岸本重陳の発言 (予算委員会公聴会)
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○岸本公述人 三つの御質問があったと思います。
一つは、湾岸戦争への多国籍軍への協力かアメリカ軍への協力なのか別として、ともかく九十億ドルの追加支出が経済成長にどういう影響を与えるかという点でございました。まずそこから、考えていることを簡単に申し上げたいと存じます。
最初に、しかしお断りしておきたいのは、九十億ドルの問題を考えるときに、経済成長への影響というものをどういう意味で気にするのか、そこをお互い考えておく必要があるんじゃなかろうか。経済成長に悪い影響を及ぼすからやめた方がいいというふうに考える脈絡をたどりたくてそういうふうに思うのか、それともそれとは一応切り離して九十億ドルの客観的な影響を考えるのか。当然、この問題を考える際には後者の脈絡で考えなければいけないと私は思います。やらなければいかぬことは、経済への影響がどうあろうとやらなければいかぬというふうなものであろうと思います。
そうお断りしておいて、端的に申し上げれば、九十億ドルがどう影響するかというのは九十億ドルの調達の仕方と密接不可分でありますから、昨夜、自公民三党でもう合意なさったような、ああいうのが決まったことを前提にして申し上げますと、短期国債で補う分がある、それから財政支出の削減で補う分がある、両方あるわけですね。短期国債で補う分というのは、言うまでもなく、国債を発行して一般国民あるいは市中から資金を吸い上げる。それは当然、購買力と申しましょうか日本の市中の需要力をその分減殺するわけであります。一般の場合ですと、国債で吸い上げた資金は、国債で吸い上げなければ市中に滞留していて退蔵されている資金であって、経済的には活性化してないやつ、これを政府が吸い上げて財政支出として活性化して利用するから景気には好影響、成長には貢献する、こんなふうに言えるわけでありますが、今回の場合は、短期国債で吸い上げられた市中資金は単純に海外にその資金額が流出するわけでありますから、購買力の削減効果だけが出てくるということが言えますね。その規模がまあどれくらいになるか、一兆二千億円のうちのどれくらいをそれでやるかによってまた違ってくるわけですが、いずれにしても、例えば総額一兆二千億でいって、日本のGNPに対してそう大きな規模じゃないからこれのデフレ効果は大したことないというふうに見る人もいないわけではないのでありますけれども、私、今回の短期国債による資金調達は二度たたると思います。
第一回は、短期国債を発行したときに、今言ったような意味で資金流出で購買力削減、そういう効果で一度たたる。そして今度、この短期国債を短期間に償還するために何らかの形で税での補てんをしなければいかぬわけでありますから、償還しなければいかぬわけでありますから、税として集まった財政資金がその分だけ財政資金としての効果を持たないわけですね。したがって、その分、財政活動を不活性化させるという形で、今度は税で償還する段階でもう一度たたる。そういう意味で二度たたると申し上げたいと存じます。
例えば、全部を短期国債で賄うんじゃなくて、公明党、民社党の要求を入れて、まあ二千億円ほどは防衛庁予算の削減といいましょうか、それの振りかえでやる、そんなふうな要素が合意されたようでございます。防衛庁予算の削減の方は、直接には私は景気に対して大して大きな影響を持つものではないと思いますが、短期国債によらないで、その他の一般歳出の中から歳出減をやる分というのは、やはりそれはそれぞれに大きな影響を持つんじゃないでしょうか。皆さんならよく御承知のとおり、今度の予算案で何億つけた、それはもう一億、二億の規模でも、今度の予算で何億ついたというのが、これがもうのどから手が出るくらい欲しい。そういうお金をこうつけてくれ、つけてくれと十数年にわたって運動したあげく、ようやくにしてそのお金がついて、さてこれで何かやれるぞというふうなぐあいに期待している多くの部分というのが経済の中には至るところにあるわけでありまして、それらが犠牲に供されるということは大変、部分的なようでありながら、金額的にはそう大したことないというふうに見えるかもしれませんけれども、そういった新たに予算がついて動き出す部分というのは、これは経済の中に新しい活動の芽が出ていくわけであります。その芽がもしつぶされるとしたら、長い目で見てそれは相当、金額以上のダメージを経済運営に与えることになりはしないか、そう強調したいと存じます。
それから第二の質問は金利の問題でございましたが、日本の公定歩合、去年の八月末に引き上げられて現在まで来ている。もうそろそろ引き下げの時期ではないのかという声が去年の秋の終わりごろからちらほら聞こえ出してきて、特に十月一日、株式市場が二万円を切った、あそこの段階では公定歩合の引き上げが株の足を引っ張ったということで、そういう声が一段と高まるきっかけとなりました。御指摘のように、海外の金利政策がまだらでございますね。上げた国、下げた国と、こうあって、それはどちらも主要国がそうしているのでありますから、日本がそのはざまに立ってどういうスタンスをとるかというのがなかなか難しい状況にあると言わざるを得ないと思います。それから、御指摘の物価状況との関連もなかなか判断が難しい。
しかし、結論から申しまして、理屈をごちゃごちゃ説明することは一切省きますが、私は公定歩合の引き下げが現在差し迫って必要な段階だとは考えておりません。バブルと言われているものが本当にはじけてあく抜きが済んで、日本経済がバブル抜きでしっかりした体質に変わったか、これはとてもまだそうは言えません。もちろんバブルを抜くのに、高金利をやっていればバブルが抜けるという問題ではないし、バブルを抜くのには、場合によっては金利を下げた方がいいということもあり得る。これは認めますが、しかし公定歩合引き上げに至った日本の経済体質の中から考えてみますと、今引き下げというふうに移るべき時期ではないのではないかと思わざるを得ません。物価に対する影響という点では、もちろん高金利は一面では物価上昇の促進要因になります。それで、そういう場合には下げた方がいいという見方も成り立つわけですが、他面では三重野日銀総裁が物価を非常に警戒して公定歩合引き上げに踏み切られたように、公定歩合を高どまりの水準にキープしておくことが特に資産インフレ的なルートを遮断する、こういう意味では有効でありまして、もちろん地価あるいは住宅の価格動向が去年の秋以来かなりの下落があるではないかという御指摘もあろうかと思いますが、私は、資産インフレの芽というのはまだかなりな程度残っている、だとすると、日銀がなお慎重な姿勢をとっておられることには十分経済学者として理解できる要素がある、こんなふうに申し上げさせていただきたいと存じます。
それから、第三の戦費という問題でございますが、私は戦費というものを定義するだけの力はございませんけれども、いわゆる湾岸戦争へ、そして多国籍軍側へ、実態はアメリカ軍かもしれないけれども、ともかく多国籍軍側へ支援のお金を出す、これは戦争行為を行っている片側の当事者に対する資金援助であるのだから、広い意味で言って戦費でないわけがない。これはもう明快なことだと思います。もちろん、輸送車両を出すのだから直接にはこれは軍事行動には使われない、そういった説明は幾つか可能ではありましょう。しかし、そういった説明は可能ではあっても無力であります。兵士が乗って、銃を持って砂漠を走り回るのに一番よく使われているのは日本の四輪駆動車だ。日本だったら若者が山野を走り回っているレジャー用の車が実は一番有効な戦闘車両である、こういうふうにも言われている現実がございます。それ自体としては、例えば包丁は料理をするためのものであって武器ではないけれども、しかしこれは凶器にもなり得る。戦争というのは、資金援助をすればその資金援助はすべての戦闘行動の最大限効率的な遂行に向けて使われるのは明らかでありますから、これは後方支援であるから戦争への直接協力ではないなどというのは単なる遁辞でありまして、そういう不誠実な言葉は吐くべきではないと私は断言したいと存じます。