星川保松の発言 (本会議)
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○星川保松君 私は、連合参議院を代表して、質問をいたします。
湾岸戦争は、当初の予測に反し、日増しに戦火が拡大し、長期化、泥沼化し、その深刻な影響は世界に広がりつつあります。こうした事態に、我が国は冷静に情勢を判断し、的確に対応していかなければなりません。戦争になりそうなときは戦争の防止に全力を尽くし、不幸にして戦争が始まったときは一日も早く停戦と和平が実現するよう努力する、これが戦争に対する基本的な態度でなければなりません。
しかるに総理は、戦争が開始され日ごとに激化している現在も、イラクのクウェート侵略を非難するのみであります。それを幾ら繰り返しても戦争はやみません。国民が期待するものは、不幸にして始まってしまったこの戦争をやめさせるための総理の不断の努力とその具体的方策であります。残念ながら総理の施政方針の中にその言葉は一つもありません。今、停戦や和平の提案一つせず、無条件で戦費負担に応ずることは、結果として戦火の拡大や長期化に手をかすことになります。
我が国は、歴史的に中東で手を汚しておらず、公正な立場に立つことができ、経済大国として大きな力を持っています。この有利な立場と力を停戦や和平のために生かせないはずがないのであります。地上戦に入る前に、多国籍軍の攻撃を中止し、開戦前と同じく経済封鎖の効果を待ちながらイラクのクウェート撤退を求めるよう、米国に提案してはどうですか。政府は金だけでなく人も出すと言いますが、人よりも停戦案や和平案を出す方が平和国家日本としてはより重要であり、賢明な行為であると考えます。
日本国憲法は、戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段として武力の行使をしないことを国是としています。この国是をいささかでも傷つけるようなことは、断じて避けなければなりません。自衛隊は軍隊であります。これを湾岸戦争の地域に派遣すれば、政府がいかに弁解しようとも、国際社会では日本が湾岸戦争に軍隊を派遣したと見られるのは必定であります。これは、国内的には憲法のなし崩しと批判されるのみならず、多国籍軍に参加していない国として、停戦や和平提案を行うのに有利な立場をみずから放棄するものであり、得るところ少なく失うものすこぶる多い行為にほかなりません。
憲法第九条を盾に兵力を出さないのは一国平和主義だと言う人もありますが、一国一国の平和主義が広がって世界の平和が達成されるものであり、日本国憲法第九条は国連憲章の精神とも合致し、国際性を備えたすぐれた平和条項であると考えますが、総理はどのように理解されますか。
さらに、全世界の平和を維持する国際機関として国連があり、我が国もその加盟国の一員でありますから、国際平和維持の活動は国連中心が大切な基本であります。しかるに、最近の日本政府の動きは、国連中心の路線からも逸脱して、専ら米国中心の行動になっております。日米関係はもちろん重要ではありますが、グローバルパートナーシップと称しながら、全く米国言いなりの追随の外交を続けている姿勢に多くの国民が不安を覚えています。お互い節度を持って言うべきことは言い、対等に協力し合ってこそ、よきパートナーでありましょう。米国が冷静さを失っているときは率直に忠告し、聞き入れなければ協力を断るぐらいの勇気を持って接しなければ、真のパートナーとは言えません。
米国は、双子の赤字も景気後退をも顧みず、他国に戦費負担を求めながら戦争を続けており、米国経済は果たしてどこまで落ち込むかと危惧されております。米国に冷静さを取り戻すよう求め、戦争をやめ和平の道を探るよう、平和国家としての主体性ある提案をすべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。
政府は、米国を中心とする関係諸国に九十億ドルの支援を行うことにしました。この積算の根拠と使用目的を国民にわかりやすく、もっと詳しく具体的に説明していただきたい。この資金が多国籍軍の戦費となって、人を傷つけ殺し、あらゆるものを破壊する戦争に使われるとすれば、第二次大戦の戦災から立ち上がり、ひたすら平和を願いながら汗を流してきた日本国民にとって、到底容認できるものではありません。湾岸に対する財政支援については、国民の生活に大きな支障を来さない範囲のもので、あくまでも難民や被災者救済のための人道的活動及び平和維持活動の資金援助として行われるべきであります。
今回の九十億ドルのみならず、政府は重要なことを国民と相談せず、すべて米国と決めている、これは国会を軽視し民主政治をないがしろにするものだという強い批判の声が高まっておりますが、総理はこの声にどうお答えになりますか。
また、難民輸送のために湾岸へ自衛隊輸送機を派遣するとのことでありますが、派遣するに当たり、国会開会中にもかかわらず自衛隊法の改正案を提出せず、政令をつくって実行するというこそくな手段をとりました。これは国会無視であり、法治国家にあるまじき行為として総理の責任が厳しく問われなければなりません。
自衛隊の海外出動については、昭和二十九年の参議院における「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」があります。「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」という決議文に、詳細にわたる趣旨説明が付されております。
さきの国会において、総理は、この参議院の決議について、有権的な解釈は参議院でお決めになることであろうと思うがと前置きして、総理の解釈を述べられました。総理のこの発言が発端となり、参議院議長は予算委員会から有権解釈を求められるということがありました。行政府の責任者が立法府の決議を都合のいいように解釈し、今まで解釈の必要すら感じなかった立法府に逆に問題を持ち込むというようなことは、三権分立の建前からいって、まことに不謹慎ではないかと思います。国権の最高機関たる国会が自衛隊は海外に出さないと決めたならば、素直にそれに従うのが行政執行者の責任であり義務ではありませんか。戦争の放棄を全世界に宣言した国家の執行責任者としての確たる答弁を求めるものであります。
次期防衛計画について、総理並びに防衛庁長官に質問いたします。
まず、防衛大綱策定当時の世界の冷戦構造が崩壊し、国際情勢が大きく変化したにもかかわらず、防衛大綱の見直しをせず、防衛計画の基本的考え方という単なる政府見解によって次期防を決定した理由は一体何かということ。
次に、世界は今新たな国際秩序への過渡期にあり、国際情勢が激しく変化し、中長期の見通しのきかない時期であります。防衛の将来構想は時間をかけて見直すべきだという意見も多かったのに、なぜ急いだのかという点。
三年後には必要に応じ計画の修正を行うとありますが、これは将来の見通しが立たないためこうした修正予告つきの計画になったのかどうか。
さらに、組織、編成、装備、あるいは定数を含む防衛力のあり方も計画期間中に検討するというのでありますが、これは重要事項先送りで、兵器だけは今のうちに買っておこうというだけの計画ではありませんか。米国の強い要請によってAWACS、イージス艦などを購入するといった新兵器購入の前に、そのようなものが今果たして我が国の防衛に必要かどうかの検討こそ先行すべきであると考えますが、政府の責任ある答弁を求めます。
次に、国土の均衡ある発展について質問をいたします。
総理は、多極分散型の均衡ある国土の発展と申されますが、これは四全総以来の課題でもあります。昨年の国勢調査の速報値によると、我が国の総人口は前回の調査に比べ二・一%増加しましたが、十八道県では逆に減少しております。また、首都圏への一極集中の流れは依然として続いております。人口減少の道県は、北は新潟県以北、一道五県、南は和歌山県以南、四国、九州合わせて十二県となっています。つまり、日本列島の北と南の人口が減少し中央部の人口が増加しておりますが、こうした現実を国土庁長官はどう受けとめておられますか。
人は住みにくいところから住みやすいところに移動いたします。したがって、人口減少の地域分布は住みにくさの地域分布でもあります。地域発展の不均衡が人口の移動を促し、人口の移動はさらに不均衡を拡大するという悪循環を繰り返しているのであります。人口減少の最も激しいのは農村、特に山村であります。若い人々が出ていって年寄りばかりになった村は活力を失い、田畑は耕す人もなく、地価は次第に下がっています。こうした過疎の村に大金を抱えて訪れてくるのは、廃棄物処理の土地探しの人だけであります。山紫水明の山手の村は、次から次にごみ捨て場になっております。お金と人は中央に集中し、ごみが地方に分散され、国栄えて山河はごみ捨て場という状況であります。
山村の人々は、山の多い我が国の国土を守ってきました。守る手を失った山は荒れ始めています。例えば、杉の林は手入れがよければ三十年ぐらいは花をつけませんが、放置されますと五、六年でやたらと花をつけ花粉を振りまくと言われております。
こうした国土発展の不均衡是正のために、国の行政のすべての分野において優先的な配慮を行うよう、総理から各省庁に指示するつもりはないか、お尋ねをいたします。
最後に、政治改革について質問をいたします。
今日までの総理の発言をまとめてみれば、政治が腐敗するのは選挙に金がかかるからで、選挙に金がかかるのは現行の中選挙区制に原因がある、したがって小選挙区制にすれば金もかからず政治も浄化されるというもののようであります。
私は、政治腐敗の最大の原因が選挙制度にあるとするのは、政治家や政党の政治倫理責任を制度に転嫁するものであって、本末転倒ではないかと考えております。大中小の選挙区あるいは比例代表、それぞれ制度には一長一短がありましょう。しかし、選挙区の大小そのものには何の罪もありません。政治に腐敗をもたらしたのは制度を利用する人の側にあります。古今東西を問わず、人の倫理を狂わす最大のものは金でありますから、政治家や政党の金の出入りを規制すること、これが先決であると思いますが、いかがでしょうか。
去る二十二日の新聞に、自民党と経団連がことしの経団連経由で国民政治協会に納める政治献金について話し合い、自民党側は百六十億円の献金を要請し、経団連側は全力を挙げてこれを実現すると回答したと報道されています。
また、国税当局が、昨年六月までの一年間、資本金一億円以上の大企業の一六%を調査しただけで、使途不明金が五百六十三億円あり、そのうち使途の解明されたのはわずか二一%であるが、やみ政治献金が十六億円あったと公表しています。企業全体では巨額のやみ献金が推定されます。
こうした表と裏の企業からの膨大な政治資金の流れをそのままに放置して、政治倫理の確立や政治の浄化を小選挙区制に求めるというのは見当違いではないかと考えますが、政治浄化を訴え続けてきた三木元総理の後継者を自負される総理の明確な見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕