんか。恐らく、難民救済のために輸送機を派遣すれば、それに付随して防衛医官の派遣も伴うことでありましょう。
今回、政府が当然の筋である法改正を避けたゆえんは、今日のねじれ国会の現状を配慮した結果でありましょう。しかし、難民救済が自衛隊が負うべき重要な任務の一つであるならば、自衛隊法の改正が必要であることを国民に率直に訴えることが正直な政治ではありますまいか。(拍手)そういう国民への真剣な訴えこそが、今、海部総理、あなた自身に求められている最も重要な政治姿勢だと思うが、総理の御所見を承りたい。(拍手)
なお、極めて憂うべき事態として、今回のイラクによる油流出作戦は、化学兵器の使用にも匹敵する卑劣きわまるものと言わなければなりません。既にサウジアラビアの淡水化施設にも影響が出始めており、今後の推移いかんによっては、その環境破壊ははかり知れないものになることが予想されます。既に各国は、具体的にその対策に動き始めております。公害技術先進国である日本は、直ちに技術援助に立ち上がるべきだと思いますが、政府の具体策はいかがでありましょうか。この点は、昨日、党として政府に強く申し入れたところであります。
また、懸案となっている国連の平和活動に協力するための法整備についてでありますが、実効ある組織づくりを目指し、今国会で成立を期すべきと考えるが、海部総理の決意を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
次に、ソ連情勢と日ソ関係について質問いたします。
ソ連政府が、バルト諸国の無辜の市民に対し、武力をもって弾圧し死傷者を出したことは極めて遺憾であります。これは、まさにペレストロイカや新思考外交に逆行するものであり、我が国の対ソ関係、対ソ経済支援も再検討すべき状況にあると考えます。既に西欧諸国も、対ソ関係、対ソ支援を再検討する姿勢を表明しております。当面の人道的食糧援助を含めて、我が国としてはどう対処するのか、先日G7も開催され、西側の協調が話し合われておりますが、その内容も含め、日本の方針を明らかにされたい。
私が遺憾に思いますのは、総理が新年に伊勢神宮に参った後の記者会見で、ゴルバチョフ大統領が来日しても北方四島返還は簡単ではないと、みずからトーンダウンした発言をされたことであります。これから交渉に臨む責任者がこうした姿勢で、果たして交渉が前進するでありましょうか。極めて軽率な発言と言わなければなりません。総理の四島返還交渉に臨む決意を改めてお伺いをいたします。(拍手)
次に、消費税など税制問題についてお尋ねいたします。
平成三年度予算案が欠陥消費税のもとで編成されることになったことは、まことに残念であります。周知のように、現行消費税には、社会的弱者の生活を圧迫する逆進性、消費者が払った税金が国庫に納められない益税、預かった税金を財テクに利用する運用益という三つの重要な欠陥があります。とりわけ、簡易課税制度などの特例措置により、四千八百億に上る税収が国庫に入らなくなっております。国庫を預かる政府が、合法的に税金でもうける制度を認めていることに何ら恥じ入る姿勢を見せないことに海部内閣はどう釈明するのか、総理の明快なる答弁を求めます。(拍手)
我が党の提唱に基づく与野党の両院合同協議会で、これら益税や運用益の解消、教育、福祉などの非課税化などがようやくまとまりました。自民党の反対によって食料品の全段階非課税が合意できなかったことは、極めて遺憾であります。だからといって、合意した部分まで先延ばしにすることは許されるものではありません。一部には、全部の合意ができないうちは何一つやるべきではないという無責任な意見もありますが、国民に対して責任を果たそうとする政党間で速やかに成案を得て、消費税の欠陥是正を実現するよう提唱いたします。海部総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
土地問題は、今日、政治に課せられた最重要課題の一つであります。今回政府の提出した地価税の導入を柱とした税制改革案は、国民の期待に全く反したものと言わなければなりません。
まず第一に、学者や民間研究所の試算では、地価税の地価引き下げ効果は〇・四%程度で、地価の引き下げ効果は全く期待できないことが明らかにされております。
第二に、地価税の課税対象者はわずかに五万人程度で、それらの人々は、土地の放出ではなく地価税を価格に転嫁してくることは必定であります。その意味で、地価税はむしろ大衆課税になる可能性が極めて大でありますが、いかがでありましょうか。
都市開発協会の調べでは、平成元年度の住宅価格は、土地価格の高騰のために、東京二十キロ圏、つまり通勤に一時間程度かかる地域の場合、一戸建て住宅の値段は、平均で何と一億一千七百九十三万円にも達します。これはサラリーマンの平均年収の十八倍にも達し、到底手の届くものではありません。このような現状を放置してきた政府・自民党の責任はまことに重大であります。
第三に、土地税制を提唱するならば、同時に都市計画法、建築基準法の改正法案を提出すべきであります。また、農地の宅地並み課税についても、政府による国債買い上げ制度を検討すべきであります。初めに地価税ありきといった財源対策だけでどうして土地問題が解決できるでありましょう。(拍手)
以上の見地から、この際、地価税は根本的に再検討すべきだと考えますが、この際、国民が納得し得る総理の明快な答弁を求めます。(拍手)
次に、老人保健法の改正について伺います。
我が国の経済力に見合う豊かさと生活実感とのギャップを解消することが求められている中で、豊かさの中の貧困が目立っているのが老人福祉サービスであります。日本の老人福祉サービスはいまだ先進国並みとは言えません。それゆえ、老後に不安を感ずる国民の数はむしろ年々増加しております。このとき、老人保健法を改正し患者負担を増大させることは、国民の老後への不安をさらに高めることになります。患者負担を求める前に公費負担の引き上げを実行することが必要ではありますまいか。高齢化社会に備えるためだとして消費税の導入を行いながら、まず患者負担を求めるというやり方は、国民をだますやり方と言わなければなりません。(拍手)国民の老後の不安をなくするためにも、老人保健に対する公費負担を三割から五割へ引き上げるべきだと考えるが、総理の見解を承りたい。
次に、ウルグアイ・ラウンドと米問題について伺います。
ウルグアイ・ラウンドのタイムスケジュールを考えるとき、日本は二月中旬までにラウンドがまとまるよう積極的に汗を流し、リーダーシップを発揮する必要があります。そのため、自由貿易体制と米の市場開放は行わないことは決して矛盾するものではないことを確信を持って主張すべきであります。にもかかわらず、政府・与党首脳から米の一部輸入自由化容認発言が相次いでいるのは極めて遺憾であります。総理は、米の国内自給は貫徹する方針で交渉に臨まれるのか否か、その所見を伺います。
次に、政治改革、選挙制度改革について伺います。
自民党政治改革要綱で示された小選挙区比例代表並立制は、どのような試算によっても自民党が四割の得票で八割もの議席を獲得するという、世界に例を見ない非民主的な選挙制度であります。議席に生かされない死票は、現行の中選挙区制の約三倍にも達するのであります。まさに、この案は、国民の意見を政治に正しく反映するという政治改革本来の目的から遠く離れたものと断ぜざるを得ません。
総理は、就任早々、内閣の命運をかけて政治改革の実現に取り組むと内外に表明しましたが、今日まで何一つ実現してはおりません。総理の言う内閣の命運をかけるとは、あなたの任期中に法案を提出し、成立させるということなのか、成立させることができなければ責任をとるということなのか、お伺いをいたしたい。
昨年末の党首会談において、あなたは、一党だけで法案を提出することはしない、人口格差が三倍を超える違憲状態のもとでは、解散権は政治的に制約されると思うと答えられました。総理、選挙制度改革と定数是正はこの際切り離して考えるべきときに来ていると思いますが、総理の御見解をお伺いをしたい。(拍手)
最後に、このたびの施政方針演説であなたが提起された信頼の政治についてお伺いいたします。
信頼の政治を確立する根本は、相次ぐ政治腐敗をみずからの中から発生させながら、口先だけの政治倫理を説き、四割の得票で八割の議席を獲得する選挙制度を提唱するような次元の問題ではありません。二十一世紀に向かって国民に希望と誇りと確信を与える日本としての政治の目標、すなわち、政治のマニフェストを国民に明示することこそが、信頼の政治を確立する根本ではないでしょうか。(拍手)ルーズベルトはニューディールを、レーガンはより強きアメリカを、アトリーは福祉国家建設を、ネールと周恩来は平和五原則をというように、世界の偉大な政治家たちは、常に国民に向かって政治の目標を指し示しております。
海部総理、あなたの政治目標は一体何でありましょうか。外国人が日本を異様な国家と指摘するように、日本の政治が今日内外から不信を持って見られるゆえんは、この点が全く不明であることに起因いたします。それが明らかであれば、国民は一時的な犠牲や忍耐を必ず受け入れるでありましょう。
私は、日本が今内外に向かって宣明すべき政治的マニフェストとは、第一に、内にあっては日本の持つ経済力を二十一世紀に向けて生活先進国づくりに集中する、第二に、物質的な豊かさだけではなく、日本の精神文化を発展させるために文化先進国を目指す、第三には、日本の持てる経済力、技術、文化を、国連の強化、世界の平和と繁栄の維持、自由と人権の発展、地球環境の保全につき込む国際協力先進国を目指すという三点を内外に高らかに宣言し、そこに向かって渾身の努力を尽くす姿勢を示すことが、今、日本に求められている最も重要な課題だと確信いたします。(拍手)
この点についての総理の所見を最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕