渡辺四郎の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○渡辺四郎君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、総理の施政方針並びに今日の諸問題について質問いたします。
まず、中東湾岸戦争など国際問題については各党の先輩議員から集中的に質疑が行われましたので、私は、今後の国際社会における日本の進路について総理の御決意を伺います。
私は、今回の中東湾岸戦争には、いかなる名目であろうと日本は絶対に加担してはなりませんと冒頭に申し上げておきます。今こそ総理は先頭に立って、日本国憲法の戦争放棄という高遠な理念を全世界に繰り返し訴える絶好の機会であります。とにかく、総理は我が国の憲法を背景に、即時停戦、平和を求めてあらゆる外交努力を大胆にかつ執拗に展開すべきであります。明確な御答弁をいただきたい。
次は、内政問題について順次お伺いをいたします。
海部総理、あなたが総理就任以来、国民に公約された重要政策、すなわち高額脱税の稲村利幸前議員に象徴される政治倫理問題を初め、衆議院の定数是正、土地対策、逆進性の強い消費税問題等々、そのほとんどが解決されておりません。そこで総理、海部内閣の歩みについて総理御自身どのように評価をされていますか、お伺いします。
次に、地方の時代と言われて久しいが、それは言葉のみが先行し、現在は逆の方向に進んでいるのではないかと指摘をしたい。
なぜなら、さきの国勢調査の結果でも、日本の総人口は二・一%、二百五十六万人ふえていますが、約四割に当たる十八道府県の人口は減少しているからであります。特に町村の人口減が目立ち、過疎化はますます拡大し、深刻になっています。
総理は、昨年の全国町村長大会でのあいさつの中で、ふるさと創生は引き続き推進するとともに、個性豊かな地域づくりの実現等に一層努力しますと述べられ、多くの拍手を受けましたことを御記憶のことと思います。地方自治体は、申すまでもなく国の内政を受け持ち、住民の生活基盤整備を初め、教育、衛生、保健、清掃、あるいは農林、商工業の振興など、行政のほとんどを実施しています。ところが、近年特に目立ってきたのが、急速に進む高齢化社会への対策、寝たきり老人や痴呆症老人問題等が、また車社会の中での道路整備と事故防止、広域化する暴力団抗争、麻薬対策、青少年犯罪防止、あるいは高層ビル化に伴う災害防止と救助、そのほか国際化社会の中での自治体の役割、また住民ニーズの多様化による行政の任務と役割はますます増大するばかりであります。
一方、過疎の自治体では、第一に人口の流出防止対策を初め、高齢者の増加に伴う医療・介護対策、財政の窮迫、その他数々の問題が山積しています。
そこで、先ほど申し上げました総理のふるさと創生の推進と個性豊かな地域づくりについて、具体的に財源措置を含めてどのような方針なのか、お伺いいたします。
次は、九一年度歳出予算の中で、地方交付税法で算定される総額から七千五百四十五億円が減額されている点について、大蔵大臣にお尋ねいたします。
報道によれば、減額の理由として、交付税特別借入金を二年間で約三兆二千億円を返済できたからと大蔵省内部で言われているとのことですが、私は、もしそのような認識が大蔵省内部にあるとすれば、それは余りにも地方行政の実態、現状を知らないことなのか、知りながらの発言であれば許されない発言だと思います。地方団体の今日までの借金は九〇年度末で六十七兆二千九百八億円の巨額の残高であることを見ただけでも、地方財政の厳しい実態について推察できると思います。大蔵大臣は地方財源に余剰があるとお考えですか。また、政府に対する地方団体からの本年度予算要求の中心は何であったのか、お伺いをいたします。
次は、大蔵、自治両大臣に伺います。
近年、国の財政硬直化要因の一つに地方交付税があるかのように言われています。その原因は、今日まで再三にわたって地方制度調査会の答申で、地方交付税が国の一般会計歳出予算に計上され、他の歳出項目と同列扱いにされることは、地方交付税制度の本質からして誤りであるとの指摘が繰り返されてきました。そもそも地方交付税は、国と地方との事務分担と経費負担区分に見合った国と地方との間の税源配分の一環として設けられているもので、性格的には地方公共団体固有の財源であると私は思いますが、両大臣の地方交付税の性格についてのお考えを伺います。
次は、補助金カットについて伺います。
国の財政事情で一方的引き下げを実施した補助金、負担金カットに対し、我が党は厳しく反対してまいりました。それは一九八五年以降、毎回国会で追及し、その中で、歴代自治大臣もが八四年ベースに復元するのが当然だと答えられ、時には大蔵、自治両大臣の覚書を担保にしながらその決意を述べておられました。しかし、新九一年度予算を含め、あと三年間カットを継続するとされていますが、両大臣はこれまでの国会での答弁、さらに全国民に対する約束をどう思いますか。このことは国会の信義に反し、全国民と全自治体に対する背信だと指摘せざるを得ません。したがって、我が党は、今日までの経過からして直ちに八四年ベースに復元すべきと思いますが、両大臣の決意のほどを伺いたい。
私は、仮に現状のままカットを続けるならば、自主財源の乏しい自治体は公共事業受け入れ実施も困難となり、また、新年度から始める社会資本整備事業についても負担に耐え切れず、社会資本の整備もおくれ、いわゆる自治体間格差がますます開き、過疎化もさらに進むでしょう。
両大臣に伺います。このような格差をなくすため、どのような施策を具体的に講ずるかを明確にお示しいただきたい。
次に、消費税問題について総理にお伺いいたします。
現在、消費税については、昨年の社会党を初めとする野党の消費税廃止法案と政府・自民党の見直し法案がともに廃案となったことを受けて両院税制協議会が設置され、その場において協議が続けられているところであります。しかし、消費税の緊急是正については、国民が最も関心を持ち、切実な要求として掲げている、逆進性緩和策の基本である飲食料品の非課税問題について与野党間で合意に至らず、現時点においてもまとまっていないことは非常に残念であります。
だからといって、政府が何もしなくていいということでもありません。自民党政府は消費税の思い切った見直しを選挙公約として国民に約束した以上、海部総理は総理の責任として、みずからさきの国会において提出した消費税見直し案を発射台とし、両院協議会での議論を踏まえ、同時に野党側の主張である飲食料品の全段階非課税等の措置も十分に配慮した緊急是正措置を政府提案として国会に提出する義務があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。
税制といえば、昨年政府が決定した地価税、いわゆる新土地保有税の問題についても触れたいと思います。この新しい土地税制は、大蔵省原案から自民党税制改革大綱までの経過を見守っていた多くの心ある国民は、この極めて不公平な自民党の税制大綱に落胆と同時に強い怒りを覚えたのではないでしょうか。それは、今さら指摘するまでもなく、大口土地所有の企業や個人に対し、大幅に優遇したことです。具体的には、基礎控除を五億円から十億円に引き上げ、税率を〇・五%から〇・二%に引き下げたからであります。この結果、一説には約二兆円の税収減をもたらしたとも言われています。
我が党は、以前から土地増価税の創設を主張し、それらの財源によって低家賃の公共住宅を大量に建設し、あわせて地価の引き下げを図ろうと努めてまいりました。しかし、自民党政府がこのような反勤労者的姿勢では、一生働いても一軒の家さえ持てないという大都市の納税者市民に、いかんともしがたい失望感を与えるものではないでしょうか。大臣、この新しい地価税は明九二年度から実施すると言われますが、それまでに再度検討し直すかどうか、お伺いいたします。
次に、厚生大臣に社会保障政策について伺います。
政府は、一昨年十二月、高齢者を対象にした在宅福祉や施設福祉等を含めた高齢者保健福祉推進十カ年戦略を策定いたしました。しかし、十カ年戦略もその中身を見ると、現状の把握も戦略への道筋も全くお寒い限りでございます。例えば、ホームヘルパーについては二〇〇〇年に十万人を確保するという目標を打ち出してはおりますが、その具体的確保の目途すら立っておりません。さらに、十万人が確保できたとしてもスウェーデンの十分の一にも達せず、圧倒的に不足しており、ましてやその他の看護婦及び保健婦等のマンパワーについてもいまだにその需給見通しすら示されていません。具体的需給見通しを出すのは一体いつごろですか、お答えください。
また、老人福祉の現場である市町村に対する国の財政補助が不十分であることも問題です。ホームヘルパーへの国庫補助を現在の二分の一から四分の三に引き上げることは、十カ年戦略が国の計画であることからしても当然だと思いますが、明確な御答弁を求めます。
次に、老人医療費の患者負担が大幅に引き上げられようとしていますが、安心して暮らせる老後を目指す老人福祉政策に全く逆行しており、政策の誤りは明らかであります。さらに、老人医療費患者負担に医療費の伸びを指標にスライド制を導入しようとしていることは、老人を医療サービスから排除しようとする老人虐待政策で、絶対に認められません。政府はなぜこれほどまでに老人を排除しようとするのか、明確にお答えください。
次は、国民健康保険について伺います。
我が国は世界一の長寿国、二十一世紀前半には国民の四人に一人が六十五歳以上という高齢化社会を迎えることが見込まれていますが、悲しいことに、高齢者の自殺がなぜ世界一なのかを考えなければなりません。本日は、国民医療制度の中の重要な柱の一つであります国民健康保険の現状について厚生大臣にお尋ねいたします。
国民皆保険の一環として、国の制度として発足した国民健康保険は、今日まで地方自治体や各健保組合の財政的支援を得ながら運営されてきましたが、もう限界に達し、最大のピンチを迎えています。その中で特に深刻なのが過疎の自治体組合です。厚生省の一九八九年の調査でも、国保加入者は総人口の三六%が加入し、これはサラリーマン健康保険と並んで日本の医療保険制度を支える二本の柱であることは、大臣御承知のとおりでございます。国保加入者の内容を分析すれば制度的に多くの問題点があります。六十五歳以上の全高齢者の六八%が加入し、年齢構成が他の健保組合とは全く異なっているのが特徴であります。
収入面では、最高の保険税率を適用していますが、加入世帯の三三・五%が無職、そのうち四二・五%が所得なしの状況で、保険税も減額、免税等の対象世帯も増大し、収入は一向に伸びていません。また、被保険者世帯には低所得者層が多く、厚生省の調査でも、国保税の長期滞納による健康保険の適用差しとめが昨年六月一日現在で何と三万一千世帯にも上っています。一方、支出は高齢者の増大に比例して増高しています。
このような厳しい状況の到来を予測した地方六団体は、制度改革と国の負担率の引き上げ等を関係省庁に要求し続け、また我が党も早急に補助負担率の引き上げと制度改革を強く要求してまいりましたが、就任早々の厚生大臣は、こうした状況についてどのような認識と対策をお持ちか、御所見を伺いたい。
次に、環境問題について伺います。
我が国の企業が海外で資源の乱開発や環境悪化に手をかしているとの批判を耳にしますが、政府はODAの決定に当たり、環境への影響調査をどの程度行い、それをODA決定の上にどのように反映させていますか。間もなくパリで開催されるOECD環境担当大臣会議で、二酸化炭素税が提案されようとしていますが、日本も独自に、海外進出企業に対する環境保護に関する何らかの新税を検討すべきではないかと考えますが、御見解をお聞かせ願いたい。
翻って、国内における大きな環境問題の一つは、ふえ続けるごみ処理問題であります。企業のごみ、すなわち産業廃棄物の不法投棄が後を絶ちません。産業廃棄物を中心とするごみ処理について具体的な政策を伺いたい。
総理、政治は常に国家百年の大計を見通しながらの政策目標を定め、一つ一つ着実に実行に移していくことであると私は信じています。そこで政府も、戦後の日本政治の方針を大きく変革しなければと、九一年度予算に社会資本整備費として二千億円を新たに予算計上したものと理解します。総理、あなたは先年、今後の日本の政治は、経済効率一辺倒に陥らず、心が通い合い、生きがいのある社会をつくり上げたいと提唱されましたが、その政策の柱は、今国民が求めているゆとりある生活を目指すための福祉の充実と、おくれている社会資本の整備が中心となっていると理解してよろしいか、お伺いをします。
総理、次に国土保全について伺います。
我が党は、政府・自民党の農林業政策をこのまま推し進めるならば、農林地は荒れ果て、大規模な自然災害を招くことを予言しなければなりません。農業にあっては、世界の国々が、経済効率優先ではなく、自給自足を政治の基本としています。FAO、国連食糧農業機構の宣言にあるように、各国は自国民の食糧に責任を持とう、できるだけの自給努力をして自国民の食糧は他国に頼らないよう努力しようということが採択されています。総理、くどいようですが、農は国の基、起源であり、山は国の礎、その土台であることが政治の原点でなければなりません。それが人類生存の摂理であり、それがまた自然との共生ではないでしょうか。総理の御見解を伺いたい。
次も総理にお伺いします。
今日までの日本の政治は、その原点を見失い、旧態依然とした経済効率中心の政策です。総理、その特徴的な一つが国有林野事業に対する政府の対応であります。顧みれば、経済効率一辺倒だった一九五〇年代の国有林は乱伐に乱伐を続け、その結果、山は荒れ、全国各地に山崩れによる災害が発生したことはお互いに記憶に残っているところです。政府は、林野事業に独立採算制を持ち込み、木材価格の急騰期には伐採を強要し、その結果、収支のバランスが崩れ、その上外国材の輸入による木材価格の低迷等を招き、そのダブルパンチで年々赤字を累積させてきたのが今日の国有林野財政の実態です。いわば、国有林は政府の経済効率中心政策の犠牲にされたと言わなければなりません。
そこで私は、今、その赤字解消策として年末の林政審答申に沿った新たな改善方策が準備されていますが、公益機能発揮に対する国の財政支援など国土保全等から重要であると思うが、総理のお考えを伺います。
総理、今、奥地の山村は、今日まで幾多の困難な諸条件の中にあって営々と自然を守り育ててこられた勤勉な山村住民の方々が消えています。昨年、九州農政局の調査で明らかになりましたが、九州だけでも過去十年間で七百二十八の村、集落が消え、過疎化は過去十年間の三倍のスピードで進んでいる結果が出ています。この影響をもろにこうむっているのが国有林、民有林です。とにかく、山村での農林業の条件や環境は悪化するばかりです。
今、立法府、行政府が国家百年の視野に立って考えなければならないことは、農林業が経営上成り立たないからといって放置できるものではないということではないでしょうか。しかし、現実は、さきにも申し上げたように、今日、山間僻地の村、集落は崩壊し、残された跡地も荒れ果て、過疎化が急速に進んでいるのが実態です。この現実を何としても食いとめなければ、それこそ想像を絶する自然災害をこうむることを私は恐れています。
総理、今からでも遅くない、この自然災害防止のためには、農林業に対するこれまでの施策と発想を転換することです。農林業には、生産と、いま一つの重要な役割があります。それは治山治水による国土の保全と、水を初めとする天然資源の確保、自然の景観と大気の浄化であります。そのためには、積極的な財政援助を行えば、将来、日本経済全体に、また国土保全など自然的資源の蓄積等にも効果があることは間違いないと私は信じます。林政審答申で言う新たな林政の展開に向け、長期的投資計画を策定し、積極的な財政投資、援助を含む、総理の将来展望を含む基本的方針を伺います。
国家の将来を展望してのもう一つの重要な施策は、人口の見通しであります。本日は、関連する出生率の低下と育児休業制度について伺います。
ILO百五十六号条約や百六十五号勧告は、男女を問わず職業と家庭の調和を図らせるもので、今や国際的に確立されています。これについての総理府の調査でも、女性が働き続けるために最も障害になっているのが育児であると発表されています。裏返せば、この最大の原因は、欧米先進国に比べ労働条件や子供の育児に対する保障制度が余りにもおくれているからであります。スウェーデンでは、子育てに対し負担を少なくした施策から出生率を向上させたという事例もあります。
昨年、本院の育児休業制度検討小委員会は、労働省と一体となって法律案作成に当たることを決定しています。総理、国家百年を展望し、総理が先頭に立ち、官民、職種を問わず、男女全労働者を対象とした育児休業法案を本国会で成立させるべく、総理の決断を求めます。
最後に、人権問題に移ります。
昨日、衆議院において総理は、同和問題について憲法上の重要事項との認識を示されましたが、差別の現実を無視し、特別な手当てを必要とする約一千カ所の未指定地区が今も放置されたままです。法の対象となっている地区にあっても残事業があり、国民生活の向上にマッチし得ない住環境整備事業の古い基準が新たな格差の原因となって、いわゆる差別観念を温存し、再生産する根拠となっています。総理の部落差別についての基本的認識を伺いたい。
続いて、子供の権利条約の批准時期の見通しと、既に世界百三十カ国が批准している人種差別撤廃条約の批准はどうなっているのか。政府は常に国連中心を主張しながら、この条約だけをおくらせているのは、世界の民主主義秩序の確立についてどう考えているのか、明確な御答弁をお願いいたします。
以上で私の質問は終わりますが、内外ともに重大な時局のため、明確な答弁をお願いし、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕